泣いた雪鬼   作:ディヴァ子

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今回は寒冷群島じゃない所へ行きマス。


燃える砂海原

 ハ~イ♪

 ボクだよ、すっかり大剣双剣が板鬼に付いた、元ゴシャハギのユウタだよ~♪

 いやぁ、第2次百竜夜行は本当にとんでもなかったね。何アレ。百竜→ヌシと来るのは分かるけど、最後にバルファルクが3体現れるのはおかしいでしょ。ハッピーセットかよ。成長する機動兵器なんて卑怯だろ。

 まぁ、それも済んだ事。大規模な百竜夜行も治まったし、今日から再び狩りの日常が始まる……と、言いたい所だが、

 

「ほら、ユウタ。手を合わせて」

『………………』

 

 人が死んだ。沢山死んだ。日頃お世話になっている人や、昨日撫でてくれた人が、皆みんな死んでしまった。あれだけの大災害だから仕方ないとは言え、理解と納得は別物である。

 良い人は早死にするって、本当なんだね……。

 

「帰ろうか、ユウタ」

『………………』

 

 戦死者の弔いを終えたボクらは、真っ直ぐ家に帰った。

 

「お、おい、ユウタ?」

『………………』

 

 ……何だろう。無性に狩りへ行きたくなった。人間はこれを八つ当たりと言うのだろう。

 別に否定する気は無いね。人間になった影響なのかもしれないけど、愛憎がより高まった気がするし、野生のゴシャハギだった頃には無かった感情だ。それが良いか悪いかは知らないが、人間への理解が深まったと前向きに考えておく。

 そして、ゴチャゴチャと思考の海に沈みながらも、身体はテキパキと狩りの態勢を整えていく。心と身体が分離するって、こういう事を言うんだろうね。

 

「ユウタ!」

 

 自宅中にアヤメさんの声が響いた。

 

『………………』

「―――――――ッ!」

 

 しかし、ボクの心には響かない。雪鬼獣そのままの、冷たい視線を彼女へ向けてしまう。

 

「……分かったわよ。行きなさい。でも、アタシは行けないわ」

 

 そうだろうね。前回、アヤメさんは無理をし過ぎた。リハビリの為に里帰りしたのに、瀕死寸前のダメージを負い、今でも身体がガタガタ言っている。暫くは絶対安静だろう。膝は殆ど治っているようだが……それ以外がね。

 

『じょーぶ』

 

 大丈夫。死に急ぐような真似はしない。

 ただ、この気持ちに整理を付けたいだけさ。これからも、楽しくハンターライフを続ける為に。

 

『いってきゅー』

「……行ってらっしゃい。必ず帰って来るのよ」

『あーい』

 

 こうして、ボクは1人、集会所へ向かった。

 

『グルヴォッ!』

『うぁーう』

 

 ま、もう1匹は居るんだけどね。無事に上位級へ昇格した、迅速の騎士がね。

 さぁ、行こうか、零下の白騎士様。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

「あっ、ユウタくんではないですかッ! 今日も一狩り行くのですかッ!?」

 

 ……集会所に着いて早々、幸先が悪くなった気がする。

 

「何か失礼な事を考えていますねッ! 顔を見れば分かりますよッ!」

『しずかにしてくれませんか?』

「しゃ、喋れたッ!?」

 

 お前も大分失礼だと思うぞ。

 ところで修練所の壁画に釘付けである筈のウケツケジョーが、どうしてこんな所に居るのかな?

 

「実はですね、新しい壁画を発見したんですよッ! だから、里長さんとゴコクさんへの報告ついでに、誰かに自慢したくてッ! 人が集まるであろ集会所に、こうしてやって来た訳ですッ!」

 

 えっ、何コイツ、無敵なの?

 八つ当たりで狩りに行こうとしているボクも人の事は言えないけど、人が死んだのにエキサイティングしてるのはどうなのよ?

 

「また失礼な事を考えていますねッ! 心外ですよッ! 私は編纂者として、事態の究明と一刻も早い解決を望んでいるだけですッ! ……という事で、1つクエストを受注しませんか?」

『うー?』

「うーうー言わないで下さいッ!」

 

 そんな事を言われましても。

 それより、そのクエストとやらは何よ。里長さんやゴコクさんに報告を入れた上で発注するような物なんだろうな。

 

「ええ、それはもうッ! ――――――内容は「砂原の大調査」ですッ!」

『うぇー』

 

 うわっ、怠ッ!

 何でストレス発散の為に疲労困憊しに行かなきゃならんのよ。止め止め、そんな暑い所になんか行きたくない。他のクエストを受注しよう。やっぱり寒冷群島かなー。

 

「おっと、そうは行きませんよッ! 何せこのクエストは、あの奇怪なバルファルクの調査でもあるんですから!」

『………………!』

 

 おっと、確かにそれは聞き捨てならないな。詳しく聞かせて貰おうか。

 

「では、OKと言う事でッ! 早速、砂原へGOですッ!」

 

 ……クーラードリンク、カゲロウさんの所で売ってたっけ?

