NURUTO 作:ONE DICE TWENTY
中忍試験本選の日。
この一か月のほぼすべてをアカデミー内で過ごした俺君。アカデミー内は至極平和だった。子供たちがワーキャーしてて微笑ましいし、教員は良い人揃いだし。ミズーキという膿を排出したから、というのもあるんだろうけど。あるいは裏で色々やっちゃってた教師らに、良い見せしめになったんだろう。
なんだろうね。
割と……心地良いな、とか思っちゃってる自分がいる。
正直俺は鉄壁に近い。幻術にだけ特別耐性が無いので気を付ける必要があるものの、物理は基本無効で遁術もまぁまぁ防げる。無敵とは言わないけど、防御力だけで行ったら結構なトコにいるはずだ。
つまり……死に難い。
ペイン襲来があっても、どうにかなる自信はある。少なくとも俺の命単体は、だけど。
だから、できるだけ情を持たずに関りを広げずに、この木ノ葉の里に身を埋める……ということができたのなら、それでいいんじゃないだろうか、って。
原作厨だし死に際大好きマンだから救いたい! とか殺したい! とかも無いし。
じゃあなんでNARUTO世界に転生したんだよって……前も述べたけど、好きだからだ。好きな場所に行きたいってそれだけの動機。
まぁ、だから。一応。
たとえば──カブートの件とかね。
後日全身ヌル遁アーマー状態で現場を見に行ったら、大量の【緑色の眩いぬるぬるしたもの】だけがその場に残されていた。死体なんかは無かったのでちゃんと逃げ果せたんだろう。
また、放出した分の【緑色の眩いぬるぬるしたもの】も減ることなく量を確かめられたので採取もされていない。まぁスポイトとかピペット程度じゃ刺さりもしないからな。
危険視すべきは時空間忍術……特に神威あたりはやばい可能性があるので警戒かなー。どーやって警戒すんのかわかんないけど。
んでここで唐突に話をぶった切るんだけど、なんでそんなことをするか、そもそも俺が今どこにいるかって話になって来て。
「あれ……ヨゴシじゃん。すっげー久しぶりだな。元気してたか?」
「まぁっずい」
「ん? 何か変なものでも食べたの?」
オイオイオイオイ、なんで俺演習場になんか来たんだよ。いつも通りアカデミーでゆっくりしてろよ。
……なんで来た、って。そりゃアカデミーもお祭りムードで流石に忍術練習する空気じゃなくて、静かにできる場所を探しに来たってそんだけなんだけど。
そうじゃんな、本選。その前に、ナルートとヒナータがイチャイチャするのがあるじゃんな。
いや忘れてたわけじゃないんよ。原作の流れは全部覚えてるし。ただ単純に、やりたいこととやっちゃいけないことが被ったってだけっていうか。
「……ヨゴシってば、なんか忍術覚えられたか?」
「いや全く。チャクラ難しすぎ。正直お前の事舐めてたけど今めちゃくちゃ尊敬してる」
「そっかそっか~! ……ん? 舐めてた?」
「チャクラ量に物言わせたパワー馬鹿だって思ってた」
「ひっでぇ……」
心なしか。
いいや、明らかに元気が無い。知っている。だってここでヒナータに元気づけてもらうんだもん。それによってサクーラでなくヒナータのヒロイン性が増すんだもん。俺なんかが汚して良い場面じゃない。ヨゴシだけにね!!
