泣いた雪鬼   作:ディヴァ子

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※ユウタくん無双回。


輝くエメラルド

 ベリオロス。

 氷ブレスを吐く「零下の白騎士」にして、素早さと力強さを兼ね備えた「迅速の騎士」。

 全身が白銀の甲殻に覆われ、口に鋭い二本牙、翼脚には滑り止めの役割を果たす爪や棘が無数に生えている。腹部は触りの良い厚手の毛皮に覆われているが、ダブルコートになっている為、水を弾く上に丈夫なので、明確な弱点にはなり得ない。

 寒冷群島の生態系では上位に位置するモンスターであり、並みの中型鳥竜種を十把一絡げに薙ぎ倒し、ゴシャハギとも互角に渡り合う程の実力者である。

 ティガレックス系統の骨格を持つ飛竜種だが、ティガレックスやナルガクルガと違って飛行能力が非常に高く、大地をスライドするように駆け巡ったかと思えば、ホバリングしながら旋風の氷ブレスで相手を巻き上げるなど、空陸を制した強豪モンスターだ。

 最大の特徴は鋸状の刃を持つ琥珀の鋭牙で、口外まで伸びる程に発達している事から、別名を「氷牙竜」という。この牙で甲殻を砕き、肉を抉るのである。その為、傷口が結構エグイ事になる。

 

『グヴォオオオオオオン!』

 

 そんな白銀の騎士が、目の前で吠え滾っている。言うまでもなく敵視されているし、話し合いなど望むべくもない。モンスター相手に何を言っているんだという話だが。

 つーか、訓練でこんな奴を相手にさせるなよウツシ教官。

 

「頑張れ、ユウタくん! そいつはまだ年若い下位の個体だから、キミなら苦も無く打倒出来るだろう!」

 

 いや、それは戦い方を思い出せたらの話だろ。今の慣れない身体で何処までやれるか……。

 

『グヴォオオッ!』『うわぅ!?』

 

 むろん、ベリオロスがこちらの事情を酌む筈も無く、レックス系骨格の飛竜種が良くやる飛び掛かり攻撃を繰り出して来た。翼がデカい上に勢いもあるので避けるのは難しいが、飛び込むように緊急回避をする事で上手く躱す事が出来た。

 

『ヴォァアアッ!』『グヴォオッ!?』

 

 さらに、力を溜め込みつつ剣でタックルをかまして左の翼脚をかち上げ、がら空きの腹に薙ぎ払いを食らわせ、怯んだ所に溜め斬り→強溜め斬り→激昂斬を叩き込んで、あっという間に左翼脚の爪と棘を部位破壊した。

 良し、ベリオロスはスパイクが壊れると滑り止めが効かなくなるから、大幅に動きを制限出来る。このまま一気に叩きのめしてやる。

 

『グヴォオオオ『ヴォオオオオオオオオオオオオヴ!』……ッ、グゥゥ……!』

 

 起き上ったベリオロスが虚勢を張るように威嚇して来たが、それ以上の咆哮でかき消してやった。これでも長生きしてるんだ。調子扱いた青二才に気迫で負ける程、大人しくは無いよ。

 というか、人間になった筈なのにモンスター並みの唸り声を上げられるって、一体どうなってるんだろうね、ボクの身体?

 まぁいいや。さっさと身体に慣れたいし、とっとと片付けよう。

 

『グヴォオオオッ!』『ヴォァアアッ!』

 

 威嚇にもめげずにテールスイングを繰り出して来たベリオロスに対して、ボクはウツシ教官から貰った翔蟲を使い、鉄蟲糸技の「朧翔け」を発動する。この技は翔蟲に引っ張って貰う事で一定距離を高速で移動し、切り抜き様にカウンターダメージを与える事が出来る。見切りが出来ないと自爆してしまう諸刃の剣だが、流石に弱ったベリオロスの攻撃を見誤る程、耄碌はしていない。

 この朧翔けにより、ベリオロスの尻尾を傷物にした上で、右翼脚のスパイクもぶち壊した。両翼脚の滑り止めを失ったので、最早ロクに動けないだろう。

 

『ヴォォオオオオオオオオォオオオヴ!』

 

 そして、双剣特有の「鬼人化」を発動。止めを刺すべく、ジタバタと藻掻くベリオロスに突撃し、「鬼人空舞」をお見舞いする。最初の一撃を起点に敵の身体を斬りながら駆け上がる、双剣にのみ許されたスタイリッシュアクションだ。

 ……操虫棍? 知らない子ですね。

 ま、ボクが担いでいるのは大剣なので、モーションはノロノロだけどね。どちらかと言うと、軽い溜め斬りしながら空中乱舞してるって感じ。一発一発のダメージがデカいのが、こっちの有利な点かな。その分だけ手数が減る為、属性武器とは若干相性が悪いが、弱点特効に自信の有る人なら活かせるかもしれない。

 

『グヴゥゥゥ……!』

 

 よしよし、もう瀕死状態だね。タフな大型飛竜種とは思えない弱さだが、つまりそれは慣れない身体でも戦える程度の相手だったという事である。所詮は素人に毛が生えた程度の若輩者か。

 

『ヴォオオオ――――――』

『ゲコァアアアアアアア!』

『ベホマァアアアアアッ!?』

 

 しかし、砥石で整えてから最後の溜め斬りを食らわせようとした瞬間、盛大な横槍が入った。

 全長は40メートル、四足歩行時の体高だけでも20メートルはある、圧倒的な巨躯。皿と嘴が特徴的な顔に苔生した亀のような甲羅といった河童を思わせる要素に、ザボアザギルやテツカブラと同じ両生種の肉体を付けたした怪物。水を吸いエメラルドグリーンに輝くボディは、愛嬌のある見た目に反して中々に美しい。おそらくだが雌の個体であろう。

 

 そう、前回ボクを丸呑みにしようとしてアヤメさんに撃退された、あの馬鹿デカいヨツワミドウだ。

 

 しまった、ここは彼女の餌場だったっけ。餌場の管理に煩いヨツワミドウが、盛大に大暴れしたボクとベリオロスを見逃す筈もない。

 

『ゲコォオオオッ!』

『『グヴォオオ!?』』

 

 案の定、怒ったヨツワミドウが、猛然と襲い掛かって来た。




◆ベリオロス

 竜盤目竜脚亜目前翼脚竜上科ベリオ科に属する飛竜種。別名は「氷牙竜」。異名は「迅速の騎士」「零下の白騎士」。ナルガクルガとは近縁の関係。
 典型的なレックス系骨格を持つ大型モンスターで、別名の通り氷のブレスを操る。精々滑空ぐらいしか出来ないティガレックスやナルガクルガと違い、ホバリングも可能な程に飛行能力が発達しており、上空から竜巻型の氷ブレスを吐いて拘束し、そこへナルガ直伝(?)の突撃をかますのが黄金パターン。
 また、翼脚の棘や爪はスパイクの役割が有り、スライディングタックルや滑るようなテールスイングを放って来るが、破壊されるとそれらの技が全て使えなくなる上にすっ転ぶようになる為、諸刃の剣でもある。
 ちなみに、亜種は砂漠に生息しており、氷の代わりに砂のブレスを放って来る。ケチャップを掛けたように赤茶けたボディをしている為、ただの酔っ払いにも見えるが、赤い部分は獲物の返り血らしいので、舐めて掛からない事。
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