六花の思想   作:風梨

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約7000字



転機

 

 

 

「──局長。本当に、『L』がそんなことを……?」

 

「ああ、間違いない。この耳で聞いた。あ、いや。メッセージだから、この目で見た、になるか。……ここだな」

 

 夜神総一郎は『L』から指示されたホテルに足を運んでいた。

『帝東ホテル』

 国内でも有数の非常に豪華なホテルだった。

 

「けど、なんで『L』は急に会うなんて言い出したんですかね? 今までの事件も、誰にも顔すら見せずに解決してきたって聞きましたけど」

 

「……わからん。だが、これは良い傾向かもしれん。私たちが信頼されたということだからな。さすがの『L』も『キラ』という犯罪者相手には今まで通りでは逮捕が叶わないと考えているのだろう。私としても、自分や部下の指揮を執る人間の顔くらいは知っておきたい」

 

「そうですね! ちょっと僕『ワクワク』してきました」

 

「……松田、遊びじゃないんだ。浮ついた気持ちで同行しているなら、ここまでにしておいた方がいい」

 

「す、すみません。局長、僕も同行させてください……」

 

「……はぁ、松田。お前の名前も『L』から出ていた。連れていかない訳にもいかない。だが、そんな気持ちのままで捜査するなら、私から『L』に捜査から外すように願い出る事も考える。いいな?」

 

「はい……」

 

 かなり凹んだように見える部下の姿に、少し言い過ぎたかとも思うが、大事な事だ。

 正しい事を言った、と自らを慰めつつ、ホテルの廊下を進む。

 

 そして、『L』の指定する部屋の前にまで辿り着いた。

 

「……」

 

 ただ無言でドアを叩く。

 すると、内開きのドアが開いた。

 

 その中には、白いロングTシャツを着て、ワンサイズ大きなジーパンをダボっと履いた青年が立っていた。

 青年は片足でもう片方の足をポリポリと掻きながら。

 

「──『L』です」

 

 そう。

 何でもない事のように言った。

 

「──後何名か来られる予定です。お掛けになってお待ちください」

 

 言うや否やスタスタと部屋の奥に進んでしまい、慌てて追いかける。

 

「ま、待ってくれ。私は夜神という、それで──」

 

「僕は松田です」

 

 自分のことを指差しながら、松田が続けた。

 そんな二人を振り返って見つめて、『L』は一言。

 

「そうですか、よろしくお願いします」

 

 ただそれだけ言って、また奥に向かって歩き出した。

 何も語るつもりがなさそうな『L』に話しかけて良いものか。

 そんな内心が滲み出る数十分が経過して、続々とメンバーが部屋に入ってきた。

 

 室内のメンバー全員がソファーに腰掛けて、角砂糖を摘んだまま『L』は言った。

 

「──お待たせしました。改めて……『L』です。後、ここでは『竜崎』と呼んでください。また私が話す内容に関しては一切メモなどを取らず、頭の中に入れてください。これらは用心のためです」

 

 集まったメンバーは以下の通り。

 夜神。

 松田。

 相沢。

 宇生田。

 模木。

 奇しくも『原作』と同じメンバーが呼ばれていた。

 それは『L』の人間観察能力が非常に優れている証拠であり、その結果だった。

 

「ああ、よろしく頼む」

 

 夜神が代表して発言し、『L』が引き続き話す。

 

「皆さんをお呼びしたのは他でもありません。──『キラ』を捕まえるためです。しかし、捜査本部内に蔓延する『キラ』捜査に対する忌避感や抵抗を感じたため、少数精鋭での捜査に切り替えます。メンバーの厳選に関しては、私の独断と偏見です。もしここに選ばれなかった方が居たとしても、それは能力や信頼度が劣っている訳ではなく、単に私が臆病なのだと思ってください。なので、これ以上のメンバーの拡充は現在は予定していません。今後は、ありえるかもしれませんが」

 

 一気にそこまで言い終えた『L』に夜神が尋ねる。

 

「ああ、信頼してくれたことを非常に嬉しく思う。だが、これだけのメンバーで本当に捜査可能なのだろうか?」

 

 素朴な疑問であったが、『L』は何を今更、とでも言いたげに当然のように頷いた。

 

