NURUTO 作:ONE DICE TWENTY
木ノ葉の里を出て真っ先に向かったのは雪の国だった。
まぁ一作目だし。時系列で考えればもう少しでナルト一行が来る場所でもあり、少年期のNARUTOにおけるサスケェ! 唯一の登場映画でもある。
また、氷遁……血継限界っぽいものを使う雪忍がいる里、雪隠れの里も保有していて、国力そのものは結構高い方。ただしクーデターが起きてると。尚次々作もクーデターが起きてるし疾風伝でもクーデターが起きてるのでNARUTO世界の小国はクーデターが起きやすいものとみられる。
木ノ葉崩しもクーデターっちゃクーデターだしね。今しねっつったか?
ただまぁ、雪の国には来ただけだ。本当に来ただけ。関わるつもりが無い。
というのも、雪の国の話では犠牲者らしい犠牲者があんましいないのである。虐げられている、という意味での犠牲者はいるけれど、こう……なんだろうな、映画の演出上の死、みたいなのが無い。恐怖を煽るために死んじゃった、みたいなのが。
いやね、原作厨の死に際大好きマンが何言ってんだって話なんだけど、まぁ救える命があるなら救ってみたい、とも思うようになった。
そう考えるようになった要因としては、俺が四紫炎陣から吐き出された時のことだ。
ワンチャン、あの時の俺は三代目を救える可能性があった。いや救うつもりなんてサラッサラ無かったんだけど、確かに俺のチート能力をフル活用すれば三代目を救う事は可能だったと思う。ウォロチマールの両腕も救っちゃう結果になるけど。
でも、まるでそれをさせじとでもいうかのように、初代の穢土転生体は俺を結界の外に弾き出した。確かにほぼ無敵な【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を操る俺への対処法としては間違っちゃいないんだけど、途中まで普通に俺の相手をしていた二人が突然俺を弾き出そうとしたってのが問題。いや、正確に言うなら──他に封じ込める方法はあっただろうに、絶対に手の届かない所までぶっ飛ばした、ってのが問題かな。
俺自身がそうしようとしていたにもかかわらず、感じたんだ。
あー、転生者的ワードセンスで言うなら──抑止力、みたいなやつを。
いやね。
人間、叩かれたら反発したくなるもんで。
抑止力とやらが──つまり原作沿いにさせる強制力みたいなものがこの世界にあるとするならば、それに抗ってみたくなるのが人間というものです。特に原作最終版に影響しない所なら、ね。
それがやっぱり劇場版になるわけだ。アニオリはたまに逆輸入するから手ェ出すの怖いんだけど、劇場版は完全に一話完結だから出しやすい。
ってことでの劇場版舞台巡り、を考えたワケだねー。
で。
「う、ぐ……ごぁあああ!!」
「ふむ。チャクラの鎧には有効……で、発狂も……うーん、してんのかしてないのかわかりづらいけど、多分してる」
一応ね。一応実験をば、と。
いや、俺の意思じゃないのよ。決して、俺が隠れるの下手とかじゃないの。哨戒中の雪忍に簡単に看破されたとかじゃ決してない。
でも見つかっちゃったからちょっとサンプルにさせてもらった。雪忍一人減るくらいならいーでしょ、影響しないでしょ。
「……今の状態の小雪姫に会ってもサインもらえないだろーしなぁ」
別に有名人のサインに興味はないんだけど、路銀稼ぎにはちょうどいい、とか思ったり思って無かったり。何分、ヨゴシ君はチビでガキなんで仕事らしい仕事見つけらんないんだよね。変化の術も使えないから大人にもなれないし。
一応木ノ葉の額当ては持ってるけど、外で使ったらちゃんと抜け忍登録されそうで怖い。下忍ですらないのに抜け忍とは如何に。ただ抜け忍云々より単純に詐欺師になりそう。身分偽ってるみたいなもんだから。
ってなこともあって、俺は今マジの一文無しだ。流石にドローボは自重したしな。
今はどーにかこーにか【緑色の眩いぬるぬるしたもの】で野生動物を狩って食い繋いでいる状態。兵糧丸の作り方くらい教わっておくんだった。アレ、不味いらしいけど腹は膨れるらしいじゃん。俺あんまり食事に魅力覚えてないから不味くても良いんだよね。
「カッ……」
「ああ……これは、窒息死か」
お亡くなりになった名も知らぬ雪忍に合掌する。
この【緑色の眩いぬるぬるしたもの】は治癒能力を有せど、対象は俺にしかならない。こうやって包み込んで得られるのは対象の窒息だけだ。
……ここでやるのはこれくらいにしておくかな。
ま、雪の国だ。雪原に変死体が一つあってもおかしかないだろう。窒息は雪崩にでもあったって言い訳が付くし。
それじゃ。
もう少し経ったら──ナルート達が大活劇を繰り広げてくれるから、ガンバ!
