NURUTO 作:ONE DICE TWENTY
「ヌル遁・栄養分k──ギッ!?」
やったと思った。マダーラを包み込み、咀嚼したと思った。これで無限月読に至るまでの道程を完全に封じたと──逸ってしまった。
切り落とされたのは、腕。
そのまま蹴とばされ、ぶっ飛ぶところをナルートにキャッチされる。
「いくら能力が優れていても、使い手次第では腐る。先も告げたはずだがな。……このヌル遁とやら、チャクラを通さない性質の時点で遁術ではあるまい。何か別の法則の……」
「ヨゴシ! 大丈、夫……」
「大丈夫、俺の体は、これくらいじゃ壊れないから」
腕を再生させる。【緑色の眩いぬるぬるしたもの】が腕の形になってから元の色に戻る様をむざむざ見せつけたんだ。ナルートも俺がヤバ案件だって気付くだろう。どーでもいいけど。
そも、最悪腕なんかなくたっていい。印なんか結ぶ必要ないんだし。だから俺の心配なんてしなくていい。
「けど、気付かれた……かな」
「気付くとも。オレはお前のような阿呆ではない。……先ほどの地爆天星。二つ目の隕石に対し、お前はその粘液で覆いこそしたものの、それを食らうことはなかった。食らえなかったのだろう? お前のコレは、どこかしらでお前自身に繋がっていなければ捕食行為が行えない。操れはするのだろうが、それだけだ。ならばコレに包まれたとて、お前との繋がりさえ断てば問題ない。違うか?」
「大正解。……ふぅ。やだやだ、気付かないでほしかったんだけどね」
「オレの前で術を見せすぎたな。さて……神羅天征」
マダーラを包んでいた【緑色の眩いぬるぬるしたもの】までもが弾き飛ばされる。
だよなぁ。もう使えるわな。
さて……そろそろ、潮時だ。
その仕組みがばれちゃった以上、もうチャンスは巡ってこないだろう。俺のチート能力は初見殺し。俺自身がもっと達人クラスとかになってりゃ話は違うんだろうけど、大雑把にテキトーにダラダラ生きてた俺じゃ、その域に届くはずもない。
どうせ穢土転生ももうすぐ解ける。そんでもって解除の際に口寄せ契約解除して、自分がエドテンしてはいはいエドテンエドテンで生き返っちゃう。
そーなりゃもっと勝ち目はない。
よーし。
おじさん、帰っちゃうぞー。
「ナルト!」
「おう、なんか策があるんだな?」
「ほう……勝てない事を認識した後で、そうも希望に満ちた声を出せるか。何をする気か──」
「逃げべ!!」
ナルトの腹に【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を巻き付け、自分を地面の下に引っ張る。
「は? ちょ──」
「なに?」
ハーハハ! フフーフ!!
俺が何のために世界各地に【緑色の眩いぬるぬるしたもの】をまき散らしていたと思ってやがる!
こーやって地面に入って逃げるときにアンカーになるヤツが色んなトコに合った方が良いからに決まってんだろ!
もう! 外道魔像のあるところにアンカーは打ち込み済みだってばよ!!
「うわわわわっ、お、おいヨゴシ! 逃げるって何考えてんだってばよ!」
「あのね、俺は結構強いけど、弱点バレた時点で最弱に成り下がるの。特に相手はあのマダラだし。その弱点克服するにはもっと時間をかけるか、新しいもの食べて新しい力を獲得するしかないワケ。鮎桶?」
「なんにもオーケーじゃないってばよ! つか、このオレは分身だから、別に逃げる必要は──」
「なーに言ってんの。俺じゃ」
「ッ、ヨゴシ左!」
進行方向を左にズラす。ザク、と、右の方に何かが刺さる音がした。
「ね? 俺じゃそんなのわかんないから。ナルト、お前が頼りだ」
「だ──だったらオレが外に出て戦う! その隙にヨゴシは逃げろ! それじゃだめ!?」
「それはアリ。でもそれやってお前が消されたらどーすんの?」
「そりゃ……、っ! 正面、ど真ん中狙ってくるってばよ!」
今度は深く潜る。フフーフ、この辺の地面は苛伏四怨の術による礫が死ぬほど埋まってるからな。進み放題進行方向変え放題だってばよ。
「わかるか? 俺の生存にお前は必要なんだよ」
「~~~っ、あーもう! わかった、じゃあ全力で逃がすから──ちなみにどこ向かってるの?」
「本体のお前のトコ」
「なんでそんなのお前が知って、右! その次左!」
いやぁ、ナルートも完全にわかるわけじゃないだろうに、直感と聴力と悪意と……うんうん、助かるなぁ。
ナルトナビ。ま、どうせエドテン解除時にちょっと引き離せるだろうし。その内に──行くぜ、決戦の地!
