実は僕……耳がすごくいいんです。   作:花河相

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「奥様!おめでとうございます!」

「ありがとう!」

「ああ……ついに生まれた」

「もう!キアンったら!

 

 ……なんだようるさいなぁ。

 こっちはクソ眠いんだよ。

 仕事が早いっつうのに。

 お隣さんか?でも、妊娠してるなんて聞いたことねぇし。

 

『お!ついに生まれたか』

『めでたいな!これで安泰だ!』

『どっちなんだろうな?』

『何が?』

『男か女。俺は男が産まれてほしいな!」

『たしかに』

 

 は?性別もわかってないのかよ。生まれる前から把握できるだろ?

 

『奥様……お名前何にするのかしら?』

『知らない?……きっとふさわしい名前つけると思うわよ!』

『ええ?気にならないの』

『いや、もちろん気になるけど……』

 

 いや!人口密度多過ぎじゃね?同室に何人いるんだよ。

 こんな小さいアパートー部屋に入りきらんでしょ。

 

「ユリアン!この子は男の子、女の子どっちなんだ?僕的には男の子がいいんだけど」

「……キアン、もしかして聞いてなかったの?」

「いや、僕生まれるまで部屋に入れてくれなかったじゃないか」

「だって、キアンったらうるさいんだもの。私は静かな環境でこの子を産みたかったの!」

「……ひどいよユリアン!僕は言われればちゃんと守るよ!信用ないなぁ。こんなんじゃ君に嫌気がさして他の異性に気が向いてーー」

「キアン?」

「じょ!じょーだんだよ!僕が悪かった。少しは信用して欲しかったんだよ!……お願いだからその笑顔やめて!」

「……後で話し合いが必要ですね」

 

 いや!うるさいわ!

 こんなに近くにいるのになんで大声で話すんだよ。

 

 キアンとか呼ばれてる男、完全に尻に敷かれてるじゃん。

 

 あれ?そういえば僕の近所に日本語ペラペラの外国人って住んでたっけ?

 いや、外国人はいない。でも、キアンとかユリアンという名前聞いたことないし。

 

 あと、何故か体が動かない。

 ふと、目を開けると視界がぼやけていて、少しずつ視界がはっきりしてくる。

 

「あうあああ」

 

 話そうとしても呂律が回らない。

 

「あれ?どうしたのかしら?」

「どうかしたかい?」

「この子……産声を上げないのよ」

「言われてみれば……」

 

 産声という言葉を聞いた時には視界がはっきりしてきて、周囲を見渡せるようになった。

 

 ……人ってこんなに大きかったっけ?

 目の前には銀髪の美少と黒髪のイケメンが僕を見ながら微笑んでいた。

 あれ?思ったとおりに手足が動かせないんだけど。

 

 疑問に思いつつ、動かし辛くなった手足を動かしていると……は?

 

 僕の視界に小さくなった自分の手が映った。

 

 もしかして……僕?

 

「うぇーーーーん!(赤ん坊になってるじゃん!)」

「あら!泣いたわ」

「よかったぁ」

 

 叫ぼうと思ったが、赤ん坊になったので話せず、僕はその場で泣いた。

 僕の鳴き声が産声なのだと思ったのか、ユリアンは安心して笑顔になり、キアンは安心したのか、深呼吸をしていた。

 

「元気に生まれてきてくれてありがとうね。アレン!」

 

 最後にユリアンからそう言われて僕は睡魔に襲われて意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アレンという名をもらい、転生して3ヶ月ほどが経過した。

 人間の慣れというものは怖いもので、僕はベビィライフを満喫している。

 

 移動や首が座っていないので不便なことが多すぎるが、それを抜きにすればめちゃくちゃ楽な生活だ。

 

 要件があれば泣けばすぐに誰か来てくれるし、寝たい時には寝れる。

 まさに誰もが夢見たニートライフ。

 まぁ、それも精々数年だけだが。

 

 理由としては僕が生まれた出自にある。

 

 どうやら僕は貴族の嫡男として生まれた。 

 

 何故知っているか?理由は2つ。

 

 一つは僕の住んでいる屋敷にはメイド、執事等の使用人が働いていたから。

 もう一つは僕の生まれつき備わっていた能力からだ。

 

 実は僕……すごく耳がいい。

 

 部屋からの小声はもちろん、部屋の外からの声を聞こえ、使用人たちの会話からそう判断した。

 

 だが、これは全く慣れない。

 特に近くで話されると耳がすごく痛くなる。時には耳鳴りもする。

 耳がいいことで色々わかることあり、ありがたいのだが、それでも慣れるまで時間がかかりそうだ。

 

 

 ま、これは一先ず置いておこう。

 

 貴族の家に生まれたのだが、それはどこの世界にも変わらないらしい。

 社会上流で、社会の基盤を作る者。社会的身分の高い人たち。

 

 僕の家は貴族のくらいまではわからないが一つわかることがある。

 人生が約束されているということ。

 

 前世のように忙しく就活もやらなくてもいいし、小さい頃から家を継ぐための勉強に専念できる。

 

 前世の僕は要領が悪かった。一つのことをやろうとしても、物覚えも悪い。

 

 おそらく、貴族の嫡男だから学校に通わなければいけなくなるだろうが、それまで時間がある。

 僕には前世があり、多少の勉学はやればできる。

 これはアドバンテージと捉えるべきだ。

 

 人生勝ち組。そう言っても差し支えない。

 

 もしかしたら、この転生は僕にやり直しの機会を神様がくれたチャンスなのではないのだろうか。

 

  

 人とは少し違う能力を備わっててるし、前世の記憶がある。

 だが、チートといったハイスペックはないし確認できる範囲だが、異世界あるあるの魔法は存在しない。

 時代は中世ヨーロッパの貴族社会。

 

 

 今後生きていく上で苦労しそうなことは多いかもしれない。

 それでも僕は決めた。

 

 

 第二の人生、無難に生きよう。

 

 貴族だから普通とは少し違うかもしれないが、人並みの幸せを手に入れよう。

 

 そのための努力をしよう。

 

 僕は20代で死んでしまったから、長生きしよう。

 




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