魔法科高校のしばたつや   作:司馬達也

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 ランキングで日間2位、ルーキー日間で1位を取りました!

 それもこれも、皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。

 皆様の温かい声援にお応えして、次かその次で打ち切りです!(←おい)


 それはそうと、原作の地の文を全く違う意味にしてお兄様を遠い目にするのが楽しくて仕方ない。



入学編④

 ようやく―――ほんとうにようやく事態が進展したのは、新入部員勧誘週間が終了してからのことだった。

 昼休み、エリカとレオに懇願されて居残りをしている時のこと。

 

 

 

「エリカちゃん……一〇五二msよ」

 

 

「あああぁ!

 言わないで!

 せっかくバカで気分転換してたのに!」

 

 

「まあまあエリカちゃん、もう少し頑張って。

 そうしたらいいことがありますよ」

 

 

「いいことぉ?

 それって何よ?」

 

 

 

 その時、実習室の扉が破られた。

 

 

 

「なんだかんだと聞かれたら!」

 

 

「わ、びっくりした。艶夜じゃない」

 

 

 

 やっほー、と手を振りながらやってきた艶夜は、片手に提げていた手提げバッグの中身を広げた。

 

 

 当然のように一科生である艶夜が一行に加わったが、姉である美月がいることもあって、クラスメイトたちと昼食を共にする機会は達也よりも多い。

 艶夜も生徒会室での昼食の誘いはあったはずだが、そんなものは「プライベートだから」の一言でぶっちぎって好き勝手していた。

 

 

 

「美月とエリカたちに、お昼の差し入れだよー」

 

 

「いや、それは……」

 

 

 

 取り出されたカップ麺に達也は眉をしかめる。

 ただでさえ遅れている実習内容に、空腹で集中力が途切れてくる頃合いに食べ物を持ち込まれても困る。

 

 

 しかし艶夜は「ちっちっ」とちょっとムカつく仕草で指を振り、ご安心をと芝居がかった台詞をのたまう。

 さすがに集中力が削がれないように配慮して、匂いが抑えられた物にするくらいの分別はあったのか。

 

 

 

「こちらに取り出しますは、カップラーメンカレー味大盛り!」

 

 

「ダメじゃないか」

 

 

 

 思いっきり匂いが食欲を刺激するやつだった。

 何なら避難所で食べたりすれば、その匂いで腹を空かせた他の避難者から顰蹙を買うこと間違いなしのチョイスだった。

 

 

 柴田艶夜はよりにもよって2つも取り出したそれのフタを開き、水のボトルを手首のスナップで振り回しながら魔法で加熱した。

 お湯を注がれたカップ麺が湯気を立ててその芳醇なスパイスの香りを広げてゆく。

 

 

 ごくごくり、とふたつ喉が鳴った。

 

 

 

「これがエリカとレオの今日のお昼ごはんです」

 

 

「空きっ腹にこれは……」

「いっそ暴力的な匂いね」

 

 

「ただし、待ってあげるのは3分だけ!」

 

 

「「!?」」

 

 

「3分が過ぎても課題が終わらなかった場合、一回失敗する毎に私がひとすすりするので、二人の食べる分はどんどん減っていきます!」

 

 

「よし! これで決めるわよ、レオ!」

「応よ! カレー麺が俺らを待ってるぜ!」

 

 

 

 ……達也にとって、妹が作る手料理以外の食べ物には、栄養補給と息抜き程度の意味しか持たなかった。

 だからいつの間にか、他の誰もが自分と似たような食事事情をしていると思っていたのだろう。

 

 

 自分は少し、思い違いをしていたのかもしれない。

 ――――そう、思った。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 結局はやる気だけで課題のハードルをクリアすることはできず(それでも効果はあったと認めざるをえないが)、達也が裏ワザを教えることになったが、エリカとレオは無事にカップ麺にありつくことができた。

 なお、エリカは一口、レオは二口食べられた。

 

 

 途中でやってきた深雪の差し入れも平らげ、二人は手を合わせた。

 

 

 

「ごちそうさん!

 いやー、昼飯食いっぱぐれるかと思ったぜ」

 

 

「ホント。深雪と艶夜には感謝しないとね」

 

 

「エリカ、私に感謝する必要は無いわ。

 私はお兄様に従ってそうしただけだから、その感謝はお兄様に捧げるべきよ」

 

 

「私にはもっと感謝してくれてもいいんだよ?」

 

 

「深雪は謙虚(?)過ぎるけど、艶夜は恩に着せ過ぎ、よっ!」

 

 

 

 エリカが艶夜の額で指を弾く。

 いったぁ! と大げさにのけぞる艶夜に、集まった友人たちは笑いに包まれた。

 

 

 柴田艶夜は、達也と深雪を中心とする友人グループにとって、エリカとはまた違ったムードメーカーとしての立場を既に確立していた。

 達也としては、未だ詳細不明な探知魔法師を深雪の側にうろつかせることは許容し難い。

 

 

 だが、既に懐に深く入り込まれてしまった以上、排除にはそれなりの覚悟が必要になる。

 ならば、相手の慣れ慣れしさを逆手に取ることで、その秘密を暴くべきだろう。

 

 

 

「そういえば、美月はどうやって艶夜が来ることを知ったんだ?

