NURUTO   作:ONE DICE TWENTY

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阻止!

「──……? 何が起きた? 今のは……神威か?」

「似ているものではあるよ」

 

 真っ暗な空間。上も下も、右も左もわからない──そんな空間で、うちは……いや、六道マダラと対峙する。

 まさか、こんな所で役に立つとは、って感じだけどさ。

 ゲレルの石の力があった遺跡。あそこには、とあるものを口寄せする口寄せの陣が存在していた。俺はソレも飲んでいたんだ。あの頃は口寄せの術使えるって思ってたから。いや別に今も使えるんだろうけど、覚えてないし。王家の血もないし。

 

 さて――久しぶりの対面だ。

 最後の記憶は、「遊んでやる」と、「全力で来い」と言っていたマダーラまで。

 それ以降は全部預けた。まだ言葉も交わしたことの無い、彼、あるいは彼女に。性別なんかないのかもしれないけど。カカーシやミナート達に変な事してないか祈るばかりだな。

 

「昔、とある王家がゲレルの石っていう……なんだろね、高密度自然エネルギーの塊、みたいなものを有してたんだ。でも、それが原因で戦争が起きたりなんだりして、まぁ封印された。チャクラの実と同じようなものだよ」

「……いつの時代も変わらんな、人間は」

「うん。本当にそう。力が抑止になる、なんてのは夢物語だ。そして、ゲレルの石っていうのは、破壊や破棄ができなかった。強すぎたんだ。当時の人たちにとっては封印するのがやっとで、現代に至るまでソレに連なる一族が封印を見守って来た。当時の王家の血と共にね」

 

 これが、最後の賭けである。

 無限月読対策やいのーち、シカークと考えた色々は"外"に仕込んであるが──それとは別に、もし。

 

 ここで、できるなら。

 

「封印とは、生半なことをするものだ。いや……外道魔像も同じか。あるいはどの力も」

「そう。けれど、その力が悪用された時、あるいは暴走してしまった時を考えて──それを破棄する手段を構築していた」

「ほう?」

 

 結構話聞いてくれるよなマダーラって。六道モードだから余裕あるんだろうけど。

 俺の事をどうでもいい奴だと思っているから、か。それとも好きな話題だから、か。

 

「──時空間の穴。それを口寄せする術式。神威は瞳術によってそれを開く力でしょ? ()()口寄せは、常に開いているどこかをこの場に持ってくる術だ」

「では、ここは」

「そう……時空間の狭間。本来は王家の血でしか開かない……けれど、忍の祖である六道仙人の血なら、チャクラ関係の限定封印は全部開けるんじゃないかと考えた。黒ゼツもアンタも、その血は採取した。黒ゼツのは血と呼べるかわかんないけど……んで、どっちが反応したのかもわかんないけど」

「時空間の狭間……フ、成程。通りで何の感知もできないわけだ」

 

 褐返のマント。その裏側に、時空間の穴を口寄せする陣を写しておいた。

 その後はぜーんぶ丸投げ。オールインだ。

 

 名付けて解法・無間瞳。自分の二つ名に重ねたとかそんなそんな。

 まぁ最終奥義だし。

 

 あとは、処漉が。

 その発動に必要な血を、集めてくれるかどうか。マダーラに確実に当たるタイミングで、発動させてくれるかどうか。

 俺の中で忍術を見続けてきた彼ならば、やってくれるんじゃないかと……全幅の信頼を置いてみた。

 

 そしてそれは、正解だったわけだ。

 

「ちなみに俺を殺しても無駄ね。俺は術者とは言えないし、なんならこっから出る方法も知らない。時空間の穴から出るってなると同じ術式を使うのが常套手段だけど、もうその術式も覚えてないし、残ってない」

「道連れか。愚昧なお前にしては、良い考えだ。倒せないならば共に……フ、弱者としては最高の手段と言える」

「でしょ」

「──だが」

 

 マダーラと、目が合う。

 

「幻術で吐かせればいい──というのも、対策済み。うちは相手に幻術対策しないで挑むのは愚策だって、アンタが教えてくれたんだし」

「……眼球を」

「うん。幻術は本人が覚えてない事まで思い出させることができる。それで俺に陣を描かせる、なんてのもできる。俺が見たという事実がある以上、その可能性は捨てきれない」

 

 だから、眼球を取った。

 というか五感の全てを消してある。潰して。今の俺の体は【緑色の眩いぬるぬるしたもの】になっている。人間のヨゴシ君はもういない。ゲルまゆみたいなモン。

 

 これで幻術にはかからない。

 

