実は僕……耳がすごくいいんです。   作:花河相

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投稿ミスして9話飛ばしてました。

申し訳ありません。


9

 ウェルとの会話から一週間が経過した。

 

 父上の仕事は軌道修正され、波に乗っていた。おそらく僕の最後の一言のおかげかな?

 とにかく、父上はシンのおかげもあり、仕事は順調に進んでいる。

 

 いやぁ、最初はどうなるかと思ったが、これでユベール家は安泰だ。

 

 将来の不安感もなくなったし、そろそろ一週間経つ。

 

 ウェルはいい返事くれるだろうか?

 

 ここ一週間、僕のお世話係は母上が担当してくれた。

 常に行動を共にしているわけだが、内容としては母上と読書したり、縫い物している母上を見たり、何か作ったり、あとは散歩くらいだ。

 

 話をする中で一週間をかけて、父上とシンの関係を聞いた。

 そしたら、母上から「シンは専属執事なのよー」なんて、言葉を聞いた。そして僕は「ぼくもせんぞくひつじほしい!」と少しわがままを連呼し続けた。

 もちろんわざとだ。「しつじ」を「ひつじ」と呼ぶのは多分年相応だと思う。

 

「アレン、今日はどこへ行きたいの?」

「こっちー」

「あらあら、元気ねー。ひつじさんは見つかるかしらねー?」

 

 今日も僕はウェルがいる物置部屋を避けて屋敷をまわる。母上は僕が専属執事を探すと言ってから、屋敷の廊下を歩く時、必ず言ってくる。

 だが、これは必要な過程で、作戦の一環だ。

 

 一応作戦のシナリオとしては専属執事が欲しい子供が屋敷を移動する。

 屋敷を回っているとき、たまたま物置小屋に行き、ウェルを発見する。

 今日はウェルとの約束の一週間。

 もしも、それで了承してくれるのなら、僕の我儘を発動させ、母上に了承してもらうながれだ。

 

 偶然を装うこの作戦、我ながら良いと思う。

 

 一応、専属執事の返答はできたら母上のいるところでしてもらいたい。

 承認てほどではないが、父上は母上には逆らえない。だから、この後の流れはウェルに返答を聞いてからもしも良い返事をもらえたら母上の前で「このひとぼくのひつじにする!」と宣言するのだ。

 

 僕はそう考えながらも母上と会話をしながら移動する。

 そして、物置小屋の近くに来ると僕は今できる限りの速度で全力疾走した。

 

 

「こっちはじめてきた!ははうえいこ!」

「ちょ、ちょっとアレン!どこ行くの!待ってってば!」

 

 僕は好奇心旺盛な子供を装い、全力で走る。

 普通大人と子供ならばすぐに追いつかれてしまうだろう。

 たが、母上は青を基調にしたドレスを着おり、走りづらいのか、出せる範囲の速さで歩いて僕の後を追ってくる

 

 僕はウェルと話をするため、時間を稼がなければいけないため、物置小屋へ着くと、勢いよくドアを開ける。

 

ガチャ!

「え!?」

 

 入った瞬間驚きの声を上げた。

 その人物は僕の目的であったウェルだ。

 

 ウェル掃除中だったのか?

 

「……すごい」

 

 僕は部屋の見渡して驚いた。

 汚いはずの物置部屋は一週間前とは比べられないくらい綺麗になっていたのだ。

 ……は!部屋に感心している場合じゃない!母上が来る前に返答を聞かなくては!

 

「ウェル……すごいね綺麗な部屋だね。見違えたよ。……本来ならもう少しこのことを言うべきなんだけど、今は時間がない。……返答を聞かせてもらえるかな?」

「どうしたんですか?そんなにお急ぎで……」

「それで、答えは?」

「……わかりました」

 

 僕はウェルに急かさせてしまったことを謝罪しながら言った。

 ウェルは戸惑いながらも僕の質問を聞くと姿勢を正し、左手を腹部にあて、右手は後ろに下げ、一例をした。

 

「アレン様のお誘い、喜んでお受けします」

 

 ウェルはそう一言了承した。

 あれ?なんか少し凛々しくなった?

 ウェルはこの一週間で変わったような気がした。

 前は少しはっきりしないような雰囲気はあったが、今は自信に満ちている、そんな印象だった。

 何かあったのか?僕は気になり聞いてみる。

 

「随分雰囲気が変わったけどなにかーー」

「ちょっとアレン!何やってるの?」

「あ……」

 

 僕が何かを聞こうとしたら、母上が少し息を切らしながら入室してきた。

 もう少しかかると思っていたが、どうやら走ってきたらしい。

 淑女なら走るなんてみっともないとか言いそうな母上にしては珍しいな。

 ……それほど僕のことが心配だと思ってくれているのかな?

 ……まぁ、姿を見失えば焦るか。

 あははは。僕は一体どれだけ人に迷惑をかけるのだろう?

