さらに月日が流れ、入学式当日となった。
「どうか……娘を頼むよアレンくん」
「はい。ラクシル様、お任せください」
ここはソブール公爵邸。
一応、今日はめでたい日なのだが、空気は少し緊張している。
ラクシル様、そんなに心配しないでも大丈夫ですって。
アレイシアがうまくやっていけるか不安がっているようだ。
まぁ、理由はわかる。重度のあがり症の彼女は家族以外の人に素を見せられない。
好意を持ってくれている僕にすら緊張して素直になれない。
ここ数年、僕はアレイシアとパーティに出席した。
だが、まだ少なからず悪評をもつ僕と常に緊張しているアレイシアは何か近寄りがたい雰囲気があるらしい。
アレイシアには表面上のお友達(利益欲しさに近づく輩)はできたものの友達はできないでいた。
僕は一応、一人だけ友人と呼べる存在ができたのだが。
リタから僕とアレイシアの様子を逐一聞いているラクシル様はとても心配していた。
……僕の大丈夫は信用できないらしい。
「はぁ、本当にアレン君と婚約させて正解だった。我が娘ながらこんなにも不器用とは……もしも一から相手を探すのは難しいかっただろう」
ここまで言うのは酷いかなと思うも本当のことなのでコメントできない。
学院で気が合う友人ができることを願おう。
僕も可能な限り協力する。
「はぁ……おっと、そろそろくるな。アレン君、先程の会話はオフレコで頼むよ」
「……承知しました」
ラクシル様は気配を感じとったらしく、近くにいる僕にそう一言言って少しだけ距離を空けた。
少し気を使ってくれたらしい。
2人の足音が聞こえ、少し待つと階段から二人の女性が降りてくる。
一人はメイド服を着込むリタともう一人は……。
「……美しい」
アレイシアは貴族学院の制服を着てきた。
白色のブラウスに、コルセット風のウエストからふんわりと広がるロングスカート。
綺麗さに思わず息を呑む。
コツッコツッと、階段をリタにエスコートしてもらいゆっくりと降りるアレイシア。
「ご機嫌様、アレン様。わざわざお迎えにいらっしゃなくてもよろしかったんですのよ。これから学院で毎日顔を合わせるのですから」
うん、彼女は平常運転だ。
ふと、ラクシル様を見ると娘の姿に微笑んでいた。
心配そうにしていたラクシル様だが、やっぱり父親にとって娘の晴れ姿は嬉しいらしい。
難しい顔すると思ってたけど、僕の考えすぎだったようだ。
ラクシル様が近くにいるからあまりいちゃつくのは嫌だけど、ここで褒めないと少しアレイシア拗ねることだし、褒めなければ。
「いや、愛しの婚約者の制服姿をいち早く見たいと思ったからだよ。それに学院まで一緒にいたかったからね」
『ドク…ドク…ドク…ドク』
「………」
あ、フリーズしちゃったよ。
毎回思うけど、5年も経つんだよ。少しくらい慣れてくれないかなぁ。
「……アレイシア?」
「……そ……その様な戯言を言うのは止めてください。毎回同じような言い回しをしているではありませんか?……言葉の説得力がありません」
……えぇ。どうすりゃいいんだよ。
「本当のことなんだけどなぁ」
「では、証明してみてください。あなたが本当にわたくしをその様に想ってくださっているのなら」
いや、逆に難しい。
言葉で示す以外に何か方法あるか?
……誓いをすれば良いのだろうか?
どう言ったものか?
うーん。……どうしよう。
リタは何か助け舟を求めアイコンタクトを送るも……期待できそうにないな。
「自分で考えてください」と言わんばかりの無視。
ラクシル様は……僕を真剣に見ている。
試されてるのか?
「やはり、口先だけだったのですね」
いや、まだ5秒も経ってないんだけど。
少しアレイシアはしゅんっとしていた。
小さすぎる変化だが、僕は見逃さない。もうヤケだ。
僕はアレイシアの右手を両手で優しく掴む。
「な?!」
「アレイシア、この場を借りて誓おう。僕は君を嫌うことは決してないよ。どんなことがあっても僕は君を裏切らない。だから、君もどんなことがあっても僕を信じ続けてほしい」
これは誓いだ。
乙女ゲームが始まるので、もしかしたらアレイシアは悪役令嬢みたいになるかもしれない。
だが、僕はどんな時でも君の味方を続ける。
『ドクドクドクドク』
「……あの、アレイシア?」
完全に……フリーズしてしまった。
口がポカンと小さく空いており、視線が僕一直線に向いていた。
呼んでも反応を示し出さない。
……やりすぎた。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
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短編投稿しました。
暇つぶしによろしければ。
「結成!乙女ゲー国外追放同盟~逆行したコソ泥モブと前世持ちの悪役令嬢が結託、逆ハー阻止に奮闘す〜」
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