あるはずのない物語。
ジョーカー3の相棒をかっこよく書きたかった。

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スランプに陥ったので、気分転換に。
マスタードラゴンは嫌いじゃないけど、まぁこれくらいの目にあってもいいよね。


天すら揺るがす、究極の兵器。

それは、遥かなる天空を駆ける存在である。

それは、山と見間違えるほどの巨体である。

それは、キラーマシンと呼ばれし殺戮兵器の一種である。

 

空を飛ぶ翼を持たない。

それどころか上に飛ぶためのスラスターすらない。

 

その無骨な四本脚で宙を駆け、時空の狭間を揺蕩うのだ。

 

その名はファイナルウェポン。

ある世界にて、モンスターマスターの手により配合され生み出されたその名に恥じぬ最終兵器である。

 

同族を遥かに超えるその巨体は主の意向で超ギガボディの特性を足されたことによるもので、それが故に不思議な力で空を飛べるのだ。

 

それのマスターはある巨悪に抗うためにモンスターの力を借りる存在であった。

腐臭放つ異形にも、マ素を振りまく悪神の如き怪物にも、万魔統べる大魔王にすら恐れ知らずに立ち向かった紛れもなき英雄であった。

 

と、配合元のゴールドマジンガのメモリーから受け継ぎ、読み取ったそれは、自らのハイテクな頭脳では解決できない問題に行き当たった。

 

やることが終わったなら、当機の存在意義とはなんだ?

メタフィクション的に言えば、このマスター、ストーリーを全クリしてしまっているのだ。残るはすべての配合を行い、図鑑を埋めることだけ。なのでこのファイナルウェポンも作っただけ、となった。

 

そして、ファイナルウェポンも配合素材となるときが来た。

 

…次に再起動することが、万が一あるようならば、その時は、種族の本懐を遂げたいものだと。

 

混ざり混ぜられ、新たな魂と姿が作られていく最中、ファイナルウェポンの魂とほぼ全ての部品が偶発的に生まれた時空の狭間に吸い込まれ、消え去った。

 

配合したモンスターマスターが絶叫したことはさておき、それは、いつかの過去へと流れ着いた。

 

小さな村の、そのそばに。

 

一人の木こりがそれを見つけた。

 

その頃といえば魔物がだんだんと増え始め、仕事もだんだんと手間取るようになってきた。斧を入れた木が人面樹で命からがら逃げ出した、なんてこともそれなりにあった。けれど、そんなことがあっても働かなければ飯は食えぬ。故に木こりは今日も斧を片手に森へと入っていこうとして、二度見することとなる。

 

森の前に、山がある。

山、なのだろうか?魔物かもしれないが、こんなカチコチのキンキラキンの豪奢な存在を、ちっぽけな山奥の村に住む木こりは知らない。木こりの背丈を遥かに超える巨剣や、ボウガンを見ても木こりには漠然とすごいものだ、としかわからない。

 

唐突に、排気音があたりに響く。

山と思い込んでいたそれは、ガシャンガシャンとけたたましく駆動音を振りまきながら立ち上がり、モノアイで眼前のちっぽけなものを見つめる。

 

これは、マスターのような存在に見える。けれども遥かに弱々しく、不健康だ。とてもではないが自分を使役したり、脅かしたりできるほどの存在ではない。と、兵器は思考する。

 

突然動き出したそれに、びっくり仰天してすっ転んだ木こりをじっと見つめる兵器。目と目があっても恋は始まらんだろう。

 

けれども、なぜだろうか。

この木こりには、きっと大きな運命のような、何かがある。先代のスーパーキラーマシンがマスターと旅したように、己もこれと旅をするのだろうか?

