――――――第3砦、第1関門前。
「いよいよか……」「そうですね……」
アタシは1人、最前線に立っていた。
しかし、独りではない。背後には里守バリスタ隊に加えてライダーの皆さんも居るし、何らイオリくんも居る。ウツシとヨモギちゃんは別の場所を担当しているが、心は一緒だと思っておこう。
『おちゃまー!』
あと、何故かヨッちゃんも付いて来た。今回も前回同様お留守番をしていて貰おうと考えていたのだが、頑として譲らなかったので、仕方なく同伴を許した。何やら異様な気配を感じているらしい。
……たぶん、何かが起こるんだろうな、きっと。
「仲が良いんだな」
すると、第3砦の防衛に参加してくれたライダーの1人――――――確かシュヴァルさんだかが話し掛けて来た。不思議な額当てにリオレウス亜種の物と思われる防具を身に纏った赤髪の男性で、如何にも活発な見た目をしているが、その容姿とは裏腹に慈しみに満ちた瞳をしている。傍らのリオレイアも絶大な信頼を置いているようだ。
「ええ、まぁ……拾いモンですけど」
「そうか……なら、大切にするんだ、その絆を」
「はぁ、分かりました」
よく分からないが、過去に一悶着あったのだろう。そうでなければ、そんな言葉は出ない。
ま、詮索したりはしないけどね。他ならぬライダー様からの忠告として受け取っておくよ。
「来るよっ!」
と、目の良いイオリくんの声が響いた。駄弁る時間はお終い、って事か。
『ホァアアアオオオッ!』『ボァアアッ!』『ガァガァッ!』『バヴォオオオッ!』『ウッキャウッキャァッ!』
そして、数刻と経たぬ内に雪崩れ込んで来る百竜たち。
今回の破砦役はフルフルで、機動隊はプケプケか。その他はオサイズチにアオアシラ、ビシュテンゴと。何か百竜と言うより“百獣”って感じだな。これでラージャンまで居たら「ふざけるなよテメェら!」と叫ぶ所だが、これなら前回よりは楽そう。第1波なんて、こんな物か?
「行くぞッ!」「はい!」
「「「「「おおぉぉっ!」」」」」
むろん、撃退する事に変わりはない。しっかりと守り通らせてもらう。カムラの里は、お前らの避難所じゃない!
「はぁっ!」『ギャヴォッ!?』
アタシは車輪のように回転しながら襲い来るビシュテンゴの頭上を扇回跳躍で取り、超爆竜弾を撃ち込む。
『ギャギャギャァッ!』「甘い!」
さらに、無作法な柿投げ乱れ撃ちを“疾替え”で切り替えた扇回移動で回り込みつつ躱し、放散弾Lv2を食らわせた。今回背負って来たライトボウガンは「ボルボランチャー」。貫通弾と放散弾の撃ち分けを得意とする、多頭同時狩り向きの性能である。モンスターが入り乱れる百竜夜行にはピッタリだろう。
『バヴォオオッ!』「フッ……!」
背後からシャケクローを食らわせようとしていたアオアシラを前転回避でやり過ごして、お返しに麻痺弾Lv1をお見舞いして動けなくする。
『ボァアアッ!』「食らうかっ!」
空から放たれたプケプケの横槍毒玉は再度扇回跳躍で避けつつ、拡散弾を直接ぶち込んで叩き落す。後はアオアシラ共々、残らずお掃除だ。
『クァアッ!』
「させないッ! レイア!」『ギュアアアアッ!』
『ウギィッ!?』
後隙をオサイズチに狙われたが、シュヴァルさんとリオレイア(レイアと言うらしい)に救われた。
「どうも」「良いさ」
言葉数は少ないが、戦場ではそれだけで充分である。本当にありがとう。
「第2波来ます!」
クソッ、立て続けかよ。弾切れになる前に倒さないとな。
面子は――――――破砦役がヤツカダキ、機動隊がセルレギオス(!?)、突撃隊がオロミドロとリオレイアか。顔ぶれからして、第1波は巻き添えを食っただけで、砂原から来たのはこっちだな。
「後ろは……」
あっ、そう言えば第1波の破砦役を忘れてた。
『ナビルー様を舐めるなよぉ!』
『ホヴァアアアォオオォォッ!』
『ごめんなさぁあああああい!』『まったく、何してんのよ、アンタは!』
……まぁ、大丈夫そうだな。ライダーも居るし。
『キキキキィッ!』『ホヴァォ……』
あと、何故か1匹だけイソネミクニが混じっているが、里守バリスタ隊やライダーたちには目もくれず、どういう訳か次々とフルフルを眠らせ、一定数を背中に乗せると、そのまま何処かへ立ち去ってしまった。何しに来たんだ、あのイソネミクニは。もしかして、寒冷群島のあいつか?
