19話はすぐに消しました。
ラクシル様から招待され、僕と父上はソブール公爵の屋敷には馬車を使って向かった。
「アレン」
「はい」
現在馬車内にて、父上と対面で座っている。
雰囲気は暗い。
昨日はパーティ開始から今に至るまで会話はなかった。
ふと、思い出すと父上と話したのもパーティが始まる以前だったような。
それほどまでにショックが大きかった。
そんな中で僕の名を呼んだ父上は昨日のような迷いや不安は一切なく、どこか覚悟を決めた雰囲気だった。
「大丈夫……何があっても僕が守るから」
「……父上」
そう言いながら父上は僕と目を合わせ、両肩に手を乗せ、一言そう言ってきた。
『ドクンドクンドクンドクン』
しかし、その両手は少し震えていて、近くにいることにより早い鼓動が聞こえてきた。
相当緊張し、恐怖しているのだろう。
僕は正直言ってしまえば、切り捨てられると思っていた。
昨日の件は僕の責任だ。
自分の家のことを気にするなら、全て僕のせいにして、勘当又は廃嫡。
下手したら施設に入れられる。処遇はあげたらキリがないだろう。
自分の子供が悪いのに、本来なら切り捨てる方法もあるにもかかわらず父上は家よりも僕を優先してくれた。
「ごめんなさい」
僕は気がついたら涙が出ていた。
それは昨日からの不安、後悔、それらが全て流れていくようであった。
父上は僕の隣へ座り優しく頭を撫でてくれた。
その後は僕は何も話せず、涙は止まらず、父上は僕の落ち着くまで頭を撫でてくれた。
そして僕が泣き止み落ち着いた時にはソブール公爵邸へ到着した。
公爵邸に着くと門番から身元確認後、門を開けてもらい、そのまま入口までそのまま馬車で移動した。
さすがは公爵邸というのだろう。
門から入口までは馬車で5分ほど時間がかかった。
その間の道中、背景は綺麗であった。
整えられた草木や所々にある噴水。
ちゃんと手入れが行き届いている。どれほどの手間がかかっているのか……。
伯爵も上級貴族だが、相手は腐っても王族の次に権力を持つ公爵家。
ユベール伯爵邸と比べても二倍近くはあるかな?
僕と父上は屋敷の入り口に着くと乗ってきた馬車を降りた。
そして、入り口には四十代ほどの薄茶色の執事がいて、その周りに20人ほどの使用人が控えていた。
「キアン様、アレン様。ようこそおいでくださいました。ラクシル様より、本日案内を仰せ使っております。リットと申します」
「これはリット殿、ご丁寧に。僕はキアン=ユベール。そして息子のーー」
「アレン=ユベールです」
リットさんの自己紹介をされ、お互いに簡単な自己紹介をした。
「……ふむ」
……なんだろう?僕が名前を名乗った後、リットさんからじっと見られているような。
「あ、あの……なにか?」
「いえ、なんでもありません。……ラクシル様がお待ちですので、ご案内いたします」
僕は思わず声をかけるも、リットさんは何もなかったかのように案内を開始した。
リットさんに向けられた視線はどこか値踏みされているような感覚であった。
最近なんか値踏みされることが多いような。
僕は商品なのかな?
……気のせいだな。
僕は考えを改め、リットさんの後ろをついていった。
『……あの子がお嬢様の』
『ああ、世の中珍しいこともあるものだな。まさかあのお嬢様にね』
『リットさんから聞いた話なのですが、ラクシル様、昨日帰った後ご機嫌だったらしいですよ』
『あーなるほど』
ん?
なんか後ろから話し声聞こえたんだけど?
何が珍しい?お嬢様とはアレイシアのことを言っているのだろうか?
それにラクシル様がご機嫌って何故?
僕は気になるもの、何もなかったかのように普通にリットさんについていく。
ここは公爵家の屋敷だ。
もしも挙動不審な態度をとり、これ以上変だと思われたくないし、父上は今でも不安に思っていて、これ以上不安要素を作りたくない。
ラクシル様が何故ご機嫌なのかは不明だが、僕が考えていた最悪のことはないかもしれない。
今はその可能性に賭けたいと思う。
「ラクシル様、リットでございます」
リットに案内され歩くこと数分、ラクシル様が待っている応接室に到着した。
「お客様をお連れしました」
「リットご苦労だった」
広い応接室の真ん中に焦茶色の机を中心に明るい赤色のチェスターフィールドソファが二つ。
その一つの中心にラクシル様は座っていた。
そして、ラクシル様は僕と父上が来ると分かると少し笑みを浮かべーー。
「呼び出してしまいすまないな。どうしても急ぎ決めたい事項があったから、急遽来てもらった。あまり大層なもてなしはできないが、歓迎しよう」
『え?』
そう言ったのだった。
僕は一瞬昨日のように「え?」と言いそうになるのを抑えるが、理解が追いつかない父上は誰にも聞こえないような小声で動揺していた。
いや……あれ?
何故歓迎しているの?社交辞令かな?
でも、さっきの使用人たちの会話といい、ラクシル様の態度といい、意味がわからない。
僕たちはどうなるのだろう?
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