落ち着け! 話を聞け! いいか、私は女だ!!   作:あんどぅーサンシャイン

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うわっ、私の親友、ヤンデレ過ぎ……

「……………」

 

 私、柊結愛はすっかり日の沈んだ街中の裏路地にて、ちょうど捨ててあった大きな段ボールの中に隠れて身を潜めている。

 しんどい。本当にしんどい。どれくらいしんどいかっていうとさっきまで全速力で走っていた為に心臓が締め付けられるように苦しく、呼吸もゼェゼェとままならない。

  

「うぅ、ヤバい……もう疲れて走れない。やだ……もう帰りたいよ……お腹すいたよ」

 

 思わずそんな言葉がポロポロとこぼれる。

 けれど私には弱音を吐いていられるような状況じゃなかった。何故なら今―――

 

 ザシュッ

 

「!」

 

 

「ふぇぇ……。どこ行ったのぉ、結愛ちゃあん……?」

 

「ダメじゃない花音。ちゃんと猿ぐつわとロープはキツめに絞めておかなきゃ。前にも言ったでしょ。そうすれば逃亡阻止と緊縛プレイの両方が出来るから一石二鳥だって」

 

「ご、ごめん……」

 

 

 

 

 (あばばばばばば……!?)

 

 悪魔よりも恐ろしいヤツらに、身を追われているからだ。

 二人の姿を段ボールの穴から視認した瞬間、思わず全身の血の気が引き、それに対してドッと流れる冷や汗。う、嘘でしょ。もう追い付いてきやがったよ……。

 

 

「それにしても結愛ってば、あれだけ言ってもまだ()()()()()()()()……これはいつも以上に激しいお仕置きが必要みたいね……うふふっ♡」

 

 そう言いながら持っているスタンガンをクルクル器用に手のひらで回し、ドブよりも黒く濁った瞳を浮かべて笑う金髪少女―――白鷺千聖。

 

 

「そうだねぇ。まずは服を脱がしてからこの固くて黒くて太い棒を結愛ちゃんに……えへへ♪」

 

 

 彼女推しの方からものすごく怒られそうなくらいキャラが崩壊した台詞を吐き、千聖同様ドス黒い瞳をし、ゆるふわな雰囲気と水色の髪色が特徴的な少女―――松原花音。

 

 (まずい……これは非常にまずい……!)

 

 見つかったら……確実に殺られる。肉体的にも精神的にも。

 

 

 (チクショオオオオオオ!! なんでこんな散々な目に遭わなきゃならないんだ!! ていうかそもそも浮気だとかなんだとかいう前に―――)

 

 

 (私は女だろうがよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!)

 

 

 

 私は段ボールの中で天に向かって叫んだ(心の中で)。

 そう、ここまで読んでくれた方は気づいただろう。現在私を追っている千聖と花音―――いや、()()()()()()()()()()()()()()()()は深刻な病に犯されている。それも現代医学では最早手の施しようがないほどに。

 

 

 その恐るべき病名は―――ヤンデレという。

 

 

 

 そしてその最たる被害者が、私というワケだ。 

 

 

 

 

  

 

 うん。まずは事の成り立ちから説明しなきゃいけないな。

 さっきも言ったが、私の名前は柊結愛。花咲川女子学園という学校に通う高校三年生だ。歳は17で身長は……って、これは別に言わなくてもいいか。

 元々は東京じゃなく別の地方で生まれ育ち、学校もそっち方面の学校に通っていたんだけど、とある事情があり親元を離れて、単身この東京に引っ越してきたんだ。それがちょうど一年前。

 

 容姿は……どうだろう。ブサイクではないと思うけど美人か、と言われるとそれも違うかな。周りの人は『控えめに言って神』『令和版アフロディーテ』『全世界のアイドルを集めても結愛ちゃんの足下にも及ばない』『おっぱいおっぱい』『広辞苑で柊結愛って調べたら美の体現者』とかってはやしたてるけど、そんな事無いと思う。現にまだ彼氏どころか男友達すらいないしね。

 

 

 でも、私はブサイクとか美人云々以上に特異な体質を持っている。

 人よりも肌が異常に白く、目も赤い。そう……『アルビノ』なんだ。

 

 

 アルビノ―――正しくは先天性白皮症と呼ばれ、これは人間の色素細胞であるメラニンが生まれつき欠乏しており、常人に比べて身体のあらゆる箇所の“色”が無いというとても稀有な奇病だ。

 

 え、それだけ? と思ったそこの貴方、侮るなかれ。

 

