グラディオン王国のお披露目会の流れを説明すると、まずはパーティに参加する人達の中で位の高い家……今年だとソブール公爵への挨拶、次に国王の言葉からパーティが始まり、上級貴族の順に国王へ報告を兼ねて挨拶をして終了する。
国王への挨拶の間は時間が空くため、その間に子供同士の交流が始まる。
派閥形成と言っても良いかもしれない。
親から古からの付き合いで「誰と仲良くしなさい」と指示をする人、新しいつながりを求め、自由にさせる人もいる。
僕は後者だ。
だから、お父様からはソブール公爵への挨拶が終われば自由にしてよ良いと言われた。
ただ、友達はしっかり作りなさいと念押しして言われた。
もう父上、僕は精神年齢三十路に近いんですよ。
今更ガキ相手に緊張しませんよ。
そんな軽い気持ちで順番待ちをしていた。
ユベール伯爵家は一応上級貴族。
出番はそう遅くなく、前から数えたほうが早いだろう。
挨拶の時間としても一言親同士が挨拶し、それに倣い子供もするだけ。
時間にして長くても30秒ほど。
ただ、ソブール公爵家と交流のある家は世間話もするのでかかっても数分だ。
なにも緊張することはないのだ。
だが、それば僕の考えであって他の子供はそうではない。
耳をすませば、後ろや前の家の子供から聞こえる鼓動がはやい。
それは挨拶の出番が近づくたびに早くなる。
だが、それは僕自身、多少緊張しているし、少し楽しみというこの場には似つかない思いがある。
なんせ、「夢ファン」のユーザーから「感情のない人形」と呼ばれたキャラだ。
どんな人物なのか気にならない方がおかしい。
だから、あえて僕は耳をすませ、他の子供の心拍数を聞いている。
他の人と比べあまり緊張していないという優越感に浸り、気を紛らしている。
『ドクン…ドクン…ドクン』
『ドクン……ドクン……ドクン』
『ドク…ドク…ドク…ドク』
「……あれ?」
なんか一人だけめちゃくちゃ脈拍数早すぎる人いるんだけど、気のせいかな。
僕は人に近づけば脈拍数を聞くことができるが、誰がどの音なのかまではわからない。
現在順番は僕の挨拶の順番は次。
勘違いじゃなければ今の脈拍音は前から聞こえたはず。
……もう一度、今度は前の子供に耳を澄まして聞いてみよう。
『ドクン…ドクン…ドクン』
うん、前の人ではなさそうだ。
なら、誰の音なんだろう?
もしかして聞き間違えーー。
「ほら、アレン順番が回ってきたわよ」
「……はい」
考え事をしてぼーっとしてしまっていたらしい。母上に背中を軽く叩かれながら指摘され、ようやく気がついた。
ついに出番が来たらしい。
多分聞き間違いかな。
今思えば、あんな脈拍数早い人普通はいないな。
きつい運動をして、息を切らした人ならばともかく緊張ってだけであそこまで心拍数が早い人はいない。
きっと勘違いだったのだろう。
僕はそう結論付けて、思考を切り替えソブール公爵一家への挨拶に集中する。
順番が回ってきたことで父上と母上の後についていくようにソブール公爵一家の前に移動する。
移動の最中はどのような容姿をしているのか気になり、確認をする。
やはり、これは予測していたことだが、ソブール公爵家の家族は容姿が整い過ぎていた。
父親は40代でウェーブの入った赤髪で少し目がつり目の強面。母親は癖のない青髪を腰まで伸ばし、垂れ目の母性溢れる人。二人はこちらに気がつくなり、歓迎の意味が込められているのなら、口角を上げて少し微笑んでいる。
そして、その二人に挟まれるように立っているアレイシアと思わしき子供。
青髪で少しウェーブの入った髪を腰まで伸ばし、つり目が特徴。将来絶世の美女になるだろうなと印象があると同時に夫妻とは違い少し真顔だ。
どちらかと言うと、少し怒っているような印象すら見える。
「これはこれはキアン殿」
「お久しぶりでございますラクシル様」
「ここ数年は領地の統治に力を入れていたのだったな。進捗のほどは」
「はい。お陰様で」
ラクシル様から話を軽い世間話から入り、父上は受け答えをする。
そして、軽い会話を済ませた後、自己紹介に移る。
「まぁ、世間話はこの辺にして、お互いの子供の紹介としようか。……アレイシア」
「はい」
アレイシアは父親に挨拶を促される
僕は父上たちの会話を聞いていて、視線もそちらに向けていたため、アレイシアへと意識を向ける。
アレイシアはラクシル様から指示が出た後、返答、カーテシー話始める。
その作法はとても洗礼されていて、とても綺麗であった。
そして意識をアレイシアに意識を集中させる。
『ドク…ドク…ドク…ドク』
するとまた先ほどの脈拍音が聞こえる。
一体どこから……。
「お初にお目にかかります。ラクシル=ソブール公爵、長女。アレイシア=ソブールと申します。よろしく「え……」……」
僕はアレイシアが話している最中につい無意識に声を上げてしまった。
この時点で分かったことは2つ
一つは異常な脈拍音の正体。
それは目の前にいる少女、アレイシアのものであったこと。
そして2つ目。
自分がしでかしてことの大きさ。
人が挨拶中に阻害してしまった。
気がついてからではもう手遅れだった。
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