泣いた雪鬼   作:ディヴァ子

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第3次百竜夜行、勃発――――――。


閑話:彼女と彼女の猫

「えっ、ユウタが……?」

 

 はいはい、アタシだよ、上位ハンターのアヤメだよ。

 ……とりあえず、アタシの話を聞いてくれ。

 つい先日、第2次百竜夜行で心の傷を負ったらしいユウタが、憂さ晴らしを兼ねてウケツケジョーと砂原に向かったのだけれど――――――出て行ったきり、帰って来ていないみたいなのよ。戻って来たのは、ウケツケジョーのオトモガルクであるテリーのみ。他は一切、影も形も無かったそうだ。

 

「嘘でしょ……?」

 

 ユウタが……死んだ?

 いや、そんな筈は――――――あの子に限って、そんな事は……。

 

「証言によると、見た事もない巨大な古龍と、それ以上の大きさを誇る白銀のバルファルクが現れたらしい。テリーは襲撃の爆風で吹き飛ばされ、目を覚ましてから戻ってはみたが、ユウタくんたちは居なかったそうだ」

「………………」

 

 ウツシの言葉が心に刺さる。まさか、本当に?

 ――――――どうして、皆アタシの傍から居なくなるんだ。

 

「キミがそんな調子では、ユウタくんも浮かばれんぞッ!」

「いや、確定で殺すなよ!?」

「ハッハッハッハッ、それもそうだなッ! あのしぶとさに定評のある2人が、そう簡単に殺られる訳も無いかッ! 大方、何処かで傷を癒しているんだろうッ!」

「………………」

 

 この男は、本当に……。

 

「この豚野郎が!」

「ありがとうございますッ!」

「……こっちこそ」

 

 アタシは思わずそっぽを向いた。

 

「――――――それはそうとして、またしても百竜夜行が勃発したようだ。今回も前回同様……いや、それ以上の規模だそうで、里長としてはこれを「第3次百竜夜行」として扱うらしい」

「……そう」

 

 また、あの惨劇が始まるのか。ナニカに追われた百竜と、それに呑まれまいとする人間とで巻き起こる、何の救いもない殺し合い。どうして、こんな事が起きるのだろう。

 

「もしかしてだけど、百竜夜行って古龍が意図的に起こしてるんじゃないの?」

 

 ふと、思った事を口にしてみた。砂原に現れたという未知の存在か、絶望の星々かは不明だが、あまりにもタイミングが合い過ぎる。何れかの古龍が、何らかの目的を持って引き起こしているのは、間違いあるまい。

 

「そうだね。里長やゴコク様も、そう睨んでいる。それに、百竜夜行に紛れて異形な姿のモンスターを見たとの情報も入っている。まず間違いなく、今回の百竜夜行では何かが起こるね。根幹に迫る、核心を突くような何かが……」

 

 ウツシもそう思っているのか、神妙な顔付きで頷いた。

 

「ま、結局やる事は変わりないさね」

 

 そう、アタシたちがやるべき事はたった1つ。

 迫りくる脅威から、カムラの里を――――――ユウタたちが帰って来る場所を、全力で守り抜く。それだけの事だ。

 

 ……「第3次百竜夜行」到達まで、幾ばくか。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 この世界の何処かで。

 

 

 

『……ギカァアアッ! ギィクァアアォオオオオッ!』

 

 

 

 巨大な闇が、目を覚ました。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

「うぉっ!?」「どうしてモンスターがこんなに!?」「何じゃこりゃあああああっ!?」

 

 集会所で作戦会議をするとの事で出向いてみれば、何やら騒動が起こっていた。何じゃもんじゃと見てみれば、たたら場前の広場に人集りができ、その中心にはリオレウス、リオレイア、セルレギオス、ライゼクスなどの飛竜種、更にはドスランポスやドスジャギィを始めとするドス狗竜系、アオアシラにドスファンゴと言った牙獣種などなど、大中様々なモンスターが勢揃いしていた。

 そして、それらの傍らには、寒冷地の若干暑苦しい恰好や南洋系の独特な民族衣装を身に纏った人間たちが、寄り添うように立っていた。この人たちは、もしかして――――――、

 

「此度の百竜夜行は不明瞭な部分があまりにも多過ぎる。故に彼ら“ライダー”の力も借りようと思う」

 

 やはり「ライダー」か。

 ライダー。一部の地域にのみ存在する、モンスターをオトモとしてフィールドを駆る、ハンターとは一線を画す者たち。「絆石」という特殊な器具と“刷り込み”を活用して絆を育んでいるようだが、詳しい事情はアタシも知らない。

 何でそんな人たちが大集合しているのかは分からないが、そう言えば以前、今は亡き里長の旧友が元ライダーだったって噂を聞いたような、聞かなかったような……?