 まずアルビノは直射日光などの紫外線がダメ。メラニンが欠乏しているので紫外線の影響をモロに受けてしまうからだ。長く当たってるとすぐ日焼けしちゃうし、皮膚がんや失明にもなりやすい。なので季節関係なく長袖を着たりサングラスをしたりと常日頃から紫外線対策をしないといけない。夏とか死ぬぞ。

 

 あと視覚が悪くなりやすい。視界が左右に揺れてしまう眼球振盪、必要以上に光を眼に入れてしまう羞明といった症状がある。もちろんこれらもキチンと対策すれば問題ないんだけどね。

 

 こんな風にアルビノはその体質上、日常生活においてとっても不便なのだ。余談だが、アルビノは世界のとある一部の地域では差別や偏見が激しいらしく、レイプや暴行。果てには殺害したアルビノの身体が闇のマーケットで売買されるなんてことがあるらしい。

 

 

 さて、私自身の話はこれくらいにしておこう。次は私を取り巻く環境の話だ。

 

 この街では『ガールズバンド』というものがとても盛んである。ざっくり説明すると女の子だけで結成されたバンドグループの事だ。ちょっとイメージ沸かないって人はもういいから『けいおん!』見て。あんな感じだから。

 

 現在私が知っている中でも7つのガールズバンドがある。

 

 

 Poppin’Party

 Afterglow

 Pastel✽Palettes

 Roselia

 ハローハッピーワールド!

 Morfonica

 RAISE A SUILEN

 

 

 全員が歌唱力やパフォーマンスに優れており、とても魅力的だ。

 中でもRoseliaやRASはその技術はプロ顔負けのレベルだし、パスパレに至ってはメンバー全員が現役のアイドルという異色のグループだ。

 私もよく出会った頃はライブを観に行ったりしていたが、一生懸命に歌い演奏する彼女達の姿はとても素晴らしく、見事だったの一言に尽きた。

 

 けど……問題はここからだ。

 

 どうしてなのかは分からないが、私はこのガールズバンド連中からとんでもないくらいの好意を持たれている。それも常軌を逸脱している程にだ。

 今までされてきた事でいうと、

 

 ・熱烈なバンドへの勧誘(四六時中)

 ・ストーカー(玄関先まで)

 ・不法侵入(特にベッドの中やトイレ、お風呂場)

 ・携帯電話の監視(不都合な事があるとメチャクチャ怒られる)

 ・盗撮、盗聴、窃盗まがいの行為(主に洗濯前の下着類)

 ・性行為の強要(何回かキスされた!)

 ・邪魔者の排除(生死問わず)

  

 ……うん。半分以上犯罪だわコレ。

 

 しかもやめてってコッチが言っても全く聞く耳持たないし、人によっては『私を裏切るのね……じゃあ貴女を殺して私も死ぬ!』とかワケの分からない事を抜かす。ヤンデレだけでも面倒臭いのにメンヘラとか冗談じゃないんだけど。

 

 一時期は精神的に参ってしまい引きこもりになりかけたこともあったけれど、慣れって怖いよね。もう今は部屋に帰ったらベッドの上で当たり前のように全裸待機とかされてても『ああ、またか』ぐらいにしか思わなくなってしまった。一周回って私の方がおかしくなってしまったのかなと錯覚してしまう。 まあいいや。

 

 こうして、私の何気ない日常はヤンデレ共によって完膚なきまでに破壊され、劣悪の一過を辿ってしまっているのであった。チャンチャン♪

 

 

 はい。説明終わり! じゃあ本番戻るよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

 ガタガタと震えながら二人が裏路地を通りすぎるのを待つ。その距離、僅か数メートル。両面は建物で挟まれておりバレたら逃げ場がない。だからお願い、このまま気づかないで……!

 

「……………(キョロキョロ)」 

 

「……………(スタスタ)」

 

「……………(ジーッ)」

 

 

「……いないね。あっちも見てみよっか」

 

 よし! そのまま通り過ぎろ! いけいけ―――

 

 

「……いや、ちょっと待って!」

 

「!」

 

 突然そう叫んで立ち止まる千聖。

 

「? どうしたの千聖ちゃん」

 

「……感じるわ、結愛を近くに」

 

「えっ、本当に?」

 

「ええ。この匂いは……結愛がいつも洗濯に使っている柔軟剤ね。そして微かに……結愛の汗と体臭の良い香りも混じってるわ」

 

「凄いね千聖ちゃん! そんな細かく分かるの!?」

 

「私の結愛レーダーには一寸の狂いもないのよ花音。(ドヤァ)」

 

 どうしよう、果てしなく不愉快で気持ちが悪いんだけど。

 

「ゆ、結愛ちゃんの汗……それって凄く、良い響きだね♡」

 

「そうね。非常に欲情するわ♡」

 

 (おえぇ……)

 

 勝手に人の分泌物で発情してんじゃねぇよバカ共。聞いてるコッチのどうしようもない気持ち考えてよお願いだからさぁ!

