はいはい、いつも通りのアタシ、アヤメだよ。
何と言うか、前回の狩猟はホラーだったわね。本当にゾンビが湧くとは思わなかったし、フルフルが本当の化け物になるとは予想だにしなかった。口から笑顔がいっぱいってどういう事なの?
だが、どんなに奇妙奇天烈魑魅魍魎だろうと、所詮は動く死体と奇怪竜。ボウガンで蜂の巣にしてやりましたとも。フルフルに止めを刺したのはユウタだけども。
結局何だったんだ、あれは。空に煌めいた赫い彗星と関係あるんだろうか。
それについてはウケツケジョーが編纂者らしく調査がしたいとの事なので、任せてみるとしよう。小難しいのは専門外だし。
……ああ、そうそう、ユウタについてなんだけどね、
『あーい』
「えっ、新しいライトボウガン?」
何と新たなライトボウガンをプレゼントしてくれたんだ。
帰って来てからハモンさんに何かしら働き掛けてたみたいだけど、まさかおニューの武器を、それもアタシの為に依頼していたとは。ちょっと泣きそうになったよ。
確かに言われてみると、「夜行弩【梟ノ眼】」以外は「カリプスイェーガン」と「風鎌銃ローザレクス」くらいしか持ってなかったっけ。無属性だから物理ダメージ以外は望めないし、貫通弾が通じ難い相手には深刻な火力不足に陥るだろう。精々「斬裂弾」が刃に弱いモンスターに効くかどうかって所か。「徹甲榴弾」は弾数からして牽制か一時的なダウンしか狙えないし。
出来ればで良いから、「徹甲榴弾」メインか状態異常撒きのボウガンが欲しいなぁ。
ちなみに、現状だと布が巻かれてて中身が見えないんだけど、どんな出来栄えなのかはユウタも知らないらしい。開けてのお楽しみって事か。やっぱり意外とお茶目だねぇ、ハモンさん。
さてさて、気になる中身は何かな~?
年甲斐もなくワクワクしながら封を開けた、アタシたちの目に飛び込んで来たのは、
フルフルの頭みたいな注射器だった。
――――――えっ、どういう……事、なの?
「これは……何?」
『りょうさんき?』
「いや、そうだけども」
そういう事じゃないのよ。これが何だって、聞いているんだ。こんなライトボウガンありか!?
『しゅん……』
ああっ、シュンとしないで!
中身が予想外にも程があるのは絶対に撤回しないけども、ユウタが悪いんじゃない。本当の悪魔は、こんなデザインを思い付いちゃった、お茶目なハモンだから!
つーか、何をどうしてこうなった。しかも、ロングバレルが針じゃなくて誰かの顔面だし。確実にわざとだろ。「ほう、そりゃ面白い」とか考えて実行したに違いない。流石は折り鶴やお団子を武器にしてしまう男。今度会ったら徹甲榴弾を速射で全弾ぶち込みたい。
えぇい、くそっ、せっかくのサプライズプレゼントだったのに、何でこんな事になるんだ!?
「アヤメさん、里長たちがお呼びですよ」
と、居た堪れない気持ちのせいですっかりお通夜ムードになっていたアタシたちに、ミノトさんがお呼び出しを掛けてきた。
「……どうかされましたか?」
「何でもないです」『りょうさんき……』
アタシはそっと布を閉じた。
◆◆◆◆◆◆
「来ましたね、皆さんッ!」
……で、着いてみれば、里長やゴコク様に加えて、ウケツケジョーまで居た。“調査をする”というのはマジだったらしい。半分くらいは冗談だと思ってたんだけど。
「疑っている顔ですねッ! 見れば丸分かりですよッ!」
「いや、いいから早く本題に入ってくれませんかねぇ?」
「情緒が足りない人ですねッ!」
お前に言われたくはないのよ。
「さて、本題ですが……例のゾンビ化の原因が分かりましたッ!」
おっと、いきなり大きく出たね。何処まで信用出来るやら。
「それが“コレ”ですッ!」
そう言って、ウケツケジョーは懐から布に包まれた何かを取り出した。まさかフルフルの一部だとかじゃないだろうな。
「実はあの後、ウツシさんにお願いして遺体とフルフルの一部を回収して貰ったのですが――――――」
「何でだよッ!」『あぃやーっ!』
「えっ、何ですか急にッ!?」
喧しい。暫く見たくないんだよ、フルフルは!
