実は僕……耳がすごくいいんです。   作:花河相

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『ああ。早く仕事を終わらせてユリアンとアレンと一緒にいたいなぁ』

 

 あ、ここだ。

 僕は父上がいる部屋を特定できた。

 毎日のように聞いているので間違えるはずがない。

 さて、どうしたものか。

 

「シン、ここはいる」

「ここは……。今この部屋ではアレン様のお父上が仕事をしております。邪魔してはいけませんから別のところに行きましょう」

「ちちうえいるの?!」

「えぇ……」

 

 どうしたものかと悩んでいるシン。

 シンはどうやら仕事をしている時に僕に入って欲しくないらしい。

 だが、ここで引くほど僕は素直にはなれない。

 ごめんねシン、今回だけだから……多分。

 僕は心の中でシンに謝罪をしながら、あえて父上がいることだけわかったように演じ、ドアを叩いて父上を呼ぶ。

 

「ちちうえー!」

「アレン様!お仕事の邪魔をしてはいけません。移動しますよ!」

「いや!」

 

 僕の行動に驚いたのかシンは僕を抱いてその場を去ろうとする。

 

『……アレンの声?今のは幻聴かな?』

 

 

 後もう一押し!

 

「ちちうえー!」

「アレン様……」

 

 シン、困らせて申し訳ないね。もうできるだけ迷惑はかけないようにするから今回だけは多めに見てほしい。

 

『どうやら幻聴ではないらしい。神様からのプレゼントかな?……考えすぎか。……まぁ、こんな機会滅多にないだろうし、父親らしくかっこいい姿を見せるのもいいかもしれない』

 

 父上は僕が扉の前にいることが分かると息子に威厳を見せるため、やる気らしい。

 作戦成功かな。

 ドアの向こうからは父上が椅子から立ち上がり、僕の目の前のドアへと移動するための足音が近づいてきた。

 

「なんだ?騒がしい」

「ちちうえー」

「?!キアン様、申し訳ありません」

 

 すげー声のトーンが低いわ。

 よっぽど格好つけたいらしいな。

 

「ちちうえだー!」

「ほーら、アレンどうしたのかなー?」

「キアン様、私の力不足でお仕事に水を刺してしまい、申し訳ありません」

「いや、気にすることはない。見た限りだと、アレンがわがままを言ってしまっているのかな。……僕も少し休憩をしていたところだし問題ないよ」

「……承知しました」

 

 シンは自分の力不足だと思い、それ以上は言わないらしい。

 本当にごめんて。

 でも、これで、目的の第一段階は突破かな。

 後は父上次第。

 

「ちちうえ、なにしてるのー?」

「お仕事をしてるんだよ」

「おしごと?」

「そうだよ〜」

『はぁー』

 

 威厳を見せるのでは?

 シンは初めの威厳がなくなっていることに小さくため息をついてるし。

 威厳がなくなっても息子想いの良い父上だな。

 僕はそう思いつつも、子供らしく話かける。

 

「ぼくもおしごとするー」

「お!アレンも手伝ってくれるのかい?」

「うん!」

「よろしいのですか?」

 

 シンは父上の姿を見て、質問をしてきた。

 確かにその指摘は的確だ。仕事の内容まではわからないが、領主の仕事は責任が伴う。

 子供が一人いて、何かあったらどうするつもりなのだろう?

 

「問題ないよ。朝にシンが手伝ってくれていたから仕事は少ししか残していない。それほど重要な仕事でもないからアレンがいても平気だよ。仕事終わるまでアレンがいても大丈夫だよ」

「承知しました」

 

 話がまとまり、ドア付近にいた僕たち父上の書斎へ入った。

 あまり仕事については学べそうにないかな。

 とりあえず今日は軽い見学だな。

 

 僕は方針を固めつつ、父上に抱っこをしてもらいながら、書斎へと入った。




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