泣いた雪鬼   作:ディヴァ子

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物語ハ、動き出ス……。


君の元へ

『ギャーギャーッ!』『キャンキャン!』『ヴーッ!』

『くえん……』

「『えぇ……』」

 

 ようやくエリア12に戻って来たら、ディアブロスがジャギィたちに苛められているという衝撃的な絵面が展開されていたので、一先ず狗竜共には素材になって貰った。お肉はスタッフ(ディアブロス以外の全員)が美味しく頂きましたとも。

 その後、疲れ果てて休むボクを横目に、ウケツケジョーは精力的に遺跡を調査し始めた。

 

「おー、これは中々凄いですねッ! 記念撮影しましょうッ!」『キュイ? ……キュィーン☆!』

 

 ……なぁんて事は無く、偶然出くわしたキングトリスと記念撮影に勤しんでいた。お前も決めポーズを取るんじゃない、キングトリス!

 

「――――――さて、おふざけはこれくらいにするとしてッ! 早速調査と行きましょうッ!」

 

 キングトリスが満足して立ち去るまで散々写真を撮りまくったウケツケジョーが、ようやく遺跡を調べ出した。30分も時間を浪費するな貴様。さっきの素直なお礼を返せ。むしろセルレギオスの餌になって来い。

 

「何か酷い事を考えてそうですねッ! しかし私は美味しくないので問題ありませんッ! 逆に食ってやりますッ! お爺ちゃんも「先ずは食ってみろ」って言ってましたからねッ!」

 

 毎度ながら発言がイビルジョーなのよアナタ。それで良いのか受付嬢。

 ……そう言えば、壁画にはどんな物が描かれてた訳?

 

「ヌシと思われるモンスターたちを後ろから追い立てる2匹の龍、そして、それらに襲い掛かろうとする巨大な蟲と鳥ですッ!」

『むし、とり?』

「はいッ! それぞれが多くの手下らしきモンスターを従えているので、相当強力な存在なんでしょうねッ! 流石に詳細までは分かりませんが……必ず解き明かしてみせますともッ!」

 

 そっか、頑張ってね。ボクは少し寝るから。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 それから暫くして。

 

「起きて下さい、ユウタさんッ! 面白い物が見付かりましたよッ!」

 

 ウケツケジョーに叩き起こされた。どうやら何か見付けたらしい。

 

「これは手記ですねッ! まぁまぁ古ぼけていますが、太古の物ではありませんッ! 状態から見て、大体50年前くらいの代物でしょうッ!」

 

 その手には、古めかしい手記が握られていた。確かに色褪せてはいるが、そこまで風化は進んでいないって感じだ。50年って言うと、半世紀くらい前の物か。

 ――――――で、何て書いてあるの?

 

「所々掠れて読めないですが、訳すとこんな感じですね」

 

 ======

 

 ま か、こんな日が来よ とは。

 長きに渡 根を り、先 代々骨を   きた、この地を離れる事に  など、  も信じ難い。

   し、悪しき赫 の死  が降っ    上、故郷を捨て 逃れる   ろう。命  ての物 である。

 こん 俺の姿を見て、フ ンはどう思う  ろうか。  つに頭を下げ  は癪だ ら、ゴコ 様にお願いするとし  。悪い  にはし    。

 娘も 婚し、孫も出来  、一人 無茶は出  い。家 の為、亡 妻 、俺は  でこの地を離れよう。

 だ  、お前もフ  ラと放浪な して いで、早く帰っ  い。

 そして、もしこ  紙を見付  なら、カム の里を目指

 彼女は 句一つ く、ずっとお  待っている 。分かっ か、この甲 性無

 

                                  コ リより

 

 ======

 

 “悪しき赫耀の死兆星”。

 たぶん、歯抜けの一部には、この言葉が入る筈だ。

 

「そうですねッ! 先ず間違いないでしょうッ!」

 

 ボクの意見にウケツケジョーも賛成のようだった(意見は手書きで伝えた)。

 悪しき赫耀の死兆星――――――たぶん、バルファルクの事なんだろうけど……幾ら古龍と言えど、砂原全土を滅ぼす程の力なんてあるのか?

 古龍は“生きる災害”であり、“天災”そのもの。自然神と言ってもいい。それ程までに、竜や獣とは隔絶した能力を持っている。

 だが、それはあくまで自然現象の範疇(・・・・・・・)である。あのシャガルマガラでさえ、“大量絶滅”という役割を超えてはいない。全ての創造は破壊から生まれるのだ。

 しかし、今回現れたバルファルクは、何処か違う気がする。確かにシャガルマガラやネルギガンテとよく似てはいるのだが、何だろう……何と言うか――――――この先には破滅しかない、みたいな?