***
「戦局はどうなっている……」
「本部からの通信では、無剣鐘のヨゴシという者が戦場を掻きまわしているとのこと。数多の穢土転生体を食らい、最後にはこの砂漠の数km先で先代の影たちをも、と」
「じゃが、どう感じても周囲にそんなでかいチャクラを持った奴はいないんじゃぜ」
「本部より入電! 現在、無剣鐘のヨゴシと思われるチャクラ体とうちはマダラと思われるチャクラ体が高速で移動中! 進行方向にいるのは、九尾と十尾、そしてうちはマダラと名乗っていた男です!」
「なに!? ……まさか、合流する気じゃぜ!?」
「無剣鐘のヨゴシ……何者かは知らないが、忍界に仇為すというのなら容赦はせん……!」
「よし、ワシらもそこへ向かう! 皆の者、ついてこい!」
「……あそこにあるのは……森? 砂漠に何故……」
「風影! 遅れるでないぞ!」
「ああ……わかっている」
***
「では……転送します。転送先は、ビー様の元へ」
「ああ、頼む」
***
「飛雷神の術? それは四代目火影の術ではなくて?」
「我々は元々四代目火影の護衛だったんです。なので、同じ術が使えるんですよ。といっても俺達は三人必要ですが。……少し窮屈だとは思いますが、しばしお待ちを。綱手様が現地についたら、その座標を頼りに飛びますので」
「ええ、わかったわ」
***
ということがあったんだと思う。多分。
でなけりゃこんなタイミングで全員来ないだろう。
「ようナルト! 分身護衛してきたぜ! 友達だからな!!」
「お前、割と嘘吐きなんだな……。でも、お前からそーいってくれるのは嬉しいってばよ」
「ナルト! 助けに来たぞ!」
「これは……気合を入れねばならん戦場じゃぜ」
「ようやく暴れられる!」
「ナルト、大丈夫か!」
「どうやら間に合ったようね……敵も味方も揃い踏みのようだけど」
地面から出たらコレだ。時空間忍術によって飛んできた三人の影と、大勢の忍を連れてやってきた風影土影。
ジラーヤは、いないのか。
……ま、そういう道もあるさな。
「いよぅ綱手姫! 過去の事は水に流して、共闘と行こうじゃありませんか!」
「水には流さない。忘れもしない。だが、私も時と場合くらいは考える。いいだろう、お前がナルトの友だというのなら、私はそれを信じよう」
「首を飛ばしたはずだが……」
「ようブラザー♪ いきなりで悪いが頼みがある♪ 聞いてくれると助かりまくる♪」
「なんだ」
「見逃してやってくれ。多分悪い奴じゃないぜ。八っつぁんがそう言ってる」
「……今はそうしよう。だが、犯罪者であることに変わりはない。戦いが終わったら裁く。それでいいな!」
「流石ブラザー♪ 寛大な心ダ♪」
なんか寿命が延びたっぽい。ハハハ、戦いが終わったら楼蘭に引き籠るから関係ないもんね。
「ナルト……そいつがお前の友だというのは、本当か?」
「ああ。そっか、我愛羅は会ったこと無かったか」
「……ならば、いい。オレからは何も言わん」
「ワシも気にしない事にするんじゃぜ」
「……ええと、この流れ……私も似たようなことを問うた方がいいのかしら」
マジで何にも関わりない土影と水影。いや、水影は……確か俺、大蛇丸に対して鬼灯一族だと名乗ったりしたような。それでなんか被害受けてたらごめんね。
と、その時、ナルート達に対峙していたうちはの団扇を持っていた男──オビートの隣に何かが着弾する。
「また、わらわらと……アンタまでもか」
「オレは虫を追ってきたに過ぎんが……これは、誘導されたか?」
「どうでもいい……。これは返すぞ。元々アンタのだ」
投げ渡されるうちはの団扇。ウチは、あれ食べたいかも~。
「何を手間取っている……八尾も九尾も取り込まずに事を進めただけでなく、何もかも上手く行っていないように見えるが」
「余計なことをしている奴がいる。失敗をした奴がいる。裏切った奴がいる。……それさえなければ、万事上手く行っていた」
「そうか。それは残念だな」
ヌル遁・塗流槍。
言葉を紡ぎもせず、朗らかな談笑中に放たれる必殺の一撃。地面の下から襲い掛かったソレは、マダーラの団扇に──当たらない。避けられた。
「……今のは、どうして返さなかった?」
「アレはチャクラが籠っていない。返すことはできん。その上、もしアレを受け止めていたら、コレごと食われていただろうよ」