じゃなくて。
「お前さ、中忍試験だっけ。すげーのに出るらしいじゃん」
「あ……うん。まぁな。すげーのに、出るんだってばよ」
「それ終わったらでいいからマジで術一個教えて欲しい。俺未だに変化も分身もできないんだよ。落ちこぼれオブ落ちこぼれなんだよ。そろそろ足切りされるんじゃないかって思ってるんだよ」
「……でも、オレなんかに教わるより……」
「じゃあ聞くけどサスケが教えてくれると思う?」
「……多分無理」
「サクラには……まぁちょっと頼み難いんだよな。忙しいっぽいし。当然カカシには無理。アイツ上忍らしいじゃん」
「それ以外の友達いねーのか?」
「いねーからお前に頼んでんのさ」
待て待て、そろそろ待て。
とりあえずなんか話持ちだそうとしたのが悪手オブ悪手だった。なんだその約束。木の葉丸かよ。原作に無い展開取りつけてんじゃねーよ。
とは思うものの、口は止まらない様子。
ごめんなヒナータ。ちょっとだけ待ってな。
「俺はさ、結構戦えるんだ。ナルトが思ってるよりな。でも忍術はからっきし。まだたったの一か月って思うかもしれないけど、マージで手応えが無い。できる気がしない。だからさ、お前結構すげー奴なんだよ。手裏剣に変化したり分身したりなんだり。俺にはぜってーできねぇ。練習次第、努力次第だって言ってくれるよ、先生たちは。でも絶対できない自信がある。だって俺自分が思いついた事以外への努力とかできねーもん」
それは──前の人生で知っている。
何十年、そうだった。そういう奴だった。
だから。
「もっかい言うけど、お前結構すげー奴だよ。超すげー奴じゃないかもしんないけど、少なくとも俺は尊敬してる」
「……そっか」
「んでまぁ、この通り俺は一刻も惜しい状況でさ。他んとこ行くから、お前はもうちょいここにいな。心の整理がつくまで。あるいは──良い出会いがあるまで」
「それってどういう」
ことだってばよ、まで聞かずにその場から消える。
あ、瞬身の術はできた。これ別に高速移動してるだけだし。そういうのはまぁできるんだよなー。いやロック・リーみたいなすげー体術はてんで無理なんだけど。
後方、練習用木材の裏にヒナータの気配は感じていたし、あとはヒナータがナルートを元気づけてくれることだろう。
……俺の言葉が余計になっていないことを祈る。
ついに本選が始まった。
その試験会場に俺はいない。当然だ。あんな危ない場所にいて堪るか。
「楽しみじゃな」
「ウン」
そのはずだったんだけどねー。
なーんで俺は三代目の膝の上にいるんだろうねー。
「ヨゴシ、よく見ておけ。あれが、忍世界の次代を担う者達じゃ」
「……だろうね」
なんかね、あの演習場を出たあと、んじゃアカデミーに籠るかーなんて思ってた俺の前に暗部が現れたんだよね。さしもの俺もコレやべー奴じゃんって思って即座にヌル遁アーマー纏おうとしたんだけど、気付いたら会場にいたんだよね。
……俺の弱点、追加。速過ぎる相手且つ害意の無い相手危険。感知系めっちゃ鍛えよう。
なんでも三代目が呼び寄せたとかなんとか。
隣に風影(偽)もいるし、大名とかが集まってるっていうのに場違いなガキ一人がここにいる。あと右手前の暗部さんアンタカブートだね。発狂から立ち直れたんだね。健忘症引いてくれてると嬉しいんだけど。
んでまぁ、流石に逃げらんなウェイと思ったから、今は大人しく座ってる。
一回戦はネージvsナルート。
特に変わりない……原作通りの展開。まだネジが傲慢だった頃。
ネジ、なぁ。……情は、別に。というかあのシーンは大事だったと思うし。それが憎しみでなく、怒りだと。
……どの道、命の取捨選択なんて趣味の悪い事はやめよう。そも、あの場に俺がいるとは思えないし。
さて、もうそろ終わりだ。
ナルートが九尾チャクラを解放し、ネージが段々追いつけなくなっていく。
運命。それは確かにある。原作と言う名の運命が。それに逆らっているのは、あるいはネージの方だ、というのは皮肉かね。
「やる気は出たか?」
「エ?」
「落ちこぼれと言われようと……やりようによっては、どんな壁も超えていける」
「……俺はナルトのこと落ちこぼれだ、なんて思ってないよ」
むしろドエリートだって思ってる。最期の最後までパワー馬鹿ではあったけど、トビラーマも認めるくらい機転が利くし、発想力も高い。何より──努力ができる。
十分だろ、それで。
「……そうか」
「安心して。ま、最初っからやる気はあるよ。得意、を見つけられてないだけで」
「成程の」
さて……このままいくと、ウォロチマールに直接対面することになりかねん。
流石にウォロチマールの興味は三代目に向くと思うんだけど、何かの間違いでウォロチマールの両腕を封印できなかったり、三代目が死ななかったりしたら大問題だ。だからここはトイレに行きたい、とでも言って逃げるのが正解。
正解、なんだろうけど。
「……」
めぇっちゃ見られてやーんの。
風影……もとい、ウォロチマールから。
「火影殿」
「なんじゃ、風影殿」
「……その子供は」
「ヨゴシ、という。里の子供の……ある意味で、代表者と呼べる存在じゃろう」
波の国の子供です僕。
オイオイオイオイ、やばですやば案件。がっちり認知されたぞどーする。
……このままだと四紫炎陣に取り込まれるまでないか?
