泣いた雪鬼   作:ディヴァ子

13 / 30
大規模百竜夜行、勃発。


閑話:クロスロード

 その後ウケツケジョーは里に何かしらの情報が無いかを調べる為、修練所に遺されているという壁画の有る場所へと向かって行った。寝泊りも壁画の前でする程、缶詰状態で調査しているらしい。そこまで重要なのか、あの壁画?

 まぁ、難しい事は編纂者に任せよう。アタシはハンター、モンスターを狩るのが仕事だ。

 さぁて、今日も今日とて一狩り行こうぜ……と言いたい所だが、そうはイ神崎だった。

 

「皆の者、よく集まってくれた! ……察している者もいるだろうが、2回目となる大規模な百竜夜行が勃発した! カムラの里はこれより、完全防衛体制に入る! 全ての狩猟と外界との交流を自粛し、百竜夜行を迎え撃つ準備に取り掛かるぞ!」

 

 そう、今までの散発的な物とはレベルが違う、2回目の大規模な百竜夜行が勃発したのである。

 まさしくカムラの里、存亡の危機。呑気に狩りなんぞしている場合じゃ無い。ウツシのせいでアタシも里の出身だと知ってしまった以上、戦わねば。

 

「ユウタ、アンタは……」

『うぁーう!』

「そうか……」

 

 ユウタもやる気満々か。彼は外から来た孤児だから命を張る筋合いは無いのだが――――――本人がこれ程までに高揚しているんだし、それこそアタシが止める筋合いは無い。

 

「ヨッちゃんはオトモ広場に行ってようね?」

『ちゃま~』

「……ウケツケジョーとエヴァの事、頼むよ」

『おちゃま!』

 

 ヨッちゃんは可愛いなぁ、デカいけど。

 という事で、ヨッちゃんはウケツケジョーたちと一緒にお留守番。オトモ広場は緊急時の避難場所も兼ねているので、ある意味丁度良い。ヨッちゃんには厄介者たちを見張っていて貰おう。百竜夜行にひょっこり乱入されても困るからな。

 

「お前は……」

『ガァヴォルルルッ!』

「やる気だけは有るみたいだね」

 

 ちなみに、リベロは参戦する模様。そろそろ上位にレベルアップしたいらしい。いい加減「零下の白騎士」としての自信を得たいのだろう。君ここに来てから贅沢三昧だったからね。少しは運動しろ。あんまり食っちゃ寝ばっかりしてると「鈍足の豚野郎」になるぞ。

 

「やぁ、アヤメ! キミも参加するんだね!」

 

 と、色々と身辺整理していたら、通りすがりのウツシに話し掛けられた。拳を入れてないで、お前も働けよ。

 

「まぁ、これでも里の一員……らしいからね」

 

 正直、あんまり実感は湧かないけど。3歳の頃なんて覚えてないわよ。居心地が良いのは認めるけどね。

 

「ま、あまり無理はするなよ! 死んだら終いだからね!」

「縁起でもない事を言うなよ」

「それもそうだな! ユウタくんの為にも、しっかりとな!」

 

 それだけ言うと、ウツシは颯爽と去って行った。……何だよ、意地でも死ねなくなったじゃないか。

 

 ――――――「第2次百竜夜行」まで、後少し。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 百竜夜行。

 数百年前からカムラの里を襲い続ける、謎の災禍。

 幾百のモンスターが恐慌状態で雪崩れ込んで来る現象なのだが、その原因は釈然としない。少なくとも何かに追い立てられている(・・・・・・・・・・・・・)のは分かるのものの、元凶の正体は未だに掴めていないのだ。

 とは言え、百竜という現実的な脅威が押し寄せているのだから、迎え撃つしかなかろう。その為にカムラの里は長年に亘って準備を重ね、独自の戦闘技術を磨き、武装した砦を幾つも築いてきたのである。数は4つ。東西南北、四方を守る要塞だ。

 そして、今アタシが居るのは、南側の第3砦。主に砂原から来るモンスターを迎撃する場所である。

 

『うぁーい!』『コォルルルッ!』

 

 もちろん、ユウタとリベロも一緒だ。何だかんだで、この暑がりコンビは頼りになるから、是非とも頑張って貰おう。何たって怪力ハンターとベリオロスだからね。並みの大型モンスターなら鎧袖一触に出来る……と思いたい。リベロが若干心配だなぁ、まだ下位だし。

 

「来ます!」

 

 しかし、そんな事を気にしている場合では無くなった。遂に百竜夜行が到達したのである。

 

「『うへぇ……』」『グゥゥゥ……』

 

 うーわ、いっぱい居る。話に聞く「第1次百竜夜行」より多いぞ、これ。

 敵状は――――――、

 

・破砦役:バサルモス

・突撃隊:ボルボロス、ディアブロス、ラージャン

・機動隊:リオレウス、リオレイア

 

 うーん、クソ面倒臭い面子!

 リオ夫婦は閃光玉で叩き落せば良いとしても、ボルボロスとディアブロスは構わず大暴れするだろう。ラージャンに至っては、怒って闘気化してしまうかもしれない。

 だが、一番面倒なのは破砦役のバサルモスだ。斬っても叩いても撃っても大して効かない、どっちが砦か分からないようなモンスターである。こいつこそ、リベロの旋風氷ブレスで足止めして欲しい所。バサルモスは硬いけど、状態異常には弱めだからな。

 アタシは第3砦全体の遊撃役として頑張るとしよう。背中は里守バリスタ隊に任せられるし、最悪ピンチの時は「里の猛き焔」たちに助けて貰えるから、安心して戦える。

 ……そうでも思わなきゃ、やってられない。本当に、よくこんなモンスターの津波に真っ向から立ち向かえるな。

 しかし、ユウタが最前線に立っているのに、上位ハンターのアタシが臆する訳にはいかない。

 

『グヴェアアアアアアッ!』

「来いやぁ!」

 

 アタシは先頭を突き進むディアブロスに、扇回跳躍で文字通り飛び掛かった。




◆百竜夜行

 文字通り「百竜」が「夜行」の如くカムラの里へ押し寄せる、謎の現象。
 モンスターの種類は多種多様で纏まりが無いものの、まるで示し合わせたかのように役割分担が為されており、必死になって砦を破壊しようとする。何故か寒冷群島のモンスターは混じっていないが、理由は不明。
 数百年に亘って原因不明のままだったが、後に「猛き焔」の活躍により遂に判明。風神龍と雷神龍の求愛活動に巻き込まれたモンスターが、我先にと逃げ惑った末に“立て籠もり易そうな場所”へ雪崩れ込んでいるだけだという事が分かった。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。