「そうか。アンタにとって、奴はそんなに厄介か」
「あまり煽るな。あの程度が厄介に見えるのなら、お前の目を疑うぞ」
「だろうな。オレにとってもそうだ。いつでも殺せたが、殺さなかった。どこまでいっても小物だと判っていたが故に」
オビートに貶されている間に【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を排出し続ける。苛伏四怨の術はダメだ。後ろの忍部隊に当たる。だから、地面を。
雷影も今か今かと突っ込んでいきそうになっていることだし、そろそろ始めても良いだろう。
「ナルト! さっき俺と一緒に戦った時の作戦覚えてんな? ──俺は穢土転生体じゃなくても食える! それだけ覚えといてくれ!」
「……。……もしかして」
「ああ! そう言ってんだよ! んじゃ、先行く!」
ヌル遁・太刀の術。
大太刀の術より短いソレで斬りかかる。
……オビートに、だ。
「オレの方に来るか」
「当然だろ! 俺の! どこに!」
斬る斬る斬る斬る。技術もへったくれもない乱斬りだ。乱雑な斬撃とかいて乱斬りな。その猛攻に、しかしオビートは冷静に対処する。写輪眼を使って当たらない場所にふらりふらり。うちは一族なら誰でもできる事をやる。
「マダラに勝てる要素がある!!」
「……ポジティブなのかネガティブなのかわからんな」
ヌル遁・ヌルチャクの術。突然太刀が何節かに別れ、オビートを後ろから襲う。屈んで避けるオビート。オビートってなんかユビートみたいね。
あ、普通にヌンチャクの扱い方なんて知らないので自分にも当たりまくってるけど【緑色の眩いぬるぬるしたもの】なので痛くない。くっつくし。
俺の攻撃を避けながら、けれどなんでもないかのようにオビートが口を開く。
「マダラ」
「なんだ」
「アンタ、コレと戦っていたのか?」
「そうだが」
「解せんな。何故すぐに殺さない。この子供の児戯が如き攻撃に苦戦するアンタでもないだろう」
「フン、だから煽るなと言っている。ならお前が殺せばいい。今すぐにな」
オビートの手が、俺の眼前に来る。
……マダーラが何の忠告もしないのはちょっと気になるけど、それが余裕からなら──遠慮なく!
「ヌル遁・須佐能乎!」
「なんだと!?」
一気にヌル遁アーマーが広がりを見せる。骨から鎧まで、その発生方法を完璧に再現したヌル遁の須佐能乎。はったりのハリボテだけど関係ない。目的はオビートを包み込むことにある。
硬直。
はン、どーだ! 俺の事興味ない、小物だ、って思ってたって事は、こうもマジマジと見た事は無かっただろ!
トラウマの塊で、正気度が激低い──死ぬほど発狂しやすい精神しといて俺に挑んでくるたぁ命知らず!
カカーシには悪いけど、ここでお前の夢も終わりじゃ!
「風遁・大突破」
ぶっ飛ばされる。久しぶりだなオイ。
これにより、【緑色の眩いぬるぬるしたもの】から抜け出したオビート。俯き、何度もせき込んでいるうえに──顔が強張っている。
「つか、結局邪魔してくるんだ」
「当然だろう。こうでもしなければお前に対し無駄な余裕を抱いたままだった。実戦と経験は必要なものだ」
「へぇ、余裕を抱いちゃいけない認定はしてくれてるんだ?」
「何度も言っているが、お前自身に価値はない。ひとかけらもな。だが、お前の能力は評価されるべきだ。その力、様々な用途が思いつく」
「素直にありがとうと言える勇気」
「お前は褒めていない。お前はゴミだ。素直にゴミだと言おう」
「ごちゃごちゃとうるさいわ! 重流暴!」
俯いたまま動かないオビートの横、こちらも腕を組んだまま動かないマダーラの前に着地して雑談をしていたら、雷影に怒られた。ものっそいエルボーをうちはの団扇で受け、後方に飛ばされるマダーラ。まぁあれ威力は消せないしな。
マダーラと目が合う。そのままぶっ飛んで行ったマダーラ。南無。
そんな事をした上で、雷影はこっちを見て、少しだけニヤりと笑う。なんだ?
「うちはマダラはワシらに任せろ! そうすれば、あの男はお前が殺す! そうだな!?」
「信用してくれんなら、すぐにでも!」
「よし、ならば! 影たちよ! ワシに続け!!」
えー。エーさんスッキリしてていいな。
そうなんだよな。ナルート視点だと融通の利かない頑固おやっさんなんだけど、元来パワー! の人だからそりゃ爽やかなはずだ。ヤー!