「このオレを殺すために、随分と力を入れるな。何がお前をそうさせる? これからオレとこの空間で一生を過ごすことになって──生き返った死人のために、まだ先のあっただろうお前の人生の全てを捨てて。お前はこの世界に何を求める。何を守るために、そうまでしている?」

「……?」

 

 ん。

 ん-。

 ……ん-。

 

「いっつも難しいこと聞くよね、アンタ」

「難しいか? お前の支えは何かと聞いているだけだ。あのナルトは仲間だったか。柱間は里……扉間でさえも里。何か、あるだろう。お前の原動力。あるいは()()。お前を突き動かす、お前の根源ともいえる事柄」

「……無いかも」

 

 ナルートが友達だと、仲間だと、一緒に戦うと。そう言ってくれたことは嬉しかった。けどジャンプ主人公だしな、って思いが結構強い。サスケェ! はそもそも仲間としては認めてくれて無さそう。サクーラはなんか気遣ってくれて……えーと、あとジラーヤか? まぁジラーヤは……俺が原作を変えられるかどうか、そして約束を守るための話だったし。

 他も、戦ってた理由は特にないもんなー。この戦いに備えて力を溜めとく、生き残るために力を溜めとく。美味しい力を食べる?

 

 目的。また言われたね、それ。

 約束を守るのを目的に、って言い訳してたけど、それも破るために使っちゃったしなー。

 

「うん、やっぱ無いや。俺は目的なく、意味も無く力を揮ってる。何の原動力もなく人生を棒に振ったし、何の根源も無くアンタを道連れにした」

「……オレは、今まで数多の忍を殺してきたが」

 

 きょとん、とした目。その後、マダーラは額に手を当てて……大きなため息を吐いた。

 

「お前は道化ですらなかったか。あのオビトでさえ、熱というものがあったが……」

「ああでも、強いて言うなら」

 

 そう。

 強いて言うなら、ある。

 

「この世界が好きだから、かなー」

 

 NARUTOという漫画が。あるいはアニメが。映画が。

 単純に好きで。だから、戦うし。だから、策を講じるし。だから──行ってみたいと、そう思ったし。

 

「この世界が、好き?」

「そそ。この、常に争ってて、復讐の連鎖と、憎しみ合いにしか発展しない人類と、忍術と忍者と、世界を変えようと企むやつがいて、クーデターを起こす奴がいて、酷い人体実験をやる奴がいて、その被験者がいて、里を愛するとか言っておきながら壊すような奴がいて、恩師の命を奪うような奴がいる──そんな、あまりにも殺伐としたこの世界が、好き」

「……成程、成程な。そうか……そうか。お前に初めて会った時から何か噛み合わんと思っていたが。ソレを好むのであれば──お前は世界の敵だろう」

「自分で悪を作り出すのと、好むのとは違う?」

「当然だ。オレは争いを嫌う。それが為に無限月読を行う。争いが好きならば、このような面倒を起こすまい」

 

 ま、そうだよね。

 マダーラってこの世界が好きで、争いを無くしたくて、だから今の世界リセットしよう、次の争いの無い世界を造ろう、ってやってる人だし。

 本気で救世主を目指してる人だ。なら、このNARUTO世界が好きだと──つまり、NARUTOという漫画において起きた全ての争いや憎しみをも好きだと、死に際大好きマンだという俺は、到底受け入れられないだろう。

 

「ここでお前を殺しておく理由ができたな」

「殺せるの? 普通に抵抗するけど。そんで、殺した所で意味はないんじゃない?」

「時空間の狭間を開き、世界に繋げられるというのなら、同じく時空間の狭間から穴を開き、現実世界に繋げられる可能性はある。その可能性はゼロではない。お前に無理なことが、どうしてオレに無理だと言える」

「確かに。うちはって天才多いし、中でもアンタは頭一つ抜けてるし」

「だからここでお前を殺す。お前は危険因子だ。あるいは新たな争いの原因にさえなりかねん……!」

 

 さて――じゃあ。

 ホントに出られるかどうかはわからないけど、できるだけ時間を稼ごう。それが俺に残された、最後の役割な気がしている。気のせいかもだけど。

 

 ま、ここなら。

 人目も気にしなくていいし。周囲の破壊も、気にしなくていい。

 

「殺せるもんなら殺してみなよ……ヌル遁・無限倍化の術!」

 

 別名──バイバインの術。

 大きさに制限のない空間で、際限なく大きくなる【緑色の眩いぬるぬるしたもの】から果たして逃げ切れるかな──!?

