実は僕……耳がすごくいいんです。   作:花河相

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エピローグ

ラクシル様の発言に戸惑ってしまい、ついつい戸惑いの声を出してしまった。

 意味がわからない。

 何故こうなった?

 ラクシル様の意図がわからない。

 僕を見定めたのって婚約の話をするためなのか?

 

 とりあえず、今はアレイシアの鼓動は放っておこう。

 今は話始めないと。なんでこういう展開になってるのかわからないし。

 このまま話が進められたらまずい。

 このまま本当に婚約させられたら面倒臭いことになる事この上ない。 

 貴族階級トップの公爵、しかも悪役令嬢と婚約。

 流石にまずい。物語には面倒くさいから関わらないと決めていたのに。

 

「あのラクシル様、話が急すぎではありませんか!?」

 

 僕は驚いてしまっていたため、少し早口になってしまう。

 

「急と言うほどではないと思うが。……貴族同士、関係を繁栄させるため、相互の家の子供を婚約させるのは昔からある事だが?」

「それは存じておりますが」

  

 だめだ。正論すぎて何も言い返せない。

 僕だけではこの場を打破できない。

 

 だから、考えを変える。

 一人でダメなら他者に助けを求めれば良い。

 僕はそう決心し、まずは隣に座っている父上に視線を向けて助けを求めるため、視線を父上に向けた。

 

 ……視線の先に見えたのは頷いている笑顔の父上。

 

 もしかして賛成なの?

 いや、まだだ。

 直接聞いていない。

 

「父上」

「ん、何かなアレン?」

「……」

 

 僕の質問に答えた父上の声音は少し高かった。

 ご機嫌なのですか?

 

「……どう思われますか?」

「婚約の話かい?よかったじゃないか」

「キアン殿は賛成か!」

「もちろんです」

 

 残念ならが父上賛成派らしい。

 たしかに家のことを考えるとこの話、断るわけないか。

 公爵家と関係を持てるチャンス、普通は逃さない。

 僕も家のことを考えると受けた方がいい話かもしれないけど、身の丈に合わない上、その相手が悪役令嬢アレイシア。

 

 シナリオは気にしないと言っていることに矛盾しているのは自覚している。

 僕の人生が関わっているのだ。

 

 ……父上がダメなら当事者のアレイシアだ。

 僕はアレイシアの視線を向ける。

 

「………」

『ドクドクドクドク』

 

 アレイシアは僕を見つめて……フリーズしていた。

 この鼓動、今までで一番早いかもしれない。

 

「あ、アレイシア嬢……大丈夫ですか?」

「………」

「……はぁ。リタ」

「はい」

 

 僕は心配で声をかけるも反応はなかったからか、ラクシル様がリタさんに声をかけ、リタさんはアレイシアの肩を軽く揺さぶり名前を読んだ。 

 何か手慣れているようなこの流れに僕は戸惑うも、すぐにアレイシアは覚醒する。

 

「……何でしょうかアレン様」

「……いえ、なんでもありません。……アレイシア嬢は私との婚約についてどう思われますか?」

「わたくしはお父様の意向に添いたいと思います」

 

 と、覚醒したアレイシアは何もなかったかのように受け答えをした。そこに突っ込みたくなるも、今は気にしていられない。

 

 

 アレイシアと父上はラクシル様と同意見。

 この場において僕と同じ考えを持つ人間はもういない。

 もう了承するしかないのかもしれない。

 

 僕は諦めたかけた……が、次の瞬間ある一つの記憶が蘇った。

 それは先日ウェルとの会話をした時の記憶。

 

 ああ、そうだ。何で僕は忘れていたのだろう。

 ラクシル様の言葉で一度納得してしまったせいで、忘れていた。

 

 グラディオン王国の風習についてを。

 

 僕はアレイシアの返答後思考時間にして数秒。

 最後の希望を見据えて話し始める。

 

「ラクシル様、失礼ながら、一つの確認したいことがあります」

「何かな?」

「ここ、グラディオン王国の婚約について、確か、学園で相手を見つけると言う風習があったお聞きしました。何故、未だ入学前で婚約のお話になったのですか?」

「そんなの決まっている」

 

 と、ここでラクシル様は僕の発言で表情に変化が現れる。

 そして、少し間を開け話し始めた。

 

「親として、娘の幸せを思っただけのこと。先程アレン君も見たと思うが、アレイシアは少々小難しいところがある。今後、学園で最良の相手を見つけられるかわからない。そのため、今日はこの場を設けたのだ」

 

 ああ、なるほど。

 僕はその一言で理解した。

 先ほどからのラクシル様の行動。

 僕を見定めたのはアレイシアのことを思っての行動だったのか。

 確かにラクシル様の言う通り、アレイシアは少し……いや、かなり面倒くさいと思う。

 未だにわからないことだらけだが、今日を通して分かったことがある。

 フリーズ、異常に早すぎる鼓動、そして人前とリタさんと二人きりの時の会話。

 

 これらから、アレイシアは相当緊張しすぎてしまう体質らしい。

 

