電子音が流れる、無機質な部屋だった。
PC画面の明滅が照らし出す、この部屋の主人は不健康に目の下に隈を作りながら何事かをカタカタと調べている。
部屋には幾つものディスプレイがあった。
それこそ、一人ではとても管理し切れない、見切れない量のモニターがそこら中に設置されている。
それを見ているのか、見ていないのか。
部屋の主人はカタカタとキーボードを叩いている。
その内の一つのモニターが灯って形象された『W』という文字が浮かび上がった。
男性の声が付属されたスピーカーから流れる。
「──『L』、何かありましたか?」
「ああ、ワタリ。面白い事件が起こった」
不健康な男はその声に応じて口を開いた。
まるで子供のように、おもちゃを手に入れたばかりのように、無邪気な声で。
「どうやらこれは殺人事件らしい。世界同時多発。同手口。一体どんな『カラクリ』で実行しているのか、あるいは組織なのか。私にもまるで見当がつかない。面白い」
「……ああ、アレですか。しかし、そんなことが本当に人間に実現可能なので?」
「人間に可能か、不可能か。ワタリ、ありがとう。非常に興味深い質問だ。ただ今私が言えるのは、実際にこれが起きているという事実です。これは動かない真実だ。だからこそ面白い」
『L』はワクワクとした表情を隠すこともせず、人差し指を咥えて笑った。
今までの事件とはスケールが違う。
確認できているだけで、既に20件以上。
死刑を宣告された凶悪犯罪者が毎日同時刻に『心臓麻痺』で死亡している。
このペースなら今後もっと増えるだろう。
「仰る通りです、つまらない質問をしました」
「いえ、本当に良い質問でした。皮肉なんかじゃありませんよ。あなたの観点は非常に私のタメになる。是非そのままで」
「……畏まりました。それで、私も動きましょうか?」
ワタリのその言葉に『L』は間髪入れずに同意した。
「お願いします。欲しいのは、そうですね。可能な限りありったけの、死亡した死刑囚の捜査資料です。冤罪が無いかどうか、私が片っ端から調べます」
「畏まりました。早急に情報を集めてお送りします」
「頼みました。……しかし、本当に面白い事件だ。こんなことが、本当に、人間に可能なのか? 神か悪魔にでも魂を売ったか? ……やはり、面白い」
「最近『L』は退屈されていましたから、良かった、と私は思えば良いのでしょうか」
「是非、そう思ってください。この事件は私が解決します」
「畏まりました。私も、またいつものように全力でサポート致します」
「はい。よろしくお願いします」
世界最高峰の名探偵。
『L』が、静かに動き始めた。