常連のやごぉーさんが、大勢の女の子を連れてきました 作:東風ますけ
「姉さん!柚葉姉さん!頼むから返事をしてくれっ!!」
「………」
姉さんから返事が返ってこない。
それだけで不安がどんどん募っていく。
「ラプラスさん………ラプラスさんは回復魔法とかって…」
ラプラスさんは、とても苦しそうな顔で、首を横に振った。
嗚呼。
柚葉姉さんの身体はもうボロボロだ。
医学を少し齧ったことがあるからわかる。
………もう、『助からない』。
皮は捲れ、骨は砕け、内臓にも骨が刺さっている。
「──!!」
「ーーー!!」
「〜〜〜!!」
「………!!」
「ー〜!!」
holoXのみんなが必死に手当や、救援を呼んだりしてくれているが、もう、どうやっても助からないだろう。
嗚呼。
嗚呼、またか。
”また” 俺は、この人を護れないのか。
「………和葉」
「──!柚葉姉さん!意識が!!」
「………ごめんなぁ………みんな………アタシのせいで楽しい時間が………本当にごめんなぁ………」
「謝らなくていい!!!!!姉さんは悪くないんだ!!!!!」
どうしてあなたが謝るんだ。
悪いのは全部俺なのに。
「………和葉。………俺、お前のこと、大好きだったぜ………?」
「………俺も、姉さんのこと、大好きだったよ………」
別れの時は無情にも、刻一刻と近づいてくる。
「鳥居さん………吾輩たちにも、お別れの時間を頂けますか?」
「──えぇ!ありがとうございます………本当に、ありがとうございますっ………!」
嗚呼。神様どうして。どうして。
なんでこんなにも酷いことをするんだろうか?
姉さんが悪いことでもしたのか?
せっかくこんなにもいい人たちに囲まれて、幸せな人をなぜ不幸にする。
何故、何故。
嗚呼。
「────!!!」
「ーーーーー!!!」
「〜〜〜!!!」
「…………!!!!」
「ーーーーーーー!!!」
「…りが…なぁみん………」
俺は無力だ。
「…タシ…しあわ……った…」
最愛の人を護れないただの哀れな屑だ。
────ただ、でも。それでも、コレだけは伝えたい。
俺は震える姉さんの手を掴んで。
「姉さん。俺、あなたのことを、世界で1番。『愛して』ました」
「俺も、お前のこと、世界で1番『愛して』るよ…!」
大好きな人に、好きだった気持ちを伝えたばっかりなのに。
俺の最愛の人がもう逝ってしまう。
だから、最後に一つだけ。
「──!」
「………」
俺は姉さんに口付けをした。
姉さんはびっくりしてたけど、凄く幸せそうだった。
「和葉………さようなら。『愛してる』」
「柚葉。俺も、『愛してる』」
姉さんはもうあと数分もかからず天に召すだろう。
ひとりぼっちは寂しいけれど、でもワイにはホロライブのみんながいる。
だから、しばらく待っていてね?
『柚h………(おいおいおいおい!なんじゃあこりゃ!)』
この声は。
「ルーベルトさん」
俺の背後から、居酒屋『鳥居』の常連さんの1人。河童の少年、ルーベルトさんが現れた。
「おい鳥居さん!一体何があったんだ!?鳥居さんが抱いているその人って柚葉さんだろ!?」
「えぇ、もう、助かりません」
「諦めんなよ!!!!!おーい!キャロ!」
「何っキャルーベルト………ってええええええ!?」
「おいキャロ!ここで柚葉さんを助けられなかったらキャロムとの約束が果たせねえ!ナイフ持ってっか?」
「ルーベルト!食べさせるのはワシに任せろっキャ!だからばっさり切り落とせっキャ!」
「了解!」
ルーベルトさんはキャロさんから受け取ったナイフで自分の指を切り落とした。
「いってぇ!」
「「「「「………ゾッ」」」」」
holoXのみんなも引いている。ちなみにワイは慣れているから平気だ。
しかし、何故今そんなことを?
「よくやったっキャ!あとはワシに任せろっキャ!」
キャロさんは切り落とされたルーベルトさんの指を、肉団子状にコネ始めた。
そして、完成した緑肉団子を姉さんの口に近づける。
「あ……う……こ…コレは………?」
「怪我が治る肉団子っキャ!早く食べろっキャ!もしも死んだりしたら許さないっキャ!死んだら絶対後悔するっキャ!」
「だ………め………だ………もう……噛む力も………残ってねえ………」
「──キャロ!口移しだ!」
「なるほど!いい意見っキャ!………鳥居さん」
「はっ、はい!」
「この肉団子を噛んで柔らかくしてお姉さんに食べさせてあげるっキャ」
「えっ、で、でも…」
「………『後悔』するっキャよ?」
「──!わかりました!」
ワイは口の中で肉団子を咀嚼して、軽くペースト状にする。そして、姉さんの口の中に流し込む。
「………和葉」
「──!姉さん!傷が!」
どんどん傷が癒えてゆく。内臓に刺さっていた骨は元に戻り、骨もどこも折れてないし、皮すらどこも捲れていない。
………やがて、姉さんの身体は全て元通りとなった。
「和葉っ!」
元気になった姉さんが抱きしめてきた。
「姉さん………本当に治ったの!?」
「ああ!!見ての通りだ!!!」
奇跡。その二文字で片付けられるほどのことではない。まるでこんなの、『神様』だ。
「ルーベルトさん!キャロさん!」
愛する人の命の恩人だ。丁重に扱わなければ。
「ルーベルトさん、キャロさん。本当に、ありがとうございました!!!!!」
ワイは2人に向かって限界までお辞儀する。
感謝しても仕切れないからだ。
「………なぁ、鳥居さん」
「はい」
「『姉さん』を大切にな♪」
「──はいっ!」
「じゃあなぁ〜♪」
ルーベルトさんは手を振って返って行った。
キャロさんのほうは姉さんに向かって話し始めた。
「置いて行かれた人というのは、とても悲しい気持ちになるっキャ」
「はい」
「だから頑張るっキャ!『後悔』するかしないかは!お前次第っキャ!」
「はい!」
キャロさんは姉さんに優しく語りかけた。
「………あ!ルーベルトぉ〜!!待って欲しいっキャーーー!!」
俺たちの命の恩人は、嵐のように過ぎ去って行った。
「姉さん………無事でよかったよ」
「………呼び方」
「………え?」
「『柚葉』って………呼んでくれないの?」
「────!………『愛してる』よ。柚葉」
「アタシも、『愛してる』よ!」
こうしてワイたちは再び口付けを交わした。
「………えっ、この場面めちゃくちゃエモくね?」
「やばいね。うん。やばい」
「感動的でごさる〜!」
「めっちゃ感動したんだけど(低音)」
「エモいねー!こよもいつかこうしてみたいー!」
嗚呼、最愛の人よ。
「………とりあえず東京に戻ったら結婚しようぜ」
「………賛成」
生きててくれて、ありがとう!