 とりあえず、分かっている事を整理しよう。

 寒冷群島の夢たちを生ける屍に変え、フルフルを見るも無残なオリジナル笑顔に変貌させた鱗状の物体は、第2次百竜夜行に飛来した奇しき赫耀のバルファルク、もしくはその同位体とでも言うべき存在がばら撒いた物だった。その鱗は生死を問わず、あらゆる生物の肉体を侵食し、自分たちと同じ構造に書き換える能力が有る。

 さらに、変異したバルファルク自体も驚異的な成長力を持っており、他生物を苗床兼餌として爆発的に増えていく。そこに終わりは無く、文字通りの滅びしかない。砂原の文明も、そうして終わってしまったのだろう。

 

 そう……例えるなら、“癌細胞”だろうか?

 

 シャガルマガラは1体が成体になれば他のゴア・マガラの成長を阻害し、必要以上に増えないようになっている。

 だが、前回の百竜夜行を見る限り、あのバルファルクたちには、そう言った“リミッター”の類が無かったように感じた。

 死体すらも利用して鼠算式に増殖し、1体1体が際限なく成長し続け、大元である“巨大な鳥(ナニカ)”になる。これを癌細胞と言わずして、何と言おうか。

 それに、ウケツケジョーが言っていた、壁画の続き――――――もう1体の巨大な蟲というのも気になる。描写を聞く限り、鳥と同じような能力を持っているとしたら……2体の龍と併せて、カムラの里は一体どうなってしまうんだろうか?

 

『うぁーう』

「そうですね、何とかしなければッ! ……もはや調和など言ってられませんッ! これは由々しき事態、完全なる生存競争ですッ!」

『………………』

 

 調和を重んじる新大陸の編纂者が、調和を真っ向から否定してしまうのか。これは本当に由々しき事態なのかも。

 

 ……と、その時。

 

 

 ――――――ゴロゴロゴロゴロ……ビシャアアアアアアアアンッ!

 

 

 突如、雷が落ちた。

 

『ハヴォオオッ!』『ガァッ!』『グヴェァォオオッ!』

 

 急いでエリア6に戻ってみれば、空には暗雲が立ち込め、地響きと共に大移動するモンスターたちの姿が。百竜夜行である。

 

『くぇ~ん!?』

 

 その勢いは凄まじく、驚き一瞬逃げ遅れた小さなディアブロスを呑み込み、掻っ攫ってしまう程だった。

 

『コァォオオオオン!』

 

 そして、モンスターが過ぎ去った後、砂原に鳴る神が舞い降りた。

 

『――――――ギィゴォァヴヴウウウウウッ!』

『コァアアアッ!?』

 

 さらに、暗黒に染まった入道雲を矢の如く突き抜け、鳴る神をも超える巨大な“ナニカ”が飛来する。

 姿こそ殆ど同じだが、「銀翼の凶星」とも「絶望の星」とも違う、白銀に輝く装甲と海よりも蒼い瞳、ジエン・モーランに匹敵する凄まじい巨躯を持つ天彗龍。超大型の古龍であろう鳴る神が小型モンスターに見えてしまう程の、“空の大怪獣”とでも言うべき圧倒的な威容である。

 

 

 そう、“悪しき赫耀の死兆星”が遂に姿を現したのだ。畏れ見よ、衰星(すいせい)の神龍を!

 

 

『うぅ……!』「くっ……!」

 

 しかし、襲撃の衝撃があまりに強烈で、ボクたちの意識はそこで途絶えてしまった……。




◆悪しき赫耀の死兆星

 遥か太古の昔に語られた、“滅びの象徴”にして“生態系の癌”。その姿は見る者全てを魅了する美しさを持つが、一度姿を現れれば、その大地は死の世界に塗り替えられてしまうという。
 カムラの里では「“禍群の息吹”と“禍群の鳴神”を捕食する事で天魔開焉の星となり、世界を滅ぼす衰星龍となる」と伝えられていたが、長い年月の内に失われ、壁画も埋もれてしまい、完全に忘れ去られていた。
 しかし現在、とある場所でシャガルマガラが英雄に討ち果たされた事を契機に、密かに目覚め、“神化”を進めていた。

 ……そう、闇黒の女王蟲と共に。
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