『──しかし、そんな事は……お前を捕まえればわかる事だ!! 必ず、お前を捜し出して始末する!! 私が、正義だ。また会おう、『キラ』』
テレビ画面から流れる音声は、それっきり途絶えた。
『ザーザー』と砂嵐が映し出されるテレビ画面の電源を切って、夜神月は片手で口元を覆いながらクツクツと笑い始めた。
「ははっ、『L』。そう、『L』か。お前も『キラ』を見つけたいのか。──奇遇だな、僕もだ」
天気の良い窓の外を眺めながら、月は思考を回していく。
立ち上がったまま、室内を歩き回る。
関東圏内に居る。
『L』が言ったのは『キラ』に圧力を掛けるためだ。
虚偽の情報である可能性は非常に低い。
少なくとも奴はそう確信してる。
正直、替え玉を用意して自分の名前を名乗らせる、という方法はスマートじゃないから嫌いだが、場所を特定したという意味では有効な方法だったのだろう。
加えて本当に『キラ』が『超能力』染みた能力を持っていることまでわざわざ証明してくれた。
これで月も推測を重ねず、そういう能力があるという前提で動くことができる。
だが、まだ疑問もある。『キラ』は、『L』を犯罪者として見做さなかったから『殺さなかった』のか。それとも殺す条件が整わず『殺せなかった』のか。
イマイチ判断に困るところだというのが、難点だが。
何せ『LIND.L.TAILOR』は蓋を開けてみれば犯罪者だった。
つまり、『キラ』が自分を追ってくる警察関係者を殺すのか、殺さないのか、まだ不透明ということでもある。
もしも犯罪者以外は絶対に殺さないというルールを決めているのであれば、それはアドバンテージとして使うことができる。
そして。
もしそんな思想を持っているのだとしたら、正しく神の所業だ。
超人などというレベルの話じゃない。
だが、邪魔者すら殺さず、目的を達し続けることができたなら。
『キラ』を信奉する者も加速度的に増えるだろう。
もちろん、捕まる危険性も高まるが、『キラ』はその辺りをどう想定しているのだろうか。
「……面白くなってきた」
夜神月は無意識のうちに『キラ』を自らと同格にまで引き上げていた。
もし自分が『キラ』だったなら、という思考実験の結果として理解した。
精神と命を犠牲にしなければ達成困難な道を進む『キラ』に対して、リスペクトに近い感情すら抱いている。
夜神月の人生の中で、自らと同格の存在というのは、今まで出会った事がなかった。
天才故の苦悩である。
そのために本人も無意識の内に『キラ』に対して非常に強い執着心、興味を抱いていた。
そしてさらに月は『L』という存在を知った。
死刑囚をテレビ出演させるような人間だ。
まともな人間じゃない。
どれだけ言い繕っても、絶対に頭がおかしい。
月なら死刑囚を使っての方法は思いついただろうが、それでも実行まではしない。
クレイジーである。
先にも言ったが、自らと同格の存在というのは、今まで出会った事がない。
まず確定として一人。
『キラ』だ。
そしてさらにもう一人。
『L』だ。
月の強い自尊心は自らがその二人に劣っているとは思わせなかった。
むしろ自分こそがその二人を超えているとすら思っていた。
だからだろう。
自分も『キラ』を見つけてやる、だなんて思ったのは。
こんな面白い事件を前にして、月が止まる事はありえない。
思い立ったが吉日とばかりに月は今までの『キラ』事件の詳細を纏めるため、パソコンを起動した。
どっちが先に『キラ』を見つけるか、勝負だ。
そう思いながら、月は今まで感じていた退屈など忘れたように、少年のように瞳を『キラキラ』と輝かせた。