ディストピア運営ゲーム  (圧倒的に有利な体制派が恵まれた人材と資材を使って罠で獲物を追い込む様を眺める仕様)   作:つけ麺アイス

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レジスタンス処刑 (攻略側)

 根城にしていた家が警察に見つかったカトルだったが、後から合流してきた同志曰く、街中にある監視カメラで見られていたせいであった。

 カトルはレジスタンスに捕らえられて協力させられている医者によって、その日の内に整形した。

 医者は高い知能を持ち、高給取りなので、その多くが体制側だ。

 故に、医者をレジスタンスに組み込むためには脅迫以外の方法がないのが現実で、レジスタンスの医療状況は厳しい。

 

 カトルと共に侵入したメンバーはほぼ全滅してしまったが、それ以前や以後に侵入に成功したメンバーや、布教活動(・・・・)によりレジスタンスに賛意を示した者達と合流することが出来た。

 

 

 革命軍本部と違い、現地レジスタンス構成員の多くは低学歴だ。

 それは低学歴にしかなれない能力から、体制側から見捨てられ、故に不満を持ちレジスタンスに加わるという流れが背景にある。

 

 故に革命軍本部は、現地レジスタンス構成員を使い捨てにしており、それを嘗てのカトルは不満に思っていた。

 だが、共に訓練して排水路を駆け抜けたメンバーが全滅してから、カトルの考えの中に犠牲は当たり前という認識が理解出来るようになった。

 効率的に部下を使い捨て無ければ、レジスタンスは成り立たないのだと、漸くカトルは理解した。

 

 革命軍本部の重鎮である父の考えを、父と似たような体験をもってカトルも身を持って理解した。

 

 

 

 カトルはレジスタンスの一般構成員と違って、アーバシリの外でだが、高等教育を受けている。

 カトルが自分の命などどうでも良く、任務に効率的であろうと考える度に、同志数名を犠牲にしてでもカトルを生かす事が、任務遂行に必要だと理解出来てしまう。

 

 シトラスと再び接触して、レジスタンス側のスパイとして作戦に本格的に参加して貰いたいが、シトラスが敵側の二重スパイである可能性も捨てきれない。

 カトルはコストパフォーマンスとリスクマネジメントのみを判断基準にする他は無かった。

 それでも、シトラスがトール・ネーブルの近くで働くことには、リスクを超える利益がある。

 

 管理合戦ではアーバシリポリタンという機械にカトルは勝てない。

 同じ管理能力だったとしても、手札が違い過ぎる。

 弱者が強者に勝つには、またはそれを維持するには、無理かズルかマグレのどれかが必要である。

 カトルはその全てを肯定するしかなかったのだ。

 その上で、管理力と手札も強くする必要があった。

 

 

 そうしていると、捕まってしまったカトルと共に排水路を侵入したメンバーの処刑がアナウンスされた。

 カトルとしては絶対に助けに行きたい。

 それはカトルに残された最後の良心であった。

 だがカトルには、それが食らいつかねばならぬ毒餌だと分かってしまった。

 

 故に、助けに行く体裁だけを見せて、共に過ごしたメンバーも救出部隊も見捨てる他は無かった。

 

 

 

 処刑当日、堂々と名乗りを上げて処刑広場に登場したレジスタンスの中に、カトルの姿は無かった。

 カトルと共に過ごした処刑対象者達は、カトルの共産革命軍幹部としての完成を喜んだが、一抹の悲しさは拭い切れぬまま死んだ。

 捉えられて処刑される者を助けに行った者も、本当に助けられる可能性は0では無いんだからと、嘯き、虚勢を醸し、自己暗示していたが、結局失敗して、自分達も囚えられてしまった時に、生物の本能としては最初から可能性など無かったと悟ってしまっていた。

 カトルは、処刑される仲間も、助けに行かせた仲間も、どちらも人生を終わらせる事になると分かっていて、その選択肢を命じた。

 この日、真にテロリスト指導者としてカトルは完成したといってよいだろう。

 

 

 

 カトルは先ずは貧民街のマフィアを制圧して、新たなマフィアのリーダーとして成り上がる事から始めた。

 新しく貧民街で作られる狭くて監視カメラの多く作られた建物が出来る計画を聞くと、工事業者を脅迫して、意図的に監視しない部屋を作らせたり、監視カメラの場所を教えさせたりした。

 

 偶にくる集金担当者を違法風俗に誘い、それを元に脅してその上司を連れてこさせて、その上司も脅迫して取り込んだ。

 形だけの監視カメラを付けた建物が増えた、新築地域では違法風俗を展開して、貧民街の外からも人を呼び込んでは、使えそうな者を脅迫して取り込み続けた。

 

 金を払えなくなった者には、妻子を風俗へと落とし込む見せしめを行った。

 

 人としてあるべき姿を見失う事は無かったが、そもそも見ようともしなくなったカトルに唯一見えている事が、革命の大義であった。

 

 暴力と性と薬物。

 これらの元締めとなることで、レジスタンスの活動は一気に拡大出来た。

 カトル達レジスタンスにしてみれば、アーバシリポリタンこそ最強の防衛力(暴力)を持っているし、上流市民は美形ばかりで、金持ちならきっと怪しげな薬物パーティーをしているに違いないのだ。

 

 しかし、革命軍がアーバシリポリタンを占拠すれば、もうそんなことをしなくてもいい。

 カトルはそれだけを願っていた。

 

 

 ある時カトルは、強姦して写真を撮られたウェディングプランナーから取っておきの情報を聞き出した。

 

 

 あのポンジュ家の令嬢と、レジスタンスの怨敵トール・ネーブルが結婚式を挙げると。

 

 

 

 カトルは神に感謝した。

 これで非人道的な事をやめられると。

 悪の元凶を倒してしまえば、こちらも悪を為さなくて済むと。

 

 カトルは、ウェディングプランナーに毒薬と爆薬を渡して告げた。

 

 

「頑張ってくれ。これが成功すれば、全てから開放してあげるから」




貧困層「頑張りますので、どうか助けてください」
都市支配階級「でも君、種族値も個体値も低いだろ。努力値補正なんて最大でも63しか上がらないし… で、当然既に努力値くらいは最大まで割り振ったの? えっ、これから? 努力値しか君には残されていないのに、努力値も最大にしてないの? これから努力値上げるとしてもそもそもバトルに勝って経験値稼げるの? こっちからふしぎなアメ貰えるとか思ってない? それは甘えだよ。というかどれだけ苦労したかなんてどうでも良くて、どれだけ成長したかが努力なんだよ?」

貧困層「言われている事がさっぱり分からないが見下されていることだけ分かった。暴れてやる」
都市支配階級「よし、種族値、個体値、努力値が全て最高クラスのメンバーが作った警備機構で迎え撃て。
あっ、ついでに種族値、個体値が高い新人の努力値稼ぎもしておくか」

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