常連のやごぉーさんが、大勢の女の子を連れてきました   作:東風ますけ

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どうも東風です。お久しぶりです。
この話は私が8月1日に投稿した短編小説。
『幽霊船に、宝の鐘が響くまで。』
を一話にまとめて持ってきたものです。
元々3話構成のものを一話にしており、約5,000文字程度です。

前編は幽霊船長の過去
後編は今の船長で幽霊船戦
番外編は鳥居さん

の三話構成でした。
【前編】【後編】【後日談】というふうに区切りを置いてありますのでよろしくお願いします。

ぶっちゃけ書いててコレ普通に鳥居さん出てくるしこっちで出した方がよくね?って思いました。

序盤、やや残酷な描写ありです。
ただ東風はスバルと同じでハピエン村大好きなのでハッピーエンド確定です。

次はあくたんの話を書こうと思っています。楽しみに待ってて下さい!

それでは本編!どうぞ!




幽霊船に、宝の鐘が響くまで。

【前編】

 

 

 

 

私の故郷は、青い建物が綺麗な、何処にでもある普通の港町でした。

 

でもある日、海賊に襲われて、街は壊されてしまいました。

 

まだ子供だった私はなす術もなく、海賊に捕まり、奴隷にされました。

 

首に鎖を繋がれて、足には枷をつけられて、服はボロボロで、おおよそ普通の少女の服装とはかけ離れていました。

 

海賊船が錨をあげ、船を出そうとした時、海賊たちの断末魔が聞こえてきました。

 

私はその声がとても怖くて、ただじっと目をつぶって座り込んでいました。

 

暫くすると声が止みました。すると足音がこちらに近づいてきました。

 

私はただ震えて、嵐が過ぎるのを待つように、じっと目を瞑って神様に祈りました。

 

そして耳元で鎖が切れる音がしました。

 

「大丈夫かい? 酷いな。こんな可愛らしいお嬢さんにこんなことをするだなんて」

 

優しい声が聞こえました。こちらを本気で心配していることが声色で伝わってきました。

 

「目は開けられるかい? もちろん、嫌だったら大丈夫だよ」

 

私はこの人が海賊たちを倒したんだとここでやっと気がつきました。

そして私は恐る恐る目を開けました。

 

「うん、可愛らしい瞳だね。オッドアイと言うのかな? 黄色いトパーズのような綺麗な瞳と、赤いガーネットのような美しい瞳をしているね。……キミ、名前は?」

 

「マリン…」

 

「そうかマリンか! 良い名だ! ……そうだマリン! キミにぴったりの良いものがある! おじさんからのプレゼントだ!」

 

そういっておじさんは自分の胸につけていた水色の宝石を私の手に乗せました。

 

「アクアマリン。どうだ? キミにぴったりな宝石だとは思わないかい? キミは既に黄色と赤の宝石をその身に持っているからね。だったら僕が贈れる宝石は青色のアクアマリンだと思ったんだ! どうだい? …気に入ってくれたかい?」

 

「うん! ……あ、あの」

 

「ん? なんだい?」

 

「お、おじさんの名前は?」

 

おじさんはそんなのことを聞かれるなんて予想していなかったのか、豆鉄砲を食らったようにキョトンとして、数秒沈黙した後答えてくれました。

 

「僕……コホン! 俺の名はジャック! 七つの海を股にかけた男! ジャックだ!」

 

この人との出会いが、私の海賊としての原点です。

 

■■■■■■

 

ジャックさんは正義の海賊として他の海賊を懲らしめるために別の街へと向かってしまった。

 

1人残された私はボロボロの街を歩きながら、ただなんとなく教会へと向かっていた。

 

……いや、なんとなくというのは嘘だ。

 

私は小さい頃からこの教会が鳴らす鐘の音が大好きでした。ごく普通の、ありふれた幸せを実感できたから。

 

そんな音を聞けばまた歩き出せる気がしたんです。

 

教会に着きました。やっぱり街と同じように教会はボロボロで、以前のような厳格さは残ってはいませんでした。遺されたのは略奪による平和の破壊、ただそれだけです

 

ぽとぽとと雪のように儚い足取りで女神像の前へと足を運びました。

 

見上げれば建物と比べてほとんど無傷で残っていた女神像がありました。手にはカゴを持っていてその中にはガーネットが埋め込まれた鍵がありました。アレはきっと宝箱の鍵だ。そう私は思いました。

 

……私は無意識のうちにカゴへと手を伸ばしていました。

 

といっても本当に取るつもりだった訳ではないんです。ただなんとなく無意識のうちに惹かれてしまったんです。

 

あの鍵が持つ魅力や魔力に。

 

もしやこれが不可抗力というやつですか?