 

「な、なら早く結愛ちゃんを見つけ出さないとね。でも肝心の場所が分からないんだよなぁ……」

 

「そうね。せめて隠れられそうな場所でもあるといいんだけれど……」

 

「そうだよねぇ……あれ?」  

 

 花音が私の隠れている段ボールを目にした。や、ヤバい……!

 

「……ねぇ千聖ちゃん。あの段ボールちょっと怪しくない?」

 

 (!?)

 

「まさか。あんな猿でもすぐ見つけられるような安易な場所に隠れるワケないでしょ。おバカさんじゃあるまいし。多分アレは私達を騙すためのフェイクか何かよ」

 

「そうなのかなぁ?」

 

 (おバカさんで悪かったなコンチクショウ……!)

 

「でもここから結愛ちゃんの香りがプンプンするよ?」

 

「……確かにそうね。念のために確認しておきましょうか」

 

「そうだね」

 

 (ひぃっ!!?)

 

 ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤババババイ!!!

 そして二人が段ボールの前に立ち、花音が手をかける。あ、終わった……。さらば私のヴァージン……

 

 

 (―――いやまだだ!! クソっ!! 私はっ! こんな所で捕まるワケにはっ! いかない……っ!!)

 

 (柊家の血筋……見せてやるっ!!)

 

 

 

 「えいっ」

 

 パカッ

 

 

「くらえぇぇぇぇええ!!! 両親直伝!! 熊殺しキィィィィィィックーーーーーー!!!!」

 

「ほぶうぅぅぅううう!!!?」

 

 

 段ボールが開いた瞬間、私は花音の顎目掛けて強烈な蹴りを繰り出した。よし、命中だ! 不意討ちに抵抗する暇もなく花音は大きく後方に仰け反った。

 

「えっ!? 花音!?」

 

「ふ、ふぇええ……きゅう」

 

「よしっ! 成功だ!」

 

 脳震盪でも起こしたのか、その場で目を回してよろける花音と突然の事態に困惑する千聖。私はその隙をつき、その場から全力で駆け出す。

 

「か、花音大丈夫―――あっ!! 結愛!! 見つけたわよ!! 待ちなさい!!」  

 

 私に気づき、追いかけてくる千聖。  

 

「嫌だ!! 私はまだ処女でいたいの!! 身も心も綺麗な女子高校生でいたいのぉぉおお!!」

 

「大丈夫よ!! 私もまだ処女だから!! 枕営業とかも全くしてない新品未開封だから! 卒業するときは二人一緒だから怖いことなんて何もないわ!!」  

 

「それが嫌だっつってんだろうがよぉぉおお!! あと新品未開封とか生々しいこと言うなぁぁああ!!」

 

 枕営業……噂には聞いてたけどやっぱり芸能界にあるんだなぁそういうこと。って今はそんなことどうでもいい!

 

「どうして逃げるのよ!! 私はただ浮気の真意を聞きたいだけなのに!! 私という完全無欠な彼女がありながらどうして他のメス豚に靡こうとするの!? ねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇーーー!!!」

 

 いやぁぁぁ怖い怖い怖いぃぃいい!! しかも出てる出てる! 千聖からなんか妖気的なオーラがドロドロと沸き立っている!

 

「浮気なんかしてないよ! アレはただクラスメートの女子とちょっと喋っただけでしょうが! というか付き合ってもないのに浮気もクソもないし、そもそも女同士だろうがぁぁああ!!」

 

「真実の愛に性別は関係ないのよおおおおお!!!」

 

「愛なんてあるかああああああ!!」  

 

 私にソッチの趣味はないんだよ!

 

「なんでよ! 私のこと好きって言ってくれたじゃない! あの言葉は嘘だったの!? 私の心を弄ぶ為の虚言だったとでも言うの!?」

 

「友達としてね!! 友達として好きって言っただけだから! そこは絶対に勘違いするな!!」

 

「恋愛対象としては?」

 

「論外」

 

「そう。なら結愛、捕まえた暁には朝までたっぷり時間をかけて拡張工事をしましょうね。うふふふふ……♡♡♡」

 

「!!?」  

 

 なんかお尻のあたりがキュッてなった! 拡張ってなに!? ナニを拡張するつもりなの!? 

