NURUTO   作:ONE DICE TWENTY

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できることとできないこと。

 アレは……何かしらね。

 

 師の金剛如意を草薙の剣で弾きながら、樹海に発生した巨大生物を見て大蛇丸は考える。

 黒く輝く液体。無数の目を持ち、時折口を開いては悪臭を放つ未知の生物。

 

 はじめ、水遁だと言い張って使っていた時は、生物だとは思わなかった。黒い水遁。驚異的な破壊力と貫通力を持ち、少なくとも己の術では防ぎ得ない──それ自体が早々にない事であるが──忍術。

 数々の高等忍術を扱う──ようにみせかけて、それらにチャクラは練り込まれていない。確実に血継限界、あるいは秘伝、口伝の類。もしくは特異体質だろう、とアタリをつけた。

 その最中に取り出した、本人曰く「クソ重いだけの棒」。

 チャクラの型に先ほどまで使っていた黒い水を入れた……たしかに「だけ」と表現するだけはある、なんの絡繰りもない棒だと、はじめは思った。

 その棒に無数の目が開かなければ。

 目。目。目だ。少年はなんでもないかのようにそれを扱っていたけれど、アレは人知の及ばぬ生物の一端であると大蛇丸にはわかった。それこそ、そういったものをこそ、彼は研究してきたのだから。

 

 未知の生物。

 いるのだろう。そも、自身らが口寄せに使う獣とてほとんど未知の生物だ。そしてその中にはああいったものもいるのかもしれない。

 けれど──違う。

 少年が体に纏っていた黒い水。アレもあの生物の一部なのだろうということは容易に想像がつく。どんなに攻撃しても手応えのなかったそれ。衝撃の全てを完全に吸収されたかのような材質は、しかし少年の動きには効果を発揮しない。完全に従えているのか、あるいは少年そのものが発生源なのか。

 ……あの日、己が右腕とするカブトが憔悴した様子で帰って来たあの日。

 大蛇丸にとっても意外だった。三代目が妙に気に掛ける、「未来の警告」と呼ばれていた少年。それを見に行かせた後の事だ。

 彼は何も覚えていなかった。ただ、恐ろしいものを見たと。怪物を見たと。ただそれだけをうわ言のように呟いては頭を抱え、涙を流す──といった行為を繰り返し、それが一日ほど続いた。その後はそれら全てをさっぱり忘れたような振る舞いをしていたが、果たして何を見たのか。

 

「余所見をしている余裕があるのか?」

「! ……いえね、未知のもの、というのはとことん興味の尽きないものだ、と思いまして……」

「……ヨゴシか」

「ええ……。先生、あなたが"未来の警告"と呼んでいたあの少年ですよ」

「何故それを……いや、既にお前の手先が入り込んでいた、ということか」

「ハイ」

 

 中忍試験、その予選が始まった日のこと。

 三代目が妙に思い詰めた顔をして職場に帰って来たと報告があった。

 詳しく聞けば、「あのような子供が国を危ぶんでいる。あのような子供が不安を抱いている。次代か、あるいはその次か。幼少期の不安は成長時の枷となろう。何か、拭えるものがあればいいが」なんて話をしていたと。

 

「木ノ葉は──平和な里じゃ。お主のようなものが手を出さん限りはな!」

「ええ、ですから……ワタシは木ノ葉崩しを企てたのです。動いているものを見るのは面白い。止まっているとつまらないでしょ……。回っていない風車なんて、見るに値せず……ってね」

「ふん……それが、この無為な被害を生むものが、風じゃと?」

「そう……そしてワタシは、()()()()()()()()()()()()()……」

「だが大蛇丸。お主はここで死ぬ。その危険思想も誰に受け継がれること無く終わる」

「無理はいけませんよ先生……寄る年波には勝てない。それはアナタとて例外ではない……」

 

 奥。

 木遁・樹界降誕の中で、化け物が蠢いている。

 四紫炎陣越しであるというのに、それを視認した木ノ葉の暗部が逃げ出したのを見るに、カブトが出会った化け物というのはコレで間違いないのだろう。

 見ているだけで正気を奪われる化け物。

 大蛇丸にとっては研究対象となる一生物でしかないが──コレ、里を襲わせたらどうなるのかしらね? なんてことを思ったり。

 

「しかし……先生」

「なんじゃ」

「初代火影、二代目火影とまともにやりあえる子供が里の子供の代表者とは……木ノ葉は安泰ですね……」

「……一応聞くが、ヨゴシのアレは、おヌシの仕業ではないのだな?」

「ええ、違いますよ……」

「そうか」

 