――――――百竜夜行に乗じて自分の手駒を掻っ攫いに来るとか、火事場泥棒にも程があるだろ。
「アヤメさん!」「……ッ!?」
イオリくんの言葉で我に返る。
そうだ、人の心配をしている場合じゃ無い。背中は彼らに任せて、アタシたちは“奴”の相手をしよう。
『ギュガァアアアアアアッ!』
立て続けに押し寄せた第2波の最後尾で指揮を執るα個体……ヌシ・リオレイアのな。
◆◆◆◆◆◆
《対ハ……何処……対ヨ……我ハ、ココニ在リ……》
そして、破局は動き出す……。
◆◆◆◆◆◆
『グギャヴォオオオッ!』
ヌシ・リオレイアの紫毒棘が飛び交う。あれは猛毒だから、食らう訳にはいかないし、誤って触れる事さえ許されない。一応漢方薬は持って来たが、解毒する前に死ぬ可能性が高いからね。
『ギュガァアアアアッ!』「おっと!」
だが、そっちばかりを気にしていると、ヌシ・リオレイア本体の攻撃を食らう破目になる。こいつとの戦いは、如何に周囲へ気を配るかが鍵になるわね。
とは言え、アタシも第2次百竜夜行を乗り切った女だ。
……お前なんて、あの奇しき赫耀たちに比べれば怖くない!
「はぁあああっ!」『グギャアアッ!?』
アタシは扇回跳躍で右上に上昇する事でヌシ・リオレイアのサマーソルトを躱しながら拡散弾を二連続で直接叩き込み、多大なダメージを与える。
『ギャヴォォ――――――』「黙ってろ!」『グヴァッ!?』
さらに、尻尾の薙ぎ払いで着地狩りをしようとするヌシ・リオレイアに閃光玉を食らわせ、地へ叩き落した。ついでに麻痺弾と減気弾を叩き込み、弱らせておくのも忘れない。
「レイア!」『ギュアアアアアッ!』
そして、藻掻く彼女に、シュヴァルさんとレイアの絆アタックがヒットする。片手剣の使い手なんですね、シュヴァルさん。まるで我が里が誇る「猛き焔」みたいだな。普通に強い、盾が。音が痛そう……。
『うさぁ~ん!』
「あたたた……」
何だ、誰だよ、足を引っ掻くのは!
『うきゃ~っ!』
「えぇ、何この小っちゃいウルクスス……」
足元を見れば、ブンブジナよりも小さなウルクススが。幼体か?
「……邪魔だからあっちに行っててね」
『おちゃまー』『うさ~!』
とりあえず、ウルクススにはお引き取り願った。よろしくね、ヨッちゃん。
さぁ、邪魔者も消えた事だし、目の前の脅威を退けよう!
「行くぞレイア!」『ギュァアアッ!』
『ギャアアアアアアアアアアアアッ!』
「倒されてたぁああああああああっ!」
いや、強いって、シュヴァルさん。流石は歴戦のライダーさん(たぶん)。
……何か拍子抜けしたけど、これで今回の百竜夜行は乗り切った。
――――――ドギャアアアアアン!
そんな訳が、無いよねぇ?
『コァアアアォォォ……ギャォオオオオオスッ!』
空から降って来たのは、奇しき赫耀のバルファルク。
しかし、何か変だ。
――――――いや、おかしいのは元からだけど、口が二重構造になってたり、前脚や背中にイソギンチャクのような触手が生えているなど、何と言うか……
あと、滅茶苦茶デカい。前のバルファルクたちは狗竜系モンスター程度だったが、こいつは大型の海竜種であるオロミドロよりも全長がある。素体が元から大きかったのだろうか?
それにしても、仮にも古龍の侵食に未だに抗っているとは、こいつの原型となったモンスターとは一体……?
『コァァアギャォオオオオッ!』
だが、生ける屍同然のこいつがこちらを考慮する筈も無く、異形で異常なバルファルクが襲い掛かって来た。
◆シュヴァル
「モンスターハンター ストーリーズ」の登場人物にして、第1作主人公の幼馴染。
元は大人しく気弱な少年だったが、母親が凶気化したナルガクルガに殺された事で心に傷を負い、徐々に精神が歪み始め、やがて主人公の前から姿を消した。
後に現れた彼はリオレウス亜種の防具を身に着け、リオレイアを馬車馬のように使う、気性の荒いハンターとなっていた。ハンターになった理由はむろんモンスターへの復讐であり、パートナーであるリオレイアすら「使えない」と罵るような人間へと成り下がっていたが、「黒の凶気」に関わる事件を始めとした紆余曲折の果てに主人公と和解した。
続編の「MHST2」でも登場しており、その頃には過去の自分を省みる事が出来る立派な大人になっている。
今作では「MHST2」の凶光化と破滅レウスを巡る壮大な物語を乗り越えた後の設定であり、本編以上に優しい大人になっている。
ちなみに、カムラの里を訪れた際に、故郷には無かったライトボウガンやヘビィボウガンに興味を持った模様。