眼下ではシカマルテマリの戦いが始まっている。この後遅刻だぞサスケェ! が来て、我愛羅と対決する……んだけど、途中で音と砂が、って流れ。
それまでにどうにか抜け出すべきだ。ここの流れは非常に繊細。死んだところで関係ない音の忍やいっぱいいる砂の忍はともかく、木ノ葉には重要メンバーが多すぎる。
えーとえーと。
「三代目」
「そら……試合が動くぞ」
「アハイ」
えっとねー。
これは。
……諦めるか。
とうとうガーラvsサスケェ! の試合が始まった。
サスケェ! が千鳥を出したら幻術に備えなければならない。涅槃精舎の術。広域幻術。
「ヨゴシ、先ほどから何をそわそわしておる」
「トイレ」
「……素直じゃな。じゃが、もう少し我慢しろ。試合が終わるまでな」
ダメか。
その場を離れたいときに使う言い訳第一位のトイレ行きたいでも離れられないとなると……。
これは。
……なりふり構ってらんないね。
幻術解除の印を組んでおく。当然怪しまれるけど、知ったこっちゃない。既に怪しまれているようなもんだろ。
「おヌシ、何を……」
「ここは危ない国だよ」
馬鹿、双方警戒させるようなこと言うんじゃありません!
──ここで三代目が死ななかったら影響がやばすぎるでしょ。ウォロチマールの両腕が死ななかったらやばすぎるでしょ。どっちも影響力の塊なんだから、それを左右させるようなことは。
試合会場からチチチ、という鳥の鳴き声が聞こえてくる。
いいね、試合展開が早いよ。ってことは。
「──アナタ、やっぱり
それは小さな呟き。三代目にすら、あるいはその側近にすら聞こえていないだろう小さな小さな声。
けど確実に、俺の耳に入る言葉。
ゾッとする。
「解」
視界に鳥の羽が見えた瞬間それを解く。
直後投げられた煙玉。
ドン、と押し出された身体は──しかし掴まれる。
押し出したのは三代目。
掴んだのは風影。
「暴れないのか」
「子供が暴れて放してくれるんなら最初から掴んでないでしょ」
「物分かりの良い子供だ」
三代目の首元に突きつけられるは苦無。俺の体には何も当てられていないが、衣服を掴まれているので上手く抜け出すことができない。
そのまま屋根上に移動させられる。
同時、現れた音と砂の暗部達が木ノ葉の忍と戦い合う。遠くの方では三つ首の大蛇の口寄せ。あ、そういえば口寄せは覚えたいんだよな俺も。アレって契約さえできれば使えるんでしょ? 親指噛むの痛そうだけど。
俺の場合……何になるんだろ。【緑色の眩いぬるぬるしたもの】関連と考えると、カツーユ系統の奴だよね。
あ、音の四人衆。
もしかしないでもそのまま四紫炎陣使う気ですか?
