泣いた雪鬼   作:ディヴァ子

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ただそれだけで、英雄の証さ!


閑話:星を追う子ども

「何でバルファルクがこんなに、こんな所に!?」

 

 天彗龍バルファルク。

 「遺群嶺」と呼ばれる、頂に円柱状の巨岩塔が聳え立つ摩訶不思議な山脈に棲息し、滅多な事では地上に姿を見せない事から、長らく伝説上の存在として語られていた古龍である。

 「龍気」なる龍属性のエネルギーを操り、超高々度を物ともせず超音速で飛び回る事が可能で、赫い緒を引きながら高速飛行する姿が彗星のように見える事から、「天彗龍」の別名が付いた。

 ようするに、バルファルクが地表に姿を現す事自体が異常なのだ。

 それでなくとも、漏れ出した龍気で赫く染まった身体や、親の仇を探すかのように血走った狂気的な眼は、傍から見ても完全に狂っている。大抵の古龍なら持ち合わせているであろう“知性”や“理性”は微塵も感じられない。

 それどころか、警戒態勢を取るアタシたちの事など気にも留めず、辺りを見渡したかと思うと、

 

『ギャアァッ!』『ギャヴギャヴ!』『キキィッ!』

「こいつ、死体を――――――」

 

 親鳥に群がる雛鳥の如く、息絶えたヌシ・ディアブロスを一心不乱に食い始めた。これでは、まるでハイエナかハゲワシである。

 

『でっかい!』「馬鹿な、成長しているだと!?」

 

 さらに、食った傍から体躯が巨大化していくという、尋常では無い成長力を見せ付けて来た。初登場時は精々ドス鳥竜種くらいしかなかったのに、今ではリオレウスを上回る程までに大きくなっている。

 何だコイツ、本物の化け物じゃないか!?

 いや、そんな事を言っている場合ではない。食えば食う程に成長するとしたら、このまま放っておけば際限なく巨大化してしまう。第3砦は今、死体だらけだからな。

 何より、こんな奴らに里の仲間たちの亡骸を食い散らかされるなんて、認められない!

 

「ユウタぁ!」『ヴォオオオオヴッ!』『ゴォルルッ!』

『キィィッ!?』『ギャァギャァッ!』『カァアアアッ!』

 

 そして、アタシたちは里守バリスタの遺体に食い付こうとしていた3体のバルファルクに猛然と襲い掛かった。リベロの氷ブレスが視界を奪い、ユウタの大剣が甲殻を叩き、アタシの電撃貫通弾が脳天を打ち抜く。

 

『『『ギャォオオオオオオス!』』』

 

 何ッ、貫通弾が効かないばかりか、怒りで属性を無効化しただと!?

 マズい、フルーミィシリンジは属性メインのライトボウガンだ。貫通弾以上に属性が通らないのは痛過ぎる。ユウタの攻撃に怯んでいる辺り、打撃や斬撃は通用するようだが……。

 クソッ、こんな時に徹甲弾メインの得物を作っておけば――――――、

 

「いや、そうじゃないだろ!」

 

 火力だけが全てではない。ユウタが素材を集め、ハモンさんが作ってくれやがったこの武器は、攻撃以外にも出来る事はある!

 

「はぁっ!」

『カァッ!?』

 

 アタシは弾倉を麻痺弾Lv1に切り替え、バルファルクの1体を麻痺状態に追い込んだ。

 

『ギャォオオオッ!』

「甘いっ!」

『ギィィイ……ッ!?』

 

 さらに、後ろから食い付こうとしていた、もう1体のバルファルクの噛み付きを扇回跳躍で躱しつつ超爆竜弾を叩き込み、着地と同時に変換した麻痺弾Lv2を食らわせ、動きを封じた。

 

『ヴォオオァッ!』『グルヴォオッ!』

『『キャァッ!?』』

 

 そして、動けぬ2体にユウタとリベロの追い打ちが入る。1体は片翼が壊れ、もう1体は頭部の甲殻が破壊された。こいつら見た目程は硬くないぞ。成長力を上げた弊害だろうか。

 ともかく、これはチャンスだ。一気に畳み掛ける。

 

 

 ――――――ゾクッ。

 

 

「……ッ!」

 

 激昂ラージャンの気光ブレスの時と同じく、嫌な予感がしたアタシは、咄嗟に扇回跳躍で空中へ退避した。

 まさに、その瞬間の事だった。

 

 

 ――――――ドギャルァアアアアアッ!

 

 

 赫々とした龍気の奔流が、眼下の砦設備を消し炭にした。どうした事かと見てみれば、残るもう1体のバルファルクが、翼槍を砲台のように構えて、こちらを見据えていた。おそらくだが、奴が翼に龍気を収束して、ビーム砲としてぶっ放したのである。

 こいつら、化け物ですらない。兵器だ、こんなもの……!

 

『ヴァギャォオオオオオオッ!』

「かっ……!」

 

 さらに、バルファルクは翼槍を可変させ、文字通り「槍」として突き出し、驚異の力に一瞬だけ硬直してしまったアタシを穿った。

 ヤバい、威力が……あり過ぎる……ッ!

 

『ギャギャァッ!』『ギャオオオス!』

『ヴォッ……!』『グヴゥゥゥ……!』

 

 そして、麻痺を脱却した残る2体も翼槍を機械のように変形させ、生物に有るまじきトリッキーな軌道でユウタとリベロを翻弄し、龍気の弾幕を浴びせてダウンさせてしまった。特に下位であるにも関わらず、連戦に次ぐ連戦で無理をしていたリベロは瀕死に近いダメージを受けている。

 

『クァァヴォァッ!』『キャアアアアッ!』『グギャォオオオッ!』

 

 むろん、バルファルクたちは容赦しない。深手で完全に沈黙したアタシたちを、単なる獲物として食い付こうと、狂喜乱舞しながら襲い掛かって来た。

 

 ……嘘、これで終わりなの?

