その後ウケツケジョーは里に何かしらの情報が無いかを調べる為、修練所に遺されているという壁画の有る場所へと向かって行った。寝泊りも壁画の前でする程、缶詰状態で調査しているらしい。そこまで重要なのか、あの壁画?
まぁ、難しい事は編纂者に任せよう。アタシはハンター、モンスターを狩るのが仕事だ。
さぁて、今日も今日とて一狩り行こうぜ……と言いたい所だが、そうはイ神崎だった。
「皆の者、よく集まってくれた! ……察している者もいるだろうが、2回目となる大規模な百竜夜行が勃発した! カムラの里はこれより、完全防衛体制に入る! 全ての狩猟と外界との交流を自粛し、百竜夜行を迎え撃つ準備に取り掛かるぞ!」
そう、今までの散発的な物とはレベルが違う、2回目の大規模な百竜夜行が勃発したのである。
まさしくカムラの里、存亡の危機。呑気に狩りなんぞしている場合じゃ無い。ウツシのせいでアタシも里の出身だと知ってしまった以上、戦わねば。
「ユウタ、アンタは……」
『うぁーう!』
「そうか……」
ユウタもやる気満々か。彼は外から来た孤児だから命を張る筋合いは無いのだが――――――本人がこれ程までに高揚しているんだし、それこそアタシが止める筋合いは無い。
「ヨッちゃんはオトモ広場に行ってようね?」
『ちゃま~』
「……ウケツケジョーとエヴァの事、頼むよ」
『おちゃま!』
ヨッちゃんは可愛いなぁ、デカいけど。
という事で、ヨッちゃんはウケツケジョーたちと一緒にお留守番。オトモ広場は緊急時の避難場所も兼ねているので、ある意味丁度良い。ヨッちゃんには厄介者たちを見張っていて貰おう。百竜夜行にひょっこり乱入されても困るからな。
「お前は……」
『ガァヴォルルルッ!』
「やる気だけは有るみたいだね」
ちなみに、リベロは参戦する模様。そろそろ上位にレベルアップしたいらしい。いい加減「零下の白騎士」としての自信を得たいのだろう。君ここに来てから贅沢三昧だったからね。少しは運動しろ。あんまり食っちゃ寝ばっかりしてると「鈍足の豚野郎」になるぞ。
「やぁ、アヤメ! キミも参加するんだね!」
と、色々と身辺整理していたら、通りすがりのウツシに話し掛けられた。拳を入れてないで、お前も働けよ。
「まぁ、これでも里の一員……らしいからね」
正直、あんまり実感は湧かないけど。3歳の頃なんて覚えてないわよ。居心地が良いのは認めるけどね。
「ま、あまり無理はするなよ! 死んだら終いだからね!」
「縁起でもない事を言うなよ」
「それもそうだな! ユウタくんの為にも、しっかりとな!」
それだけ言うと、ウツシは颯爽と去って行った。……何だよ、意地でも死ねなくなったじゃないか。
――――――「第2次百竜夜行」まで、後少し。
◆◆◆◆◆◆
百竜夜行。
数百年前からカムラの里を襲い続ける、謎の災禍。
幾百のモンスターが恐慌状態で雪崩れ込んで来る現象なのだが、その原因は釈然としない。少なくとも
とは言え、百竜という現実的な脅威が押し寄せているのだから、迎え撃つしかなかろう。その為にカムラの里は長年に亘って準備を重ね、独自の戦闘技術を磨き、武装した砦を幾つも築いてきたのである。数は4つ。東西南北、四方を守る要塞だ。
そして、今アタシが居るのは、南側の第3砦。主に砂原から来るモンスターを迎撃する場所である。
『うぁーい!』『コォルルルッ!』
もちろん、ユウタとリベロも一緒だ。何だかんだで、この暑がりコンビは頼りになるから、是非とも頑張って貰おう。何たって怪力ハンターとベリオロスだからね。並みの大型モンスターなら鎧袖一触に出来る……と思いたい。リベロが若干心配だなぁ、まだ下位だし。
「来ます!」
しかし、そんな事を気にしている場合では無くなった。遂に百竜夜行が到達したのである。
「『うへぇ……』」『グゥゥゥ……』
うーわ、いっぱい居る。話に聞く「第1次百竜夜行」より多いぞ、これ。
敵状は――――――、
・破砦役:バサルモス
・突撃隊:ボルボロス、ディアブロス、ラージャン
・機動隊:リオレウス、リオレイア
うーん、クソ面倒臭い面子!
リオ夫婦は閃光玉で叩き落せば良いとしても、ボルボロスとディアブロスは構わず大暴れするだろう。ラージャンに至っては、怒って闘気化してしまうかもしれない。
だが、一番面倒なのは破砦役のバサルモスだ。斬っても叩いても撃っても大して効かない、どっちが砦か分からないようなモンスターである。こいつこそ、リベロの旋風氷ブレスで足止めして欲しい所。バサルモスは硬いけど、状態異常には弱めだからな。
アタシは第3砦全体の遊撃役として頑張るとしよう。背中は里守バリスタ隊に任せられるし、最悪ピンチの時は「里の猛き焔」たちに助けて貰えるから、安心して戦える。
……そうでも思わなきゃ、やってられない。本当に、よくこんなモンスターの津波に真っ向から立ち向かえるな。
しかし、ユウタが最前線に立っているのに、上位ハンターのアタシが臆する訳にはいかない。
『グヴェアアアアアアッ!』
「来いやぁ!」
アタシは先頭を突き進むディアブロスに、扇回跳躍で文字通り飛び掛かった。
◆百竜夜行
文字通り「百竜」が「夜行」の如くカムラの里へ押し寄せる、謎の現象。
モンスターの種類は多種多様で纏まりが無いものの、まるで示し合わせたかのように役割分担が為されており、必死になって砦を破壊しようとする。何故か寒冷群島のモンスターは混じっていないが、理由は不明。
数百年に亘って原因不明のままだったが、後に「猛き焔」の活躍により遂に判明。風神龍と雷神龍の求愛活動に巻き込まれたモンスターが、我先にと逃げ惑った末に“立て籠もり易そうな場所”へ雪崩れ込んでいるだけだという事が分かった。