 会話はそこで途切れる。

 少しばかり収まっていた剣戟は再度激しさを増し、殺し合いへと終結していく。

 

 この戦いが終わるのは──あと、少し。

 

 

 

 ***

 

 

 

 まー無理です。

 どんな量の【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を出したところで、この二人相手にはほとんど意味が無い。ぶっちゃけた話、ウォロチマール相手にあんだけ苦戦してたやつが相手できる敵じゃないというか。

 勿論ダメージらしいダメージはない。こっち攻略のために考える頭が相手に無い以上、単純な戦闘力としての二人はそこまでの厄介さを併せ持たない。

 忍術というのは様々な性質変化があれど、最終的には物理ダメージだ。火遁も水遁も土遁も風遁も雷遁も、それぞれに様々な過程や範囲を経て、物理ダメージを与えてくる。だから【緑色の眩いぬるぬるしたもの】で防ぎきれる。防ぎきれないのは時空間忍術や天照みたいなのかな、多分。

 だから初代と二代目がどれほど凄い術を使おうがあんまりカンケーないのだ。

 

 ただし、こっちの攻撃が当たるかっつったら無理だし、割と頻繁にぶっ飛ばされる。ピンボールみたいに。

 

 これが四紫炎陣全体を満たす、ってんなら話は違ったんだろうけど、流石に三代目を巻き込むわけには行かないので樹海に留まるくらいにしているのが仇。なんたって、俺は【緑色の眩いぬるぬるしたもの】の性質を変えることができない。ゼリー状にはできないのだ。だから半分だけ満たす、みたいなのは無理。

 樹海に溜まるような量を吐き出す、しかできなかった。それ以上をやると三代目とウォロチマールが戦ってる方にまで行っちゃうから。それにしたって量が多すぎると樹海を壊してしまい、同じ結果になるんだろうけど。

 んで、そーなると今度は俺が露出する。俺にだけ都合の良い緑色の海、になるはずが、俺にだけ都合の良い浅瀬になっちゃってるのだ。だから頻繁に抜き出されてぶっ飛ばされて弾かれて縛られてを繰り返す。幻術が来てないのだけ幸いかな。

 

 あのねー、この二人連携が凄いわ。

 流石兄弟。片方に攻撃当てようと狙いを澄ませば、もう片方が後ろから狙ってくる。ヌル遁で捉まえたと思えば、足場を崩される。んじゃシャンナロー! っつって無理矢理飲み込んでその身体を圧し潰せば──まぁエドテンなんで普通に蘇る。

 もう聞こえてくるもんね。トビラーマの「話にならんな」ってかっこいい声が。

 ただ、一応脅威としては認識してくれているのか、三代目の方に行かないことだけが救いかな。それをされると俺も【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を三代目に見せることになりかねん。

 流石にウォロチマールとの戦闘中に発狂するのはやばいでしょ。

 

 ちなみにヌル棒はほとんど意味を成してない。いやね、棒術の訓練とかしてないんだから無理無理。木ノ葉崩し終わったら死ぬ気で勉強しようと思います。三代目が棒使いだから教え子いるっしょ。

 

 ……ま、そろそろ三代目が屍鬼封尽を思いついてくれる頃なんじゃないかな。

 初代と二代目、そしてウォロチマールの両腕を封印する封印術。ただし生贄は三代目の命。

 いやまぁ、思う所が全然ないわけじゃないよ? でも俺原作厨だからさ……。それに、未来がわかんなくなるのが一番怖い。まだ劇場版が関わってくるかどうかとかもわかってないんだから。それ如何では砂との戦争とかも起きるからね。ヒルコとか割と面倒なんだからね。

 

 俺の役目はまぁ、俺を守る、って三代目に思わせない事と、俺がいる事で屍鬼封尽を思いつかない場合の時間稼ぎってトコ。

 あーでもどうなんだろ。初代と二代目と大蛇丸、っていう三人に追い詰められたからこそ出たものなのかな。いやでも穢土転生を止める手段がそもそも魂の封印しかないって思うだろうし。まぁ術者が自ら、っていうのはイターチだからできた所業でして。

 

 行かせる、か?

 ……流石にそれは不義理じゃね? あんな心配してくれてるしなー。お爺ちゃんからの100%善意に打算で返すのはちょっと。

 

「開!」

 

 それはぶっ飛ばされているときの事。

 柱間ァ! が両手を合わせてそう叫んだかと思うと──四紫炎陣に穴が開いた。

 

 は?

