落ち着け! 話を聞け! いいか、私は女だ!! 作:あんどぅーサンシャイン
『どう? そっちにはいた?』
『いいえ。けどまだ遠くには行っていないはずよ』
『私達の手を煩わせるなんて、裏切り者の分際で生意気な……!』
あたしは現在一階の突き当たりにある空き教室のロッカーに身を潜めている。
巴の的確な指示によって学校から外に逃げるための経路には必ずと言っていいほど見張りを配置され、獲物を逃さない袋のネズミ状態が形成されようとしている。既に三階は完全に異端陪審会によって占拠、あたしの今いる二階にもチラホラと捜索員がうろついていて、いつ見つかってもおかしくない状況だ。
ちなみに担任の先生は自習という建前でさっさと職員室に逃げてしまった。いや、恐いのはわかるけど職務は全うしようよ……、暴走した生徒を止めるのは教師の役目なんだからさ……。
「……そろそろ、移動した方が良さそうだね」
ロッカーの小さな穴から外の様子を伺う。
目の前には捜索部隊のクラスメイトが三人。つぐみや巴、モカといった実力者の姿はない。
「三人なら、ギリギリ倒せるかな……」
幸いにも向こうは丸腰だ。対してこちらには―――念の為にいつも持ち歩いている武器が一つだけある。これならば、騒がれたりして相手に援軍を呼ばれる危険も無く速やかに対処が可能だ。
複数人を相手にするのは多少骨が折れるかもしれないけど、あたしがこの場を乗り切るには他に方法はない。
「……よし」
あたしは決心し、思い切りロッカーの扉を蹴飛ばして二人の前に堂々と姿を表した。
「な、なんだっ!?」
「敵襲か!?」
突然の事態に戸惑いを隠せず、動きを止めたクラスメイト。あたしはその隙を逃さず、
「やぁぁああっ!!」
ボゴォ……ッ!
『ごほっ!? な、なに……い……』
一番近くにいた敵の鳩尾めがけて全速力で頭突きをくらわした。
結果は見事クリーンヒット。敵は白目を向いてその場で倒れ伏した。
「恨みは無いけど……ごめんね」
『き、貴様ァ!! よくも同志をぉおおーーっ!!』
「!」
ようやく状況を飲み込んだらしいもう一人の敵が、そう叫びながら襲いかかってくる。けれど残念、今さら立ち向かって来たところで遅いんだよ!
「あっ、あんな所に結愛さんのブラジャーがっ!」
『嘘っ!? どこどこどこどこ!?』
油断した敵の背後を取り、あたしはポケットから武器―――スタンガンを取り出す。
『待て! 結愛さんのブラジャーなんてどこにも―――なっ!? 貴様何をする!?』
「大丈夫、死にはしないから。少しだけ……眠っててもらうだけだよ」
『おい、バカな真似はよせ「えいっ(カチッ)」』
カチッ……ビリビリビリビリィッ!!
『ぎゃぁぁああああっ!!!』
焼けるような焦げ臭い香りを放ち、敵は悲鳴をあげて沈んだ。
よかった、なんとか勝てた。バンド活動の為に鍛えておいた身体と万が一の為に持っておいた護身用の武器、これ程までに役に立ったと思える瞬間はない。
「よし、今の内に外に―――!?」
ヒュン……サクッ!
「……逃がさないよ、蘭」
手にカッターナイフを持って立ち塞がるのは、幼馴染みの一人の上原ひまりだった。地味めでキャラがそんなに立ってないから認知されにくいのだが、一応アフグロのリーダーを務めている。
「……ひまりも、そっち側につくんだね」
「ごめんね蘭。出来ることなら私だってこういう事はしたくないよ。でもさ……蘭だけ結愛先輩と仲良くデートだなんて……そんなのずるいじゃん! 私だって……蘭に負けないぐらい結愛先輩の事が好きなのに!! 蘭だけ幸せ者になるのは許せないの!」
「っ! ひまり……! けど、あたしだって譲れないものがあるんだ! 邪魔をするなら力ずくで通してもら」
ヒュン!
