落ち着け! 話を聞け! いいか、私は女だ!! 作:あんどぅーサンシャイン
「う、う~ん……」
けたたましく鳴り響く目覚まし時計の音で目を覚ます。
「あ、もう起きる時間か……。ふぁああ……っ」
背伸びをしながら大きなあくびをして、私はベッドから降りた。今日は平日、つまり学校に行かなくてはならない日だ。
「まだ寝てたい。というか学校行きたくない」
今日も1日あのヤンデレ共と顔を合わせなきゃならないと思うと本当に気が滅入る。心休まる暇がない。
出来ることならズル休みしたい超したい。けどマジでやったら成績に響いちゃうし、万が一それが千聖達にバレた時に色々面倒くさいよなぁ。おそらく―――
『なんでズル休みなんてしたのかしら? 怒らないから正直に答えなさい、結愛。もし嘘なんてついたら……分かってるわね?』
『ふぇぇ……そんな悪い子な結愛ちゃんにはお仕置きしなきゃだね。とりあえず全裸で四つん這いになって♡』
……………うん。真面目に学校行こう。
人間としての誇りと尊厳を捨てるワケにはいかないから。
「さて、そうと決まればまずは顔を洗いに……ん?」
『……………(こんもり)』
「……………」
『……………(モゾモゾ)』
「……………」
不自然に膨らんでいる布団。
微かにから聞こえてくる吐息。
端から出ている足。
うん、今日も今日とて何者かに布団の中に侵入されているな。最早見慣れた光景だ。
「新しく鍵も新調したハズなんだけどなぁ……」
なんてぼやきながら布団に手をかける。
とりあえず目の前のこれが一体誰なのか確認するとしよう。警察に突き出すのはそれからだ。
「さて、今日は一体どこのどいつなのかなっ!!」
バサァッ
「すぅ……すぅ……」
勢いよく布団を剥がすと、そこにはまるで猫みたいに身体を丸めてスヤスヤと寝ているパジャマ姿の女の子がいた。
エメラルド色のショートカットが特徴的なコイツは……
「日菜か……」
「う、うぅん……るん、るんっ♪ えへへ……」
氷川日菜。
Pastel✽Palettesのギター担当。“るん”が口癖であり、パスパレメンバーの中でもダントツで性格に難がある事で有名。よく言えば個性的。悪く言えば非常識な子なのだ。
そしてこの子も―――千聖達同様ヤンデレである。
「めんどくさいのが来たなぁ……」
身体を揺すぶって彼女を起こす。
「おい、日菜。おきろー」
「ん、んんっ」
「そこは私の布団だ。さっさと起きて家に帰れー」
「んん……なぁに~?」
「おはよう。日菜」
ようやく眼を開け、私を寝ぼけ眼で見つめる日菜。
するといきなり私に飛び付き、ギューっと抱きついてきた。
「あ、結愛ちゃんだ! おはよ~~! むぎゅう~~っ!」
「うんおはよう。とりあえず離れてくんない?」
「んん~~♡♡♡ 結愛ちゃん良い香り~~♡♡ すっごくるんってする~~♡♡」
「私は全然るんともしない」
「もぐもぐ」
「髪を食べるな!」
「れろれろ」
「頬を舐めるな!」
「あ、結愛ちゃん今日のパンツ赤なんだね」
「何見てんだこの変態が!!」
「いだっ!?」
脳天に拳骨を叩き込む。
コイツといると本当に疲れる……。油断も隙もありゃしない。
「というかどうやって入ったのさ。私ちゃんと鍵かけてたと思うんだけど」
「あ、それなら邪魔くさいからブッ壊―――大家さんに合鍵を借りて入ったよ」
「この野郎」
住居侵入に器物破損。更に罪を重ねたな氷川ァ!
とりあえず後でコイツの事務所に鍵の弁償代を請求しておこう。
「ハァ……まぁいいや。とっとと帰ってくれる? 私これから学校だから」
「結愛ちゃん! 二人でどこか遊びに行こうよ! アタシと結愛ちゃんなら絶対楽しいしるんってするからさー!」
「人の話聞いてた? 今日は学校があるんだよ。アンタだってそうでしょうが」
「あ、アタシ今日学校休みなんだよね。創立記念日なんだってー」
「じゃあcircleで自主練でもしてたら? ライブ近いんでしょ?」
「ダルい」
「えぇ……じゃあテレビの仕事は?」
「サボる」
「それはダメだろ」
「結愛ちゃんと過ごす事に比べたらそんなモンどうでもいいよ」
そんなモンって。他のメンバーが今の台詞聞いたらなんて思うだろうか……いや、千聖とか彩も同じこと言いそうだな。だってヤンデレの巣窟みたいなグループだしね、パスパレって。
「とにかく帰れ! それとも紗夜に電話して迎えに来てもら―――」
「……あ”?」
ん? 今何か悪寒がし
「ねぇ結愛ちゃん。アタシの聞き間違いかなぁ? 今結愛ちゃんの口からアタシ以外のメスの名前が聞こえた気がするんだけど……なぁぁああっ!!?」
「え!? いやちょ、紗夜って言っただけいだだだだだぁぁああっ!!?!!」
「また言った!! なんで!!? なんでアタシがいるのにそういうこと言うの!!? そんな意地悪するなんて酷いよ!! アタシはこんなにも結愛ちゃんの事が大好きなのに!! 千聖ちゃんなんかよりも断然愛してるのに!! どうして結愛ちゃんはいつもいつもアタシの気持ちに全然応えてくれないの!! アタシよりもお姉ちゃんの方がいいっていうの!!? ねぇ答えてよ結愛ちゃぁぁあああん!!」
「いや、いいも何も私にそんなつもりな―――」
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ!!!」←日菜の声
メキメキメキィ……!!