 端末を操作する素振りはなかったと思うが」

 

 

「あっ、それは……」

 

 

「お答えしよう!」

 

 

 

 美月が答えていいものかとためらうも、艶夜は勢いよく立ち上がると、教師に指名された模範的な生徒のように答えた。

 

 

 

「私と美月は、双子のシンパシーでテレパシー交信ができるのだー!」

 

 

「「な、なんだってー!」」

 

 

「……いや、シンパシーなのかテレパシーなのかどっちだ」

 

 

 

 そのどちらでもないだろうが。

 

 

 達也の身も蓋もない言葉に、やれやれと首を振ると、艶夜は腰を下ろした。

 まるでエリカとレオのような、打てば響く反応を期待していたようだが、短い付き合いでもそれは無いと分かっていただろうに。

 

 

 

「というのは冗談で、探知魔法を使ったんだよ。

 それで美月が居残りしてるのが分かったから、お昼買って行ったの」

 

 

「けれど艶夜?

 それだと結局、艶夜が来ることを美月に知らせることができないわ」

 

 

「深雪の疑問はもっともだけど、それも問題ないよ。

 そう、探知魔法ならね」

 

 

「……まさか、信号代わりにしているのか?」

 

 

「達也君、せいかーい」

 

 

 

 艶夜が両腕をあげて大きく○をつくった。

 

 

 探知魔法は、探知を受けた魔法師にとって「見られている」という認識を与える。

 それを利用し、何度もオンオフを繰り返すことでトンツー符号を送ることができる。

 理論上は確かに可能だ。

 

 

 美月と艶夜は、艶夜が探知魔法の性質を知ってからというもの、二人だけの秘密の伝達手段としてモールス信号を覚えたらしい。

 当時小学生だった子供の遊びとしては高度なものだが、美月の頭の回転の速さを考えると納得もできるというものだろう。

 

 

 

「でも艶夜にモールス信号が使えるなんて意外だね」

 

 

「うん、とても意外」

 

 

「ほのかも雫もどういう意味で言ってるのかな!?」

 

 

 

 正直に言えば達也も二人と同じ気持ちだが、言わずとも全員が共有している認識だろう。

 

 

 

「だが、符号を短縮してもそんな使い方をすれば魔法力が保たないはずだが?」

 

 

「そうだねー、私の地力の魔法力って美月と変わんないし。

 でも私の探知魔法って、対象を直接探知してないからそんなに負担無いから」

 

 

「は? 探知しない探知魔法って、それ結局何する魔法なのよ?」

 

 

「簡単に言うと、周りの見る目がわかる魔法かな?

 つまり誰が美月のおっぱいをジロジロ見てるかがわかるってこと。しかも下心まる見えで」

 

 

「ちょっと、艶夜ちゃん!?」

 

 

「へぇ……。下心まる見えねえ?」

 

 

「そこでどうしてテメェはこっちを見てやがる!」

 

 

「…………」

 

 

 

 どうも煙に巻かれたようだが、それでも達也の持つ知識を元にすれば、探知魔法についてはおおよそ見当つく。

 

 

 森崎の件で美月の元に駆けつけたのは、あの時啖呵を切った美月に一科生たちのヘイトが集中したことを察知したのだろう。

 居残りの場所も含めて、位置を探ることもできると考えていい。

 

 

 それだけならば何の問題もない。

 七草家が囲おうとする程度には便利で有意な人材だろうが、それだけだ。

 

 

 ―――感知不能な隠密性を除けば。

 

 

 この一点が達也の新たな頭痛の種になった。

 

 

 推測するに、柴田艶夜がその奇妙な探知魔法を得た原因は、美月と同じ霊視放射光過敏症だろう。

 血筋故なのか生まれ持ったその体質に加え、おそらく遠視系の探知魔法を併せ持って産まれたのが美月との違いだ。

 

 

 そして体質と合わさった探知魔法は、探知対象ではなく、対象へ向けられた微小なプシオン粒子に敏感に反応した。

 対象へ向けられた感情を探知するように、変質した。

 

 

 これにより、「対象を見る」必要がなくなったために、探知魔法としては異色な特徴として、「対象を探知しない」探知魔法と化したのだ。

 

 

 この隠密性は、達也の持つ『精霊の目』をしても及ばないほどの特色と言っていい。

 おそらく艶夜自身が強く「見よう」と意識することで相手に感知させることができるのだろうが、それを除けば、いつ何時覗き見られていても気づくことはできないだろう。

 

 

 無論、何の理由もなく探知魔法など使うことはないだろうが、

 

 

 

(……不味いな。今までの様子からして、艶夜は常に美月だけは探知魔法のマークを外していない。

 そして、誰よりも美月に対して警戒心を持っていたのはこの俺だ)

 

 

 身内のすぐ近くに、やたらと身構えている人間が常につきまとう状況であればどうか?