さて、ところ変わって──ゲレルの石の鉱脈が封印された地底遺跡。映画二作目の舞台となった場所だ。
ここは割と月明りも届くレベルの深度にある遺跡で、だから見つけやすくはあった。原作時系列で言うと結構先の映画だから見つからない、とかあるんじゃないかと思ってたんだけど、普通にあった。
んでその周辺にある軍艦を探したら、普通にハイドを見つけた。
雪の国と違って幻の地底遺跡は結構な被害が出る。
主に風の国に。あとゲレルの石を見守るキャラバンに。
今、ここで。
俺がコイツに相対し──殺したら。
映画二作目はなくなる、のだろうか。
「……ヌル遁・塗流槍」
躊躇う理由はない。
この映画は色々とゲスト出演の多い、エンターテイメント色の強い話だ。ここでナルートが得たものなど無いし、この話がなくてはならなかった、ということもない。強いて言えばシカマールとカンクローとガーラがカッコよかったくらいか。
大蛇丸でさえも回避を選択する緑の槍。
それが、ゲレルの石の力を有してすらいない敵の首魁、ハイドに向かう。
物腰柔らかな紳士を繕うハイド。何らかを談笑する彼の背に。
緑色の眩い槍が突き刺さる。
「カ……は……?」
「何が……!?」
「ハイド様!」
……あれぇ?
殺せるじゃん。もしかして抑止力とか俺の勘違いか? それとも劇場版には影響しない? ……かといって原作キャラをどーこーするのはなぁ、一人一人の影響がデカすぎて、エドテン相手くらいしか無茶できないんだよな。
「何者ッ!」
「貴様か──!」
「く──ガ、ボッ!?」
取り巻きの三人、フガーイカミーララーンケを【緑色の眩いぬるぬるしたもの】で包む。ゲレルの石の無いこいつらはチート能力の前には雑魚同然! いやまぁ当たり前なんだけど。
三人はジタバタと【緑色の眩いぬるぬるしたもの】の中でもがき苦しんだあと──動かなくなった。ハイドの脈を取れば、こっちも死亡している事を確認。
……えーと。
大激突! 幻の地底遺跡だってばよ! 完!!
に、するのもアリなんだが、テムジンがどっかにいる以上、第二のハイドになりかねん。ナルートに絆されなきゃそのまま理想郷を求めてただろうし。あ、でもハイドの思想に侵されなきゃいいのか?
までもどっちにしろ王家の血筋だからな。血筋の継承者かゲレルの石の鉱脈、どっちかだけならまだしも、どっちも残ってる状況を放っておくのはまずいだろう。
簡単なのはテムジンを殺すことではあるが──別に俺は殺人鬼じゃないし。
殺さずに済む選択肢があるなら、そっちを選ぶかね。
さて、ゲレルの石の鉱脈探しである。
遺跡の中に入ってグールグルグールグル。
うん。
迷う。
……えっとね、まぁ多分下に行けばいいんだ。あと水音水音。ゲレルの石の鉱脈、その力は流体だった。純粋なエネルギー、とも取れるか。あるいはチャクラの奔流……。
それを感知すればいいんだけど。
……感知、ねぇ。
「生かしておくべきだったか……って、コレ完全に悪役の台詞だな」
あと、ハイド殺したトコ誰かに見られてたらやばかったな、とか。クリアリングとか無理なんだよね。チャクラ感知もできない奴がチャクラ持ってない奴の感知なんかできるかっての。
でも、ワンチャンを狙ってる部分はある。
何がって、ゲレルの石の力を【緑色の眩いぬるぬるしたもの】で取り込めば……なんか起きんじゃね? っていう。もう完全にハイドと同じ、というかハイドより低俗な力の求め方してる自信はある。ただほら、ゲレルの石の力って自然エネルギーっぽいんだよね。消滅の際に漏れ出た少量でさえ樹海降誕レベルの事やってのけてたし。
自然エネルギー。本来は仙術修行とかで少しずつ培わなきゃいけないそれ。しかも石化の危険アリ、みたいなのだけど──ここで楽に手に入れられたら最高じゃね?