 

全く、罪な鍵ですね。

 

……決めた。決めました。

 

「私は誰かを守るために海賊になります」

 

そう、決めたんです。

 

■■■■■■

 

あれから数年後、私は海賊になりました。

 

山奥にあるボロボロマイハウスに住みながら少しずつ一味を集めて、みんなで船を買いました。

 

私は船長になりました。

 

海賊団の名前は『宝鐘海賊団』です。

 

私が大好きな、宝物のようなあの鐘の音から名前を取りました。

 

そこからまた数年。私たちは旅をしました。

七つの海を股にかけ、悪い海賊をボコボコのフルボッコにしたり、海底に眠る金銀財宝を集めたりしました。

 

でもある日、大切なブローチを無くしてしまいました。あの中にはアクアマリンが埋め込まれていたのに。

 

私はみんなの前で初めて泣きました。

構ってもらえなくて嘘泣きすることはありましたが、ガチ泣きは初めてでした。

 

そんな私を慰めるためにみんなは必死でアクアマリンを探してくれました。

 

無くしてから1週間が経った日。

 

「船長! やっと見つけましたよ!」

 

一味のみんなが私の大切なアクアマリンを見つけてくれました。

 

見つかったこと以上に、みんながここまで親身になって探し続けてくれたことが嬉しすぎて、今度は前回よりもガチ泣きしちゃいました。

 

ひとしきり泣いた後、私はみんなにとびっきりの笑顔でお礼を言いました。

 

「みんな! 私を選んでくれて、着いてきてくれて、本当にありがとう!」

 

こんなに素晴らしい一味に慕われて、私は世界でいちばんの幸せ者です。

 

本当に、幸せ者でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【後編】

 

 

「なぁ聞いたかよ、”極上の海賊の秘宝”の噂」

 

「あぁ、数百年前の女海賊が遺したっていう伝説の宝だな」

 

「そこまでは有名だけどな、俺は最近さらに詳しい話を聞いたんだぜ」

 

「おいおい、お前酔ってんのか? カミさんに叱られるぞ?」

 

「うるせぇ! 黙って話を最後まで聞きやがれ! ……なんでも今もその船が、幽霊船としてこの街の近辺で彷徨っているらしい」

 

「うへぇ……俺怖いの苦手なんだよな。あとで一緒にお手洗い行こうぜ」

 

「やだよめんどくさい。……どうやら満月の夜の0時。あー、昔風に言うなら、テッペンってやつだな。その時間に幽霊船を見たって奴がここ最近増えているらしい。どうだ、お前も行かないか?」

 

「だが断る!」

 

「言うと思ったぜ腰抜けが」

 

「んだとぉ? お? 殴り合いすっか? お?」

 

「『一緒にお手洗い行こうぜ』なんて30にもなって言ってるお前が殴り合いだぁ? おいおいお前こそ酔ってるんじゃねぇか?」

 

「んだとぉ!」

 

「かかってこいやぁ!」

 

……満月のテッペンに幽霊船……ですか。

 

「バイトさんはどう思いますか?」

 

「私だったら一度は見てみたいですね! 幽霊船!」

 

「おーい弟子ー、厨房手伝えー」

 

「あっ、はーい! すみませんお客さん。師匠に呼ばれてるので行きますね」

 

「あっいえいえ、大丈夫ですよ〜。焼き鳥、美味しかったです」

 

「ありがとうございます! では失礼します!」

 

……店員さんがいなくなって、寂しくなったので私はお会計をすることにしました。

 

「a! 730円になり……なり……なります!」

 

なんかサメのコスプレした子がレジやってたけど、あそこって居酒屋じゃなくてコンカフェだったのか?

 

……まあいいか。

 

幽霊船、そして”極上の海賊の秘宝”。

 

私が大好きなおとぎ話だ。

 

今夜は満月! 0時に、なけなしのお金で買った小舟で幽霊船を探しますか!