 

「第一アンタとだって結構喋ってるじゃん! というより圧倒的に千聖と喋ってる時間が多いじゃん! それでいいじゃん!」

 

「それじゃ足りないのおおおおおおお!!! 私は24時間365日結愛を感じていたいのおおおおおお!! むしろ結愛で感じたいのおおおおおおお!!!」

 

「やめろおおおお!! 今をときめくアイドル女優が街中で気色の悪い妄言を吐くなああああああああああああ!!!」

 

「いいから待って! 待ってよ! お願いだから―――待ってってば!!

 

「えっ」

 

 見ると千聖は―――目尻に涙を浮かべていた。え、泣いてるの?

 

「うぐっ、えぐっ……私はただ、結愛に……ぐすっ! 愛じで、もらいだいっ、だげなのに……どうじでぇ……」

 

 膝から崩れ落ちる千聖。思わず私も立ち止まる。

 

「え、いやいや……泣くことないじゃん。え、なにこれ? 私が悪いの?」

 

「嫌だよぉ……! ぎらわれだぐないよぉ……っ」

 

「…………」

 

 嗚咽をしゃくり上げてわんわんと泣き続ける千聖。

 嫌われたくないって……全く、考えすぎにしても限度ってものがあるでしょうが。やれやれ……仕方ないなぁ。

 

「千聖」

 

「………結愛?」

 

「あのね、別に私は千聖の事が嫌いだとかそういう事は決してないの。私はただ普通に親友として接してもらいたいだけなの。それだけなんだよ」

 

「……本当? 私のこと、嫌いじゃない?」

 

「当たり前じゃん。だってアンタと花音は私を救ってくれた恩人だもん。感謝こそすれど嫌悪なんてしないって」

 

「結愛……」

 

 私は千聖に手を差し伸べる。すると千聖は手の甲で涙を拭い私の顔を見上げた。

 

「……分かったわ。私も目が覚めた。もうこんなバカな真似……二度としないから、許して?」

 

「千聖……! ようやくわかってくれ―――」

 

 

 カチャリ

 

 ゑ?

 

 

「なーんて言うと思ったのかしら? 本当に結愛ってお人好しね。可愛い♡」

 

「えっ」

 

 

 そう言って千聖は、私の両手首に手錠(本物)をかけた。

 

「あ、え、は?」

 

「やーっと捕まえたわ。うふふ、あんな子供騙しの演技に引っ掛かるなんてまだまだね。ま、仕事柄こういうのは慣れっこなんだけどね、私」

 

「え、演技? それって……あっ! アンタ! まさかさっきのは嘘泣きだったのか! ふざけるな! 折角いい雰囲気で終わると思ったのにさぁ!! 人の善意につけこむなんてこの卑怯ももももももももももももももも!!?」

 

 

 プス……プス……

 

 スタンガンを押し当てられ、その場に倒れ伏す私。

 ビクンビクンと釣り上げられた魚みたいに痙攣する私に、千聖は完全にハイライトの消えた瞳を向け、耳元で囁いた。

 

 

「さ、夜は長いわ。たーっぷり楽しみましょうね……二人っきりで♡」

 

「……千聖。私は千聖が本当は友達思いの優しい子だって誰よりもわかってるよ。だからこんなことやめておうち帰ろふぐぼごぅっ!?」

 

「そうね、私達の愛の巣に帰りましょうか♡」

 

 

 バタッ、ズルズルズル……

 

 

 こうして私はヤンデレの鬼と化した親友にどこかに連れ去られ、朝までお説教+お仕置きのフルコースを受けることになったのであった。

 

 

 ぜ、絶対に復讐してやる……!

 

 

 え、花音? 知らない。

 

 




お久しぶりです。あんどぅーサンシャインです。一度は諸事情で消去してしまったこの作品ですが、この度リメイクとして復活することになりました。
元々の作品をお気に入り登録、評価してくださった方々には大変ご迷惑をおかけしました。是非とももう一度結愛ちゃんの物語を楽しんでいただけると幸いです。もちろん初見の方もよろしくお願いします。

どっかでクロスオーバーさせようと思います。どれがいいと思いますか?

  • バカとテストと召喚獣
  • のうりん
  • ぬきたし
  • 艦隊これくしょん ~艦これ~
  • 見える子ちゃん
  • 君のことが大大大大大好きな100人の彼女
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