悪ノ華【妖精の必要悪】   作:ギュスターヴ

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第二十話:外道の極み

 フェアリーヒルズを出たジル・アイリスは銀のアタッシュケースを持ちながら街を駆けた。普段全くと言っていいほど身体を動かさないためすぐに息を切らしたが、それでも足を動かし続ける。

 

 残る敵はラクサス・ドレアーのみ。彼の居所はすでに把握しているが、向かう先はカルディア大聖堂ではなかった。

 ラクサスを打倒する前に空に浮かんでいる〝神鳴殿(かみなりでん)〟を全て破壊しなければならない。しかも、発動するまでの残り時間が10分を切っている。

 エルザ・スカーレットも同じ考えに至っており、一度はラクサスと交戦していた彼女ではあったが、あとから参戦してきたナツとガジルに任せて〝神鳴殿(かみなりでん)〟の破壊の準備に取り掛かっている。

 だが、〝神鳴殿(かみなりでん)〟の数は300個にも及ぶ。しかも、〝神鳴殿(かみなりでん)〟には生体リンク魔法がかけられており、一個壊すだけでも凄まじい電撃が襲ってくる。いくら〝妖精女王(ティターニア)〟といえど、全て破壊すればショック死は確実だ。

 

 そうこうしていると、ジルはある人物の元にたどり着いた。男の名はウォーレン・ラッコー。念話(テレパシー)の魔法を使う魔導士だ。フリードの術式に嵌まって同士討ちをしていたのか、傷を負って気絶している。

 ジルはアタッシュケースを開け、小瓶をひとつ取り出した。気付け薬としてジルが調合した化学薬品だ。

 (コルク)を外し、ウォーレンの鼻に近付ける。強烈なアンモニア臭が鼻腔に入りこみ、

 

「ぶっふぉッ!!?」

 

 鼻水と涎を撒き散らしながらウォーレンは覚醒した。最悪の目覚めだ。

 気付け薬の効果を確認しつつ、ジルは無表情に挨拶する。

 

「おはようございます、ウォーレン」

「おぅえっ…ぁ…ジ、ジル…? お前…何のイタズラだよ…」

「時間がありません。起こして早々申し訳ないんですが、あなたの力が必要です」

 

 

 〝神鳴殿(かみなりでん)〟の発動時間が刻一刻と迫っている中、白銀の鎧を纏ったエルザ・スカーレットの頭上でおびただしい数の刀剣が浮遊していた。

 〝神鳴殿(かみなりでん)〟を全て破壊するには複数の剣を同時に操る〝天輪の鎧〟が最も有効である。普段から重宝しているが、難なく出現させられる数は数十本、多くて100本だ。

 それでは全く足りないため、エルザは持ち前の魔力と精神力を限界以上に引き出し、200本の剣の出現に成功させた。

 だが、それでも300個もある〝神鳴殿(かみなりでん)〟に遠く及ばない。

 

「くっ…あと100…あと100本なければ、同時には…」

 

 エルザは苦悶の表情を浮かべた。

 もはや、〝神鳴殿(かみなりでん)〟の発動は止められないのか。ならば、せめて自分の命と引き換えに少しでも被害を抑えるべきか。それも良かろう。

 だが、残り100個の〝神鳴殿(かみなりでん)〟が街にどれだけの被害を及ぼすのか。最悪、死者が出る可能性がある。そうなったら、最後──妖精の尻尾(フェアリーテイル)は確実に解体される。

 否、解散しなければならない。マスター・マカロフ個人の責任問題も問われかねない。

 いったい、どうすれば──、

 

『おい、皆聞こえるか!? 一大事だ!! 空を見ろ!!』

 

 突然、男の声がエルザの頭に響きわたった。この声と、相手の脳に直接語りかけてくる魔法は、間違いない。

 

「ウォーレン…!?」

『くたばってる奴は起きろ!! ケンカしてる奴はとりあえず中止だ!!』

 