 

……あとテッペンって死語じゃないよね?

 

……死語じゃ………な、………ない………ですよね?

 

■■■■■■

 

ほ、本当にありましたよ幽霊船。

 

私の船の何十倍も大きいですね。

 

コレだけ大きければ中にある財宝の数も期待できます。

 

で、でもやっぱりいざ乗り込むと思ってたよりも怖いですね。ギギギ……ギギギ……って揺れてますよ。

 

船内を散策していると床で何かが光り輝いていました。満月なのでよく見えますね。

 

拾い上げてみるとそれはそれは綺麗なアクアマリンでした。

 

拾い上げた直後、突然船内から足音が聞こえてきました。

 

階段をゆっくりと降ってきています。

 

やがて姿を現したのは、長い白い髪の、何処か見覚えのある少女でした。

 

『それは、私のもの』

 

少女がそう言った直後、周りに落ちていた武器がふわふわと浮遊し始めました。

 

『若き盗人よ、代償は命を持って償え』

 

少女がそう言った瞬間周りで浮いていた武器が私を目掛けて飛んできました。止まない雨のように延々と追いかけてきます。一発一発が弾丸のように速くだいぶ苦戦しましたが、接近戦へと持ち込み、反撃に成功しました。

 

足場は崩れ、少女は泡沫のように沈んで行きました。

 

なんとか戦闘に勝利できた私は急いで”極上の海賊の秘宝”を探し始めました。

 

宝物庫のような部屋を見つけました。

 

中には目の眩むような金銀財宝があたり一面に広がっていました。その中でも特に目を引いたのは赤いガーネットでした。

 

持ってきた袋に急いで宝を入れていると、またあの少女の声が聞こえました。

 

『それは私のもの。そう私のものだ』

 

さっきと同じように周りの武器が宙に浮かび、こちらに向かってくる。

 

しかもガイコツに呪いが宿って追いかけてきました。

 

お宝を持ちながらじゃ無理だ!

 

私は宝を一度置いておいて逃げました。

 

でも宝箱の前で追い詰められちゃいました。

 

亡霊たちが私の体を掴み、少女には首にナイフを当てられてしまいました。

 

「まだまだぁ!」

 

『!?』

 

私は少女の手をあえて引っ張って、亡霊たちを引き剥がしました。

 

そのはずみで宝箱が開きました。

 

その瞬間宝箱から眩い光が溢れ出しました。

 

宝箱の中にはうずくまりながら白骨化したであろう死体がありました。

 

それを見た瞬間少女は苦しみだし、手が透けているようにも見えました。

 

そして少女は宙へと浮かび、髪色が変わったのです。

 

そこでやっと私は気がつきました。

 

少女の服の胸あたりには、何かがあったであろう傷跡があったのです。

 

そして見覚えのあるなと思っていたアクアマリン。

 

そしてあの髪色。

 

「貴方は、私だったんですね」

 

そう気がついた瞬間宝箱から金貨の龍が現れました。

 

幽霊の私は龍の頭に立っています。

 

龍の咆哮ひとつで船が真っ二つに割れるほどの威力です。

 

でも、私は決めたんです。

 

貴方を救いたいと。

 

金貨の龍の背を走り抜けて、私は金貨の龍の頭を剣で突き刺しました。

 

その一撃で金貨の龍は砕け、幽霊の私は私に怯えていました。

 

そんな私を、私は剣を捨てて抱きしめました。

 

幽霊の私はきょとんとしていましたが、自分が受け入れられたことで泣いてしまいました。

 

暫くして幽霊の私が喋り出しました。

 

『「マリンのお宝は…この景色とここにいるキミたちです」……だなんて、もう遅いかな?』

 

「ううん。遅くなんてないよ。きっとみんな向こうで待っててくれてるよ」

 

『そう……だね。ありがとう、私。……この船は貴方のもの。今度は貴方のもの。どうか、私の様にはならないでね』

 

「約束する。約束するよ! 7つの秘宝や伝説のエルドラドを見つけた後、今度は私がみんなと必ず──必ず一緒にいるよ!」

 

『──ありがとう』

 

故郷の港町から鐘の音が聞こえる。

幽霊の私はどんどんと薄くなっていく。

 