あっ。
「これで、逃げられない」
「確かに。これって触ったら燃えるんだっけ?」
「そうだ。よく勉強しているな」
「ああフツーに褒めてくれるんだ」
風影偽装ver.のウォロチマールって扱い難しいんだよな。
そうでなくともウォロチマール自体が結構……なんつーんだろ、独善的に優しいというか。実験体として、ではあるものの、各里の忌み子や捨て子を集めて保護したりちゃんと愛したりしてたし。やり方が狂ってるだけで愛情はあるというべきか。
木ノ葉崩しだって、ウォロチマールなりに……変えたかった、って話だろ。そりゃ強さで名を示してどこよりも優秀って言われてた自分の里が、戦争終わった途端衰退して停滞して……ってのを間近で見たら、思う所はあるだろう。それで戦争起こすのはちょっとアレだけど。
とかなんとか考えてるうちに色々進む。
中国の早着替えのパフォーマンスの奴みたいにパパっと顔の変わったウォロチマール。彼は涙を流し、手を刺し、コトを引き起こした理由を語る。……俺を掴んだまま。
そして、そのままだ。
そのまま──穢土転生の術が行使される。流石にこれは印を組まないといけないので俺は降ろされたけど、まー動く理由もない。三代目の方に行っても危ないだけ、というのは三代目自身がよくわかっているからだろう、こっちへ来い、という動作さえしなかった。
穢土転生。作中終盤では使われ過ぎてハイハイエドテンみたいな扱いになってたけど、禁術オブ禁術且つ超高等忍術。生者の肉体を生贄に死者の魂を口寄せして蘇らせるってな忍術だ。というのも、どーにもNARUTO世界のサンズ・リバーはちゃんと存在しているらしく、魂の休息地みたいな場所がマジであるっぽい。それはカカーシやシカマールの体験からわかること。
で、割とみんな死んでもその先へ行かないみたいなのだ。結構、ずっと留まってる。未練なんか無いだろ、って奴まで留まってる。
思うに魂ってチャクラと同じくエネルギーそのものだから、消費されるまでは留まり続けるのかなって。
「ここで見てなさい。時代が一つ終わる様を」
呼び出されたのは初代と二代目。柱間ァ! と扉間ァ! である。ただし意識無し。いや、あるにはあるけど表に出ない、というべきか。
「アンタは、何もしないの?」
「来るべき時が来るまで」
「そうか。じゃあさ」
ああ、またやるべきじゃないことを。
やっちゃいけない事だって何回も言ってるだろ。
──別に、声に出しちゃぁ、いないか。
「俺とやんね?」
返事は、蛇だった。
「水遁・水陣壁!」
「……へぇ?」
当然ヌル遁だ。そしてそれは、水陣壁よりも高い破壊力で蛇を弾く。
この【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を見ても──予想通り、大蛇丸は発狂しない。だろうね、この人正気度めっちゃ高そうだもん。数々の狂気的な所業も正気のままやってるでしょ。
けど、それはある意味で戦いやすいということでもある。
大蛇丸は腕までなら壊しても良いんだ、今の俺がどこまでできるかを試すに丁度いい。
「風遁・大突破」
「水遁・水牙弾!」
押し寄せる風の圧力を、回転する【緑色の眩いぬるぬるしたもの】で破る。さしもの大蛇丸も己の術を押し返してまで迫りくる水牙弾に驚いたのだろう。目を見開いて回避行動を取る。
まぁ【緑色の眩いぬるぬるしたもの】の破壊力は相当だ。術者の力量とか関係なく凄まじい破壊力を持つから、俺のチャクラ量とかで俺を計っていると驚くだろう。
「驚いたわ。アナタ、そこまでの忍術が使えたのね」
「勉強してるから」
「そう。──なら、こっちからも仕掛けるわ」
ヌル遁アーマーを纏う。
現時点で俺の速度はかなり低い。それは三代目の部下に連れ去られて理解したこと。
カブートにも簡単に回り込まれたしな。
それを補うのがヌル遁アーマーだ。全方位、どっから攻撃が来ても問題ない。
ただし。
「風遁・風切りの術……アラ、随分と固いわね、それ」
「まー防御力がウリなんで」
ぶっ飛ばされながら言う。
衝撃は吸収できても、俺の体がチビゆえに軽い、というどうしようもないデメリットはどうにもならない。勿論落下時の衝撃も吸収できるけど、ポンポンポンポン手毬みたいに飛ばされてちゃ戦闘もクソもない。テマリは可愛い。
幸い一か月間の訓練によって三半規管はかなり鍛えられているからこの程度で目を回したりはしない、んだけど、【緑色の眩いぬるぬるしたもの】がチャクラを断つって性質のせいで吸着もできずにマジでぶっ飛ばされ続けるしかないのが苦しい。
部分的に解除する、とかしたらそこ狙われそうだし。
だからまー、飛ばされながら攻撃するっきゃない。
「水遁・千殺水翔!」
「……秘術?」
天泣と同じ要領で口から幾つもの【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を飛ばす。
幾度かのカチ合いでこちらの攻撃力は察しているのだろう、大蛇丸はそれを受けることなく躱すことで対処していく。尚、さっきから言ってる術名は勿論全部噓っぱちだ。ヌル遁をそれっぽい形に飛ばしているに過ぎない。
「木遁・樹界降誕」
突如出現するは樹海。初代の穢土転生体が使った木遁だ。
……それも試しておくべきか。
「水遁・水龍弾!」
標的を大蛇丸から未だ成長し行く樹海に変えて、大量の【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を撃ち出す。
かなりの強度を誇る木々。けれど、ヌル遁はそれらを容易く貫いた。
ふむ。やっぱり破壊力は十二分だなぁ。
とか考えてる俺の前に大蛇丸が現れる。
その手にあるのは──げ、ワンチャン不味いぞ。
「まさかそっちの援護に行くなんてね。興味が無いものだと思っていたけれど……」
「水遁・波乱万衝!」
アニオリ術だけど便利そうだった奴!