 

「アヤメぇえええっ!」

『『『ギィイッ!?』』』

「あっ……」

 

 そんなピンチに颯爽と現れたのは、第1砦に居る筈のウツシだった。着地と同時に「操竜波」を放ち、バルファルクたちを操竜待機状態へ追い込む。

 

『『『ギャヴォオオオオオッ!』』』

 

 だが断られた。こいつら、翔蟲の鉄糸拘束を振り解きやがった!

 

「何ィ!? イェエエエエエエスッ♪」

 

 ウツシ叫喚。何しに来たんだお前は。

 

「……今だ、2人共っ!」

 

 しかし、彼はあくまで囮であったらしい。

 

「「気焔万丈!」」

『『『グギャァアアアアッ!?』』』

 

 アタシたちが戦っている間に配置に付いていたらしいイオリくんとヨモギちゃんが、撃龍槍と破龍砲を同時にぶっ放した。それも水平に。撃龍槍は分かるけど、破龍砲の平撃ちはヤバいでしょ、ヨモギちゃん。

 だが、威力はご存知の通りで、破龍砲が直撃した1体は爆砕し、他の2体も身体を串刺しにされた。

 

『クァアアアアッ!』

 

 いや、1体はギリギリで躱してる。このまま逃げるつもりか!

 

「そうはさせんぞぉ!」「お爺ちゃん!?」

『ギィイィィッ!』

 

 しかし、老骨に鞭を打って出陣してきたハモンさんが、自前の「蛮顎弩フラムマヌバ」で徹甲榴弾を全弾暴れ撃ちして、逃げるバルファルクを再び砦へ叩き落す。

 

「貴様は儂の孫を傷付けた! 万死に値する! 絶望の淵に沈めぇ!」

 

 さらに、物凄い形相で砦の秘密スイッチを押し、撃龍槍の天蓋を築く。アンタ何て恐ろしい物を造り上げてるんだよ!?

 

『グヴヴゥゥ……シィィィィィ……!』

 

 すると、地に墜ちたバルファルクは、槍衾の檻を見上げながら大きく口を開け、

 

『カァァァ……クァオォォ……ドヴァォオオオオオッ!』

 

 

 ――――――ガキィィン!

 

 

 赫い閃光の刃を放出、撃龍槍を纏めて切断した。嘘だろ……!?

 

「ば、馬鹿な……うぉっ!?」

『ギャヴォオオオオスッ!』

 

 そして、一瞬の隙を突き、今度こそバルファルクは空へと逃げる。

 

「ユウタ、リベロ!」『ヴォオオオッ』『グルォッ!』

 

 しかし、逃がさない。

 ウツシの持って来てくれた「いにしえの秘薬」で、どうにか持ち直したアタシたちは、逃亡したバルファルクを追って飛翔した。

 正直もう一杯いっぱいだが、奴を取り逃がして回復と成長を許したら、今度こそ手に負えなくなる。

 だから、逃がさない――――――地獄の果てまで逃げても追い掛けて、息の根を止めてやるぞ……!

 

『かんれい!』

 

 あいつ、寒冷群島の方へ逃げようとしているな。寒さで動きを鈍らせるのが狙いか?

 いや、もしかしたら前に見た赫い彗星は、こいつらだったのかも。そうだとしたら、益々行かせる訳にはいかない。土地勘で負けては勝負にならないからな。

 

「クソッ、速い!」

 

 だが、速過ぎる。リベロが全身全霊全速力で飛んでいるのに、どんどん引き離されている。このままでは……!

 と、その時。

 

『ゲゴヴァアアアアッ!』

『キャァアアアアアッ!?』

 

 寒冷群島に差し掛かる手前の海を突き破り、山のような何かがバルファルクの行く手を阻んだ。

 

「おっきくなったねぇ!?」

 

 と言うか、例のクソデカヨツミワドウだった。前の時点でゴシャハギよりデカかったが、今は甲羅だけで60メートルはある。

 だから、一体何を食ったらそうなるんだよ!? ラギアクルスでも丸呑みにしたの!?

 

『グヴァォッ!』『グギャァッ!?』

 

 さらに、ヨツミワドウは鬼火を纏った(!?)右の突っ張りでバルファルクを叩き落し、そのまま爆砕した。残るは赫い泡沫のみ。グロ過ぎる……。

 

『クァアアヴァアアア! ……フンッ!』

 

 そして、「煩い蠅を叩き潰してやったぜ!」と言わんばかりに鼻を鳴らし、そのまま海に還ってしまった。

 

「『えぇ……』」

 

 こうして、何とも言い難い雰囲気のまま、事態は終息したのだった……。




◆奇しき赫耀のバルファルク

 古龍目天彗龍亜目バルファルク科に属する天彗龍……の変異個体。
 遺群嶺などの高々度に棲み、滅多な事では地表に姿を現さない通常のバルファルクと違い積極的に降下して来て、赫々とした鱗で地上を空爆し、死んだ動物を食い漁るという、凶暴な性質を持つ。これには呼吸により体内で生成される「龍気」が関わっており、必要以上に高まった龍気に呑まれて暴走してしまっている状態にあるらしいが、何故そうなるのかまでは解明されていない。
 第3砦に飛来した奇しき赫耀たちはゲーム本編よりも更に異様な個体であり、ドス鳥竜種程しかない小さな体躯と狂気的な瞳が特徴で、マガイマガドの如く食えば食う程、爆発的に成長する能力を持つ。
 また、その身体には“他生物の一部がパーツのように浮かび上がっている”という、不気味な特徴があったりする。
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