泣いた雪鬼   作:ディヴァ子

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今回は日常的なお話。


閑話:言の葉の庭

 はいはい、アタシだよ。リハビリ中のハンター、アヤメだよ。

 いやー、カムラの里に来てから半年くらい経つけれど、本当に色々あったわね。

 突然の怪我から始まった療養生活だけど、ただ大人しくしてるだけじゃあ身体が訛るからと始めたライトボウガンが、ビックリするぐらいに全然上手く使えなくて、初めは泣きそうになったわ。元は大剣使いなんだから当然だわな。次点でハンマーが得意ね。

 でも、ウツシ教官に教えを請いながら、無理のない程度に少しずつ練習し続けている内に段々と使えるようになって、アタシはまだやれるんだって柄にもなく感動したっけ。からくり蛙くんには、とてもお世話になりました。

 その後はイオリくんに翔蟲の使い方を習いつつ、ヨツワミドウやボルボロスなどの中堅モンスターたちで実戦経験を積み、ウツシ教官から合格を貰える程度には使い熟せるようになった。その過程で様々な防具一式が作れるようになったが、敢えて新しい装備は作っていない。

 あくまでアタシは剣士であり、ガンナー武器はリハビリ用。そう考えての拘りだ。実際は思い出にしがみ付いた、単なる意固地なのだが。

 しかし、ここ最近は、そうも言ってられなくなった。

 寒冷群島で拾った野生児、ユウタがその原因である。

 彼は大剣を双剣として使うという規格外の存在であり、流れで保護者にされた上にチームまで組まされてしまったので、まだまだ療養期間中のアタシは後方支援に回らざるを得なくなったのだ。大剣同士が肩を並べても邪魔になるだけだしね。

 そこで、アタシはここに来てからずっと着ていたナルガ一式を脱ぐ決意をした。ナルガ防具はガンナーに全然向いてないからね。

 だので、交易商人(笑)のロンディーネさんに協力して頂き、ライトボウガン向けの防具を制作した結果、

 

●夜行弩【梟ノ眼】(跳躍珠)

●ヴァイクSヘルム(跳躍珠/防御珠)

●アルブーロSベスト(防御珠/防御珠)

●ヴァイクSアーム(防御珠/防御珠)

●ヴァイクSコイル(跳躍珠)

●アルブーロSサンダル(防御珠/防御珠)

●護石《311》(反動軽減Lv3+気絶耐性Lv3)(貫通珠/早填珠/早填珠)

 

 ……という装備になった。

 火力より生存を優先しているのはご愛嬌。療養中に大怪我したり死んだりしたら意味が無いしね。これでも充分な威力は確保してるし、妥当な所でしょ。

 武器に関しては御覧の通り。ナルガクルガは上位へ昇進する時と膝を矢で撃たれた時に戦った、謂わば上位ハンター時代の始まりと終わりを務めた相手だから、どうしても外せないのよ。意地でも持ちましたとも。

 それにしても、ここまでガッツリとガンナー装備を着るのは初めてな気がする。前は仲間に背中を預けて只管斬ったり殴ったりしてたからなぁ。そんなアタシが今はユウタの背中を預かる立場になろうとは、世の中何が起こるか分からない。悪い気はしないけどね。

 ただし、問題もある。それは、この格好だ。

 

 ――――――どう見ても水着です、本当にありがとうございました。

 

 仕方ないでしょ、そういうデザインなんだから。嗚呼、ナルガ装備に戻したい……。

 だが、強くなるには止む無しである。前衛で身体を張るユウタの為、何よりアタシがガンナーとして生き延びる為にも、この恰好で頑張らなきゃ。

 ……って事で、さっそく実戦訓練と行きますか。

 

「おーい、ユウタ、居るかーい?」

 

 アタシは自宅(・・)の裏庭に回り込み、ユウタの姿を探した。

 そう、アタシはこの度、長期滞在を決意して、里に居宅を構えたのだ。足はまだ治って無いし、コミュ障なユウタを置き去りにするのは、流石にどうかと思ってね。船着き場の近くに購入しましたとも。

 何故わざわざ川岸の傍に立てたのかと言うと、デカいペットを飼っているからである。それも2匹(・・)

 1匹目は言うまでもなく、あのクソ雑魚ベリオロスだ。今は裏庭にポッカリと開いた洞穴の中で傷を癒しつつ、只飯を喰らっている。餌はクエストで採取した生肉やサシミウオを調理した、こんがり肉とこんがり魚である。こいつ、何気にグルメなんだよね。

 そして、もう1匹はというと、

 

『ちゃま~♪』「出迎えご苦労さん」

 

 このオタマジャクシ――――――もとい、ヨツミワドウ(・・・・・・)の幼生(・・・)だ。

 寒冷群島から逃げ帰って来たあの日、ユウタがヨツワミドウの落とし物を拾っていたのだが、実はそれが孵化寸前の卵であり、帰還と同時に誕生し、アタシを擦り込みで親だと勘違いしてしまい、現在に至る。集会所のテッカちゃん(ゴコク様に懐いているテツカブラの子供)よりは小柄だが、アタシの胸くらいの高さはあるので、充分にデカい。彼(彼女)には水が必要であり、幅を取る事も相俟って、船着き場の付近に家を建てたのである。

 ちなみに、今アタシは玄関先に居る。ヨツミワドウの幼生(名前は「ヨツミ」、渾名は「ヨッちゃん」)は庭の池に棲んでいる。この池は船着き場の大河に隣接……というか、石を組んで造った簡易的な物なので、ヨッちゃんは何時でも河に出掛けられるし、家や裏庭にも上がって来られる。

 

「ユウタは何処かな?」『ちゃまちゃま』

 

 アタシが尋ねると、ヨッちゃんは裏庭の洞穴を見た。やっぱり、あの中か。

 

「おーい、ユウタ。ユ――――――」

『『ZZZzzz……』』

 

 ズンズン奥へ進んで行くと、ユウタはベリオロスと仲良くお昼寝していた。こいつらは暑がりなので、日差しの強い日はこうして洞窟の中で寝転んでいる事が多い。本日もその例に漏れず、お休みタイムのようだ。

 仕方ない。こんなに気持ち良く寝ているのを起こすのもアレだし、今日は別の奴と行こう。

 

「居るかなぁ、ウツシ教官」

 

 という事で、アタシはウツシ教官が指導に励んでいるであろう、修練所へと向かうのであった。




◆船着場

 カムラの里の資材を運搬している場所。ゲーム的には特に意味の無いマップであるが、一応アイルーやモブ住民も居るので、たまには様子を見に行ってあげよう。
 アヤメの新居は本来なら無人小屋(と祠)がある場所に建っている。すぐ脇の岩場には洞穴が形成され、玄関先には池があるなど、ゲームとは様相が大分違う。時折、船着場のイカリ(アイルー)が勝手に昼寝したり、ホバシラ(モブの1人)が魚をくれたりと、人の出入りは割とある模様。
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