直上にカチ上げた【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を俺を含む周囲に流し、滝のように全方位を押し流す。そして。
「ヌル遁・塗流槍!」
口から巨大質量の【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を吐き出し、大蛇丸へ攻撃する。それを難なく避けた大蛇丸。避けられたヌルー槍は奥の樹海に激突し、そこに巨大な穴を穿つ。
「木遁も易々破壊できるその忍術……少なくとも水遁ではないわね……」
「ああわかるんだ」
「ええ、わかるわ。そういうものを、ずっと研究してきたのだから」
んじゃもう隠すことでもない。
どうせ三代目もここで死ぬんだ。もうちょいやってみよう。
「──口寄せ・猿魔!」
「!」
大蛇丸が樹海の方へ振り向く。
口寄せ術。……いや、今は良い。それより、ちょっと試してみたいことがある。
イルーカとの訓練の際、俺は俺の形をしたチャクラをその場に留めておく、ということができた。体外放出の苦手な俺にとってかなりの進歩であると同時に、使い道がほぼ無いと思われたソレ。
けど──ならもっと単純に考えりゃあいいわけだ。
腕をピンと伸ばす。
それに纏わせたチャクラを少しずつ残して行って、先端が手の形の、長い長い棒状チャクラを作り出す。子供の腕の太さだ。そこまでの大きさじゃないが、長さはまー十分。
そして内部にたっぷりの【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を詰め込む。最後に掌の形で蓋をすれば──ハイ、完成。
忘れがちだけど、【緑色の眩いぬるぬるしたもの】はクソ程重い。俺が扱う時だけめちゃくちゃ軽くなるってだけで、ただそれが落ちてくるだけでもかなりの衝撃になるくらい重い。
だからまー、鏡合わせ、シンメトリーだよな。
「変化・金剛如意!」
「──ヌル棒」
うわ、なんてカッコつかない名前。
今度もっとかっこいい名前を考えよう。
「それが何か、聞いても?」
「ただのクソ重い棒だよ」
「そう。それじゃ」
来る。
そう思った時には、首元に剣があった。剣。
草薙の剣。──ワンチャン不味い剣。
速さ勝負はダメだってわかってたのになー。
ジ・エンドかね?
「ヨゴシ!」
「ええ──来ると思っていましたよ、先生」
あー、ほら。
こうなるんだ。だから俺は余計なんだ。
なら──そっちは任せて、こっちをやるか。草薙の剣よりは良かろうもん。
「三代目、弟子との決着は任せた」
「な──待て、ヨゴシ! その二人は!」
「余所見をする余裕があるのですね」
三代目の金剛如意による突き。背後からの急襲だったにもかかわらず草薙の剣でそれを受けた大蛇丸は、ようやく来た、とばかりの表情を浮かべている。
だから、俺は猛ダッシュだ。三代目に入れ替わるようにして樹海の方へ。彼の制止など聞いてない。
向かうのは──二人。
初代と二代目。
死ぬほど格上ではあるものの、どちらも本人の思考ではない上に特異な術を使わない──木遁を除く──存在。
なら、保つことはできる。勝てないだろうけど。
「……」
「……」
何も言わない、何も言えない二人。
樹海に入ってしまえばまーまーこっちのものだ。だって見えない。これなら、暗部にも、音や砂にも見えない。
見えないなら──全部を出せる。
「口寄せ──じゃないけど。ポーズは必要だよね」
痛そうなので親指は噛まないし特に巻物を出すわけじゃないけど、地面には手を突いて。
樹海の全てを覆い尽くす量の【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を出した。
まぁ、何?
波の国出身だからさ。
狂気の山津波にて──みたいな?