「もちろん、困難でしょう。しかし、『キラ』捜査に関しては人数が居れば何とかなる、という類の事件ではありません。何せ雲を掴むような話ですから、どちらかといえばアイデア量。アイデアの質。そういったところが重要になってきます。ただ、それなら何百人も動員する意味がない」

 

「……確かに、そうだ。ナイフでも刺さってれば洗いようがあるが心臓麻痺だからな……」

 

 腕を組みながら、総一郎はそう思う。

 心臓麻痺。

 しかも自分は手を下さずに人間を殺してしまうことが出来る。

 とんでもない能力だ。

『L』は自らの指を咥えて噛み始めていた。

 何か不安を覚えた時に人が行いそうな動作だった。

 

「正直めちゃくちゃ怖いです。この中にキラがいれば、私は死にますから。しかし、虎穴に入らずんば虎児を得ず。死ぬ危険を犯してでも、皆さんとの信頼関係の構築を優先しました」

 

 その『L』の言葉に、ニワカに活気付くメンバーではあったが、それは『L』の本心ではなかった。

 姿を現したのは、『キラ』逮捕の可能性を僅かでも上げる必要性があると考えたからだった。

 

 でなければ『L』は顔を見せようなどと考えない。

 これは『撒き餌』だ。

 もし今後『キラ』が『L』を邪魔に思うのなら。

 

 あるいは『キラ』に繋がりを持った人間が警察内部に居るのなら、『キラ』がどう思っていようが『L』の顔という情報を求めてこの集まりに参加しようとするはず。殺すつもりがなくとも、捜査状況を把握できれば安全性は確実に増す。

 

『キラ』があまりにもノーガードである理由が、警察関係の情報を得られることができることが根拠なら何も不思議ではない。

 現時点の可能性としては1%もない、極小の可能性。

 しかし、そこに可能性があるなら、『L』は自分の命すらも賭けるつもりだった。

 むしろ自分を殺しに動いてくれたら候補を絞り込めるとすら思っていたが、それが叶う可能性は極めて低そうだった。

 

『L』がそう考えている間に、相沢という男が顎に手を当てながらブツブツと呟いた。

 

「アイデア。アイデアか……。もう『L』──いや、『竜崎』がやった方法でも何もアクションが返ってきませんし。というより、このまま報道を名前だけにしておけば新たな被害は出ないですよね? 対処療法になってしまいますが、一先ずはこのまま様子見でしょうか? 耐えきれなくなった『キラ』が動くかもしれませんし」

 

 少しばかり見当違いの意見を出す相沢に対して、『L』はそういえばまだ『民意』の話を言ってなかったな、と思った。

 しかし同時に、少し考えれば誰でもわかるだろう、とも思っていただけに少し会話のテンポが悪くなったように感じる。

 だが、それを言ってもどうしようもない。

 少数精鋭で行うと自ら宣言した以上は思考レベルを合わせる必要性がある。

 少し面倒に感じながらも口を開いた。

 

「……相沢さん。報道規制は近々やめます。とても続けられませんよ」

 

「ええ!? ど、どうしてですか? 確かに犯罪率は上がりましたが『キラ』による被害はなくなったんです。十分すぎる成果じゃないですか」

 

 随分と驚く。

 そう思いながらも『L』は口を止めない。

 

「……そうです。犯罪率が上がりました。きっと『キラ』が耐えきれなくなるより先に、民衆の声が大きくなるでしょうね。罪のない人間ではなく、罪のある人間を庇うのか、と。人道的にはナンセンスな意見ですが、一度大きくなったその世論は恐らく止まりません。全世界同時に暴動が起きます。そうなれば、我々の一存で報道規制など行えなくなる。──最悪なのが『キラ』を信奉する者が犯す犯罪です。我々が報道規制を行った結果、起きた犯罪。もし『キラ』がこの人物を裁かない、なんてことになれば、大変なことになる。免罪符を得たように国家に対する反逆が蔓延しかねない。この国もですが、先進各国は大半が民主主義国家ですから」

 

「そ、それはそうですが。報道すれば死ぬとわかって報道するしかないなんて……」

 

「報道の自由を認めていない、と言われてしまえばその通りですから。どうせ長くは維持出来ないだろうと思ってました。別にそれで構いません。確かめたい事はもう確かめられましたし」