 ウォーレンが念話(テレパシー)を送っている相手は、エルザだけではなかった。彼はマグノリアにいる魔導士のほぼ全員に今の危機的状況を説明した。

 空に浮かんでいる魔水晶(ラクリマ)は〝神鳴殿(かみなりでん)〟と呼ばれるもので、発動すれば街が壊滅すること、その残り時間は迫っていること、そして念話(テレパシー)の効果範囲の都合上聞こえている者だけでもいいので〝神鳴殿(かみなりでん)〟をひとつ残らず破壊すること。

 

「…ウォーレン。何故、お前が〝神鳴殿(かみなりでん)〟のことを…」

 

 エルザは不思議に思った。〝神鳴殿(かみなりでん)〟の事情を知っているのはギルドにいたメンバーだけで、先に街中で戦っていた者は知りようもないはずだが…。

 

『ああ、それはジルが──』

「ジル!!!?」

 

 最も嫌いな男の名を聞いた瞬間、エルザは条件反射で怒号をあげた。

 すると、返ってきたのはウォーレンの声ではなく、ひどく落ち着いた低音だった。

 

『随分と辛そうだな、エルザ』

「ようやく姿を現したな、ゴキブリ」

 

 早速ジルを害虫呼ばわりするエルザ。

 

「今までどこに行っていた?」

『私の脆弱さは、君もご存知だろう? ラクサスたちが怖かったからな。隠れ家に身を寄せていた。それよりも〝神鳴殿(かみなりでん)〟のことだが──』

「お前が全て壊せ。ひとつずつだ。良かったな、300回死ねるぞ」

『それも魅力的な話だ。だが、時間もないし、いくら私でもあれを全て同時に破壊するのは不可能だ。街ごと吹き飛ばせと言うのであれば、話は別だがな』

 

 皮肉が通じない──エルザは大きくため息をつく。

 

「…もういい。お前の策を聞かせろ。何か考えがあるんだろう?」

『なに、策と言うほどのものではない。200個の魔水晶(ラクリマ)は君に任せるとして。そうだな…位置的に北部を中心にやってほしい。残りの南側の100個はそれ以外の者で全て破壊する』

「生体リンク魔法はどうするつもりだ?」

 

 エルザはぴしゃりと言い放つ。まさか、街を救うために仲間たちに犠牲になってもらうとでも言うつもりか?

 前頭葉のほとんどがドライアイスで出来ている男だ。そう口にしてもおかしくはないが、いささか合理的とはいえない。

 だが、〝喪服の悪魔(メフィスト)〟はすでに対処を用意していた。

 

『勇敢にもビスカとジュビアが魔水晶(ラクリマ)を破壊してくれたおかげで、〝神鳴殿(かみなりでん)〟の魔法構成を解析した。皆が〝神鳴殿(かみなりでん)〟を破壊した瞬間、私が対生体リンク魔法の付加術(エンチャント)を発動する』

 

 先に誰かが壊してくれるのを待っていたわけか──エルザは批判したかったが、問答しても詮なきこと。

 とりあえず言葉を呑んでから、質問する。

 

「空間系か?」

『空間系付加術(エンチャント)など魔力の浪費だ。使うまでもない。ひとりひとり同時に打ち込む』

「全員の居場所がそれぞれバラバラだし、距離も離れている。本当に付加術(エンチャント)をかけられるのか?」

『問題ない。逆五芒星(ブラック・ペンタグラム)──まぁ、魔力の送受信アンテナと思ってくれ。それを街中の至るところに仕込んである。マグノリア内であれば、狂いなく、全員に付加術(エンチャント)をかけられる。だが、急場しのぎなうえに、君が指摘した通り──皆の距離が離れているから数秒しか持たん。できれば攻撃するタイミングを合わせてほしい』

「…わかった」

 

 腑に落ちない点はあったが、エルザは納得した。魔水晶(ラクリマ)を壊させるための嘘でもないようだ。

 ジルとて仲間──いや、駒が多く犠牲になるのは良しとしないはずだ。

 

「もし、ヘマをやらかしたら化けて出てやるからな」

『それで呪い殺してくれるのであれば、このうえない』

 

