実は僕……耳がすごくいいんです。   作:花河相

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 時代が進めば価値観も変わる。

 

 「夢ファン」の舞台である国……グラディオン王国においての恋愛価値観は僕の考えていた貴族の考えは古い。

 

 この時代の恋愛の基準は恋愛結婚にあるらしい。

 価値観が変わり始めたのは現在のグラディオン国王が即位した30年ほど前から。

 理由は現王は王妃と恋愛を経て結婚に至り、それから国王は恋愛結婚の素晴らしさを世に広め始めたそうだ。

 

 当初はそのような考えは広まらず、恋愛結婚するのはごく少数の貴族だけであった。しかし、恋愛を経て結婚に至った夫婦は仲が良く、子沢山に恵まれた。

 

 貴族とは子孫を残すことも義務の一つ。

 国王の始めた恋愛結婚の思想は始めは流行しなかったものの、年月が進むにつれて徐々に増加していった。

 そして現在、恋愛結婚の文化は今では当たり前になった。

 

 恋愛の場は成人した貴族の子息が通うことになる「夢ファン」の舞台であるハルム学園が主な舞台となる。

 恋愛結婚と言っても、ゼロからのスタートではない。

 親同士で昔から交流会があり、完全な赤の他人スタートではない。

 一部事情により婚約が済んでいたりする子息、子女がいるパターンもあるようだが、学園に入る貴族の子息子女は殆どがフリーな状態。

 それは本当に大丈夫なのかと思ったのだが、行き遅れた人(婚約できなかった人たち)同士での婚約の場も用意されると聞いた。

 

 これらの説明をウェルから聞いたのだが、僕はある一つの結論に至った。

 この世界は乙女ゲーム。

 ゲームの強制力があるのか、設定を遵守するためにこのような文化が生まれたのだろう。

 

 だが、この件は深く気にしない方がいいかもしれないな。

 もう埒が明かない。

 

 

「なるほどね。大体わかったよ。ありがとうウェル」

「まさか、アレン様がこのことをご存じなかったとは知りませんでした。キアン様やユリアン様から聞いていないのですか?」

「あー。そういえばそんな話してたようなしてなかったような」

「何やってんですか……恥かくところでしたよ。アレン様が」

「あはは」

 

 そういえば婚約云々の話は一度もなかったような。

 ……もしかして、ウェルがもう教えるからいいとか思われたのか?

 うん。多分そうだ。きっとそうだ。

 

 本当にウェル様々だな!

 僕は考えを放棄した。

 

 

「ウェル……これからも何かあったら指摘してほしい。君だけが頼りだ」

「……承りました」

 

 こうして、婚約の件は解決したのだった。

 僕は疑問がスッキリしたため、再び刺繍の作業を開始した。

 

「……そういえば先ほどからアレン様は何をしているのですか?」

「何って……この前庭で見かけた青い鳥の刺繍だけど」

「……今度は刺繍ですか。それにしても無駄にクオリティ高いですね」

「無駄は余計だよ。それになんだよその微妙な言い方は」

「絵画、縫い物、木彫りに続いて今度は刺繍ですか」

 

 ウェルは僕の手元を見ながらそういった。

 なんか含みがあるいいかなだなぁ。

 

「別に僕が隙間時間に何しようが別にいいでしょ?しっかりとやらなければいけない目安も毎日しているし」

「いや、別に俺は文句はありませんよ。ただ、アレン様は決まった趣味を持たれないと思っただけで」

「あぁ。そういうことか」

 

 僕は手先がとても器用だ。

 繊細な技術が必要なことは大抵できるので、さまざまなことをしている。

 先ほどウェルが言ったことはなんとなく興味を持って始めたのだが、思っていた以上に才能があったらしく、僕の作業を見かけたウェルから褒められることがある。

 

「一応これは趣味の段階だからね。今やってる刺繍に関してもこれ完成したらもうやらないかもしれないね。流石に飽きてきたし」

 

 まぁ、興味を示したものは大体やろうとは思う。あくまでこれは暇つぶしだからだ。

 

「やるべきことをやるのでしたら特に俺は何も言いませんよ」

 

 ウェルはそう言いながら先ほど座っていた椅子に戻り本を読み始めた。

 ただ、僕から離れる際、『才能の無駄遣い』と呟いていたのはなんのことだろうか?

 

 僕は少し疑問に思うも、気にせずに刺繍を開始した。

 

 

 

 だって、やることないからしょうがないじゃないか。

 僕友達いないんだもん。

 でも、もうすぐ僕にとってもはじめての貴族デビューであるお披露目会がある。

 

 ああ、楽しみだ。

 友人たくさん作りたいな!

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