落ち着け! 話を聞け! いいか、私は女だ!!   作:あんどぅーサンシャイン

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美竹蘭の受難 ~よろしい、ならば戦争だ~

『『『美竹蘭を潰せぇぇええーーっ!!』』』  

 

 

「ハァ……!! ハァ……!!」

 

「待てぇぇええーーっ!! この邪教徒がぁぁああーー!!」

 

「我らが唯一にして絶対の神、柊結愛様の名の下に貴様を断罪してくれる!!」

 

「滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅!!」

 

「■■■■■!! ■■■■■■■!!」

 

「汚物は滅菌だぁ~~ッ!!」

 

「蘭!! いい加減大人しく捕まれ!! 観念してアタシに殴殺されろ!!」

 

「ら~ん~? 早く降伏してくれないと大変だよ~? そろそろモカちゃんの憤怒と殺意のボルテージがぁ……どうしようもないくらいオーバーフローしちゃうからぁぁあああああ!!!」

 

「我が異端陪審会は裏切り者を決して逃さない……!! 極悪大罪人美竹蘭!! 忘れるな……例え地獄の果てまでだろうと貴様をギリギリまで追い詰め……ありとあらゆる恐怖と絶望を与えてから殺してやるからなぁぁあああーーーっ!!!」

 

 

「うわぁぁあああああーーーーっ!!!」

 

 

 ―――どうして、こんな事になっちゃったんだろう。

 クソオッ! あたしが一体何をしたっていうのさ……! 

 

 

 

 

 

   

 

 ―――事の始まりは数時間前。

 あたし、美竹蘭はいつものように決まった時間に家を出て学校に到着した。特に代わり映えのない光景だ。

 

「……あ、今良いフレーズが浮かんだ」

 

 そう呟き、ポケットからメモ帳を取り出す。

 あたしは幼馴染み五人で構成されたバンドグループ『After grow』に所属し、作詞作曲を担当している。なので普段からこうして良い単語やフレーズが思い付いたらすぐに書き留める様にしているのだ。

 

「……次の新曲に使えるかも」

 

 そんな事を考えながらメモを見ていると、突然鞄の中に入れていたスマホの着信音が鳴った。

 

「誰だろ……? ひまりとかかな」

 

 スマホを取り出し、確認する。

 

 

『着信相手―――結愛さん』

 

 

「えっ!!?」

 

 相手の名前を見て、あたしは声を出してしまう。

 

 柊結愛さん。

 花咲川高校の生徒であたしの一個上の先輩だ。

 美人、聖人、おっぱい。そんな女性としての魅力を全部兼ね備えている完全無欠の女性。老若男女問わず見る者全てを魅了し、骨抜きにしてしまうことから、花咲川のエルフ、アフロディーテの化身、ヤンデレ製造機なんて呼ばれてるらしい。あたしもそんな魅力された内の一人だ。

 友希那さんやリサさん、つぐみ達なんかに至っては好きの感情が変なベクトルに限界突破し、よく狂った言動に走りがちになってる。

 

 

 (きゅ、急にどうして……?)

 

 

 だからこそ、そんな憧れと恋心を抱いた人からの直接の電話に驚きを隠せないのだ。

 突然の事態と妙な期待感でドキドキしながら、着信ボタンを押す。

 

「も、もしもし?」

 

『あ、もしもし蘭? ごめんね急に、今大丈夫?』

 

「は、はいっ! 大丈夫です!」

 

 相変わらず綺麗で澄んだ声色をしている。

 耳に入るだけで心が浄化されるようだ。

 

「そ、それで用件は……?」

 

『あのさ、蘭って今度の日曜日空いてるかな?』

 

「日曜日ですか? えっと……一応特に予定はありませんけど」

 

『あのさ、もしよかったらでいいんだけど、その日に一緒に付き合ってほしい事が―――』

 

「蘭ちゃん?」 

 

「ヴェアアッ!?」 

 

 背後から声をかけられて、咄嗟にスマホをポケットにしまう。だ、誰っ!?

 

「え? なに?」

 

「あ、ああ、なんだつぐみか……」

 

 そこにいたのは、あたしの幼馴染みの羽沢つぐみだ。

 茶髪のショートカットが特徴で、あたしと同じく『After grow』のメンバーの一人だ。

 

「どうしたの蘭ちゃん? 随分ビックリしてたけど」

 

「べ、別にビックリなんてしてないし。いつも通りだけど?」

 

『あれ? もしもし? もしもーし!?』

 

「えっと、誰かと喋ってるよね……?」

 

 げっ!? やばっ!? このままじゃ聞かれる!!

