泣いた雪鬼   作:ディヴァ子

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「泣いた赤鬼」:強面の鬼たちの、美しくも哀しい友情の物語。


目を覚ませ

 ハ~イ♪

 ボク、ゴシャハギ。世間一般的に「雪鬼獣」と分類される、牙獣種の1匹だ。

 ……え、何でそんなに自分に詳しいのかって?

 ボクが人間が大好きだからだよ~♪

 ハンターさんの方は、そう思って無いみたいだけどね。

 むしろ、狩りの対象、獲物としか見てないから、色んな情報を独り言でベラベラ喋ってくれるから、嫌でも覚えるよね。モンスターは人間が思っている程、脳筋じゃないんだよー。

 そう言えば、風の噂でボクみたいに人間と関りを持つディアブロスが何処かに居るらしいけど、本当に存在するなら会ってみたいなぁ。どうやったらそこまで仲良くなれるのか、是非ともお聞きしたい所存。

 まぁ、それはそれとして、どうしてモンスターの僕が人間が好きなのかというと――――――過去に命を救われた事があったからだ。

 ボクがまだまだ小鬼サイズだった頃、空から真っ赤な流星が降り注いで、寒冷群島は甚大な被害を受けた。同じような事が砂原の方で起こったらしいけど、ここは無人の秘境だから話題になる事は無かったけどね。

 赫く輝く不思議で不気味な隕石が次々と落ちて来て、氷土やモンスターを射抜く地獄絵図。ボクのお母さんも、その時に死んだ。

 そして、いよいよ以て死の凶星がボクを穿とうとした、その時。

 

「気焔万丈!」

 

 僕らと変わらないくらいにゴリマッチョな、強面のお兄さんが隕石を切り裂いた。「君は本当に人間?」と聞きたくなったが、後に知った情報によれば、ハンターという職業の人は大体こんな感じなのだとか。すご~い。

 

「……赫い流星、不吉の前触れ。やはり、起こるというのか、「百竜夜行」が……」

 

 その後、ハンターのお兄さんはよく分からない事を呟くと、ラージャンよりも颯爽と跳び去って行ってしまい、それっきりになってしまったけど、何時かもう一度会いたいとは思ってる。

 それからは特に何事も無く、何年何十年と時が過ぎ、ボクはスクスクと成長していった。

 ――――――何か一時的に大型のモンスターが姿を消し、一部の種族は怒り狂ったように暴れていた時もあったらしいけど、その時ボクは人間の真似事として旅に出ていたので、与り知らぬ出来事だね。それがお兄さんの言っていた、百竜夜行だろうか?

 ともかく、旅に飽きたボクは故郷へ帰って来た訳だけど、未だに人間とは仲良くなれていない。原因は分かっている。この強面のせいだ。

 いや、そりゃあ雪鬼獣なんて呼ばれますよね。前に水鏡で自分の顔見て引っくり返った事あるもん。誰か整形してくれ。

 これじゃあ、何時まで経っても人間と友達になれないじゃないか!

 だが、現実はかくも非情で残酷である。モンスターどころかハンターにも全力で恐れられ、大体は武器を向けられる。一応は対話を試みるが、哀しいかな、モンスター故に言葉は話せないので、有耶無耶の内に水泡に帰してしまい、仕方なく狩られる前に逃げ帰るのが常だ。

 嗚呼、ボクも人間とお喋りしたい。

 もしくは、人間に成りたい。

 

 だって、モンスターの世界って自分以外は敵なんだもの……。

 

『グゥゥゥ……』

 

 そして、今日も今日とて初見のハンターさんにタコ殴りにされてしまい、惨めに大粒の涙を流しながら、棲み処の洞穴に戻って来た。

 あーあ、やんなっちゃうな。もう不貞寝しよ。おやすみなさ~い。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

《そんなに人間が好きなの?》

 

 何も無い世界に、真っ白な女の子が立っている。

 

《自分を殺しに来るような相手なのに?》

 

 女の子は、呆れたような、それでいて面白がっているような、不思議な表情でボクを見つめ、

 

《……ウフフ。なら、その願い、叶えてあげる。悪しき赫耀の死兆星を生き延びた、ご褒美にね……》

 

 ちちんぷいぷい、という若干ダサい身振り手振りで踊り出し、

 

《さぁ、少しはワタシを楽しませて?》

 

 ボクに魔法を掛けて来た。

 ちなみに、呪文は「オラクル☆ケミカル★ミラル~ツ♪」でした。

 ……恥ずかしくないの?

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

『………………?』

 

 何じゃ今の意味不明な夢は。

 ……ああ、そうだよ。ボクは時々夢を見る。

 ゴシャハギは寒冷群島の生態系において上位に位置する種族なので、割かし堂々と眠るし、何なら夢を見る事さえある。

 今回もまた、そのパターンなのだろうが――――――マジで何だ、あの夢は。何が悲しくて、魔法少女にオラクル☆ケミカル★ミラル~ツされなきゃイカンのか。訳が分からないよ。

 ま、良いや。どうせ今日も代り映えのしない日常が始まるんだ。誰かの命を頂いて、独りぼっちで眠るのである。

 

『………………!?』

 

 しかし、目覚めの気伸びをしようとして、自分の身体に違和感を覚えた。洞窟がやたら広く感じるし、妙にスースーする気がする。というか、ボクの腕や脚って、こんなに細かったっけ?

 

『………………!』

 

 まさかと思い、例のあの時から見ていない水鏡を覗き込んで、ボクは再びビックリ仰天した。

 だが、今回は恐怖で引っ繰り返った訳ではない。むしろ、喜びのあまり天を仰いでしまった。

 

 そう、女の子のレナナーレ的な魔法のおかげか、ボクは白髪金眼の少年になっていたのである。

 

 夢だけど、夢じゃなかった!




◆ゴシャハギ

 尖爪目堅爪亜目鬼獣科に属する牙獣種の大型モンスター。別名は「雪鬼獣」。
 寒冷地のモンスターらしく、全身が白っぽい毛皮で覆われている。骨格こそアオアシラやウルクススと同じ熊型だが、青白い鬼瓦のような強面と、ラージャンともタメを張れる程の逞し過ぎる巨体のせいで、全然そうは見えない。その見た目に違わず、丸太のような剛腕でぶん殴ったり、引き裂いたりするパワーファイターである。
 だが、一番の特徴は氷ブレスによって自らの腕に生成する「氷刃」で、どう考えても出刃包丁にしか見えないそれをぶん回す姿は、まさに鬼かナマハゲ。たまに鈍器も作る。
 また、先に述べた通り、こんな妖怪染みた姿ながらウルクススと同系統の骨格なので、兎のように跳躍し、突然背後を取って来る事もある。
 このような牙獣種に有るまじき戦闘能力故に、寒冷群島の生態系では最上位の捕食者として君臨しており、夜な夜な獲物を求めて彷徨い歩く姿が見られるという。ゴシャハギというより追剥ぎだとか言ってはいけない。
 ちなみに、縄張り意識が強く一所からあまり動かないヨツワミドウとはよく喧嘩になり、あくまで相撲を取ろうとする向こうの意見なんぞ知った事かと、馬乗りになってタコ殴りにするショッキングな場面もある。
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