『私ね、アクアマリンに宿っていたんだ。昔、大切な人からもらった、一味のみんなに見つけてもらった大切な、大切な宝物だから』

 

「……うん」

 

『だから私に託すね』

 

「……うん」

 

『頑張ってね。未来の私』

 

「お疲れ様、過去の私」

 

夜明けとともに鐘の音が聞こえる。さっきよりも大きく響いている。

 

『この船の名前はね、『宝鐘海賊団』っていうんだぁ……そっちは?』

 

「『宝鐘海賊団』だよ」

 

『そっかぁ……お揃いだね』

 

「…うん、そうだね……」

 

もう、幽霊の私の下半身は消えている。

すぐに上半身も消えてしまうだろう。

 

『”極上の海賊の秘宝”はね、私と、一味のみんなだったんだよ?』

 

「うん、今度はしっかりと手に入れるよ」

 

『頑張ってね』

 

「うん…」

 

私の目から涙が溢れ出ている。

 

『キミたち……おま…た……せ…………』

 

そう言って幽霊の私は成仏していった。

 

こうして曰くを宿した船は、希望を残して航くこととなった。

 

幽霊船に、宝の鐘が響くこと。

 

それが幽霊船戦の決着だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【後日談】

 

 

〜現代〜

 

「ふー……誕生日ライブ疲れたー!」

 

「お疲れ様ですマリンさん!」

 

「あっ、どうも鳥居さん! 見てくれたんですか! ありがとうございます!」

 

「新曲凄かったですよ! MV凄すぎてもう鳥肌立ちましたもん! 鳥肌が立ちすぎて鳥になっちゃうかと思いましたよ!……ま、既にワイは『鳥居』ですけどね!」

 

「………」

 

「………無言やめてくださいよワイが悪かったんで」

 

「………ああ、すみません気を失ってました」

 

「!?!?!? だ、大丈夫ですかマリンさん!」

 

「昔のこと思い出したらちょっと体力使っちゃって……すみません仮眠室借ります」

 

「どうぞ! どうぞ! 何か欲しかったら言ってください。作ったり買ってくるんで!」

 

「ありがとうございます……ふぁーあ。ねむい……」

 

マリンさんはトコトコと仮眠室へと向かっていった。

 

「よう鳥居さん」

 

「うわぁびっくりしたぁ!」

 

急にレインボー色の一味が話しかけてきた。

彼は体が虹色に光る一味、通称七味だ。

 

「船長の新曲! アレめっちゃ良かったですよね!」

 

「えぇ、考察の幅があるというか、なにか不思議と引き込まれる感覚がありましたよ」

 

「まあたぶんあれ実体験ですしね」

 

「本当ですか!! って、なんで知ってるんですか?」

 

「……なんとなくですよ」

 

「なんとなく? ですか?」

 

「あの、鳥居さん。船長は今どこに?」

 

「マリンさんですか? マリンさんはいま仮眠室に居ますよ」

 

「ん……今誰か船長のこと呼びましたか?」

 

ちょうどいいタイミングでマリンさんが目をこすりながら現れた。

 

「あ! 船長!」

 

「げ! 七味くん…」

 

「船長、アクアマリンって今身につけているもの以外にありますか?」

 

「え、えぇ、肌身離さずもう一つ持っていますけど……なんでですか?」

 

「ちょっとだけ見せてもらえませんか?」

 

「別に大丈夫ですけど……壊さないで下さいね?」

 

七味……いや、『ジャック』さんは宝石をとても大切そうに眺めていた。

 

「大切にしてくれてたんだなぁ……」

 

どこか懐かしそうな顔をしてアクアマリンを見つめていた。

 

「……ありがとうございます、船長」

 

「い、いえ別にそんなおおそれたことじゃありませんから……」

 

ジャックさんはいつになく真面目な顔で。

 

「……マリン。前はできなかったけど、今度は一緒に旅をしましょう」

 

そしてとても優しい声でマリンさんに語りかけた。

 

「………マリン?」

 

あっ(察し)

 

「あっ(察し)」

 

「マリン「船長」だろぉおおおおおん!?!?!?!?」

 

誕生日ライブ後だと言うのに、マリンさんは今日もキレッキレだった。

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