「失礼致します。準備のため遅刻をしてしまいました。大変申し訳ありません」
僕は今、困惑をしている。
応接室に入ってきた一人の少女のギャップにだ。
先ほどの扉の前では年相応の話し方をしていた。僕に会うのが楽しみだったから不明だが、例えるなら恋する乙女のようにドキドキして扉の前でリタと呼ばれたメイドと会話をしていたはず。
それがどうだろう?
今、扉の前で可愛らしい会話をしていた彼女の表情は真顔で僕を睨んでいる。
もともとつり目が特徴なのだが、さらに目つきが鋭くなる。
僕は思わずそんなアレイシアにどんな反応をすれば良いのか分からずとりあえず微笑んでみることにした。
すると。
『はぁ』
ため息をされ、視線を逸らされてしまった。
僕はそんな彼女の反応にショックを受けた。そして、彼女は僕を見ることなく、その場からリクシル様の隣へ移動を開始した。
だが、ここで僕はアレイシアの塩対応に近づくにつれてショックから疑問へと変わる。
『ドク…ドク…ドク…ドク』
僕はアレイシアが応接室に入る前から椅子に座るまでの反応が予想外すぎて、混乱し、思考がうまくまとまらない。
……落ち着こう。とりあえず、状況整理からだ。
さっき扉の前から聞こえた会話はアレイシアとリタさんとの会話で間違いないはず。そして、年相応の会話をしていたはずのアレイシアが入った瞬間、何故か鼓動がありえないほど速くなり、僕はアレイシアに睨まれた。
……だめだった。うまく頭が回らない。
でも、とりあえずわかることは、アレイシアは緊張していると言うことだけ。
そうでなければこんなに鼓動が早くなるわけがない。
僕が少しでも冷静になるために思考を回転させている時でも、時間は進む。
アレイシアが座ってから数秒、この沈黙を破るものが現れた。
「お父様、キアン様とアレン様がいらしてから随分とお時間が経っております。何故わたくしに誤りの情報を知らせたのですか?」
アレイシア本人であった。
ラクシル様がアレイシアに誤った情報を伝えたのは僕を見定めると言う訳のわからない理由。
突然の質問か。
ラクシル様はアレイシアの言葉を聞き、答える。
「すまないな。どうしても必要なことであったんだ。お前のためにな」
「必要なこと……ですか。答えになっておりません。わたくしは何故誤った事を伝えたのかを聞いたのですが?」
ラクシル様はあやふやの返答をし、アレイシアはその反応にさらに表情が険しくなる。
あやふやに返答をしているラクシル様は何故か僕や父上に一瞬視線を向けている。
もしかしてわざとやっているのか?
そんな光景に僕も父上もどう反応すれば良いかわからず、黙って見守る。
「アレイシア、人間誰しも間違えることくらいある。そう怒らなくても良いのではないか?」
「……話を逸らさないでくださいませ。今は何故誤ったことを伝えたのかという件について話しているのです……もしかしてリタ、あなたも知っていたのですか?」
「いえ、私は存じておりませんでした」
「アレイシア、誤解をさせぬために言っておくが、リタにはお前と同じ内容を伝えている」
ラクシル様は絶対わざとアレイシアに対し雑に接しているのかもしれない。その態度にアレイシアはカッとなっているのか、リタさんも疑い始めた。
だが、ここで父上が埒が開かないと判断し、話に割り込む。
「ですからーー」
「あの、ラクシル様。アレイシア嬢に訳を説明した方がよろしいのでは?」
「そうだな。指摘感謝する。……アレイシア、少し冷静になった方が良いのではないか?」
「あ……申し訳ありません」
どうやらアレイシアは父上とラクシル様の発言で少し冷静になったようで、少し俯き、何故か僕の方へと視線を向ける。
え?なんで僕見るの?
なんか、睨まれてる?
そして、今何故か全員の視線がアレイシアに向いており、それが原因か、さらに鼓動が速くなってしまっている。
恥ずかしいのかな?
「がははは。すまなかったな。……今回の件の話であったな」
ラクシル様は恥ずかしがっているアレイシアと混乱している僕を見て、一度笑い、話を進める。
なんで、ラクシル様はこんなにもたのしそうなんだろう?
「……もう、真面目な話をする雰囲気ではない。……ここは単刀直入に言おう」
そう発言した、ラクシル様は勿体ぶるように間をあける。
僕を見定めるやら、親子のこんなやりとりを見せるとか、一体この人は何を考えているのだろう?
だが、僕は次のラクシル様の発言でフリーズしてしまうことになる。
「アレン君、アレイシアを貰ってくれないか?」
『ドクドクドクドク』
「……はえ?」
はえ。
その言葉がアレイシア到着後初めて出る言葉であった。また、何故か今までで聞いたことのない鼓動がアレイシアから聞こえてきた。
あれ?今ラクシル様なんて言った?
こんやく?何それ美味しいの?
何がどうすればそんな話になるんだ?
…………はえ?
読んでいただきありがとうございます。
次回最終回です。
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