――――――で、修練所で今日も張り切っていたウツシを誘い、アタシたちは再び寒冷群島にやって来た訳だが、
「さぁ、今日も張り切って行こう!」
「お~いぇ~い♪」「………………」
何故かコミツちゃんも付いて来た。「エッグハンマーⅠ」という冗談じゃないハンマーを背負って。
……いや、確かに修練所で一緒に訓練してたけどさ、まさか一緒に狩猟を開始するなんて思わないじゃん。せめて見学にしとけよ、そこは。
「おい、ウツシ!」
「何だいアヤメ?」
「くたばれ屎尿の塊!」
「Yaー㏊ーッ!」
「喜ぶなぁ!」
「だが断る!」
「だが断られた!」
こいつマジで死ねば良いのに。
「アンタねぇ、こんな子供を狩場に連れて来るなよ!」
「大丈夫だ、彼女は既に一人前だし、何ならセイハクくんやタイシくんも良く連れ出してるから問題ない!」
「問題しかねぇよ!」
それでも大人かお前は。
「……だが、カムラの里は逼迫している。今はまだ散発的な百竜夜行しか無いが、その内に大規模かつ尋常では無い勢いになるだろう。怨虎竜の目撃例や、謎の暗雲も立ち込めていると聞く。大人として間違っているのは重々承知だが、人手は多い方が良い。愛弟子たちにばかり負担は強いれないからね」
「急にスンってなるの止めろ」
あと、割と真っ当な事を言っているのがムカつく。
まぁ、ウツシが太鼓判を押すなら問題あるまい。いざとなったら、アタシやウツシが守れば良い訳だし。
――――――ああ、そうそう、お気付きの方は居ると思うが、アタシはウツシの事を呼び捨てに変えている。だってこいつ、アタシの幼馴染らしいんだもん。
どういう事かと言うと、寒冷群島に着くまでの与太話が原因なのだが、それがこちら。
「そう言えば、船着場の方に新居を構えたそうだね!」
「ああ、うん。ユウタたちを野晒しにするのもどうかと思ってね」
「良い心掛けだ。流石は同じカムラの民だな!」
「……あのねぇ、アタシは外から来たハンターだよ?」
「おや、覚えて無いのかい? キミは元々カムラの里が出身だよ。まぁ、3歳の頃に引っ越してしまったから、覚えていないのは無理ないかもしれないがね。ちなみに、俺はしっかりと覚えているよ。キミのナルガクルガの鳴き真似は凄かったなぁ。おかげで俺までモンスターの鳴き真似が上手くなってしまったよ」
「ちょっと待てぇえええええっ!」
「おっ、そろそろ着くね。狩猟を開始しよう。イオリくんのサブウェポンであるスラアクくらいに使い熟して見せてくれ!」
「アタシの……アタシの、アタシの話を聞けぇ! 2分だけでも良い!」
とまぁ、こんな感じで、アタシは自分でも知らない忘れていた過去をカミングアウトされる破目になった。ついでにイオリくんがスラアク使いじゃなくて、チャアク使いなのも知ってしまった。あんなに上手いのにサブウェポンなのかよ。何処が軟弱者なんですか、ハモンさん。
そして、今現在アタシたちは寒冷群島のエリア1のメインキャンプに来ている。今回の狩猟対象は荒切りの凶猛、雪鬼獣ゴシャハギだ。里の受付でも集会所でも最上位のクエストランクを誇る、ラージャンやマガイマガドにも引けを取らない危険生物である。
一応、此度の対象は下位個体だが、油断は出来ない。何故なら、アタシはまだ1度もゴシャハギと戦った事が無いからだ。前情報によると、氷ブレスやそれを転用した氷結武装で襲い掛かって来るらしいが、一体どうなる事やら……。
「ごしゃはんぎ~♪」
楽しそうですねコミツちゃん。君は今から鬼退治に行くんだけど、分かってるのかな?
「とりあえず、ヒトダマドリを集めよう。話はそれからだ」
「了解」「はぁ~い」
という事で、先ずはヒトダマドリの花粉集めである。
ちなみに、ヒトダマドリとは腹に花粉と蜜を溜め込む環境生物であり、マップの至る所で名前通り人魂のようにユラユラとホバリングしている、不可思議な小鳥だ。
さらに、我々ハンターが触れると、溜めていた花粉や蜜をその場でばら撒き、それらを花結という特殊な装備に集める事で持ち主にバフを齎してくれるという、かなり便利な特性を持っている。カムラの里のハンティングにおいて、この作業は欠かせない。狩場に持ち込める装備は有限なので、長期戦による息切れや事故死を防ぐ為にも、絶対にやるべき行為である。
特にガンナーであるアタシにとっては死活問題であり、速射性と機動性の代わりに防御力がペラペラなライトボウガンは死に物狂いで集めておかないと、確実に後悔する事になる。ガードも出来ないし。
「お、光蟲だ」「まきむしだー」「フム、そろそろモドリ玉が欲しくなって来たな……」
物はついでとばかりに、様々なアイテムや環境生物を集めていく。カムラの里はこういうのが楽しいよね。属性やられを誘発する玉ころがし系統や、強制的に操竜待機状態に持って行くクグツチグモとかは、マジで反則だと思う。
『ヴォオオオオオオオオッ!』
「見付けた!」「いたいた~」
「よし、それじゃあ頑張り給え! 後ろは僕が守るから、安心して狩ると良い!」
そして、エリア9に差し掛かった所で、今回のターゲットであるゴシャハギを発見した。下位個体とは言え、その威圧感は半端ない……つーか怖い。何あの強面、おしっこチビリそう。
だが、コミツちゃんの前で情けない姿は見せられない。アタシだって経験は積んでるんだ。覚悟を決めろ、アタシ!