 まぁ、カムラの里にはユウタとリベロ、アタシとヨッちゃん、ウケツケジョーとエヴァという前例が有りまくるので珍しくも無いし、皆も初見こそ驚くものの、すぐに興味本位の野次馬に切り替わっている。

 

「おお、この里の人たちはライダーを見ても驚かないのか」

「嬉しい反面、逆に違和感があるような……」

 

 それに関してはライダー側も同じなようで、嬉しいやら困惑するやらで忙しそうだった。遠路遥々な事に加えて、色々とお疲れ様です。

 

『流石はカムラの里長さん! 話が早くて良いねぇ! このナビルーもしっかりナビするから、撃龍船に乗ったつもりでまっかせなさーい!』

『一瞬でゾラ・マグダラオスの背中に座礁しそうだぬー』

『おい! 久しぶりに会ったのに、その言い方は無いだろう!?』

 

 と、その人混みの中に、ドーナツみたいな丸っこい顔をした見知らぬアイルー(名前はナビルーというらしい)と、よーく見知ったメラルー……クスネが居た。

 

「アンタ、ライダーと知り合いだったの?」

『アタイは世界を股に掛ける大泥棒だぬー。ライダーの知り合いくらいは居るし、何ならアタイもライダーだぬー』

「へぇ……」

 

 そりゃあ知らんかった。結構長い付き合いなのにねぇ。

 ちなみに、彼女のオトモンは亜種っぽいクルルヤックだった。うーん、お似合い。

 

『なーにが世界を股に掛ける大泥棒よ! メラルー商会のヒトたち、滅茶苦茶怒ってたわよ!』

 

 おっと、また知らないアイルーが。こちらもまた特徴的な容姿の持ち主で、何と言うか、セミロングが似合うちょっとキツイお姉さんみたいな顔である。

 

『ツキノの分際で煩いぬー』

『分際って何よ!? まったく、本当にいけ好かないわねぇ!』

『別に構わんぬー。お前はカイルの尻に敷かれてるのがお似合いだぬー』

『敷かれないわよ!』

 

 ああ、ツキノさんって言うのね。クスネと知り合いだなんて、可哀想に……。

 

『あの、何処の誰かは知らないけれど、同情はしなくていいからね?』

「あ、はい」

 

 気を遣われてしまった。哀しくなっちゃう。

 

「……つーか、何でアンタがここに居るのよ、クスネ。寒冷群島からは引っ越さなかったっけ?」

 

 そうなのだ。クスネは元々流浪人だが、引っ越す時は何時もフクズクで知らせてくる。今回は赫い彗星の1件や大ババ様が遂に逝った事もあって、予定よりも早く移動したのである。行き先は確か――――――、

 

「あっ……」

 

 そうだ、砂原にテントを張ったって、

 

「クスネ、アンタ、ユウタの事――――――」

『アイツらなら、アタイのテントで一休みしてるぬー。置手紙は書いたから、目覚めれば勝手に来るだろうぬー』

「………………ッ!」

 

 そうか、生きててくれたんだ……!

 

「まさか、アンタその事を知らせる為に?」

『それこそまさかだぬー。アタイが用があるのは、セイハクの方だぬー』

「セイハクくんに?」

『そうだぬー。ま、とりあえず伝える事は伝えたから、アタイは立ち去りぬー』

 

 そう言って、クスネはクルルヤックを伴い、さっさと行ってしまった。一体何をやらかすつもりなんだか。とは言え、嬉しい事には変わりない。素直に礼は言っておこう。

 あとは、ユウタたちが帰るのを待つのみ。

 その為にも戦って、生き延びなくちゃね。

 

「おや、アヤメさん、こんな非常時に笑顔とは、何か良い事でもあったんですか?」

「別に大した事じゃないよ。……再認識したってだけさ」

「そうですか。まぁ、お互いに無理のない程度に頑張りましょう。なぁに、アイツが居るから大丈夫ですよ、たぶん。それよりも、ロンディーネさんがやる気満々なのが心配で――――――」

「ははははは」

 

 アンタこそ無茶しちゃ駄目よ、メラル。“彼”に心配されるわよ?

 

 ……「第3次百竜夜行」到達まで、あと僅か。




◆ナビルー&ツキノ

 外伝作品「モンスターハンター ストーリーズ」に登場する特別なアイルーたち。
 ナビルーはドーナツ模様の丸顔な雄個体で、好物もドーナツという、ネタ要素に事欠かない不思議なアイルー。かなりのお調子者だが、世界中を旅して来た故に結構な物知りで、意外としっかりナビゲートしてくれる。「ナビ出来るアイルーだから“ナビルー”」という本人談の由来も納得である。
 しかしながら、その内には明確な正義感が宿っており、悪戯にモンスターを傷付ける者に憤慨したり、仲間の為なら命を張れるなど、かなりの熱血漢。そんな見た目に反する重過ぎる過去を持つが、嵐に巻き込まれたショックで一切の過去を忘れてしまい、その後は気の向くまま放浪の旅に出ていたそうな。
 ツキノはカイルというハンターのオトモアイルーであり、言ってしまえばそれだけなのだが、とにかく見た目が印象的で、“ツンデレな(もしくは勝気な)お姉さんがアイルー化した”と表現するしかない、アニメ調な容姿をしている。性格も概ねそんな感じで、「いけ好かない」が口癖。
 分かり易く雌個体であり、ライズにも関りがあるなど、中々に優遇されている。流石は公式の推しキャラ。作者もなりきりセット使ってマス。
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