 〝妖精女王(ティターニア)〟と〝喪服の悪魔(メフィスト)〟が物騒な会話を交わしたあと、ウォーレンが改めてメンバーに語り掛ける。

 

『皆、聞いていたな!? 生体リンク魔法はもう関係ねぇ! 全員であの魔水晶(ラクリマ)を──』

『ウォーレン…てめぇ、俺に何したか忘れたのかよ』

『え、マ、マックス!!?』

 

 これから作戦を始めようというときに噛みついてきたのはマックス・アローゼであった。彼はフリードの術式に嵌まってウォーレンと対戦し、結果敗北した。そのときの恨み辛みが未だ消えずにいた。

 それを皮切りに、数十人の味方同士で念話(テレパシー)を介した言い争いがはじまった。同士打ちに関しては術式のルールに従わざるを得ない状況だったため、そのときの対戦相手を批判するのは筋違いである。

 だが、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーのほとんどは常識から外れ、血気盛んな者たちの集団である。理屈ではわかってはいても、納得まではできなかった。

 

──…いったい何を言い争っているんだ、お前たちは。

 

 エルザは怒りを通り越して、呆れてしまう。

 こうしている間にも〝神鳴殿(かみなりでん)〟の発動が迫っている。呑気に喧嘩している余裕はない。

 いつものように怒鳴り散らして、無理やりにでも言うこと聞かせようかと思ったその時。

 あの男が、静かに口を開いたのであった。

 

 

 

『私はあなたたち全員の弱みを握っている』

 

 

 

 口争が、ぴたりとやんだ。

 声の主──ジルのその一言は決して大きな声ではなかったが、言葉の内容だけで全員の口を噤ませるには十分であった。

 そして、皆の思うことは一緒であった──()こいつ何て言った(・・・・・・・・)

 そんな心情を知ってか知らずか、喪服を着た麗人は続ける。

 

「私はこの数年であなたたちの生年月日、出身地、経歴、家族構成──全て調べ上げている。…そうだな。例えば、マックス君」

『お、おれ!?』

 

 まずは事の発端であるマックスからはじめた。

 

「最近、五歳年上のお姉様がお子さんを出産されたそうではないか。名前はアリシア。私は赤ん坊は苦手なんだが、とても可愛らしい女の子だ。ところで知っているかね…」

 

 男の声がワントーン落ちる。

 

「一歳未満の赤ん坊にとって、ハチミツは有害らしい。腸内環境が整っていないため、ハチミツに含まれるボツリヌス菌が腸内で増殖し、毒素をまき散らす。結果的に首のすわりが悪くなり、便秘、脱力状態、哺乳力の低下などを引き起こし、最悪死に至る。いやはや、怖いものだ。もしも、暗示をかけられている(・・・・・・・・・・)母親がうっかり我が子にハチミツを与えたら──」

『て、てめぇ!!! 何てことしやがる!!!』

 

 当然の如くマックスは怒号をあげた。

 

『何でウォーレンにちょっと噛みついただけで、アリシアちゃん──ああ、いや、おれの姪っ子を人質に取ってんだ!!? ボツリ何とかよりお前のほうが怖いわ!!!!』

「人質だなんて、とんでもない。私はただ常識を口にしただけだ。…ああ、次にワカバ」

『な!? ま、待てよ!!』

「毎月のお小遣いは2万ジュエル。月に一度、風俗を楽しんでいることを奥様に知られたら、いったいどれだけ減らされてしまうのか。ちなみにお気に入りの風俗嬢は──」

『もう殺してくれよ!!!!』

「ナブ。〇月✕日の22時──隣町の酒場で同胞の話をしていたようですな。何でもエルザが太ったか、どうのこうの──」

『言ってんじゃねぇかッ!!!!』

 

 ひとりひとりの弱みを握っていることを十分に知らしめたところで、ジルは念話(テレパシー)を介してメンバーにそれぞれ指示を下す。

 