 

 

 

 ***

 

 

 

「おい……どうなっている。マダラはどこへ行った?」

「……少し前、ヨゴシと交戦している最中に神威のようなものに飲み込まれ……消えた。恐らくは、時空間の穴に入ったんだろう」

「アイツ、そんなすげー術使えたのか。それで……そのヨゴシは?」

「マダラと共に……」

 

 神樹の根本。そこには、それなりの人数が存在していた。

 はたけカカシ、うちはオビト、春野サクラ。千手柱間、千手扉間、波風ミナト。マイト・ガイと、その班員たる二人。大蛇丸率いる鷹の面々。薬師カブト。そして明らかに今までとは違う力を携えた、うずまきナルトとうちはサスケ。

 うちはオビトにへばり付いていた黒ゼツという存在は今引っ込んでいる。ゆえ、オビトの自由も確保されていた。その上で、扉間がオビトとカカシに何ぞかを問うている。

 

 サスケは今来たばかりだ。大蛇丸と、そしてカブトを連れて。

 

「兄者、どうだ。感知は出来そうか?」

「……無理だ。少なくとも周辺五十km範囲内にはいない」

「そうか。儂からの結論も不可能を出す。二人が消えた場所からも痕跡を探ってみたが……何やら特殊な口寄せが用いられている。その鍵たる何かを有さぬことには、これをこじ開ける事は適わないだろう」

「……自身ごと、異空間に封印する術、か」

 

 ドゴッ、と。うずまきナルトが地面を殴る。

 当然だろう。約束をしたはずだ。共に戦うと。それ以前にも、だ。

 

 それを彼は、あまりにも易々と破った。

 

「マダラが……いなくなったなら、この戦争は終わったの……?」

「そうさな。まだ向こうで戦いを行っている気配がある。恐らくはマダラの奴が残した雑兵であろうが、その掃除には行くべきだろう。加え、コレも切り倒さねばならん」

 

 ただ──疑問は残る。

 それは、ナルト、サスケ共に精神世界で会った存在。即ち六道仙人の言葉だ。

 

 力を託すこととは別に、世界を蝕まんとする危機が近くにあると、そう言っていた。

 それがこれではないのなら。

 

「──サスケ!」

「わかっている。そう叫ぶな」

 

 突然、二人が声を上げる。千手兄弟が何も感じていないというのに、二人がある一点を、注意深く見つめる。

 

 そこから、ゴボ、と。

 玉虫色が零れ落ちた。

 

「!」

 

 どろり、どろり。

 ごぼごぼ。

 粘性のある水音を立てて、空間の罅から液体が流れ出てくる。

 

 そして──そこから。

 

 腕が、生えてきた。

 

「あれは」

 

 腕は何かを探すようにジタバタと動き、そして地面を確りと掴む。その後、もう一本腕が出てきて、空間の淵を掴み。

 思い切り力んで──びしゃ、と。

 白い肉塊が世界へ戻り出でる。

 

 腕の生えた肉塊。

 それはある程度痙攣したあと、大きなふくらみを見せ。

 

「──ふ……ふふ、ふははははっ! ああ! 死ぬかと思ったぞ、ははは!」

 

 マダラの、顔になる。

 玉虫色に濡れた彼の体は、しかしボコボコと音を立てて再生する。その姿は凡そヒトではなく、だからこそこの場にいる誰もが攻撃を躊躇した。

 

「ッ!」

「ははは……だろうとは思っていた。オレを殺す、この上なき機会だ。お前のように卑劣な男なら、必ずそうすると!」

 

 二代目火影以外は、だ。

 肉塊であるなら、マトモに動けぬのなら今のうちに、と斬りかかった彼の攻撃は、しかし腕に出現した錫杖によって阻まれる。そして反撃として撃ち出された求道玉に当たる──かに思われたところを、その姿の消失によって事なきを得る。

 四代目、波風ミナトの飛雷神の術だ。

 

 マダラは、未だ玉虫色の液体の零れる穴から這い出て、そして起き上がる。もうそこまでできるくらいには再生していて、しきりに楽しそうに笑っている。

 

「ヨゴシは……どうしたんだってばよ」

「殺した」

 

 目が見開かれる。それはナルトの。

 そして、カカシの。

 

「……と、言えれば良かったのだがな。果たしてこの生物は死ぬのか怪しいな。首を落とせども全身を圧し潰せども死なぬとは、流石のオレも手を焼いたわ。結局殺す手段は見つからず、こうして幻術に嵌めるに終わっている。どうだ、うずまきナルト。安心したか?」

「幻術……」

「さて、お喋りはこれくらいにしよう。オレにはやるべきことがある。そして、そのために」

 

 誰も、何も構えていなかった。否、ナルトとサスケだけは警戒していたけれど、していたのはマダラに対してのみで、そちらを見る事をしていなかった。

 