……やばいな。マジで悪者っぽい思考だコレ。なんだーコレ!?
「と言っている内に見つけるのだー、ってな」
あったわ。
ふ、3Dマップだろうが時空が歪んでない限りマッピングはできるのだよ。
……おー。
「思わず独り言を漏らすレベルで……これは、凄いな」
力を感じる。
まだエネルギー化していないそれ。鍵を開けていないからだろうけど、それでもわかる──力。
別に魅せられて、とかじゃないけど。
欲しい、と思った。
……コレ魅せられてる? 「力が……欲しいか……」に頷いちゃってる?
ま、それはそれでいいだろ。目的の無い強大な力というのは得てして危険なものだけど、俺には目的、あるし。
原作通りの最終回を迎える、って目的がな。
「──飲み込め」
その力──全てを。
さて、劇場版三作目である月の国。
ここは結構ナルート達の活躍が必須級であるとはいえ、無駄な犠牲も多い。特にコレガ隊長と近衛兵のおっさんの死はあまりにもあっさりで無残過ぎるというか、恐怖演出ではあるんだろうけどあんだけキャラ立てしといて他に無かったんか、と思わざるを得ない。
なので助けてみたい。殺すのはできたから、次は助けられるかどうかの実験である。
ついでに国王も。石化されなければもう少し生きたっぽいからな。
ただ、ナルートがいないと次代の王が育たない。デブで弱虫なミチルとチビで弱虫なヒカル。映画冒頭のままの性格で次期国王になったらちょっと心配過ぎる。お金持ちの国だから、なんらかの策謀に利用されて諸外国へ侵攻、とかになったら目も当てられん。
だからここについては後回しだ。ナルート達を待つ、というコト。
「というわけでやってまいりました歓楽街」
うーん、良いね。
下賤な気配というか、ちょっと波の国に似た貧困の匂いがする。もしかしたら俺月の国に入った瞬間爆発して死ぬんじゃないかな。超お金持ちとか……ケッ。
で、ここに来た理由は、ウォロチマール……なワケがなく。
ここで起きる三忍の三すくみを見るため、である。
いやね、ウォロチマールにもジラーヤにも興味はないし、その口寄せであるマンダとガマブン太にも興味はない。
俺が狙いに来たのは──そう、カツーユだ。ツナーデもかなりどうでもいい。
そう、カツーユ。
湿骨林という秘境に住まう口寄せ獣の一体で、その体液にものっそい治癒力を持ち、酸も吐ける。更に声が可愛い──ナメクジ。
いいのよ、ナメクジ。ナメクジでいい。俺割と指にナメクジとかカタツムリ乗せてどーにか逃げようと頑張るの見るの好きな子供だったから。……悪趣味か?
とかく、俺の【緑色の眩いぬるぬるしたもの】とカツーユは相性良いと思うんだよね。
絶対ないと思うけど一応「俺に乗り換えない?」は聞くつもり。百パー断られるし怒られるだろうけど、ガキだから許してくれると思う。
その上で、湿骨林に他の……カツーユ以外の大蛞蝓がいないか、その子が契約してくれないかを交渉したい。
いや、治癒力はもう十分なんだけど、酸が結構魅力的だ。だからカツーユより好戦的な奴がいい。
蛇と蛙は俺の【緑色の眩いぬるぬるしたもの】と相性悪いんだよね。決して声の可愛さで選んだとかそういうことじゃないよ。
んで、だ。
折角歓楽街に来たんだから、目的はそれとして──遊びたい。
でも俺は一文無しな上にガキである。貧乏人を受け入れる歓楽街じゃあない。それはわかってる。でも遊びたい。ならどうするか。
答え。
「なんだぁ坊主。こんな所で大道芸か。まぁいい、酒の肴にはなるだろ」
「肴になったら小遣いくれるか?」
「んー? ハハ、強かなガキだな。いいぜ、だが面白かったらだ。つまんなかったらやらねーよ」
地道に稼ぐ──である。
アルバイトの雇先がなくとも、こういうストリート芸はできる。幸いにしてそれなりに動けるからな、俺。一般人と比べたら凄い事、は結構できるのだ。
うん。
え、今の俺めっちゃマトモじゃね? ヨゴシの名に恥じないズルばっかの人生送って来たけど今の俺めっちゃマトモ。ヨゴシ・テナイって名乗っていいくらい。キレイでもいいかもしれない。父親殺しそう。あるいはソウジか?
