泣いた雪鬼   作:ディヴァ子

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うさ団子食べてみたいナァ~。


ぼくはゆく

『ゲコァアアアアッ!』

 

 寒冷の浅海を揺らす、咆哮が轟く。

 ハ~イ♪ ボクだよ、理由は分からないけど、人間の男の子になれたゴシャハギだよ。

 さて、さっそくだけど……現在、大絶賛ピンチ中だ。何故なら、丸呑み力士ことヨツワミドウにパックンチョされそうだからである。

 あまりの嬉しさに、周囲の確認もせず、生まれたままの姿で小躍りしてたら、これだよ。誰か助けて。

 確かに君の餌場に潜り込んじゃったのはボクだけど、こんな幼気な男の子くらい見逃してくれても良いじゃん。他の個体ならいざ知らず、ボクはヨツワミドウをタコ殴りにした事なんか無いぞぅ~!

 つーか、こいつデカくね?

 ボクが縮んでいる事を差し引いても、明らかに大き過ぎる。目測で40メートルはヤバいでしょ。何喰ったらというか、どんだけウリナマコを食べたら、ここまで成長出来るのだろう。マジで誰か助けて。

 と、その時。

 

「止めろっ!」

『ゲコォッ!?』

 

 何処からともなく凛々しくも美しい声が聞こえて来たと思ったら、突然ヨツワミドウがボクを放り投げた。

 さらに、絶え間なく続く爆音と閃光、それからヨツワミドウが立ち去る音。どうやら何処かの誰かさんに、ヨツワミドウが撃退されたらしい。

 

「大丈夫か!?」

 

 そして、潮の中から顔を出してみれば、そこには青白い髪をした見目麗しい女ハンターの姿が。ナルガクルガの一式装備が実に良く似合っている。得物のライトボウガンとの相性は別として。ナルガ装備なら太刀使おうよ。回避能力の高さは確かに良いけどさ……。

 

「……って、何で裸なんだい!?」

『あーぅ?』

 

 これがカムラの里の上位ハンター、アヤメさんとの出会いだった。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 それからそれから。

 

「ここが「カムラの里」だ。今アタシが世話になってる場所さ」

 

 無事アヤメさんに保護されたボクは、彼女の案内でカムラの里へとやって来た。

 ちなみに、今のボクはマント一丁だ。つい最近まで野生のゴシャハギだったので、当然ながら服なんて持ってないし、アヤメさんが都合よくもう一着なんて事もなく、仕方なしに採集用の布袋を外蓑代わりに使う事にしたのである。

 むろん、マントの下は裸一貫。男らしいでしょ?

 

『かむら……』

 

 カムラの里と言えば、寒冷群島から南に下った場所にある、秘境のたたら場だ。独自に築いた製鉄技術と戦闘方法も然る事ながら、和みを感じさせる雅な雰囲気から観光名所としても有名な場所である。

 ……前にハンターさんがそう言ってたから間違いない、たぶん。

 何となく、ドスファンゴとブルファンゴの群れに襲撃されそう。ガルクとはオトモダチみたいだけどね。

 そんなカムラの里に、ボクは訪れている。ここがボクの第二の故郷となる……のか?

 個人的な偏見だけど、こういう孤立した集落って、仲間意識が強過ぎて外の人間を嫌う傾向がある気がするんだよね。観光にも力を入れてるらしいから、大丈夫だとは思うが……。

 

「あら、アヤメさんじゃない。狩りの帰りかしら?」

 

 と、入り口の大門を潜った所で、女の人に声を掛けられた。番傘を取り扱っている所を見るに、傘屋なのだろう。

 

「あ、どうも、ヒナミさん」

 

 ふ~ん、ヒナミさんって言うのか。サバサバしてて人が良さそうだね。

 

「今日も相変わらずライトボウガン背負ってるのねぇ。あ、そう言えばさ、大剣で「忍傘【屠竜】」って装備があるじゃない? で、傘が大剣になるなら、ライトボウガンとかヘビィボウガンの傘を作れるんじゃないかってハモンさんに言ったら、真に受けちゃってさ。今、頑張って作ってるらしいわよ~?」

「は、はぁ……」

『………………』

 

 いやー、発想が物騒過ぎるでしょ。

 えっ何、化け物染みた戦闘狂ってハンターだけじゃないの? 人類皆戦闘員なの? それでイーッのか?