 

「……この間言っていた事か」

 

 夜神が言ったその言葉に、『L』は頷きを返した。

 

「そうです。『キラ』の思想を把握する必要がありました。そして警察関係者を殺す意思がない事も。……中々肝が据わってます。捕まえる寸前まで行けば変わるかもしれませんが、少なくとも臆病者じゃなさそうです」

 

「……くそ!! なら、今後どうするんだ? また犯罪者が殺されていくのを指を咥えて見てろっていうのか?」

 

「地域別に犯罪者報道を変えてみる、などはありますが。もし『キラ』がテレビから情報を得ているならさらに詳しい位置が把握できます」

 

「おお、それはいい!」

 

「しかし、これまでの経緯を見るに私が初めて『キラ』を挑発した後から、インターネットでしか情報を集めていないような印象を受けます。あまり効果的ではないかもしれませんね」

 

「……ぐっ!! ……そうだ。犯罪者の情報を紙媒体にして貼り出すのみにして、キラが来るのを待つ、とかどうでしょう」

 

「論外です。キラ本人が来ずとも、支援者に写真を取らせさえすれば、それだけで『キラ』が現地に来る必要がなくなります。というより、支援者などおらずとも、一般人が勝手に写真をインターネットにアップロードするでしょう」

 

 断言するような『L』の言葉に、相沢は尻すぼみになりながらも反論する。

 しかし、言葉に力はなかった。

 

「……いや、そこはほら、持ち込み禁止にして監視するとか……」

 

「どれだけの人間が来訪するかもわからない多目的のホールを借りて、それを整理する人員を用意して、そこまでする必要があるかは疑問が残ります、というか、私なら絶対にそんな場所にはいかない。キラが絶対にこない罠を置いている以上、誘い込もうとするだけ無意味です。罠というのは、罠だと気がつかれては意味がありません。相手は獣じゃないんですよ? いや、獣だって罠に気がつけば避けます。相沢さん、あなた、目の前に落とし穴があるのにその上を通るんですか?」

 

「……あ、はい。すみません……」

 

 意気消沈した様子の相沢を見て、夜神が思わずといった風にフォローする。

 ポンポンと肩を叩き、元気付けるように。

 

「だ、だが、『キラ』がそこまで考えないかもしれないじゃないか。やってみるだけやってみるのは、アリだと私は思うぞ」

 

「局長……」

 

 ジーンと響いたような表情で上司を見つめる相沢の姿にも、『L』は特に反応を見せない。

 つまらなそうにジト目を向けていた。

 

「……そーですね。相手がバカであることを期待して、罠でもおいてみますか?」

 

「……いや、まあ、身も蓋もないが、そうなるか……」

 

「ロジックがない。もしもそんなバカな罠に引っかかって『キラ』が捕まるなら、私はしばらく放心して何も手がつかない状態になること間違いありません。とゆーか、それはちょっと『キラ』が許せない。……まぁありえないと思います。何故なら、今回の『顔写真』を報道規制する行動は『キラ』がどこまで考察できるのか、という思考レベルのテストも兼ねてます。そして『キラ』は何の反応も示さなかった。……少なくともバカではないと、私は考えます。なので、直接手を下さずに殺せる、という『アドバンテージ』を相手から捨てさせるような、そんな魅力的な罠があれば嬉しい」

 

「……まさか『竜崎』」

 

 気がついてしまった、と言わんばかりの夜神の反応に、『ゲンナリ』しながら『L』が反応する。

 そこまで露骨な反応をされれば他のメンバーも分かってしまうだろう。

 こうなれば開示してもしなくとも変わらない。

 ため息を隠しつつ言葉を続けた。

 

「……夜神さん。あの、今言ったばかりですけど。気付かれたら意味が半減します。まぁはい。私自身が囮です。これなら罠とバレたとしても、確認しに来る価値がありますから」

 

「うっ! す、すまん……。偽物なのか?」

 

「いえ、本物です。だから私も怖い。皆さんと一緒です。なので、こんなふうに『L』と会える、ぐらいの魅力的な罠を用意してもらわないと」

 