「次は耳だよ」
「うんわかった。まずは話し合いをしよう」
やっぱりダメだ。かけがえの無い大切な幼馴染みに暴力を振るうなんて真似、あたしには出来ない! 決してビビったとかそういう事ではないからね、うん。
「話し合い? 何を話すの?」
「うん。まずはひまりの要求を聞かせて。話はそれからだから」
「じゃあ心臓か脳みそのどちらかをちょうだい?」
「待ってひまり。その選択肢はこっちが呑める要求の範囲内を完全に超えてるから。脳も心臓もどっちか一つでも失ったら人間は死ぬからね?」
「そっか。残念だけど交渉決裂だね」
「もう!? ひまりのあたしに対する取引材料が臓器だけって流石にキャパが少な過ぎない!?」
「じゃあ心臓と脳みそを貰っても許さない」
「殺さないという選択肢はないの!?」
どうやら是が非でもあたしを始末したいらしい。
「大丈夫、痛くするように一撃では終わらせないから」
「逆だよ! それって普通痛くしないように一撃で終わらすって言うところじゃないの!? それじゃ単なる拷問宣言だよ!」
「私悲しいよ。こんなところで幼馴染みを一人失うなんて」
「いや、だったらもうこんなことやめ―――ってひぃぃいいっ!!?」
ヒュッ! ヒュッ! ヒュッ!
風切り音に合わせて飛んでくるカッターナイフやはさみ。
咄嗟に近くにあった机を盾がわりにして防いだ。
「ひ、ひまり落ち着いて! 危ない! 冗談抜きで危ないよ!」
「うるさいっ! 蘭のバカ! 裏切り者! ブタ野郎! 絶対に結愛さんは渡さない!!」
「くっ!」
無駄に上手い投擲技術をこれでもかと披露してくる。
でも少しだけではあったがあたしの言葉に耳を傾けた。つまりひまりは他の三人よりはまだ説得の余地があるということだ。
(……どうやら、これを使う時が来たみたいだね)
「このっ! さっきから逃げてばっかりでいい加減に―――」
「ひまりっ!! 結愛さんの写真は持ってる!?」
「!?」
咄嗟のあたしの発言にひまりは一瞬だけ動きを止めた。
「……そんなの、持ってるワケないじゃん。何、馬鹿にしてるの?」
「そ、そうだよね。じゃあ、もしあたしに協力してくれたら、あたしが隠し持ってる結愛さんの秘蔵写真を何枚かあげる」
「秘蔵……写真?」
よしっ! 狙い通り食いついた! このまま一気に畳み掛ける!
「ち、ちなみに写真ってどんなの……?」
「ええっと……例えばこんなのとか」
スマホを取り出し、アルバムの写真を出した。
『無防備な結愛の寝顔写真』
「ゴフォッッッッ!!?」
口と鼻からなんか出した。
どうやら相当ダメージが効いたみたいだ。気持ちは凄い分かる。だってメチャクチャ綺麗で可愛らしいもん。
「あ、ああ……あああ……!」
「驚くのは……まだ早いよ。他にも色々あるから」
「ほ、他にも……っ!!?」
どんどんスマホの写真を見せていく。
『パジャマ姿の結愛の写真(ネグリジェ)』
『ライダーベルトを巻いて変身ポーズをしている結愛の写真』
『エプロン姿の結愛の写真』
『お風呂上がりの結愛の写真(盗撮&下着姿)』
……その他exc。
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ん!!!(ブッシャァァアア)」
鼻血を撒き散らしながらゴロゴロと悶えるひまり。フッ……堕ちたな。
「どう? あたしに味方するならこれを全部あげるけど」
「蘭! ごめんなさいっ、私が全部間違ってた! かけがえの無い仲間を手にかけるなんて……私はなんて酷いことを……!!」
「……いいよひまり、分かってくれれば。これからも大事な幼馴染みでいようね」
「うんっ! 蘭大好き!」
「あたしも好きだよ」
二人でひしと抱き合う。
交渉は見事成立、これよりひまりが仲間に加わった。
「よしっ、そうと決まれば善は急げだね! 一緒に頑張ってここを脱出しよう! えい! えい! おおーーっ!!」
「……………」
「いや、やってよー!!」
ごめん、今そんなノリじゃない。