「ラキとトノ、狸寝入りしているのはわかっている。眼鏡をかけているのが馬鹿馬鹿しく思えるくらいに視覚をいじくり回してやる。マカオ、美國、私への批判は後で聞こう。血尿が止まらなくなる呪いをかけられたくなければ、今すぐに横で気絶している仲間をどんな手を使ってでも起こしてくれ。ニギー、ミキィ、ビジター、南西部が手薄だ。発動まで後5分36秒。時計台に向けて全速力で走るがいい。できれば家族に危害を加えたくはない」

 

 外道。

 妖精の尻尾(フェアリーテイル)以前に、人としてあるまじき所業である。

 メンバーのほとんどがバトル・オブ・フェアリーテイルのことも、ラクサスのこともどうでもよくなり、念話(テレパシー)の向こう側にいる黒狐をどんな風に狩ってやろうかと殺意を漲らせはじめた。

 そんな彼らの怒りをさらに煽り立てるように、ジルは短く演説する。

 

「皆の気持ちはよくわかる。私とて、このギルドを愛する者として胸が引き裂かれるような想いだ。だが、今我々が争ったところで何になる? 優先するべきは〝神鳴殿(かみなりでん)〟の破壊──ひいてはラクサスという卑劣極まりない巨悪に裁きの鉄槌を下すこと。今こそ、我々の心をひとつにするときだ。どうか手向かわないでほしい。私がこの場で指先を三回動かしただけで、あなたたち全員を絶望の底──とまでは行かないが、崖の淵に立たせる程度(・・)のことはできる。何せ、脅迫の材料はひとつだけではないのだからな」

 

 あとで絶対(ぜってぇ)ぶっ殺してやるぞ、このクズ野郎ッ!!!!!──別の意味で、皆の心がひとつになった瞬間であった。

 幽鬼の支配者(ファントムロード)の一件で、ジルの人となりをよく理解しえなかったルーシィも「ミラさん…噂通りの人じゃん…」と絶望していた。

 そして、ジル・アイリスの理解者のひとりであるミラジェーンはというと──、

 

「ジル…私も、さすがに庇いきれないわよ…」

 

 頭を抱えて嘆いていた。そんな親友を見て、カナが優しく抱き寄せた。

 

「あ~、よしよし。妖精一の嫌われ者を旦那にすると苦労するよね、うんうん」

 

 今度、女子限定ジル・アイリス被害者の会を開こう。

 ジルへの不満を発散させるにはあの女子会しかない。最終的に泥酔したミラジェーンの惚気話に長時間付き合わなければならないのだが…。

 

 

──こ、こいつ…やはり、人を操るのが上手過ぎる…。

 

 ジル・アイリス被害者の会の会長を務めるエルザ・スカーレットは、ジルの徹底とした非人道性に引きつつも逆に感心してしまう。

 共通の敵となることで、あれほど乱離拡散していた一〇〇名近くの人心を一瞬でまとめ上げ、魔水晶(ラクリマ)を破壊するためだけの憎悪の兵隊へ仕立て上げた。

 正直、ジルの言っていることははったりかもしれない。だが、どこまでがはったりなのかがわからないのが、この男の恐ろしいところであった。それを本人が自覚しているから、なおさらタチが悪い。

 

 しかも、周囲の人間にいくら嫌われても本人は全く意に介さない。自分の悪口を言う集団の横でのほほんと読書を楽しむほどだ。だからどこまでも徹底して、人の嫌がることを実行できる。

 

 だ が、や り 過 ぎ で あ る。

 

 盗聴、盗撮、脅迫の三拍子。即牢獄にぶち込まれても、文句言えない悪事だ。

 魔水晶(ラクリマ)を破壊させるためだけに、いくら何でも度が過ぎている。反逆の首謀者であるラクサスよりもずっと恨みを買っているではないか。

 

 そこでふとエルザは、それこそがジルの狙いなのではないかと思いはじめた。

 ラクサス以上の憎悪の対象となることで、彼への恨みや怒りを少しでも緩和しようとしているのでは? 他人に嫌われても何とも思わない男だ。その可能性はなくもないが…。

 