 

「……あらあら、そう言えばその子は何?」

 

 おっ、ようやくボクの存在に触れてくれましたか。先ず最初に突っ込んで欲しかったけど、脳改造されているのなら仕方ない。

 

「攫って来たの~?」

「断じて違います!」

 

 だから発想よ。

 

「冗談よ、冗談。その恰好を見るに、狩りの途中で保護したんでしょ? とりあえず、ゴコク様に報告してくれば良いんじゃないかしら?」

「あ、はい、そうします」

 

 ふぅ、一応は良識を持ち合わせているみたいで一安心だ。人間、思いやりが大事よね。

 

「おや、アヤメさんか。おかえり」

 

 たたら場に向かう一本通りを進んで行くと、今度はガルクを侍らせた男の人に声を掛けられた。この人も性格は良さそう。

 

「つい最近、新しいガルクの猟犬具を思い付いたんだけどさ。その名も「強骨牙」! 敵に噛み付くと、ガルクの口から分離しても牙を食い込ませてダメージを与え続ける上に、衝撃を与えると更に大ダメージを叩き込めるんだ!」

「へ、へぇ……」

 

 いや、あのね、怖いんだって。アヤメさんもドン引きしてるじゃん。何なのアンタらは。

 その後も妖しい格好の商人だったり、団子三昧の受付嬢だったり、吹っ飛ぶブンブジナが可愛いとか言っちゃう飴屋の幼女だったりと、ロクな住人が居なかった。本当に大丈夫なのか、この里は。

 

「あ、アヤメさんだ! おーい!」

 

 おっ、次は元気溌剌な女の子だ。どうやらお団子屋の看板娘のようである。

 

「やぁ、ヨモギちゃん。今日も相変わらず溌剌としてるね」

 

 ヨモギちゃんかぁ。……この子は大丈夫だよね?

 

「……う~ん? その子は誰さん?」

 

 おお、今回は最初にボクを気にしてくれるぞ!

 

『あーい!』

 

 そんな当たり前の事が嬉しくて仕方なったボクは、思い切り右手をブンブンと振り上げた。当然、布切れ一丁で勢いよく動けば、マントがブワッと舞い上がる訳で、

 

「キャー!」

『アッー!?』

 

 気付けば、ヨモギちゃんの投擲したお団子櫛が、見事にクリーンヒットしていた。何処がだなんて、言わせんな恥ずかしい。

 

「ヨ、ヨモギちゃん! 気持ちは分かるけど、それは流石にマズいって!」

「あわわわわっ!? ど、どうしよう!? うさ団子塗っておく!?」

「何の効果も無いよ、たぶんそれ!」

 

 薄れ行く意識の中で、アヤメさんとヨモギちゃんが慌てふためく姿が見えたけど、もはやボクにそんな事を気にしている余裕は無かった……。




◆ヨモギちゃん

 カムラの里の観光名所の1つ「うさ団子の茶屋」の看板娘で、何時も笑顔を絶やさない元気溌剌な女の子。その快活さは、宙を舞うお団子を正確に3個ずつ櫛で射抜いてしまう程。流石は戦闘民族カムラ人の一員である。ついでに銃火器類に興味があるらしく、ヘビィボウガンや速射砲で敵を撃ち抜くトリガーハッピーな姿には、いっそ清々しささえ感じる。看板娘とは……。
 ちなみに、彼女には秘められた過去があり、昔里へやって来た誰とも知らぬ竜人のハンターが託して行った子供らしく、情報屋アイルーのフカシギ曰く「どこか高貴な雰囲気がある」との事。出生が謎過ぎる覆面行商人のカゲロウといい、意外とミステリアスな少女でもある。普段はそんな事おくびにも出さないが。
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