 僕はラクシル様の意味深の行動が全てアレイシアを思ってからこその行動だと理解できた。

 が、安心したのも束の間、真面目な表情をしているラクシル様から追撃が来る。

 

「アレン君、私の記憶が正しければ確か昨日、娘には見惚れたと発言していたと記憶しているが。そんな君にとってはこの話は良いことだと思うのだが……違うのかな?」

「……そ、そんなことは」

「もしかして昨日の発言は虚言だったのかな?」

 

 ラクシル様超怖い。さすがは公爵家だ。この話を断ったらお家潰し確実だ。

 昨日の誤魔化しがまさかこんなことになるとは思わなかった。

 もう、覚悟を決めるしかないらしい。

 

「アレイシア嬢と婚約が出来ること、この上なく嬉しく思います。先ほどの私がした発言はアレイシア嬢の意思を確認したいと思っただけです」

「そう言うことか!なら、遠回しに確認せず、初めからそういえば良いだろうに。そう言った気遣いができるとは私の目は曇っていなかったようだ。これから娘を頼む」

「……はい」

 

 僕は嘘に嘘を重ねているかもしれないが、自分の発言には責任を取ろうと思う。

 

 そして、その後婚約の手続きした。

 

 手続きを終了後は、ラクシル様は仕事に戻り、アレイシアとリタ2人の見送りをしてくれた。

  

 どうにか、事が丸く収まり安心するも、今後どうすれば良いか、小難しいアレイシアとどう向き合って行けば良いのか。

 

 その不安感だけが残るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ん?何かアレイシアたちが話してる?

 

 

 

『リタ、アレン様との婚約どう思いますか?』

『どうって……よかったんじゃないですか?アレイシア様のことをよくご理解していると思いますが』

『もう!リタったら、冗談言わないでくださいよ。まだあって2日ですよ!そんなことはないと思いますよ』

『いや、むしろ普通たった2日で……いや、いいです。忘れてください』

『リタ、今失礼なこと言おうとしてましたよね?』

『気のせいです。気にしないでください』

『……まぁ、いいでしょう。でもリタ、何故アレン様はわたくしが緊張していたことがわかったのでしょう?今まで家族以外で見抜かれたことなかったのに』

『知りませんが、旦那様はアレン様は観察眼に優れていると言っていました』

『なるほど。お父様のお眼鏡にかかったのですね。相当優秀な方なのかしら?』

『そこまでは分かりませんが、アレイシア様を任せられるのはアレン様しかいないという事ではないでしょうか』

『ま、任せられるって……ど…どう言う意味でしょう?』

『知りませんよそんなの。運命なんじゃないですか?』

『運命!?……ごほん!……良い関係が築ければ良いのですが……大丈夫でしょうか?』

『アレイシア様が素直になりさえすれば簡単ですよ』

『ねえ、さっきから失礼すぎません?それにわたくしの扱い雑すぎる気がするのですが』

『気のせいです。……もう行きましょう。お見送りはこれで十分かと思います。……本日はまだ予定がありますので、急ぎましょう』

『……リタ?何故そんなに急いでいるのですか?待ってください!わたくしも行きます!』

 

 と、こんな会話が聞こえてきたのだが…なんかここまでくると面白いわ。

 なにこの少しクセがつきそうなアレイシアのギャップ。

 

 2日アレイシアと実際に会って、リタさんとの二人だけの会話を聞いたことで一つの推測ができた。

 

 

 アレイシアはもしかして……重度のあがり症ではないのだろうか?

 

 そして、表情が変わらないのは緊張により表情筋がこわばっていただけ?

 

 

 

 あははは。

 

 

 

 まさか、これが「感情のない人形」って呼ばれている原因だったなんて、考えもしなかったよ。

 

 

 理恵……悪役令嬢アレイシアは制作側が用意した都合の良いキャラではなかったよ。

 

 むしろ生まれつきの性格や体質のせいで主人公や攻略対象たちに理解をされず誤解を招く悪循環で悪者扱いされる可哀想すぎる不遇キャラだった。

 

 

 もしかして、僕が「夢ファン」の世界に転生した理由ってこの不遇すぎる悪役令嬢の救済するためだったりして……。

 

 

 

 考えすぎだな。

 

 

 

 でも、ここまで事情を知ってしまい、不遇すぎる悪役令嬢と関係を持ってしまった。

 

 もう、乙女ゲームに関わらないとか、自分のためだけに努力しようだなんて甘い考えは捨てなければいけないな。

 

 ここまでくると物語の強制力とかもありそうだし、必ず何かしら巻き込まれるかもしれない

 

 それでも、僕がまず第一に考えなければいけないのは不遇すぎる悪役令嬢を人並みの幸せを提供するくらいだろう。

 

 これはおそらく同情や憐れみから来ていることだと思う。

 

 でも、今はそれでいいと思うんだ。

 

 まだまだ人生は長いし、僕と悪役令嬢は出会ったばかり。

 

 これからゆっくり関係を築いていけば良いのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜完〜

 




これでこの物語は完結です。

他にも書きたい作品がありますので、一区切りをついたので完結にしました。
続きは投稿するかは未定です。

最後までお付き合いいただきありがとうございます。
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