「それに、別にもう気にする必要もないし。──ヌル遁・堆鳬哩。飲み込め」
オビートを、包む。
彼は今頭を抱えてボロボロ涙を流している状態だ。肉体的ヒステリーか、あるいは幼児退行か。とにかくどうしても涙が抑えられない、どうしても思い出したくない事を思い出してしまうと言った様子で頭を振り続けている。
俺は。
今後の改心オビートの活躍なんて、気にしない。
そもそもカグーヤが復活しなければいいだけの話だ。だから。
ヌル遁・栄養分岐。
うちはオビトを、食べた。
……。
「ナイスだヨゴシ!」
「やったな!」
「これであとはマダラだけだ!」
……。
……うーん。
まぁそう上手く行けばいいよねぇ。
えーと。解の印ってこれで合ってたっけ。
解!
「ほう、自力で解いたか」
戦場は騒然としていた。
マダーラは腕を組んだまま。オビートも立ったまま。
そして、雷影は──。
……いない。
え、まさか?
「あ、マジやんけ。吐きだそ」
その巨体を吐き出す。
あびねー。食ったら消える、とかじゃなくてよかったー!
「なんだ、食べたものは消滅するというわけではないのか。つまらん」
「さっきから何を遊んでいるんだ……?」
「何、考えてもみろ。絶対の攻撃力。絶対の防御力。穢土転生体すらをも捕食し得る、ある意味人間種の天敵。そんなものが戦場にいるんだ──利用しない手はないだろう」
他に……は、いないな。おっけおっけ。
けど、雷影は戦闘不能に近いな。チャクラほとんど吸っちゃったから。
うわこえー。背後見たくねー。
「コイツが何もかもを食えるというのなら、忍連合とやらを全て食わせてみるのも一興かと思ったんだが……上手くは行かないものだな」
「そんな面倒な手を使わずとも、こうすればいいだけだ」
どす、と。
俺の胸から──杭が、出てきた。
「ふむ……これで死なないか。中々厄介な身体の作りをしている」
「だろう? 弱いくせに死に難い。なら、コレで遊びたくなるのは当然だ。違うか?」
「……オレは準備を進める。アンタがそうしたいのならもう少し遊んでいても良い」
「フッ、お前に気を遣われてはおしまいだな」
杭を抜く。
別に俺の体、尾獣とかみたいにチャクラでできてるとかじゃないしな。
いや痛いモンは痛いんだけどね。すっごく。
ダメだね。
遊ばれてる。勝ち目がないどころじゃない。俺、多分邪魔だ。
なんで雷影を奮割堤込で包んで、みんなの元に持っていく。
……白い目。幻術かかってた間は数秒だと思うんだけど、何したんだろうなー俺。
「ヨゴシ、お前……」
「雷影! ……チャクラがほとんど吸われている。回復しなければ……」
「ナルト! コイツは本当にお前の友なのか?」
「そりゃ……そう、だってばよ。オレだってヨゴシが雷影のおっさん食べるなんて思って無かったし……」
「不味いぞ。今のを見て、部隊に混乱と恐怖が広がっている。狂ったように泣き叫び、仲間割れをする者までいる始末じゃぜ。これは……」
「私が諫めてきます。この場はお願いします」
あーあー。
八尾になってるキラービーも、なーんも言わないでやんの。
事態を好転させたとばかり思ってたんだけど、コレアレだね。
ここまでお膳立てしたら、抜けるべきだったね俺。
そーだよ、ここ最終決戦だぜ?
お前がやるべきことなんて、十尾が本調子に入り始めたら対抗する、くらいだろ。
余計なことしてんじゃねーよ。利用されてんじゃねーよ。
「ナルト」
「……」
「すまん。俺、いんなかったみたいだわ」
「……そんな、ことは」
「あー、俺、マジでお前らの敵になる気はないからさ。一旦消えとくよ。安心しろ、って俺が言うのもなんだけど、もうすぐお前が本気で笑顔になれるようなもんが近付いてはいるからさ。それまで頑張ってな」
「消えるって……」
ずぶぶ……と地面に沈んでいく俺。
はー、猛省。弱点克服しないでこんな戦場に出てくるからそーなるんだよ。
……でも、ま。
何もしないってこたないけどね……。
***
「逃げたか。つまらんな、本当に」
「俺が殺さずにいた理由がわかったか……?」
「ああ。戦場に出てきた所で、何の意味もない。何かを変えようと、あるいは早めようとしている気配を見せていたが……結果、どうだ。五人の影の内一人は気絶。残された烏合の衆には混乱が走り、人柱力共の士気はガタ落ち……。得てして戦場にはああいう道化がいるものだが、アレは屈指だな」
「薄気味の悪い能力を扱う割に、本人が成熟していなさすぎる……本当に」
「なんだ、オビト。少しは効いているようだな」
「……アンタもあまり煽るようなことは言わないでくれ」
「フフ、わかった、わかった」
どこまでが幻術だったのか、など。
未だ強張ったオビトの顔を見れば、一目瞭然ではあるのだが。
ヨゴシはもう、深い深い土の中。
その貢献度は、如何に──。
(ただの)幻術だ……!