『いたわ! こちら二階非常階段前守衛部隊! ターゲットの姿をとらえました!』
『これより確保に入……なっ!? 待って! もう一人います! ですが―――』
「てやぁっ!」
『ぐぁあっ!? う、上原さん……なぜ貴女がぁぁ……!』
「ごめんね。峰打ちだよ」
立ち塞がる異端陪審会のメンバーを次々と葬っていくひまり。
それにしても意外だ。まさかあの運動音痴なひまりがここまで戦力になるだなんて。
「ふふん、私こう見えて異端陪審会の三番隊隊長だからね。これくらい余裕だよ」
「そ、そうなんだ……」
「このまま一気に片付けるよ! 急ごう!」
「分かった」
主にひまりが敵を倒しつつ、先導してくれているおかげで着実に脱出へと近づけている。正面玄関口や体育館裏口といったメジャーどころではない所……二階の非常階段を出口に選んだためか、見張りが他に比べてさほど少なかったのも大きい。
まだ巴やモカといった主力メンバーが姿を現さないのが気になるけど、それならそれでラッキーだ。戦わずに済むのならそれに越した事はない。
「ザコばかりで手応えがないねっ!」
『くそっ! この裏切り者共め! ここは通さな』
「うるさい(カチッ)」
『ぐぁああああっ!?』
『同志!? おのれこのブタやろ』
「余所見は禁物だよっ!」
『へぶっ!?』
外への扉を守っていた最後の門兵二人も難なく撃破。もう邪魔者はこの場にはいない。
「どう? これが公式キャラである私と、名前も与えられようなモブキャラでしかない貴女達との実力の差だよ! えっへん!」
「ひまり……なんか妙に生き生きしてない? 運動神経格段に良くなってるし、好戦的になってるし。普段よりもキャラが濃くなってる気がするんだけど、いいの?」
「大丈夫じゃない? 小説のタグにもキャラ崩壊あるって書いてあるし、これくらい些細なものだよ」
「その発言はメタいよ」
なんて言いながらドアノブに手をかける。
学校さえ出てしまえばこっちのもの。あとはほどぼりが冷めるまでどこかに身を隠して―――
ピーンポーンパーンポーン
「「?」」
突然廊下中に鳴り響く音。これは……校内放送用のチャイム?
『……………あ、あーあー。ただいまマイクのテスト中だよ』
「!」
「この声は……!」
子供の頃から何度も聞き慣れた声がスピーカーから耳に入る。間違いない、この金○寿子にそっくりな声は……!
「つぐみ……!」
『……うん、大丈夫みたいだね。さて、聞こえてるかな? 蘭ちゃん。そして……裏切り者のひまりちゃん』
「!」
『さっきそっちに配置した隊員から報告を受けた時にはまさかって耳を疑ったけど……本当みたいだね』
「! や、やっぱり裏切ったのバレてたんだ……!」
そりゃあんなに派手に暴れたんだもん。
知らない間に隠れて通報されてたとしてもなんらおかしな事じゃない。
『まさかひまりちゃんがそこのブタ野郎に寝返るなんて……酷い仕打ちだなぁ。折角私は貴女のその友達思いな性格を信じて三番隊隊長の座を任せてたのに……うん、本当に残念だよ』
『ひまり。異端陪審会の血の盟約に背く……それがどれだけ重罪か、承知の上なんだろうな?』
『これは作らなきゃいけない墓標が一つ増えましたな~~』
巴とモカの声まで聞こえる。
この時点で、ひまりはあたしとおんなじ立場に立たされる身となった。
『あ、ちなみに二人の様子は学校中に仕掛けた隠しカメラで全部こっちに筒抜けだからね』
「えっ」
「筒抜け……ハッ!? もしかして!?」
『うん、蘭ちゃんが空き教室のロッカーに隠れてるところも……ひまりちゃんと死闘を繰り広げていたところも……蘭ちゃんが結愛先輩の写真を隠し持ってるっていう新事実もねぇ!!!』
『ああ……本当に本当に……お前はアタシ達をキレされるのが上手いよなァ!! 蘭!!』
『ギルティギルティギルティギルティギルティギルティギルティギルティギルティギルティギルティギルティギルティギルティギルティギルティギルティ』
や、ヤバい……よりによって一番バレたくない事が一番バレたくない人達に……!