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ!!!」←私の声
黒く淀んだ瞳を浮かべ、物凄い勢いで私にそうまくしたててくる日菜。
折れる! 折れる! 日菜の明らかに人間離れした腕力が私の背骨とかあばらとかその他諸々を完膚なきまでに粉々にしようとしているううっ!!!
「ひ、日菜ちょっとタンマ……! 死ぬっ、これ以上力入れるとマジで死んじゃう……」
「大丈夫。結愛ちゃんを殺してアタシもすぐに死ぬから。そしたら何も怖くないよ。あの世でもずぅーっと一緒にいようね♪ 大好きだよ……アタシだけの結愛ちゃん」
「なんでそうなるんだぁぁ……!!」
ギチギチギチギチ……!
私を抱き締める力が一層強くなる。
あ、これもう無理だわ。意識が段々と遠退いていくのがわかる。あはは、せめてもう少しマシな死に方したかったな―――
(来世では……もっと普通な学園生活を送れますように―――)
「愚者よ死すべし!!!」
「あがぁあっ!!?」
「うおっ!?」
な、なんだ!?
急に誰かが日菜の顔面にドロップキックをかましたぞ!?
「チッ、図に乗りやがってこの愚妹が……貴様ごときが結愛さんに触れるなど言語道断。死んでその罪を償いなさい」
「お、おごぉぉ……(ピクピク)」
「ふぅ……さて、間一髪でしたね結愛さん」
「あ、あれ……? 紗夜……?」
そこに立っていたのは、あのバカの双子の姉である氷川紗夜だった。
視線の先にはグロッキー状態で倒れ伏す日菜の姿。うわぁ痛そう。見てよアレ、顔面に綺麗に足の形がめり込んじゃってるよ。
「えっと、紗夜だよね?」
「はい。貴女の紗夜です」
私のではないかな。
「朝起きたら日菜がいなかったのでもしやと思って来てみれば……案の定ここでしたよ。全く……本当に人騒がせな妹でごめんなさいね(ポイ)」
そう言って紗夜は日菜の亡骸(?)を窓から投げ捨てた。おいコラ、不法投棄はいけないぞ! 捨てるならちゃんと指定された場所に捨てなさい。
「と、とりあえず助けてくれてありがとね、紗夜」
「っ……! れ、礼には及びませんよ。愛する者を守るのは当然のことですから(ドン)」
「う、うん……(別にコッチは愛してないけど……)」
「はい。さて、邪魔もいなくなったことですし……よいしょ」
ズズズズ……ズドン
「おい」
「はい?」
「何をしてる」
「バリケードですが」
「なんでだ」
「? だってまた邪魔が入っては出来ないじゃないですか」
「出来ないって、何が?」
「何がって、それは……」
「…………」
「…………」
「ナニですけど」←ハイライトオフ
ダッ←窓から脱出を試みる私
ガシッ←それを防ぐ紗夜
バン←ベッドの上に押し倒される私
ハァハァ←発情した紗夜
「逃がしませんよ。せっかくのチャンスを無駄にしたくないんですから」
「それはアンタだけだろう! 私にとってはチャンスどころかピンチまっしぐらだ!! 放せ!」
「ちょっ、暴れないでください! そんなにバタバタされると……益々興奮するじゃないですか♡」
「どういう理屈!? いやぁぁあああ!!」
クソッ! ちょっとでも心を許した私がバカだった! 結局コイツも日菜と何ら変わらない!! 私を助けるというのは単なる建前でこれが本心だったのかぁぁあっ!