 

「た、ただの間違い電話だよ! それよりもごめん、あたし今日日直だから先行くねっ!」

 

「え、ちょっと蘭ちゃん!? 蘭ちゃーん!?」

 

 呼び止めようとするつぐみを無視し、あたしは教室に向かって走り出す。

 なんとかこの場は切り抜けた。危なかった……、もし結愛さんと会話してたなんて知られたらとんでもない事態に発展していたところだったよ……。

 

 

「……………今の声って、まさか……」

 

 

 

 

 

 ―――2―A教室。

 

「おはよう皆。じゃあ出席を取りますね」

 

 教室に逃げ込み、さっきの結愛さんとの電話の事について考えていると担任の先生が現れて出席確認を始めた。毎朝の恒例行事だ。

 

「青葉さん」

 

「は~い」

 

「赤羽さん」

 

「はい」

 

「上原さん」

 

「はいっ」

 

「宇田川さん」

 

「はーい」

 

「江藤さん」

 

「はい」

 

「川上さん」

 

「はいー」

 

 名前を呼ばれ、それぞれ返事をするクラスメイトの皆。

 最早見慣れた光景だ。何も気に留める必要のない時間といっていい。だからあたしは適当に聞き流す。それよりも、今のあたしには第一に気にしなくてはならないことが―――

 

「羽沢さん」

 

「……………」

 

「羽沢さん? いませんか?」

 

「……………蘭ちゃんが結愛先輩からデートのお誘いを受けてました」

 

 

 

『『『OK!!! Let's party!!!(よろしい、ならば戦争だ)』』』

 

 

 

 ッ!! 殺気ッ!!?

 

「危なっ!!」

 

 身の危険を察知した私は瞬間的に横に避ける。

 刹那、私の席には何十本ものカッターナイフやハサミ、それと教卓が突き刺さって―――え?

 

「どういうこと!? カッターナイフとかはともかく教卓が突き刺さるって表現がなんかおかしくない!?」

 

「チッ、仕留めそこなったか。運のいいヤツだな」

 

「アンタの仕業か巴! いきなり何すん―――」

 

「黙れクソダボがぁ!!!」

 

「!?」

 

 思い切り怒鳴られ、肩がビクンと上がる。

 そんなあたしの事を、巴はまるで親の仇を見るかのような憎々しさ満載の目つきで睨む。

 

「蘭、テメェこの野郎……!! アタシ達に黙って抜け駆けなんかしやがって……結愛先輩とデートだとぉ? そんな天に唾を吐くような真似……ぜってぇ許さねぇ。例え結愛さんが許したとしてもアタシは許さねぇぞぉぉおおおおーーーっ!!!」

 

 その声色にはあたしに対する怒りの感情がこれでもかと込められている。

 や、やばい。もう激怒を通り越してガチギレ状態になってる……! 間違いない、あたしをここで沈める気満々だ……!

 

「ら~ん~? いくら心の広いモカちゃんでもそれはちょっと許容範囲外かな~……ブチ殺してやるよクソメッシュ」

 

『美竹さん。今日が貴女の命日よ。生まれてきたことを地獄でたっぷりと後悔しなさい』

 

『魚の餌か豚の餌、最期の姿はどちらがご所望かしら? 選びなさい』

 

『結愛様とデートたぁ恐れ入ったわ! 貴女のその幸せ、完膚なきまでに叩き潰してあげるから覚悟しなさい!!』

 

『殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺』

 

 瞬く間に暴徒と化したクラスメイトに囲まれる。

 いやいや電話越しで喋っただけでそれがデートの誘いになるって、いくらなんでも早とちりし過ぎでしょ! 

 あたしはなんとかこの危機を脱しようと、弁明を試みる。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ皆! あたしが結愛さんとデートなんてそんな事があるわけないじゃん! あたしだって電話を最後まで聞いてたワケじゃないし!」

 

「でも何かに誘われた事は確実なんだろ?」

 

「それは……まぁそうだけど」

 

「野郎共、感想を述べよ」

 

『『『この卑怯者!! 殺してやる!!』』』

 

 クラスメイトの殺意が更に増幅した。

 チクショウ! ダメだ、これじゃあ怒りを沈めるどころか逆効果だ!

 

『羽沢会長、早くこの裏切り者に真正なるお裁きを!!』

 

『愚者に相応しい末路を与えてください!』  

 

『『『お願いします!! 会長!!』』』

 

「静粛にしろ、皆の衆。大罪人美竹蘭、最期に何か言い残しておくことはあるか?」

 

 ハイライトの消えた瞳でつぐみ―――もとい結愛さんを崇拝し、近づくものを徹底的に排除する超過激派組織『異端陪審会』の会長があたしに尋ねる。

 

「ただ偶然にも電話を貰っただけなんだ! 無実―――とまではいかなくてもどうかお慈悲を! つぐみ!」

 

「……………」  

 

 あたしの言葉につぐみは思案する。

 確かにあたしは結愛さんと連絡先を交換している数少ない人間の一人だし、付き合いも他の四人よりはそれなりにある。だからそれで嫉妬を持たれるのは正直仕方のないことだと思ってる。

 けれどこの仕打ちはあまりにも酷すぎる。あたしから結愛さんに何か誑かすようなやらかしをしたのならまだ納得出来る。けど今回はあたしは何もアクションは起こしていない。ただ向こうからお誘いが来たというだけなのだから。なのにあたしが処刑されるのは理不尽にもほどがある。さすがのつぐみもそれを理解してくれるハズだ……! お願い……!