『まぁいいよ。その件に関しては許しあげるね。どうせ死罪であることには変わりないし』
世間一般的にはそれを許される、とは言わないと思う。
「で、でもっ! もうここの警備隊は全滅させた! もう私達を止める人はいない! 正面玄関口や裏口からじゃここまで来るのに時間がかかる! 私達の勝ちだよ!」
「……!」
『へぇ~、凄いじゃねぇか。ひまりのくせにやるもんだ』
『けど、それはまだ違うかな~~?』
『ひまりちゃん。ちょっと考えが甘いよ。まさか私がそうなる事を考えて部隊を配置していなかったと思う? それに言ったでしょ? 最初から行動は全部筒抜けだって』
「え……?」
『私は敢えてそこを手薄にしたんだよ。二人がそこを突破して外に出てくれれば、これから引き起こされる“災厄”によって校舎への甚大な被害を抑えることが出来るからね』
「災厄……何言ってんの?」
『あ、じゃあ二人に簡単な質問をするね。それで私が何を考えてるか分かると思うから』
『二人はいつから―――
「!!?」
その瞬間、あたしは気づいた―――いや、気づいてしまった。
どうしてつぐみはあたし達の行動を予測していたにも関わらず、巴やモカといった主戦力を避け、雑魚ばかりを仕向けていたのか―――それはあたし達の戦闘力や行動パターンを把握し、かつ体力を少しずつ減らしていく為。
そしてどうして……これだけの騒ぎを起こしていながら、異端陪審会の生徒しか行動を起こしていないのか―――違う。行動していないんじゃなく、
その人達に―――つぐみが何もしないハズがない。いや、仮に今回の事をつぐみから知らされていなかったとしても……この校内放送で全てが白日のもとに晒されてしまった。
その証拠に―――さっきまでに比べてあたしに向けられている殺意の感情が段違いに上がっている。その規模は……つぐみの言葉通り“災厄”レベルだ。
「……ま、まさかつぐみ……アンタ!」
「え? なになに? どういうこと?」
『うん、蘭ちゃんの予想は多分当たってるよ。本当は私達だけで事を済ませる予定だったんだけど、思った以上に二人が手強いからね。それに確実に仕留めなきゃいけない。だから少しだけ……助っ人を要請したんだ。間も無くそっちに到着するんじゃないかな?』
「つ、つぐみ……アンタなんて恐ろしい事を……!!」
「え? えっ?」
『あははっ。恐れ戦いてももう遅いよ蘭ちゃん。分かるでしょ? もうあの人達は人間を捨て、憤怒と憎悪にまみれた怪物なんだよ。私にも止められないし、止まらない。結愛先輩という神を汚し、貶めた邪教徒をその手で葬り去るまではね……さぁ!』
『
ブツッ
放送が途切れる。
「な、なんだったのかな今の……」
「ひまり!! 走るよ!!」
「えっ!?」
あたしは乱暴にひまりの手を取り、急いで非常階段を降りる。
そして一目散に校門に向かって駆け出した。
「ど、どうしたの蘭!? 痛い! 痛いよ!」
「早くしないとマズいんだよ! つぐみのヤツ、そこまでしてあたし達を始末したいのか……! あんな人達に暴れられたらただじゃ済まない。下手したら学校ごと破壊しかねないのに……!」
バゴォォオオオオン!!!
「「!!?」」
何かが飛来し、あたし達の前で轟音と共に地面に着地する。
土煙が晴れると、そこには―――
「■■■■■■……■■■■■■■■!!!!!」
「アハハはぁ……見ィつけたァ……!! アタシの結愛ヲ……汚シタブタ共……ア、アア……アアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「殺っちゃうヨォ? 殺っちゃうヨォ? るるるんってするクライボロボロにナルまで殴りつケテェ……真っ二つニ引き裂いチャウヨォ!!!」
「ふふっ……逃がさないよ。哀れな子羊ちゃん達……フフ、フハハ、フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
四体の怪物が、行く手を阻んでいた。
楽しい(小並感)
どっかでクロスオーバーさせようと思います。どれがいいと思いますか?
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バカとテストと召喚獣
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