まー正直芸のなんたるかがわかってない俺じゃあ何が面白いか、はわからん。これが女の子だったらなー、踊り子として色々やれたんだけど、変化の術も使えない俺じゃあなー。
だから、単純な身体能力でできる芸を続ける。幸いみんな酔ってるからな、結構財布の紐は緩いはずだ。
なお【緑色の眩いぬるぬるしたもの】は使わない。使ったら大混乱だろ。そういう分別は付くよ、俺。
そーいうことで。
ちぃっとばかしの間、俺は歓楽街にて大道芸をやる子供として名を馳せたのであった。
***
「ヨゴシ……」
里の復興作業、及びアカデミーの校舎の修理が終わってきた頃のこと。
ようやく再開した授業を前に──生徒の一人であった少年、ヨゴシの姿が無いことで騒ぎになった。最後に姿を見たというナルトもその行方までは知らず、そのナルトも修行の旅へ出てしまったため手掛かりは完全に失われたと同義。
少なくとも怪我をしたようにはみえなかった、とはナルト談だが、隠していたという可能性もある。
中忍試験──及び木ノ葉崩しの際には三代目火影の近くにいたとの目撃情報もあるヨゴシだ。ならば危険なことに巻き込まれているという可能性は高い。
そう、思われていた。
噂されていた、ともいえるだろう。彼の知り合いはそう多くはないものの、忍の間でいえば、里の外から来たというのにアカデミーに入った異例として一方的に知られている。とはいえアカデミーでの成績は揮わず、だからこそ木ノ葉の血の優秀さの話題に華が咲いていたものだから。
とはいえ、根本の優しさが隠しきれないのが木ノ葉の忍だ。暗部はともかくとして、そうでない上忍たちは少なからず情報収集をしていた。あるいは優しさではなく、他里へ情報が洩れることを恐れて、だったかもしれないが。
その最中──ある一報が入ってくる。
それは国外、風の国よりやや沿岸沿い。
今まで誰も訪れてこなかった渓谷群。その近辺で、殺人事件が起きたというのだ。風の国の話ゆえにすぐに切り捨てられようとしたこの件であったが、その下手人が緑眼の少年、との話に一気に話が進む。
目撃者は別大陸から来たキャラバンの住民の一人であり、曰く少年は黒く粘性のある水を用い、四名の人間を殺した、と。
その報に、今度は暗部の人間が反応する。
つまり──三代目と大蛇丸の戦いを間近で見ていた暗部だ。否、そうでなくとも試験会場にいた者達は一瞬だけでも見ていたことだろう。
三代目火影と大蛇丸を囲う結界、四紫炎陣。
その中身をいっぱいに満たした怪物の存在を。──無数の目、無数の口。だらりと垂れ下がる舌からはふつふつと気泡の湧き上がる黒い液体を垂れ流し、陽光に照らされた箇所は玉虫色に光る──誰がどう見ても、怪物。
本当に一瞬だったこともあって誰もが見間違いだと、あるいは幻術だと唱えたが、それは本当にいたのだと複数の忍が証言していた。
大蛇丸の術、ではない。
そう断言するには証拠が足りない。勿論三代目の術でもない。だが、それも同じく証拠が足りない。
でも。それでも、違うと言い切れるのは──その悪寒が故だろう。
だから。
三代目火影でも、大蛇丸でもなく。
あの場にいた者が、術者だ。
──少年、ヨゴシ。
どれほどあり得ずとも疑わしきを全て排除していって残ったものが真実である。
そしてそれが、その殺人事件によって裏打ちされた瞬間でもあった。
ただ、その先がヨゴシの不幸である。
それは件の化け物を見た忍が、「味方だとは思えない」と震えた事にある。あるいはヨゴシの言う"発狂"をしてしまっていたその忍は黒い化け物に脅威を覚え、これを敵として糾弾した。「だから大蛇丸と同タイミングで里からいなくなったのだ」と、「そして里から出たらすぐに本性を現したのだ」と。
後日、緑眼の少年、というだけの情報では曖昧過ぎるゆえ、その目撃者に対しヨゴシの似顔絵を見せた所──正にこの子です、と合致を得られてしまった。
こうして正式にヨゴシはビンゴブックへの記載が為されることになる。
ただし、生死問わずなSS級と違ってB級……一応生け捕りのみ、が架されたのは、それでも、という木ノ葉の忍の温情故か。
以後、主に風の国からの指名手配犯として、ヨゴシは登録された。
彼を想うのは、彼と共に過ごしたカカシ班、そしてアカデミーの面々のみ。
そして当の本人であるヨゴシは──まだ、何も知らない。