 

「……確かに、この場で即処刑するのはいささかやり過ぎか」

 

「……つぐみ!」

 

「ならば皮剥ぎフルコースからの市中引きずり回しのみで今回は手を打とう」

 

『『『異議なし』』』

 

「異議だらけだよバカ野郎!」

 

 残念ながら、あたしの思いはつぐみには届かなかったようだ。

 ていうかなにそのおぞましい内容!? 全身の皮膚を剥がされた挙げ句町中を引きずられるってそれもう死刑より過酷じゃん! 

 

「いやいやいや! それは流石に重すぎるじゃん! こんな判決は無効―――」

 

「さぁ、そうと決まれば早速始めよう」

 

「はっ。既に準備は整っております」

 

『皮膚を削ぐ為の包丁も研ぎ終わりました』

 

『塩水もこの通りたっぷりございます』

 

『ロープも体育倉庫から拝借済みです』

 

『セメントとスコップもこの通り』

 

 まずい。みんな過度な拷問で息絶えたあたしをどこかに埋めて事実を隠蔽しようとしているところまで考えている。

 どうにかしないと……あっ! そうだ! ならもういっそのことこれくらいは大したことないことだというのを皆に錯覚させるんだ……! あたし以上に結愛さんと関わりを持っている人はいっぱいいるから!

 

「待ってよ! この程度であたしを裁きにかけるなら日菜先輩とかはどうなるのさ! 確か前にも結愛さんの家に忍び込んで同じ布団で寝てたって話だよ!」

 

「そうか。なら氷川日菜は処刑しよう」

 

『『『御意』』』

 

 ごめんなさい日菜先輩。あたしの一言で貴女の命が終わりを告げました。

 

 もうダメだ……万策尽きた。話し合いもダメだし、無理矢理押さえつけようにもあたし一人じゃこの超絶武闘派軍団に勝てるワケがない。こうなったら……!

 

「さぁ、この世にさよならを告げる時間だ」

 

『『『罪には罰を、愚者には正義の鉄槌を。それが我々、異端陪審会の血の掟也』』』  

 

「くっ……!」

 

 ジワジワと窓際に追い詰められる。

 このままじゃあたしは確実に命を刈り取られるだろう。でもあたしは……あたしは……っ!

 

 

「あたしはこんな所で易々と―――死ぬワケにはいかないんだぁぁああーーっ!!

 

 

 ガシャァアンッ!!  

 

 

 背後の窓を突き破り、教室から緊急脱出した。

 

『あっ! 待ちなさい裏切り者!』

 

『野郎! 逃げるとはなんて姑息な真似を! どうしますか会長!?』

 

「落ち着いて皆。これは全て私の予想の範囲内……向こうがその手で仕掛けてきたというのなら、私達はそれを更に上回る策を労すればいいだけの話なんだから……分かっているな!! 副会長!!」

 

「はっ、仰せのままに! いいか野郎共、これより部隊を三つに分ける! まずはアタシ、宇田川巴が率いる第一部隊がヤツを追撃し捕縛する! 次にモカ率いる第二部隊は先回りして学校中の出入口を押さえ、ヤツの逃げ道を塞ぐんだ! 残った第三部隊はこのまま教室に待機していざという時に備えろ! 決して失敗は許されない……抜かるなよ!! あの裏切り者は必ず我々の手で葬るのだ!!!」

 

 

『『『おおぉぉおおおおーーーっ!!!』』』

 

 

 教室からそんな声が聞こえてくる。

 あの状況からあんなにも冷静さを失わず、的確に皆に指示を出すなんてさすがは巴……仲間だととても心強い分、敵に回すととても厄介な存在だ……!!

 でも……それでもあたしは生きなきゃならない!

 

「結愛さん……貴女のお誘いは何がなんでも受けてみせますからね……っ!」

 

 あたしはそう心に堅く誓い、文字通り命がけの鬼ごっこに身を投じるのであった。

 




前作同様まとも枠は蘭ちゃんにしました。なんていうか、一番しっくりくるんですよねぇ。

どっかでクロスオーバーさせようと思います。どれがいいと思いますか?

  • バカとテストと召喚獣
  • のうりん
  • ぬきたし
  • 艦隊これくしょん ~艦これ~
  • 見える子ちゃん
  • 君のことが大大大大大好きな100人の彼女
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