 悲鳴と、何か黒いものが全員の前を通り抜けたのは一瞬の事。

 

 背後で倒れるのはうちはオビト。

 マダラの手にへばり付き、ソレ──輪廻眼を渡すのは、黒ゼツ。

 

 渡ってしまったのだ。最後の欠片が。

 

「サスケ!」

「おう!」

 

 ゆえに、二人は力を揮う。

 それを止めるためにと渡された力を。

 

 未だ、玉虫色の液体は、排出され続けている──。

 

 

 

 

 しかし、二人の努力空しく、両目を手に入れた六道マダラは二人を易々と止めてしまう。

 その足止めに手間取っている間に六道マダラは天へと赴き。

 

 目的を。その術を。

 無限月読を、発動させた。

 

 さて。

 ここからが、マダラの、そして黒幕の誤算である。

 人類全員を幻術に嵌め、幸せの夢に導く。神・樹界降誕により呼び出した神樹はその場にいた忍たちを繭に収めようとして──何かに、阻まれた。

 

 各地で悲鳴が上がる。嫌だ嫌だ、気持ちが悪い、助けてくれと。

 おかしいと気付けるだろう。マダラは地上を見て──絶句する。

 

 見渡す限りの全て。恐らく人間がいるのだろう、いや生物がいるのだろう全ての場所に、琥珀のようなものがある。

 黒い琥珀。ぬるりとした見た目の。それは。だから。

 

「──まさか」

 

 ヌル遁──別名を、【緑色の眩いぬるぬるしたもの】。

 生物の全てを包み込む、無数の目と、無数の口と、悪臭と歯と、発狂を引き起こす化け物の膜。

 老若男女問わず、人間動物問わずソレに包まれ、ある者は気絶し、ある者は金切り声を上げ。ある者は何もかもを忘れ、ある者はボロボロと泣き出し、あるいは怒り出し。ある者は途方もない恐怖を覚え、ある者は幻覚を見て、ある者は衣服を脱ぎ始め、ある者は何かに心奪われ、ある者は固まり、震え、痺れ、ある者は──。

 

 その場にいた全てが、発狂していた。

 

 そうだ。これこそが奈良シカク、山中いのいち、そしてヨゴシの三名が考え出した無限月読対策。

 幻術に掛けられる前に覆って、もっと酷い事になっとけばいーじゃん計画──!

 

 神樹の繭は、それを包もうとしない。チャクラを感じ取れない薄膜。この世のものではない薄膜。

 表裏共に、内外ともに無数の目を走らせ、点滅し、口を開き、悪臭をまき散らすコレを──回収しようとも、取り込もうとも、思えない。

 

 ゴボッ、と。

 一際大きく、玉虫色の液体が飛び出た。

 

「……あー。あ? おー。……ハハッ、なんだ。イザナミじゃなけりゃ、がんばりゃ解けるもんなんだな、幻術は」

 

 液体についた口が、人々を覆いこむ口が、そんな軽口を叩く。

 瞳はあるが、無限月読に罹っている様子はない。ただ、数多の化け物がマダラを向いて、ニヤニヤと笑う。

 

「しっかし……死ぬつもりはあったんだけどね。あるいは代わるつもりがさ。けど、どーしてもって渡してくれちゃって……今まで疑ってた事に罪悪感すら覚えるよ。ごめんな」

「邪魔をするな……オレは、今から救世主に……」

 

 玉虫色の液体と漆黒の液体が繋がる。重なる。

 美しきヒルだ。それは、あの時の。けれど、その背には……各地の人々から伸びた、無数の線が繋がっている。

 それはまるで、尾のように。

 数えきれない量の尾が、存在している。

 

「俺はさ、ちゃんと伝えたんだよ。コレに包まれる、なんてことになったらどーなるか、って。発狂して、変なコトするようになるよ、しかも臭いよ、ってさ。ハハ、あの二人なんて言ったと思う? "その方がマシだ!"って……結構外道だよね。ま、神樹の養分になるのも白ゼツになるのも結構外道だとは思うけどさ。変なの引いたり、長期になったりしたら取り返しつかない事にもなりかねないのに……ねぇ」

 

 蛭が笑う。

 無剣鐘のヨゴシが笑う。

 

「そんなどうでもいい話を聞くつもりはない! 早くコレを解け!」

「まさか。ヤだよ。何のために俺が逃げたり出てきたりを繰り返してたと思ってんの。大変だったよ、この大陸にヌル遁を走らせまくるのは。まー忍界大戦始まる前から遠方には仕込んでたけどさ」

 