 

そんなことはなかったが、この兵器、なかなかに真面目なやつである。木こりが木を切っているのを見つめては、同じように巨剣を振るって遠くの山をハゲ山にしかけながら木を集めてきたことがある。やりすぎだ、と木こりに叱られると今度はその馬鹿力に任せてアームで引っこ抜き、以前より数は少ないものの、それでも村全体がしばらく満足に腹を満たせるほどの金額で売れることとなった。

 

それから、ちょっとの月日が立った。木こりは恋をした。羽根が生えていて、世間離れしているとはいえ、きれいで心の優しい人に一目惚れをした。向こうもどうやら一目惚れしたようで、仲睦まじく、ただし人目を避けての出会いを繰り返した。

 

ただ、木こりにとっての相棒とも思えるようになった兵器には彼女を会わせることにした。自慢したかったのもあるかもしれない。

彼女はそれを見て、危うく悲鳴を上げかけた。が当の本人は人面樹をへし折るのに忙しく、ちらとその巨体を向けたきり、また仕事に戻った。

 

それから、また少し時が立った。

彼と彼女の間に、可愛い女の子が生まれた。今ではもう木こりの妻となった彼女も兵器に対する恐怖はなくなり、娘を夫婦揃って見せに行こうとした。

 

その日の兵器は、少し変だった。じぃっと彼らを見つめると、排気音を立ててガシャガシャと無意味な動きを繰り返していた。無意味に見えるかもしれない。これは立派なためる、というテンションアップのための行為だ。

 

そんな彼らめがけ、雷が落ちた。

とっさに兵器は彼らをかばうように高く飛び上がり、雷をその身に受けた。が、配合に配合を繰り返したその身体には大した傷を負わせることはできなかった。山と見間違えるほどの巨体に、たかが雷一つで致命傷を与えられる方がおかしいのだ。

 

大地を揺らして着地したあと、己の体内にある大口径の砲を雲の上にいる、それめがけて構える。

 

マスターが割り振ったスキルの中にはない、自身の切り札。砲口がほんの僅かに赤く輝いた瞬間、はるか雲の上の天空城に座すそれの、翼ごと腹部を禍々しい紅さのレーザーが貫いた。

テンション最大のレーザーキャノンは、すべてを知ることができるその龍に、初めて未知の脅威を知らしめた。

 

そしてそれは、羽もないのに空を飛ぶ。小山ほどあろう鉄塊が空を飛ぶなんて、誰が思うだろうか。相棒と思っていた村人でさえ、目をまんまるにして、口を半開きにして唖然としていたのだから、誰もわかるわけがない。

 

苦し紛れに飛び交う雷撃をその手に握られた巨剣で切り払い、排気音とともに、はるかなる天空をめがけ飛んで飛んで、飛び続ける。

 

天空人の呪文も、ハードメタルボディの組み込まれた体には軽々と振り払われる程度のものでしかない。むしろ攻撃などせずとも、その巨体が振りまく風圧で、羽ばたくことすらできずに地面にぽとりぽとりと落ちてゆく。

 

蚊取り線香にやられる蚊を思い出す状況を引き起こしたその本機は天空城の屋根に足をつけ、再びシャカシャカとテンションアップを行い始めた。

 

そうして最大までため直したそのテンションで、悶え苦しむ竜めがけその巨剣を振り下ろした。屋根をたやすく断ち切り、竜の無事な片翼をも切り裂きながら、それは落ちてゆく。天空城を落ちざまに真っ二つに切り捨てつつ大地へと帰還した。

 

人も、魔族も、天空人も。

見えたものは、すべてが恐れおののいた。

もはや、アレの行けぬところなどない。どこまで逃げようとも、目の前のそれからは逃げ切れることはないだろう。敵対してしまうことはそれ即ち、今叩き斬られ、天から降り注ぐ天空城の成れの果ての二の舞になることは明らかだ。

 

報復をしようとする気は天空人もマスタードラゴンも全く起きなかった。あの禍々しい赤を思い起こして、立ち上がろうとする勇気すら切り捨てられてしまっていたのだ。それよりかは早く傷と城を治すことのほうが大事だ、とトラウマから目を背けた。

 

そんなことが起きたものだから、掟に背いた天空人のことなんて、みんな忘れてしまった。

 

そうして、兵器と村人たちは元の平和な生活に戻った。またああいうことをしたいものだ、と思う兵器は、時々どこかにぼんやりと歩いていくことが多々見られた。

 

その先で、いくつもいくつもの出会いと蹂躙を繰り返し、一つの物語は出来上がる前に廃棄された。

 

ありきたりなバッドエンドはない。

ありきたりなハッピーエンドもここにはない。

 

竜を追いかける物語は、ここにて一旦断ち切られた。あるのはただ巨躯を有する、兵器だけだ。


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