「……。そうか、そうだな。『竜崎』が命を懸けた作戦を実施しているんだ。私たちもそれに匹敵するぐらいの何かを思いつかねば……」

 

「あればいいですね、是非聞いてみたい」

 

 そこで、松田が手を上げて恐る恐る言った。

 

「……。あ、あのー、聞いても良いですか」

 

「だめです」

 

「ええ……」

 

 引きつった笑みを浮かべる松田に、『L』が少しため息を吐きながら続けた。

 瞳をキラキラさせながらしようとした質問だ。

 きっと『キラ』の考察が聞きたいとかそんなところだろう、と思いながら問いかけた。 

 

「どうせくだらないことでしょう。……なんですか」

 

「いや、キラの事をどのくらい把握してるのかと思って。僕たちの考えでは、非常に老練な男性じゃないかって話してたんですけど」

 

「……。あ、そうですか。合っているといいですね」

 

 予想に漏れずだった。

 そう思いニベもない返事になってしまった。

 

 話してもあまり意味のないプロファイルしか、『L』にも出来ていない。

 ようやく集まった最低限の情報。

 そこから見えてくる『キラ』像はとてもではないが、誰かに語りたい類の話題ではなかった。

 何せ強敵である、と言うようなものだから。

 

「そうだな。ぜひ聞いてみたい。『竜崎』、教えてもらえないか? そこから何か私たちも意見が出せるかもしれない」

 

「あ、ああ! そうですね、竜崎の推理力は非常に頼りになる、私たちが気づいていない部分を指摘してくれる気がする」

 

 相沢がそう続け、キラキラと目を輝かせ始めたメンバーに対して、『L』はこの調子なら士気が下がる事もないか、と思い直し口を開いた。

 

「……。私が思うに、キラは単独犯です。集団であるというにはあまりに死因や時間、思想にばらつきがない。あっても少人数の集団ですね。かなりの意思統一ができているはずです。そして、老練な男性、ということですが。その考えは捨てた方がいいでしょう」

 

「な、なぜだ?」

 

「もし本当に老練なら、キラになんてなっていないからです。自分のためだけにその能力を使った方がずっと利口だ。つまり、『キラ』はバカです」

 

 堂々と言い放ったその言葉に、夜神が少し困惑しながら言う。

 

「……おい、竜崎。さっきバカならやる気なくすとか言ってたじゃないか」

 

「先ほどのバカはアホ、という意味ですが、今回のバカは、頭の悪さを意味しないバカです。……目の前に転がっているメリットに見向きもせず、非効率で、普通なら無意味と思うような非生産的な行動に出ている。これをバカと言わずしてどうするんですか」

 

「……犯罪率の抑止、十分な動機だと思うが」

 

『L』は夜神のその言葉に首を横に振って答えた。

 

「だとするなら、あまりにもバカです。人間の身で、神の所行に手を伸ばそうとしている。身の程知らずの馬鹿野郎です」

 

 身の程知らずの馬鹿野郎。

 そう言われるとそうとしか思えなくなる。

 夜神総一郎は腕を組んで唸る。

 さすがは『L』だ。

 これほど的確に『キラ』を言い表せる事にやはり有能な人物だ、と評価を改めて上げた。

 

「……ううむ、そう言われると、確かにそうだ」

 

「キラは恐らくまともな思考回路をしていません。尋常でないほどの犯罪者に対する恨み。あるいは、現実が見えてなさすぎる理想主義者。ざっくり言うならこんな感じでしょう。まったく無意味なプロファイルです」

 

 しかし、ここまで的確に予想しながら無意味と言い放つ『L』に困惑する。

 なので、夜神は感謝を伝えるためにも言葉を続けた。

 

「……いや、少なくとも私たちの中にはなかった意見だ。十分ためになると思うが」

 

 しかし、『L』には響かない。

 何せ作り上げた『キラ』というプロファイルから、新たな策を思いつけない程度の低レベルの出来でしかないからだ。

 むしろこの程度でしかないと、自らの恥部を晒すかのようで、あまり話していたい類の話ではなかった。

 なのでちょっと不機嫌だった。

 

「……あぁそうですか、それはよかったです」

 

 そんな『L』の内面に逸早く感づいた松田が、少し空元気に声を上げた。

 天然な松田らしい明るい声だった。

 

