実は僕……耳がすごくいいんです。   作:花河相

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『あいつが公爵様を怒らせたやつか』

『ユベール伯爵閣下もあのような子供が嫡男とは……』

『先ほどのアレイシア嬢の表情見たか?……なんとも可哀想であったな』

 

 

 大人たちは小声で僕には対する悪口を言っている。

 やばい……心がズキズキ痛む。

 

 僕は生まれて備わっているこの能力について、今まで後悔したことはなかった。

 むしろ喜ばしいと思っていた。

 魔法の存在しないこの世界において、僕はこれを転生特典だと思っていたし、助けられたことも多かった。

 だが、この日だけは自分の耳の良さを憎んだことはない。

 

『ねぇ、なんであの子に声かけちゃダメなの?』

『知らないよ。お父様とお母様が絶対に仲良くしちゃいけないって言われたんだよ』

『……なんか可哀想だね』

『一人ぼっちだねあの子』

 

 所々から聞こえる子供たちからの純粋で悪気のない悪口。

 ぼっちなんで言葉誰が教えたのやら……。

 

 耳が良くなければこんなことにはならなかった。

 

「馬車の時はあんなにも楽しみだったのになんでこうなってしまった……」

 

 

 入った時、一番に驚いたのは天井にあった大きなシャンデリアだったっけ。

 

 パーティーホールに入った後、周囲に沢山のご馳走……後で美味しく新しくできた友達と食べるつもりでいたのに、もうそんな雰囲気じゃないわ。

 

「父上は大丈夫かなぁ……」

 

 僕はパーティホールで一人でポツンと過ごしている。

 なんでこうなってしまったのか。

 それは時は数時間前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グラディオン王国の貴族は10歳になった子息子女に王国で開催されるお披露目会に参加する義務がある。

 交流を図り、親交を深めることを目的とされている。

 僕自身も将来は伯爵家を継ぐことになる。

 ハルム学園にも通うことになるだろうし、出来るだけ信用できる友人と、貴族間で付き合いができるような人脈作成が今回の目的。

 人脈作成は無理でも世間話できるくらいは仲良くなることが最低条件。

 

「楽しみだなぁ……」

 

 空は快晴、たまに吹く風が心地よい天気のまさにお出かけにはピッタリだというこの日に、街道を走る馬車から外を眺めている。

 

 僕は今、はじめての貴族の義務を果たすべくユベール伯爵領からグラディオン王国へと向かっている。

 僕は期待を胸に二日ほどかけて王都に馬車で向かった。

 

 

 

 

 

 

 王都についたのお披露目会の一週間ほど前に着いた。

 これでも遅いくらいで早い人で一ヶ月前に来ている人もいるらしい。

 

 父上も当初はそのくらいに向かおうとしていたらしいのだが、母上のわがままにより、そのくらいになった。

 グラディオン王国貴族は王都に自前の屋敷を持っている。

 それは、貴族で位の低い男爵の貴族も所有している。

 

 貴族の仕事は多岐にわたるが、大きく分けるとしたら自分の領統治と国の統治に関わることだろう。

 仕事をするため、貴族にとって自分の屋敷は必須なのだ。

 

 少し話は逸れたが、では何故母上のわがままで開始一週間前の到着になってしまったか。

 理由は至って単純、母上が貴族同士の付き合いを面倒くさがっていたからだ。

 母上は貴族間の婦人会を面倒くさがっていた。

 

 僕が生まれる前は毎年王都を行き来して参加していたらしいが僕が生まれたことを言い訳にサボっていたらしい。

 

 それはどうなのかと言いたくなったが、母上が「アレンが大きくなったからこれからは前のように参加しなければいけないわね」と父上に愚痴っていたので、また参加するようになるらしい。

 

 王都にいたら嫌でも参加しなければいけない。

 それでも、最後に少し束の間の休暇を楽しみたいとわがままで王都到着が一週間前とギリギリにさせた。

 僕は意外な母上の一面に驚いた反面、こういう一面を知れて嬉しいと思った。

 

 ま、こういうところは父上たちの問題なので、僕には関係ないかな。

 

 僕も王都についてから貴族間の付き合いに参加すると思ったのだが、僕のデビューはお披露目会にするのが伝統らしい。

 だから、僕はお披露目会当日まで、ウェルと王都散策で時間を潰すことになった。

 

 なったのだが……。

 

「だめだ…………頭が痛い」

「大丈夫ですか?……これ飲み物です」

「ありがとう」

 

 現在、お披露目会6日前。

 僕はウェルと共に王都散策をしていたのだが、お忍びで市街地に出て一時間ほど時間が経ち、限界が来てしまった。

 理由は人に酔った……というよりも耳が痛すぎる。

 

 僕は生まれつき耳がよく、大体の人の会話は拾ってしまう。

 生まれて数年間はこの屋敷内だけで会話するのにも違和感があり、慣れるまでが大変であった。

 

 今までは屋敷だから話をする人間も家族を除けば使用人だけ。

 それでも慣れるまで数年なら時間を有したのに、人混みになったらどうだろうか。

 

 鼓膜は破れはしないが耳が痛くなり、頭痛がするようになってしまった。

 

「人混みに酔ったんですね。アレン様は今まで市街地に出たことありませんでしたし、人が多いのははじめてだったんですね。……このままではお披露目会に影響が出る恐れがありますし、帰りますか?」

「……そうしようかな」

 

 不覚だった。

 まさか、こんなことになるなんて思わなかったな。

 ……でも、今後のことを考えると経験できてよかったかもしれない。

 市街地を歩けないなんて、今後支障になりうるかもしれない。

 それにお披露目会も結構な人数いるかもしれないし、また頭痛くなるかもしれない。

 これは……早く慣れなくては。

 この日戦略的撤退ということで僕は屋敷へ帰宅した。

 

 僕はお披露目会の前日までウェルと共に市街地に通い続け、1時間ほどで限界が来たら帰宅するというウェルにとっては迷惑極まりない行動を続けた。

 

 そして時は流れお披露目会当日となった。




読んでいただきありがとうございます。


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