 色んな所に行って、少しずつ【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を零して。

 色んな戦場に赴いて、【緑色の眩いぬるぬるしたもの】をまき散らして。

 

 そんな遠くの遠隔操作はできないから、地面の下で全て繋げて。

 

 大変だったよ? と。

 ヨゴシは、首をかしげる。ヒル故に首と言っても微妙だが。

 

「残念ながら、アンタの夢は終わりだ。うちはマダラ。そして、黒ゼツ。大筒木カグヤは復活させないよ。なんたって──」

 

 蛭の体から【緑色の眩いぬるぬるしたもの】が噴き出る。

 それは瞬く間に神樹を覆っていく。高く、高い、高く高く高い高い神樹の全てを覆い包んでいく。

 

 そして、その先端から。

 ぐじゅるぐじゅると、咀嚼音が響き始めた。

 

「まー、別に俺は、その後の事にまで口を出すつもりはない。また何万年と時をかけて復活を目論むことまでは止めない。だけど」

 

 六道マダラの背に、玉虫色があった。

 それが一瞬にして開花する。そして彼を縛り上げ、包んでいく。

 

「ああ、もう下策は犯さない。解法・処漉には目があるからな。そこに幻術をかけたんだろうけど、それはもう起きない。アンタのおかげでようやく言葉を交わせたんだ。はは、俺が思ってたより純朴な奴だった。……そんでさ、話し合って、聞いたんだ」

「こ、の……!」

「今一番食べたいもの。外道魔像……十尾だとばかり思ってたんだけど、違うらしい」

 

 マダラ。その身体から、何かが飛び出ようとする。

 けれど、逃がさない。

 粘性のある液体は、それを掴んで離さない。袖の切れ端のようなそれを──ニタニタと笑って、噛みついて。ソイツを、見つめて、離さない。

 

「アンタら二人。美味しそうらしいよ?」

 

 マダラの視界が閉じて行く。

 本体に繋がっていなければ咀嚼は出来ない。そう踏んでいたはずだった。それは本人も認めていたはずだった。

 

 だというのに、何故。

 その身体は、蝕まれているのか。

 

「ヌル遁・ヌル分身、糸間意送の術……っていうらしい。俺の発案じゃないけど。確かにさ、俺も馬鹿だったなーって。別に見える糸を使う必要はないんだって、なるほどーって。見えないくらい細い、軽い、薙がれても絡みつくような、逃げられても伸びて行くような──蜘蛛の糸のようなもの。確かにこれなら繋がってる。なら、食べることができる」

 

 神樹が食われていく。その花から、そして幹、根。

 

 己。

 

「ヌル遁・堆鳬哩。──いただきます」

 

 そこに、何の言葉も、断末魔も、意思も。

 

 米粒一つ残さずに。

 

 

 

 ***

 

 

 

「う~~げっ、げほっ、げほっ……な、なんだったんだってばよ、今の……う、まだ気持ち悪い……」

「今のは、ヨゴシの……」

「服の、中にまで入ってきて……ほんとしんっじらんない……!」

 

 これはねー。

 やば案件です。

 

 薄膜にしたつもりだったんだけど、中結構ヌタヌタだったっぽくて。

 主に女性陣の怒りがやばです。

 

 今現在地下にいますが、クォレハ楼蘭引き籠り案件。

 ただ楼蘭にも同じような無限月読対策やってあるから多分みーんなかなり怒ってる。セ、セ、セセクハラちゃいますよ! 実は【緑色の眩いぬるぬるしたもの】に感触あるとかそんなことは決してなくて、ええ!

 

 えー、まぁ術教えてくれの話はナルートが火影になってからとかでいいだろ。あるいは永遠に約束しておくとかで。 

 

 ね?

 

 ──ヌル遁・緊急回避!

 

「しゃんなろっ! あ、やっぱりいた!」

「ナイスサクラちゃん! サスケ、回り込んでくれってばよ!」

「まぁ……オレも、言いたいことはある」

 

 えー、もう木ノ葉には近づきません。

 ホントは全員の様子とか確認しに行きたいけど、そう言ってられる状況じゃなくなったので、逃げます逃げます。

 

 十分だろう。

 マダーラも黒ゼツも十尾も食べたんだ。戦争貢献度で見たら流石転生者って感じじゃね? 生存者も多かろうよ!

 だから──まぁ、何。

 

 第七班のカッコイイとことか、こっから起こるかもしれないナルートとサスケェ! の激突とか、ホントは見たかったけど、無理だろうから!

 

「またどっかでな!」

「逃がすか!」

 

 これにてYOGOSHI~湿布雨田~完結!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……なワケ。




※最終回じゃないです。
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