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

『さはらー』

「“砂原(すなはら)”ですッ!」

 

 砂原。

 文字通り砂の平原――――――と言いたい所だが、実際は上下に入り組んだ岩窟地帯が多く、ついでにオアシスが意外と点在している為、砂漠と言うよりかは“サバンナ”と表現した方がしっくり来るフィールドである。それらしい場所は「エリア9」や「エリア10」くらいだろうか。ハンターの言う砂原は“砂漠の中にある高台地”みたいな場所だから、岩だらけなのは当たり前なのかもしれないが。

 ただし、砂漠らしく昼夜の寒暖差が顕著であり、日中は焼かれるように暑いが、夜間は寒冷群島を鼻で嗤う程に寒くなるのだ。

 だから、ここへ訪れるには気温に体調が左右されなくなる「クーラードリンク」や「ホットドリンク」が必須となる。大抵は昼間にやって来るので、クーラードリンクが持ち込まれる事だろう。

 だが、カムラ人がそれらを持ち込む事は無い。流石に長時間は無理だが、クエスト時間内くらいは平然と耐えられるのである。君ら本当に人間?

 しかし、ボクは元ゴシャハギ。寒冷群島の生態系に組み込まれたスペシャリストが、砂原で何の問題も無く自由に動ける筈がない。

 

『あとぅーい』

「我慢して下さいッ! 男の子でしょうッ!」

 

 その結果、ボクは二日酔いのおっさんの如く、ダラダラのドロドロになっていた。完全に熱中症だ。クーラードリンク飲もうが何だろうが、暑い物は暑いんだよ。むしろ熱い。何これ、火山とは別方向でキツイんだけど。溶岩洞に行った事は無いがな!

 ちなみに、リベロはお留守番である。あれだけ行く気満々だったのに、「今回は砂原に行くよ」って伝えたら、速攻で裏庭の洞窟に避難しやがった。非難してやるぞ、貴様ァ!

 ……落ち着こう。ボクは気持ちの整理をする為に来たのであって、怒り状態になりたい訳ではない。何だかんだでウケツケジョーは自分のガルク(名前は「テリー」)にボクを(エヴァと一緒に)乗せてくれてるし、楽は出来てる。

 そろそろ高温環境でも活躍出来るオトモが必要かなぁ。ガルク雇えって話だけど、何故か懐いてくれないのよね、どの子も。テリーは例外だけど、彼はウケツケジョーのオトモだからねぇ……。

 最悪、新大陸よろしく現地調達しようかなぁ。“オトモダチ”って奴だね。

 ところで、この砂原でバルファルクの何を探りに来たのよ?

 

「過去の砂原は緑豊かな交易地だったと聞きますッ! しかし、ある日降り注いだ赫い彗星に端を発する異常気象に見舞われ、荒れ果てた大地になったそうですッ! そして、赫い彗星と言えばバルファルクッ! つまり、天彗龍に関する何かが遺物として残っている可能性が高いのですよッ! という事で、「エリア12」へ向かいますよッ! ついでに「キングトリス」とやらも見てみたいですッ!」

 

 何処までも編纂者だなぁ、この人は。それくらいの探求心が無いとやってられないんだろうけど。

 という事でボクはガルクに揺られ、ウケツケジョーは翔蟲移動を駆使して、荒れ果てた大地を突き進んでいく。何でカムラ人並みに翔蟲が使えるんだよ……。

 

『クゥゥゥ……』

 

 だが、「エリア6」に差し掛かった辺りで、大型モンスターに出くわした。

 草食竜のような頭部に岩壁を思わせる甲殻に覆われた胴体を持つ、地底を棲み処とする飛竜種、双角竜ディアブロスの通常個体だ。ヌシと違って表皮は砂色で、そこまで大きくも無い。精々ドス鳥竜種程度しか――――――、

 

「何か随分小さいディアブロスですねッ!」

 

 あ、やっぱり小さいんだ。流石にリオレウス以上の体格ぐらいないとね。

 じゃあ、このディアブロスは何でこんなに小さいんだろう?

 しかも、会敵したというのに攻撃どころか吠えすらしない。ディアブロスと言えば一期一会が「お前を殺す」という、とんでもなく凶暴な草食動物なのだが、こいつは只管にビクビクと震え、常に逃げ腰という、異常とも言える個体である。所謂“劣等種”って奴か。

 しかし、こいつは丁度良い。ボクは重たい身体を動かして、臆病者のディアブロスの前に鬼人化状態で立ち、

 

『ヴォオオオオオオオオヴッ!』

 

 思い切り吠えた。心底ビビりなのだとしたら、これで完全に心が折れる筈。

 

『キュゥゥ……』

 

 案の定、ディアブロスは恐怖で縮こまり、服従とも言える姿勢を取った。

 いや、何か考えていた以上にあっさり調伏されるな。少なくとも一太刀くらいは刃を交えると思ったんだけど。その低姿勢が生存に繋がってるのかもしれないが。

 ともかく、これで足を手に入れた。少しはウケツケジョーに楽をさせられるぞー。

 

「相変わらず凄いですねッ! では、ガンガン行きましょう!」

『うー!』

「うーうー言わないで下さいッ!」

『えぇ……』

 

 そんな事言わないでー。




◆とても小さいディアブロス

 竜盤目竜脚亜目重殻竜下目角竜上科ブロス科に属する凶暴な飛竜種……の筈だが、何故か物凄くビビりな雌個体。大きさもドス鳥竜種程度しかなく、大型飛竜種とは思えないくらいに小さい(最小金冠以下)。その分かなり素早く、危機察知能力も高い為、第2次百竜夜行が勃発した際も巻き込まれずに逃げる事が出来た。
 とは言え、かなり命からがらだったので体力をかなり消耗しており、暫くの間は動けず、やっとこさ回復して来たのでサボテンを食べに巣穴から抜け出したら、何故か滅茶苦茶に怖い男の子に目を付けられてしまった。
 優しい男の子が好みだが、ディアブロスという種族に生まれてしまった以上、半ば諦めている模様。
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