「ていやー」『ヴォオオッ!?』
「コミツちゃあああああん!?」
しかし、アタシが尻込みしている内に、コミツちゃんが突貫してしまった。鉄蟲糸技「鉄蟲回転攻撃」で。躊躇いなさ過ぎでしょ、コミツちゃん。子供って怖い……。
――――――いやいやいや、言うてる場合か。アタシも前に出るんだよ!
「はぁっ!」『グルヴゥゥ……!』
先ずは扇回跳躍でゴシャハギの上を取り、「起爆竜弾」を直接頭部へ叩き込む。起爆竜弾は他の弾が当たると爆発する仕組みなので、ライトボウガンの低い攻撃力を補ってくれる飯伏銀な特殊弾頭だ。
さらに、速射でガンガン貫通弾Lv2を頭にぶち込んで行く。大型モンスターは的がデカくて当て易いから良いね。
よし、結構ダメージも稼いだし、何よりモンスターのヘイトがこっちへ向くから、コミツちゃんが断然戦い易くなる。ハンマーに限らず、大型武器は隙がデカいから、注意を逸らしてやるのが一番のサポートである。
「おりゃー」『グヴォオオッ!?』
「コミツちゃああああああん!」
と、アタシが作った隙を突いて、コミツちゃんが鉄蟲糸技「インパクトクレーター 」を決める。鉄蟲糸で飛び上がり、落下しながらクレーターを作る程の勢いで相手をぶん殴る、ハンマー系統のザ・パワーな必殺技だ。
その小振りな身体の何処にそんな筋力をしまっているんだい、コミツちゃん?
「ドラララララァッ!」
ともかく、これは絶好のチャンスである。貫通弾は頭から尻へ突き抜けるように撃つのが一番力を発揮するので、スタン中に撃ち抜いてやるのが一番ダメージを稼げる。このまま刈り取ってやる!
『ヴォオオオオオオヴ!』
「くっ……!」「あーん」
くそっ、怒り状態に移行したか。
だが、怒っているという事は、体力が減っている証拠。慌てず騒がず、相手の出方を見よう。
さぁ、どう仕掛けて来る!?
『コォオオオオオオオッ!』
「危なっ!」「わーわー♪」
さっそく、ゴシャハギが氷のブレスをばら撒いて来る。楽しそうですねコミツちゃん。
『グルルルル……ッ!』
「いぃぃ!?」「わーぉ」
さらに、両腕に出刃包丁のような氷結武器を形成すると、
『――――――ハァアアアッ!』
「嘘ぉ!? ……ヒャッホーイ!」
まさかの扇回跳躍をやり返してきた。頭上を飛び越えて、背後から地砕きを食らわせるとか、そんなの有りか。
いや、ちょっと待て、これは――――――、
『ヴォオオオォヴゥッ!』
「攻撃力ぅううううっ!」
捲れた地盤に巻き上げられたアタシを、ゴシャハギの出刃包丁が叩き落す。下位個体じゃなかったら即死だろ、これは。
というか待って、地面に身体がめり込んで動けないんですけど!?
『ガブガブ』
ガライーバァアアアア!
『グヴヴゥ……!』
そんなアタシに、ゆっくりと近付いて来るゴシャハギ。まるでお前の罪を数えろとでも言いた気な、恐ろしい動作だ。
くそぅ、動け、動いてよ、アタシの身体!
逃げなきゃ駄目だ逃げなきゃ駄目だ逃げなきゃ駄目だ逃げなきゃ駄目だぁ!
遺言:攻撃力だなんて、そんなの嫌なんだよぉおおおおおおおおおおおっ!
「……ぁぁあああッ!」『グボァッ!?』
だが、天啓は突如として降り注いだ。
何と遥か彼方の上空から、見知らぬ女性が彗星の如く落ちてきて、ゴシャハギの頭部を直撃してスタンを取ったのである。馬鹿デカい出刃包丁までもが粉々に砕けた事から、相当な勢いだったのが窺える。
「えい、えい、お~♪」「せいやっ!」
『グギャアアアアアアアアアアァッ!』
そして、その隙を見逃さず、コミツちゃんとウツシがゴシャハギを仕留めた。ハンマーで叩きのめされ、音速の双剣ラッシュで血祭りに上げられる姿は、敵ながらちょっと可哀想だった。
「た、助かった……」
危うく最期の台詞が「攻撃力」になる所だったよ。絶対に嫌だわ、そんなん。
「あいたたた、何なんですか、もう!」
……余談だが、落ちて来た女性は無事でした。そんな馬鹿な。
◆エッグハンマー&卵槌ガーグァ
丸鳥ガーグァ(の羽と卵)を素材にしたハンマー。
打突面がガーグァの卵になっているという、どう見てもネタ要素ありありな武器なのだが、何故か卵が割れない上に攻撃力が阿保みたいに高い、恐ろしい兵器。どうして割れないのかは公式で「永遠の謎」らしいが、そこは解明しろよ。
ハンターの得物には何かしらのネタ武器が1つは存在する物だが、その中でも卵槌ガーグァは1、2を争う威力を持つ、性能面でもネタに事欠かない装備である。