俺は源藤努。とある土木会社に勤めていた。そこでの過酷な労働は度を超えたもので、俺はついに疲れ果ててトラックに轢かれて死んでしまった―
はずだった。気が付いたら俺は見たこともない街で見たこともない人に囲まれていた。俺を心配するように周りの人間は開放してくれた。俺は起き上がり、窓ガラスに映る自分の顔を見て驚いた。自分とは似ても似つかないイケメンだった。昔読んだことのある本で見た異世界転生というのを果たしたということなのか・・・
俺は自らの状況を周りの人に聞き理解した。名前はアッシュ・アーキマン、性別は男、職業は土木会社、好物は焼きマシュマロ定食、実家から離れて寮に住んでいるらしい。なんでも野良バナナの横断を邪魔して報復で滑らされて頭を打ったらしい。その際にアッシュの魂と俺の魂が同居してしまったみたいだ。ともかく、アッシュが務めている会社へ行くことにした。
俺はアッシュの会社へ着いた。そして驚いた。なんと会社への入社時間がとっくに過ぎているのに暖かく迎えられたのだ。ここは本当に会社なのだろうか?転生前の会社では30分前出勤は当たり前だった。1秒でもオーバーすれば減給は当然だったが怒られるどころか心配される様だった。どうやら他の仲間は現場へ向かったみたいで俺は会社へ残ってた社長の車に乗せてもらい現場へ向かった。
異世界ではあるが、仕事の内容は転生前とほぼ変わらなかったので以前やっていたような業務を行った。
「おい」
現場監督のような人物が俺に声をかける。あー・・・やっぱりか。いつも俺は手際が悪くて怒鳴られていた。この世界でも同じか・・・
「君入って3か月なのにめっちゃすごく手際がいいじゃんか!」
褒められた?え?このレベルだと転生前の会社だと怒られたものなのに・・・この世界は何かがおかしい・・・俺は背筋が震えながらも喜びを感じながら仕事を行った。現場の雰囲気はとてもよかった。転生前は雰囲気は悪いしきつい業務しか与えられなかった。だが、現場の人間で仕事を分散しながらやっているらしい。なんておかしな世界なんだ・・・・
仕事は夕方5時を回った。定時は5時30分なのでこれから会社に戻るとなると定時退社は無理だ。まあこれは以前の会社でも同じだったな。すると現場監督は「今日の業務は終わったしここから家近い奴は直で帰っていいぞ」と言った。そんなことが許されるのか?俺の世界の常識とまるで違う・・・・だがアッシュの住んでいる寮は会社の近くなので俺は会社へ戻ることにした。
会社に戻ると社長が俺たちに労いの言葉を書けた。それと同じように現場監督に「なるべく定時内で帰れるように仕事は終わらせてね。残業代が出るって無理しちゃう社員も増えちゃうし何よりみんな潰れちゃったりするからね。」と言った。俺は驚きのあまり考える間もなく社長にこう言い放った。
「残業したらお金が出るんですか・・・?」
社長も現場監督も周りの同僚も唖然とした顔をしていた。何を当たり前のことを言っているんだと言わんばかりだ。そんなわけがない。前の会社は朝早く来て夜遅く帰っても、24時間勤務しても1円もお金は増えなかった。それが当然じゃないのか???俺は冷静さを失った。
なんとか家に帰りついて風呂に入った。俺の住んでいた世界とは常識が何もかも違う。だが、転生を果たした以上、俺はアッシュ・アーキマンとして生きるしかないんだ。そんな誓いを胸に俺はこの世界を生きることを決めた。