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憧れだったトレセン学園。入学出来たのもつかの間、私は中々勝ち切れずにいた。トレーナーさんがついただけでも全体を見ればかなり良かったことなのだが、目標だった日本ダービーすら出れなかった。それでも諦めの悪さだけは持ち合わせていた私は、日々遊ぶことに見向きもせず走っていた。が、それだけではなかなか芽が出ない。それが現実。だから、だから私は。
「こんにちは。僕の名前はキュゥべえ。__
「ねえキュゥべえ、なんで私負けちゃったの!?私お願いしたよね!?速くなりたいって。実際重賞も勝ててたじゃん。ねえ!なんで!……なのになんで16着なの?」
迎えた初GⅠ。芝2000大阪杯。私は負けた。掲示板にすら私の番号は無い。最下位。
今日は本当におかしかった。今までの好調ぶりが嘘のように、全く手応えがなくて、ひたすら埋もれて、追いつけない。先日のトレーニングも絶好調だった。当日のアクシデントも体調の変化もなかったのに。あの新潟記念や、契約してからのレースが夢幻だったように今日の走りはボロボロだった。話が今までと違う。
私の秘密裏を知らず、初GⅠの緊張もあったのだと慰めに来てくれたトレーナーさんと少し話してから、私は人気のない多目的トイレの個室でキュゥべえを問いただした。トレーナーさんからはもしかしたら、この挑戦そのもののこの結果も理解出来たのかもしれないけれど。
「今日の結果が残念だったのは僕にも分かる。でも、僕からしても想定外の速さを君以外のウマ娘が起こしたようなんだ。」
想定外。キュゥべえから初めて聞くワードが、私の心に引っかかった。
「…どういうこと?」
「一から説明しよう。実を言うと、君のように脚が速くなってレースで勝てるようになりたいという願いを僕のような存在に話すウマ娘は、地方を含めて他にも前例はあったんだ。その場合、僕は確かに君達の走行能力が上がるように、この星のゲームなどでいう『バフをかける』ような事をするんだ。ただし、これは平等ではないし、無限でもない。ウマ娘個々人の魔法少女としての素質、秘めた力ごとに、その伸び代を埋める作業を僕は行うんだ。」
「…私にはその素質はなかったってこと?」
脳裏に甦る。埋もれて埋もれて、沼の底に沈むような感覚の走り。魔法少女の契約前に何度か感じた無力感。
「いや、君の素質は平均以上ではあった。事実君は、魔法少女としての経験が浅くとも魔女を一人で討伐し、経験値を稼げていた。レースのトレーニングを最優先していたにも関わらず、だ。これは魔法少女としては相応の潜在能力があるからこそ出来ることだ。だからこそ君にかかったバフは強力であると僕は考えていたし、僕もてっきり今日勝利するのは君だと思っていた。」
「え、じゃあ…。」
「ただ、実際にはそうではなかった。君の魔法少女としての素質が走行能力、判断能力に付与されれば重賞は勝てた。が、GⅠを走るウマ娘達に届くバフをかけられてはいなかった。これに関しては僕も不慣れな経験で話を出来なかった。それは詫びよう。」
赤いガラス玉のように、丸くキラキラしたキュゥべえの目が私を見ている。本当のガラスのようにどこか無機物で空洞のような心地がする瞳が。
願い事の効果はあった。確かにあった。ここまでの道筋でそれは感じていた。
「……そう。そうなんだ。」
でも、そこまでしてもダメなら、夢に届かなかったのなら。結局、本物は、本当の私は今日のビリっけつの無力なウマ娘。いや、最初からキュゥべえ頼みだった時点でズルもいいところだったのだろう。最初から卑怯者もいいところだった。
私、私、私は。
「……いいよ、キュゥべえが謝ることない。貴方は貴方の仕事をしたんでしょ。」
動くことを拒絶するような声帯から、なんとか声を絞り出して、私はなんとも情けない声でキュゥべえにそう返事をした。
ここで次こそはと前を向きたかった。そういう私でいたかった。でもそうじゃない。ここからまた自力で速くなるには、あとどのくらい。今まで毎日毎日走ってトレーニングして、それで勝てないからキュゥべえに。でもそれすらここで底が見えた。
ここが多目的トイレなのも、勝負服なのも気にせずに私は膝をついて蹲るしか無かった。心が押し潰されるような感覚に襲われる。結局私が才能がない癖に見当違いな夢を見ていただけの話なのだ。
じゃあ私は何のために、なんで私はあんな化け物と戦って、自傷みたいなトレーニングして。バカみたいじゃないか。
何か、何かに押し潰される。透き通った黄緑色のはずだったソウルジェムが黒くなっている。グリーフシードを使うのも今は億劫だ。
ただ蹲る。不思議ともう涙も出ない。私、私、じゃあさ、結局私は。結局。
シリーズものがまっったく書けなくなった上に私生活もバイト面接連敗したりしている中なんでこんな絶望的な話を書いてるんでしょう私。すいません本当に。