六花の思想   作:風梨

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約2000字
本日2話目



頭脳戦

「──『竜崎』こっちを見てくれ」

 

「何か見つけましたか、月くん」

 

 捜査開始から、二人が打ち解け合うのに時間は掛からなかった。

 元々が非常に高度な頭脳を持つ二人だ。

 お互いがお互いに認め合うのも時間の問題であり、一度認め合えばその連携はその他大勢が居ても、とてもではないが太刀打ちできない結果を次々と打ち出し始めていた。

 

「前に言ったが、ヨツバグループ。レベルE。ヨルムンガンド。アンブレラ。西日本グループ。この5つの会社に有利な死が多すぎる。それは心臓麻痺に止まらず、事故死や病死にも及んでいそうだ」

 

 世界有数と呼べる大企業。

 それらに対する有利な死の数は、もはや目を覆いたくなるほどの量にまで増えていた。

 歯噛みしながら『L』は呟いた。

 

「……多いですね。さすがにこの量は想定外です。『キラ』は本当に殺しを請け負い始めたんでしょうか」

 

『L』のその意見に、月は真剣な表情で考え込んだ。

 その結論としては、そうではない、という意見。

 何故なら、数があまりにも多すぎる。

 まるで気付いてくれと言わんばかりの量。

 

「どうかな、ここまで広範囲だとそう考えるのが自然だが。しかしここまでして気がつかれない筈がない。こいつはバレる前提で動いていると思っていいくらい、派手に動いてる」

 

「そうですね。手当たり次第、といった感じでしょう。となれば、もしかすればダミーとしてミスリードで用意している企業が大半かもしれませんね」

 

「ああ、その可能性が高い。この内のどれかに捜査のメスが入れば、途端に何か変化が起きそうな気がする。『竜崎』じゃないが、『第二のキラ』は釣りが趣味みたいだな」

 

 その言葉にはトゲがある。

 以前『L』の姿を晒した理由に関しての考察を行った際。

 夜神月は容易に『L』の狙いを看破した。

 その事を言っているのだろう。

 だが、『第二のキラ』と同一に扱われるのは気持ち良くない。

 

「……月くん。確かに私は自分の姿を囮にしていますが、同じにされるのは少し心外です。ここまで節操なしじゃありませんよ」

 

「あはは、悪い。わかってるよ。けど、コイツはそうじゃないらしい。こちらからのアクションを待って、『L』の手掛かりを集めようとしている。僕はそう感じる」

 

「同意見ですね。『第二のキラ』は思想犯というより、『金』が目的でしょう。ならば自分を捕まえようとする者は殺す。つまり、『L』が邪魔だから殺す。そういう判断に至っても不思議はありません。……ここからは慎重を期す必要がありそうです」

 

「ああ、僕も同じ意見だ。けど、どうする? さすがにここまで広範囲に広がってると手の出しようがないぞ」

 

「少数精鋭であることが、ここに来て不利になりましたね。……場合によってはFBIなどに協力を要請する必要がありそうです。この状況で、本部の人間を増やすわけにはいきませんから」

 

「大丈夫か? 今回のキラは、恐らく警察関係者でも容赦なく殺す。もし捜査員が死んだ、なんてことになれば批判は免れないし、何より僕はそんな報告を聞くなんて嫌だ」

 

「大丈夫なように、しっかりと防諜などを行いましょう。安心してください、FBI捜査官には優秀な人材が揃っています」

 

 真剣に見つめてくる『L』の姿に、月も頷きで返した。

 本気で『竜崎』は動くであろう、ということが目を見ればわかる。

 こいつは頭がおかしいが、それでも負けず嫌いで正義感が強い。

 無闇に捜査員を失うような指示は出さないだろう。

 そのくらいの信頼関係は既に構築していた。

 

「……わかった。そっちは『竜崎』に任せるよ。僕は、死因に関わらずこの5つの会社にとって有利な死を改めて洗い直してみる。何か新しい発見があるかもしれない」

 

「はい、そちらも必要になります。……心臓麻痺以外に殺せる可能性。そして『キラ』が初めに開示した死の前の行動を操る事が可能という事実。……中々に厄介ですね」

 

「その辺りも含めて、不自然な点がないか調べてみよう。大丈夫、こういうデータ関係に僕は強いんだ」

 

「月くんなら、何でも出来ちゃいそうですけどね。頼みました。私は、先ほどの件を相談してきます」

 

 本来ならば『キラ』と『L』という関係の二人は、今現在『第二のキラ』という同じ目標に対して協力し合っていた。

 その相乗効果は恐らく、この世界での最高峰に容易に至るほどの強力なタッグだった。

 

 そんな二人でも苦戦を免れない『第二のキラ』の動き。

 それは間違いなく、本来の歴史にある『ヨツバキラ』とは明らかに異なっている。

 自らの計画を遂行するため、弥海砂の用意した戦略は今現在の時点では予定から大きく外れる事なく推移していた。

 

 

 

 レムは、新たなデスノートの持ち主の後ろに立ちながら忠実に海砂の命令に従っていた。

 

 デスノートに触れた人間に死神が見える。

 その仕組みは非常に単純だ。

 二冊のデスノートがあれば、今回夜神月にリュークを見えなくしたように小細工が可能だった。

 

 つまり、AとBのノートが存在し、リュークの憑いたAというノート。そしてレムの憑いたBというノート。

 この二つを、所有権を一度破棄し。

 それぞれの憑くノートを入れ替えてしまえば、Aというノートにレムが憑いた事になり、夜神月が見える死神はAのノートに憑いた死神となる。

 つまり、Bというノートに触れたことがないために、夜神月から現在Bのノートに憑いているリュークの姿は見えなくなる。

 代わりにレムの姿が見えるようになる、という『カラクリ』だった。

 

 しかし、デートをしている時。

 海砂の頭上に浮かんでいたのはリュークではなく、レムだった。

 

 そしてリュークが何をしていたかと言えば、あの時点では破棄されたノートの近くで待機していた。

 夜神月と弥海砂の交際開始を見届けてから、上記の交換作業を行ってリュークの姿を見えなくして。

 その後に新たなデスノート所持者を探しに移動を開始した。

 

 元々抱いていた海砂を見守るという意地。

 そして、1年近い期間を共にした事で抱いた海砂への好感度。

 その二つが相乗してレムは『原作』よりも深い愛情を弥海砂に対して抱くに至っていた。

 

 それが何を意味するのか、今はまだ弥海砂しか知らない。

 

 ある人物を指定した上で、デスノートを預ける。

 目の取引をしてはいけない。

『キラ』の基準で裁きを行わせ、警察関係者を殺しても構わない。

 そして。

 絶対にレムがデスノート所持者を殺してはならない。

 最低5年間。捕まらずに裁きを続けてほしい。

 そのために『L』を撹乱する策も授けていた。

 最後に、絶対に夜神月に姿を見られてはならない。

 

 この条件を、レムは海砂のためになるのならと忠実に守っていた。

 何せ新しく憑いた人間は、海砂の純粋さと比べれば見る影もない程に醜い。

 この人間に憑いているだけで、海砂への好感度がまた上がるほどだった。

 

 レムは海砂の思想を知らない。

 もし知っていれば海砂から離れることはなかっただろう。

 どんな方法を使ったとしても止めた筈だった。

 

 だが、今現在海砂に憑いているリュークは海砂のその思想を聞かされていた。

 その上で面白そうに笑いながら同意した。

 全ては5年以上後の話。

 弥海砂は、計画通りに事態が推移すると確信を持って微笑んでいた。

 

 

 

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