 

 

 当然、探知魔法を使ってでも相手の素性を探ろうとするだろう。

 誰だってそうする。達也だってそうする。

 

 

 それで情報が出なければ、最悪四葉の情報網や、軍への借りを作ってでも相手の素性を探ることもできる。

 そうしたコネクションは、他者には無い達也のアドバンテージと言っていい。

 タダで使わせてもらえるコネなどありはしないが、その選択肢自体が大きな特権だ。

 

 

 ……柴田艶夜も、七草家の情報網から司波達也を探っている可能性があるが。

 

 

 

 

(これは……、俺ひとり対処できる限度を超えているな)

 

 

 

 もはや処置なし。

 

 

 白旗同然の判断を下した達也は、師匠である九重八雲へ相談することに決めた。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 達也の懸念通り、艶夜は司波兄妹へその探知魔法を使い、監視していた。

 していた、とはこの場合、過去形である。

 

 

 そもそも監視者から監視対象へ、監視手段が存在することを明かす必要はない。

 それをあえて教えたのは、もう監視を続ける気がないからだった。

 

 

 では、監視をやめたのは何故か。

 その訳は、第一高校に入学して初めての週末、夕方の柴田家に遡る。

 

 

「あーもうやってらんない、やめたやめた!」

 

「ど、どうしたの艶夜ちゃん。いきなり壁なんか殴りはじめて。

 高校からドロップアウトするの?

 それともまたRTAの世界記録に挑戦して乱数に負けたの?」

 

「そうじゃないよ美月、司波兄妹だよ司波兄妹っ。

 なんか怪しいから今日一日探知し続けたんだけと、朝から晩までイチャイチャイチャイチャと!

 クリスマスにこれからラブホに入るカップルでもあそこまでじゃないから!」

 

「達也さんと深雪さんを探知って、ラブホって、艶夜ちゃん何してるの!?

 イチャイチャってどういうことなの??」

 

「どうもこうも、あの二人ときたらお互いの好意を受けたら倍にして相手に返すし、お互いにラブラブ光線飛ばし合って延々と増幅させ続けてるんだよ。余波食らって精神ゴリゴリ削られ続けるこっちの身にもなれっての!

 あれはもうセ○クスだね!

 究極のコミュニケーションという意味でのセ○クスだよ!!」

 

「た、達也さんと深雪さんが……あわわ///」

 

「もうお前ら付き合っちゃえよ!

 結婚しろ!!

 爆発しろーっ!!!」

 

 

 ……こうして司波兄妹は、その愛の力で不埒な覗き魔を撃退した。

 彼らの日常は守られ、これまでと変わらずに続いてゆくことだろう。

 

 

 ただ一点、美月から兄妹二人に向けられる視線を除けば。

 今までも妖しい妄想をはらんで熱を帯びていた視線が、これまで以上に過熱されたことは言うまでもない。

 

 

 

 




 というわけで、艶夜の探知魔法の詳細と、お兄様との情報戦(笑)でした。
 まだいくらか応用が残ってますし、『入学編②』で使っていた「自分へ向けられる感情の探知」もできますが、ひとまずこれがしばたつやの探知魔法の詳細です。

 遠視系ではあるものの、光学系の情報がプシオン波の観測で埋められているので、実際の光景は見えなかったりします。
 


 それと「お互いにラブラブ光線飛ばし合って」について。

 妹様のブラコンについては言わずもがな。
 お兄様のについても自覚が無いだけで完全にシスコンですし、脳の強い情動を司る部分がどうとか妹だけは例外とか、それ以前に入学編を見た限り「妹に手出しされてブチギレたシスコン」以外の何者でもないんですよね。

 なんとも思っていないってことは無いわけです。
 つまり「深雪に特別な感情を持っている」ことは確定。


 まあ恋愛親愛兄弟愛はあるでしょうが。
 いずれにせよ艶夜があてられたのはこれなんですね。



 あと爆発しろとか言ってますが決して、


 付き合っちゃえよ → 婚約イベント

 結婚しろ     → 結婚

 爆発しろ     → 全自動地球破壊お兄様起動


 という意味ではありませんのであしからず。
 










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