「さて、そうと決まれば早速……(ヌギヌギ)」
「ちょっ! やめて! 嬉々とした顔で制服を脱ぎ出さないで!」
「何故ですか! 服を脱がないと致せないでしょう!」
「致さなくていい! 私はアンタとのそんな行為は望んでない!」
「心配ありません!! こう見えてスタイルにはそれなりに自信があります!! 少なくともさっきのアレ(日菜)よりはずっと!」
「知らないよそんな事!! いいから落ち着け!」
「ちなみに私は足技が得意です! 風紀委員ですので!」
「あらどうしましょう会話のキャッチボールが出来てないなぁ!! いいから私の話を―――」
「ハッ……もしかして結愛さんは着衣派なんですか? でもその場合ですと制服に二人の《検閲削除》が染み付いてしまいま―――」
「生憎私にそんな性的嗜好は皆無だよ! 着てようが脱いでようがどっちだっていいわ!」
「じゃあ間をとって半脱ぎにしますか」
「半脱ぎってなに!?」
「文字通り、途中まで着ている服を脱いでいる状態の事です。なんでも巷では結構流行っているらしいですよ」
「へー」
「ちなみに湊さんと今井さんの最近のトレンドでもあります」
「へー」
一生役に立つことの無いであろう知識をどうもありがとう。
「とりあえず結愛さん。まずは本番に備えて準備をしますのでパンツを脱いでくださいね。私も脱ぎますから」
「断る!!」
「じゃあ仕方がないので破りますね」
「やめてぇぇぇええええ!!」
グググ……な、なんて腕力だ。妹共々こんな華奢な身体のどこにこんな力が……!
このまま言い合いを続けていてもいたちごっこになるだけで状況は変わらないだろう。一度スイッチが入ったヤンデレは他者の介入を一切許さず、目的を果たすためならどんなに汚い真似でも平気で行う。正に自我と倫理観のブッ壊れた野獣だ。
(どうする……考えろ考えろ私! 今までだって何度もこんなピンチを乗り越えてきたじゃないか。必ず今回だって……逃げ道はあるハズ……)
……………はっ! そうだ! この方法ならいけるかも!
「……紗夜!!!」
「ひゃっ!?」
意を決した私はガバッと起き上がり、紗夜の肩を掴む。
「わかった。紗夜が私とそういう行為がしたいんならいいよ。気の済むまでしたらいいさ」
「けどね……その前に一つだけお願いがあるの」
「お願い……?」
そう聞き返す紗夜に、私はまっすぐと彼女の目を見て答える。
「うん。最初に……シャワーだけ浴びさせてくれないかな」
「シャワー?」
「ほら、私は見ての通り起き抜けの状態なの。髪もセットしてないし寝汗とかもかいてると思うのよね。だから一旦その身体を清めてからした方が気分面にも衛生面でもいいでしょ?」
「確かにそれは一理ありますね。ですが私は気にしませんよ? というかむしろソッチの方が欲情を煽られ―――」
「それじゃダメなの」
「!? ひゃ、ひゃいっ!?」
紗夜の手を優しく握り、私はちょっと照れるような声色で、
「だって一番好きな人には……一番綺麗な姿を見てもらいたい……から♡」
「!!!?」
耳元でそう呟いた。
「しゅ、しゅしゅしゅしゅしゅしゅ……!!?」
すると紗夜はまるで茹でダコのように顔を紅潮させてしまった。
そう、コイツは口は一丁前のクセに超絶ウブで突然の反撃に弱い。なのでこんな風にちょっとコチラから攻めてやるだけで勝手に自壊してくれる。……いや私が言うのもなんだけどさ、あんなコッチが恥ずかしくなるくらいベタな台詞でそこまで照れるかね。耐性無さすぎでしょ。
「だから、お楽しみはもう少し後でね」
「そ、そそそそそうですねっ! 結愛さんがそういうなら、わわわ私もそれで良いでしゅっ……!」
「ふふっ、照れちゃって可愛い♪ じゃ、行ってくるね」
「は、はい! お待ちしていますっ!」
紗夜を残して部屋を出る。
ふぅ……おそろしいくらいスムーズに事が運んだな。それにしてもなんてチョロい子なんだろうか。多分アレは将来悪い男にすぐ騙されてカモにされるタイプだな。
(さて……)
ピッピッ、プルルルル……プルルルル……
「あ、もしもし警察ですか? 強姦魔と不法侵入者が現れたのですぐ来てほしいんですけど」
「部屋に一人、外の自転車置き場あたりに一人です。お願いしまーす」
その後、駆けつけてくれたお巡りさんにバカ二人を引き取ってもらい、私はさっさと身支度を整えて学校に向かった。
ちなみにその後二人は護送中のパトカーをジャックして逃走。三日三晩警察と自衛隊による壮烈なカーチェイス合戦を繰り広げたのだが……それはまた別の話。
まだだ……まだ前作同様のイカれっぷりを取り戻せていない。もっと暴言を吐かせなければ、もっとブッ飛んだ内容にしなくては、とか思いながら書いてます。
どっかでクロスオーバーさせようと思います。どれがいいと思いますか?
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