 

「「……」」

 

 母上が入ってきた後、ウェルと母上はお互いを無言で見ていた。

 あ、多分状況整理できてないなこの二人。

 ま、そうか。

 物置部屋に入ってきたばかりで理由が分からずウェルがいたから。

 そして、ウェルはきっと僕一人でくると思っていたのか、いきなり母上が入ってきたことに混乱している。

 この状況を招いてしまったのは僕の責任か。とりあえず役者は揃った。ここで宣言してしまおう!

 

 

「ははうえ、ぼく……きめました」

「……え、なにをかしら?」

 

 僕の発言に母上は一瞬はっとなり、意識を僕へ向けた。

 そして、僕はウェルには近づきこう言った。

 

「ぼく、このひとひつじにしたいです!」

「はぁ……」

「はい?」

 

 僕の発言に二人は別々の反応をした。

 母上はこめかみに手を置いてため息を。ウェルは先ほどの僕の言動に対して疑問符をあげる。

 

「えっと……あなた、名前は?」

「は、はい!奥方様、私はウェルと申します」

「そうですか……ウェル」

 

 

 母上は状況整理をし始めた。ウェルという名前を聞いて刹那思考し、話し始める。

 

「ウェル、あなたはここで何をしていたのですか?」

「はい。シン様の指示で 物置部屋の清掃をしておりました」

「ここの……」

 

 そう言いながら母上は部屋を見渡す。

 

「ここを……ウェル一人でしたのですか?」

「……はい」

 

 母上はそう質問をし、戸惑いながらもウェルは返答をする。

 

「……ウェル、この件はほかの者に確認をしても問題ありませんか?」

「はい。大丈夫です」

「わかりました。……アレン」

「……なんですか?」

 

 母上はウェルに再度確認を入れて、少し考え込み、話の矛先を僕へと向ける。

 

 僕は一瞬返答が遅れてしまったものの、すぐに返答し、母上の話を待つ。

 

「何故、ウェルをひつじさんにしたいのですか?」

 

 その質問はとても真剣な表情だった。

 いや、その表情は5歳児に向けるようなものじゃないと思うんだけど……。

 いや、別にいいんだけど、急に理由と言われても困る。特に考えてなかったけど、強いて言うなら……。

 

「ウェルじゃなきゃだめなんです!」

 

 5歳児の僕が言える理由は本音だけ。

 事実は言えないが僕がウェルを専属執事にしたいのはそれが主だ。ウェルの先ほどの僕に返答をした時の態度。

 ウェルは本当に努力家だと思う。

 

 ウェルとは付き合いはまだ数日だが、人柄は好きだ。

 信用に足る人物だろう。

 

『はぁ……これも血筋なのかしら。……キアンにも可能な限り自由にさせるように言われているし……はぁ』

 

 僕の言動に対してのかは不明だが、母上はそう呟きながら、ため息をし、どこか納得した雰囲気をしていた。

 

「アレン……この件、少し考える時間を頂戴。……あ、ウェル、勝手に話を進めて申し訳ないのだけど、アレンもこの通りあなたを気に入ったようなのよ。できたら引き受けてくれるの嬉しいのだけど?」

「……専属の件、私はお受けしたいと思っております」

「そう、ありがとう。……この件は追って連絡します。今日は仕事に戻りなさい」

「承知しました」

 

 専属の件は一時的に保留となった。

 でも、母上のあの呟きや態度からいい方に話が進んでくれることを願うだけだな。

 

 

 

 それから次の日、母上はシンや周りの使用人にウェルの言ったことが真実であるのかどうかを確認後、真実だと分かると、正式にウェルを僕の専属執事にすることが決定した。

 

 ただ、始めは父上が反対をしたものの、母上と二人でお話し、震えながら了承した。

 

 もちろん僕はどのような内容で話し合いを聞いたのだが、母上は怖すぎることだけが印象に残った。

 

 そして、僕は決めた。

 

 もしも、婚約者できたら父上のように尻に敷かれないように頑張ろうと。

 

 あ、そういえばウェルはなんで一週間も考える時間が欲しかったんだろう?それに何故掃除をやり切ったんだ?

 ま、こういうのは直接聞いた方がいいか。

 

「そういえばウェル」

「なんですか?」

「ウェルは僕が専属執事について話、いつ決めたんだ?」

「いつと聞かれましても……。誘われた時に決めましたよ。やっぱり、アレン様に言われた内容はとても魅力的でしたから」

「え?……なら一週間も必要ないじゃん。なんで?」

「そうですね。……強いて理由を言うならば、ケジメをつけるためですね」

「ケジメ?」

「はい。任された仕事を達成できないようじゃ、アレン様の専属には相応しくないと思ったからです」

「なるほど」

 

 ウェルを専属執事にできてよかったと改めて実感した。

 ウェルとは長い付き合いになりそうだし、少しずつ信頼関係を築いていこうかな。あと、早めに仕事を覚えてもらうために、父上とシンの仕事を手伝ってもらおう。そして、将来、僕が家を継いだ時、支えになってもらおう!

 

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