 

「ちょ、待て! 流石にその退場はダメだろ──まだ準備がッ!」

 

 ヌル遁アーマーを纏った状態で四紫炎陣を掴む。

 当然燃え盛る体──は、しかしヌル遁アーマーを通さない。通さないけど。

 

「ッ~~……どうにかして俺を外に排出する気か」

 

 これもまた当然だけど、追撃が来る。風遁と水遁を中心とした、押し出したりぶっ飛ばしたりする忍術が飛んでくる。

 どれだけ衝撃を吸収できるといっても今は俺の握力一つで留まっている状態だ。そんで、俺の握力なんてたかが知れているわけで。

 

 ──とりあえず打算的な事を考える。

 このままぶっ飛ばされる場合、この樹海の中に【緑色の眩いぬるぬるしたもの】が残る可能性がある。それはちょっとやばい。見ただけで発狂しかねんものがこんな人目のつくとこに、ってのは考えてなかった。戻らないといけない。

 ただ、それさえクリアしてしまえば……正直もう退場して良い気もする。結局何も成せていないけれど、三代目を追い詰めないと屍鬼封尽を出してくれない可能性があるんだよな。そうなると、めっちゃボコされはするだろうけど──必要なことかなって。

 

 だから、排出されるのはいいけど、ちょっと待ってって話。

 

「……ああもう、一瞬だぞ!」

 

 これをどうにかするには、この結界を【緑色の眩いぬるぬるしたもの】で覆い尽くす必要がある。

 要は彼我に距離があるからいけないのだ。相手が自由にできる空間を失くしてしまえば相手は行動できない。俺は【緑色の眩いぬるぬるしたもの】の内部を自由に動ける。

 だけど本当に一瞬でやらないといけない。三代目と大蛇丸を巻き込むことになるし。

 

 チャクラで握力を強化し──実行する。

 

 ドン、という効果音が鳴ったかもしれない。

 ミチミチと弾け出んとする音が聞こえる。一応ちゃんと三代目と大蛇丸だけは飲み込むようにした。つまり──圧し潰さないように調整した。

 それ以外。

 だから、初代と二代目と、樹界降誕と土遁の壁は一瞬にして圧殺されることになる。

 

「こ、れは──」

「まさか、そんなチカラが」

 

 んで──全吸収!

 放出した【緑色の眩いぬるぬるしたもの】は引き戻せないけど、全身が【緑色の眩いぬるぬるしたもの】に入っているなら話は別だ。

 全身。肌や髪、爪、いやさ全てから【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を吸収し、ヌル遁アーマーだけを残す。

 

 これで穢土転生体も回復に結構時間がかかるはずだ。

 懸念点は──。

 

「ヨゴシ! これは、お主が!?」

「──良かった、おかしくなってないな三代目!」

「……成程。故意ではあったのね……」

 

 ウォロチマールに何かを気付かれた気がするけど、今は良い。

 

「どーにも俺は限界っぽい! 初代が俺をこの結界から追い出そうとしてくるんだ──俺自体は弱いって弱点を看破されたっぽい! だから──頼んだ!」

「当然じゃ──任せい! そして、安心していろ。儂は負けぬ」

「そりゃ頼もしいね。──んでアンタ!」

「ワタシ……?」

 

 もう初代の体が出来上がりつつある。

 時間は無いと見て良いだろう。

 

「俺は鬼灯一族だ!!」

「……へぇ」

 

 100%嘘であることを除けば本当だ。だから堂々と言った。

 これを信じてくれるとは思わないけど、鬼灯一族に興味を向けてはくれるだろう。頑張れ水月。頑張って緑の水を出せ。できるって信じてる。

 

「風遁・大突破」

 

 豪風。

 それに耐えられる俺ではない。だから──ぶっ飛ばされる。何度目かわからんな、もう。

 

 術者が解かない限り消えないはずの四紫炎陣に開いた穴。そこからポーンと排出されてしまう。眼下、音の四人衆がこちらを驚いた目で見ているが──そんな速度じゃない。

 初代火影レベルの術者が使う風遁・大突破。その威力は凄まじく、それはもうポォォォンと飛ばされ。

 

 ──誰にキャッチされる、とかなく、地面に突き刺さった。

 

 ……無いの? もっと。せめて自来也のトコに落ちるとかさ。

 

 

 

 

 