「で、でも、さすが『竜崎』ですよね。こんなに鋭い意見をポンポンと」

 

 相沢もそれに乗っかる。

 

「あ、ああ、そうだな。さすが世界を股にかけてきただけのことはある」

 

 結構『L』も単純だった。

 少し気分を良くして言葉を続ける。

 

「付け加えるなら、私には、歯車になろうとしているようにも感じました」

 

「……歯車?」

 

「そうです、自分の意思は介在せず、ルールにだけ従って動くような、ただの歯車です。ロボットならもう少し自律してますが、それすらない。決められたルールをただただ守るだけの、回り続けるだけの歯車。……あれだけ挑発しても動かない。感性が少しでも残ってるなら、自分のご立派な思想を否定されれば、多少なり反応を引き出せると思ったんですが。……予想が外れましたね。『キラ』は一筋縄ではいかない相手です。もしかすれば、本当に神様かもしれませんね」

 

 半ば冗談として、そう言った。

 本当に神様ならどれだけ良かった事か。

 そんな思いも滲んでいた。

 

「……竜崎、冗談でもそんなこといってくれるな、神様なら捕まえようがないじゃないか」

 

「ええ、そうです。冗談です。私も本当にそう思ってる訳ではありません。……安心して下さい。キラは人間ですし、捕まえられます。間違いなく」

 

「それは、また根拠のある話なのだろうか?」

 

 夜神のその言葉に、『L』は今まで調べてきた情報の一部を開示した。

『キラ』事件が起こった当初から追っていた件だ。

 

「……冤罪率を調べました」

 

「冤罪?」

 

「そうです。今日までに死亡した犯罪者たちの捜査資料を可能な限り全て確認したところ、数件ですが、冤罪を見つけることができました」

 

 冤罪。

 そんなことが許されるわけがない。

 思わず立ち上がって松田が叫んだ。

 

「そ、それって大問題じゃないですか!!」

 

 間髪入れずに『L』がボヤいた。

 

「松田さん、黙って話を聞けませんか」

 

「……はい……」

 

 しおしおと松田が座り直した。

『L』は構わず言葉を続ける。

 

「つまり、キラは人間です。神様なら冤罪で裁きを下すわけがありませんから」

 

『キラ』は人間。

 捕まえられる。

 その『L』の力強い言葉に勇気づけられ、夜神は声を大きくした。

 

「……そうか、そうだな! よし、人間なら捕まえられる! 私たちでなんとしても『キラ』を捕まえてやろう!」

 

「ええ、そうですね! 局長! お供します!」

 

 相沢が続き。

 

「ぼ、僕もがんばります!」

 

 松田も続いた。

 

「ああ、オレもやる気が出てきた」

 

 そして宇生田も。

 

「あ、宇生田さんいたんですね」

 

 ポロっとこぼれた松田の本音に対して、宇生田は青筋を浮かべて唸った。

 

「……ま・つ・だ! 俺はお前の先輩だぞ……!」

 

「す、すみません……」

 

「がんばりましょう」

 

 最後に模木がそう締めて。

 そんな会話をしながら、初めての顔合わせの時間は過ぎて行った。

 

 

 

「──ん?」

 

 その日、夜神月は何となく雑誌売り場を歩いていた。

 そして、一つの雑誌の表紙に目が留まる。

 どこかで見たことのある女性が、清楚な冬服を着こなしてポーズを決めながら微笑んでいた。

 非常に美しいと月ですら思う女性だった。

 見た目が整っているのはもちろんだが、それ以上に何か、人を惹きつける何かを感じた。

 

 手にとってよくよく確認してみる。

 雑誌の名前は『エイティーン』。

 10代後半の女性向けファッション雑誌のようだった。

 普段であれば、どんなに美人であれ、そんな雑誌を月が手に取る事はない。

 

 だが、その人物を思い出した時。

 月は思わず出そうになる声を抑えるために、必死で口元を覆っていた。

 

(……な、何やってるんだコイツ……!!)

 

 その人物こそ。

 以前月に『黒いノート』を落とした、と告げて持って行った人物。

 表紙の上から、弥海砂が透明感のある微笑みで月を見つめていた。

 

 

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