「何があったのかは知りませんが、見て貰いたいのは“コレ”ですッ!」
しかし、ウケツケジョーに知る由などある筈もないので、普通に紐解きやがった。こ、こいつ……!
「『なぁにこれぇ?』」
だが、出て来たのはフルフル特有のブヨブヨした白い物体ではなく、赫茶けた鱗のようなナニカ。マジで何これ?
「実はコレ、フルフルの背中の皮膚なんですッ! 死体から剥ぎ取りましたッ!」
「えっ……」
何処からどう見ても硬質な鱗なんだけど、どういう事なのよ?
「これが一体どういう物なのかまでは流石に分かりませんが、あの時空から降り注いだ赫い物体が、細胞を変質させたのだと思われますッ! 実際、変化していたのは着弾点を中心とした一部でしたからッ! 言うなれば“
どうしよう、ウケツケジョーがちゃんと編纂者している。これだけの事態ですら“興味津々”とか言っちゃう辺り、それらしい。
いや、それよりも、この鱗だ。まさかシャガルマガラが持ち出されるとは思わなかったが、確かに彼女の言う通り、少々毛色が違う。
再発した百竜夜行といい、このカムラの里で一体何が起きようとしているんだ……?
◆受付嬢(MHW)
「新大陸古龍調査団」第5期団のメンバーであり、主人公のバディを務める編纂者。アップヘアとそばかすが印象的な年若い女性で、動き易い服装に身を包み、ボトムズみたいな多機能ゴーグルを付けている。祖父が新大陸古龍調査団の第1期団に参加しており、志半ばで帰郷した彼の夢を代わりに叶える為、家族の声援に見送られながら第5期団に参加した。
ここまで聞くと可愛い感じなのだが、実はとんでもないトラブルメイカーで、意気揚々と新大陸への船出をすればゾラ・マグダラオスの古龍渡りに巻き込まれ、どうにか翼竜を利用した脱出し、新大陸へ到着した瞬間にドスジャグラスとアンジャナフのジュラシックワールドにかち合うなど、本人の意志とは無関係に様々な厄介事に主人公を道連れにしている。ついでに主人公の手柄を「私たちの成果」とか言っちゃう、ちゃっかりした所もある。
また、小柄な身体に見合わぬ健啖家であり、「迷ったら食ってみろ」という祖父の言葉通りに何でもかんでも口に運んで食い尽くそうとする。おそらくアステラの食糧事情を一番圧迫している。その食いっぷりは調査団メンバーから「まるでイビルジョーのようだ」と揶揄される始末だが、そんな彼女が後にIBでイビルジョーにライド・オンする事になろうとは、この時は誰も知る由がなかったのであった……。
そうした面倒臭い一面からか、「ウケツケジョー」呼ばわりされて嫌われる傾向が高いものの、編纂者という立場の関係上、活躍自体は歴代受付嬢でも最上位級で、ゼノ・ジーヴァ及びムフェト・ジーヴァ、イヴェルカーナにアン・イシュヴァルダと言った古龍たちと巡り合い、禁忌の存在たるアルバトリオンとミラボレアスにも出会ったりと、見る事すら珍しい伝説たちを目にしているなど、目覚ましい活躍を見せている。
ちなみに、今作の彼女は現大陸でミラボレアスと一戦交えた帰り道であり、主人公たちと空中帆船で遊覧飛行を楽しんでいたのだが、何かしらの理由で船から投げ出されて寒冷群島に墜落し、自分に関する大体の事が頭からすっぽ抜けた。
だので、調査団メンバーは現在、血眼になって彼女を捜索している。何時もの迷惑な受付嬢である。