──いや…それはありえん、か…。

 

 ジルにそんな道徳性があるとは思えない。

 同じギルドの紋章を持つ者同士とはいえ、ラクサスはあくまで敵だ。ジルは敵と認識した者には容赦しない。

 そもそもラクサスに対して、そこまで尽くす義理もメリットもないはずだが──

 

『エルザ。付加術(エンチャント)も、他の者も準備が整った。攻撃は君の合図で』

 

 念話(テレパシー)を介して、ジルから事務的な報告が入り、エルザは思考を中断した。

 考えたところで答えは出ないし、嘘つきに問うても嘘か本当かわからない答えが返ってくるだけだ。そもそも、何が悲しくて嫌いな男の思惑を必死になって理解しようとしなければならない。

 とりあえずナブはあとで骨を二、三本折ってやろう。二度と依頼板(クエストボード)の前に立てない身体にしてやる。

 

 鎧女は魔法剣を掲げて、叫んだ。

 

「──お前たち、ひとつも残すなよ!!! 攻撃開始ッ!!!!」

 

 〝妖精女王(ティターニア)〟の声に応えるように魔法の閃光がほとばしった。色とりどりの光の束が上空へ舞い上がり、さながら地上から飛翔する流星雨のようであった。

 エルザの剣が、魔法エネルギーの怒涛が魔水晶(ラクリマ)を次々と破壊し、水晶の破片が太陽の光を受けて煌びやかに反射する。

 街を破壊せんとした魔水晶(ラクリマ)はひとつもなく、快晴の空だけが広がった。無事に神鳴殿(かみなりでん)の破壊に成功したのだ。

 

 エルザは安堵の息をつき、ふと自分の手の甲を見た。逆五芒星型の漆黒の紋章が浮かんでいる。ジルの言っていた、対生体リンクの付加術(エンチャント)なのだろう。不快感を覚えたが、一応彼に心の中で感謝した。

 逆五芒星(ブラック・ペンタグラム)とやらが媒介になったとはいえ、距離が離れているメンバーそれぞれに付加術(エンチャント)をかけるなど神業──いや、魔技としか言いようがない。

 相当な鍛錬を積まないと身につけられない技術だ。向上心のない怠け者かと思ってはいたが、短所を補わないだけで長所をひたすら極めていたのだ。

 少しは身体を鍛えればいいのにと思いつつ、エルザはジルの評価を改めた。

 

 だが、まだバトル・オブ・フェアリーテイルは終わりではない。本命のラクサスが残っている。

 早くナツたちの救援に向かわなければ──と思ったその瞬間、全身に電流が走った。

 

「──ッ!!!」

 

 エルザは声にならぬ悲鳴をあげた。身体中を駆け巡るこの鋭い痛みは、生体リンク魔法の電撃ではないか!

 彼女だけではないらしく、念話(テレパシー)を通して男女の悲痛の声が木霊している。

 

──あ、あの真糞(まぐそ)野郎…!!!! 嘘つきやがったなぁ…!!!!!

 

 あまりの激痛に罵声ひとつ飛ばすこともできず、エルザは凛とした美貌に鬼の形相を浮かばせたあと、程なくして意識を手放した。

 

 ジルは決して嘘を言ってはいなかった。ただ重要な部分を省いていた。

 魔法構成を解析したのも、対生体リンクの付加術(エンチャント)をかけたのも本当だ。

 だが、無効化するとは一言も言っていない。ショック死しない程度に威力を抑える程度である。

 無効化しようと思えばできるのだが、これからラクサスと対峙するジルにとって自分の邪魔になるであろうエルザたちを早々に退場させたかった。

 

 それほどまでに、ジルは妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強候補のラクサスに勝利できる確信があった。

 それと同時に、これから彼に行う所業を誰にも見せたくなく、誰にも止められたくなかったのだ。

 

一番面白いのは?

  • 幽鬼の支配者編
  • バトル・オブ・フェアリーテイル編
  • 過去編①x780年
  • 過去編②x782年 喪に服す
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