 そんな間抜けな終わり方が、木ノ葉崩しにおける俺君の活躍の終わりである。

 思った以上に遠くへぶっ飛ばされていたらしく、戻った頃には全てが終わっていた。

 三代目は初代、二代目、大蛇丸の両腕を封印し、自身が生贄となって死亡。里は大蛇や砂と音が暴れたことで半壊状態。アカデミーは……生徒にこそ被害は無かったものの、子供らの両親が死傷した、という話は絶えず。校舎もぶっ壊れてる。

 音も砂も完全に撤退したものの、その傷は深く木ノ葉に刻まれた。

 

 で。

 

 まぁそれは原作通りだからいいんだけど──こっからだよな、って。

 

 棒術を木ノ葉の誰かに習う、というのも考えたけど、いや別に木ノ葉に留まるコトなくね? って。

 俺が戦うトコワンチャン暗部の誰かに見られてるからな。それを思うと……普通に危険視されるだろ。っていうか木ノ葉崩しの時ダンゾウって何してたんだろうね。三代目関連を静観するにしても、里はもーちょい被害抑えたりできそうなものだけど。

 

 とかいうのを、今行われている葬儀を見ながら思ってる。 

 どこ行こうかな、って。

 

 このまま木ノ葉にいるのってなんかダメな気がするんだよな。というのも、木ノ葉は重要イベントが多すぎるのだ。

 だったら……劇場版があるかどうかを確かめるために、劇場版舞台巡りとかするのもいいかもしれない。劇場版だったら原作に影響しないし。基本何してもいいトコだし。

 

 ……んじゃま、行きますか。

 流石にね。わかってて見殺しにした奴が、葬儀に出るってのは……ちょいナンセンスだろ。

 

「どこ行く気だってばよ、ヨゴシ」

「え」

 

 振り返る。

 ……いやいや、ここ木の上だぞ。当然……誰もいない。

 

 やば。やばだな。

 やば案件じゃん。俺まで幻覚見てるってばよ?

 

 あ、でもそうか。

 この一件が終わったら術教えてもらうって約束してたんだっけ。

 ……うーん、いくら俺が不義理オブ不義理マンだとしても……原作に無い展開を作ってまでわざわざ約束取りつけたことを反故にして出てく、っていうのは……ダメじゃね? 人として。

 

 じゃあ、それだけ。 

 それだけな。それだけはしよう。

 それ終わったら出て行こう。

 

 ……ダメだぞー俺。

 こういう事してるとマジで逃れられなくなるからな。

 踏ん切りはどっかでつけないと。

 

 

 

 

 

 そっから……まぁダラダラと俺は木ノ葉にいる。

 仕方ないんだなーコレ。ナルトは心の整理の時間と修行修行で忙しいし、棒術の先生、なんてのも里の復興作業で探しようがない。

 やっぱ抜けるか。別に、今抜けたところで問題は無いだろう。忍者にもなってないんだし。

 つーかちんたらしてると暁の二人が来ちゃうのがやばいんだよな。俺の天敵は幻術。それもイターチクラスになると解除もできなそうだし。あれ、瞳術使って無くてもやばいからなー。

 

 うん。

 よし。

 

「ナルト」

「んぁ? ……あ、ヨゴシ! どこ行ってたんだってばよ! アカデミーの修理にも参加してなかったみたいで探したってばよ!」

「そりゃすまん。となると、なんだ。もしかして約束覚えててくれたのか?」

「勿論! それで、どれを覚えたいんだってばよ?」

 

 ……ううん、光属性。

 色々ヨゴレ属性な俺が汚く見える。

 けどさ。確かこっからNARUTOの代名詞ともいえる螺旋丸の修行開始だろ。俺に構ってらんないよな、そりゃ。

 

「その約束だけど──また今度にしようと思ってさ」

「今度?」

「ああ。ぶっちゃけ今のナルトが使える術ってアカデミーでも覚えられるんだろ? 何年も何年も続ければ」

「そりゃまぁ、そうだけど……いや一個だけ無理……」

「だからさ、もっとすげー術覚えたら教えてくれよ。その方が良いわ」

「……なんだってばよ、それ。ソレ、ズルしたい、って意味に聞こえるけど?」

「そう言ってる」

 

 堂々と言えば怒り出すナルト。まぁ多重影分身の時こそズルしようとしてたとはいえ、基本努力型だもんな。

 ……ま、これが俺にできるもっともらしい嘘かなー。

 

「ナルト」

「だーからダメだってばよヨゴシ! こういうのはちゃんと基礎からやんねーと!」

「頼む。また今度、教えてくれよ」

「……まー約束したからな。一回だけだってばよ?」

「ああ」

 

 んじゃ、また今度。

 言って。

 

 俺は──木ノ葉の里を去った。

 

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