漂流傭兵小噺~なんで右も左もケモ耳ばっかなんだ、いやそんなことよりまずはカネだ龍門幣だ!~   作:ラジオ・K

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 新イベ、楽しみですね。この日の為に貯めた石……今こそ解き放つ!

 集計期間がどの程度かイマイチ解りませんが本日の11時時点で、「アークナイツ」週間UA数がトップとなっています。
 初の二次創作でここまで健闘できるとは全くの予想外でした。
 皆様のご愛読に感謝を!


デリヴァのせつめいしょ

■■の●

 

 そこは、昏く、冷たい。

 そこは、流れる、圧力が、満ちる、

 この大地が生誕して以来、積り積もった悪意のように。

 ドロドロの(おり)が、何もかも押しつぶす。

 適応し、進化できた■■ボー■以外、拒み通す。

 

 

 そんな場所で、「彼」は起きた。未発達の口からは高濃度の潮が吐き出される。陸人にとっては、この上ない毒となるものだ。

 先民(エーシェンツ)で言うところの「鼻」に相当する器官を膨らませ、辺りを、嗅ぐ。

 

 言葉を発する。失敗する。

 言葉を発する。 失敗する。

 ■ェ■■■を発する。   成功する。

 

 「彼」は感じた。■■■の断片を。だがよく場所が特定できない。

 会いたい。逢いたい。その言葉を聞かねば。最期の。

 

 「彼」は上体を起こした。

 


 

 

前回までのあらすじ!

 

 酒は人生の潤滑油なり!

 以上。

 

あ、あと(タコ)美味しかったです。

 

 

 

 

 

 

 

次の日の朝、マルヴィエント郊外にて

 

 

「さて、始めるか」

「はい! よろしくお願いします!」

 

 デリヴァ()とアイリーニは約10メートル程離れて向き合う。その姿はまるで決闘のよう。アイリーニの手には細身のブロードソードが。対して俺は──何もない、素手だ。

 

「では、参ります!

 

 アイリーニが一陣の風と化す。俺はその軌道を見切り、(かわ)す! あの時と違い、アイリーニは決して焦らない。様々なパターンで俺に攻撃を仕掛ける。単に一直線(突撃)ではなく、時にフェイントを。時に時間差を、早く、遅く。

 

 何をしてるかって? 見ての通り、アイリーニの特訓に付き合ってるのさ。昨晩の、というか一昨日アイリーニと飲んだ際、剣の特訓に付き合う約束をしたらしい。それだけでは俺には何のメリットもないと思うかもしれない。

 だが、あるのだ。彼女曰く──

 

「付き合ってくれたらご飯おごりますよ?」

よしまかせろ

 

 というわけ。いや、もちろんそれだけではない。一応、もう1つ理由があるのだ。それは──

 

 

「よし、そろそろ俺の番かな」

「! わかりました。では、どこからでもかかってきてください!」

 

 攻守逆転。次は俺からアイリーニへ攻撃を仕掛ける。俺の謎の力を使いつつ。

 

「──ッ、いざ喰らってみるとよくわかります。反則(チート)ですよそんなの!」

「そうでもない、さ! 実際頭の中は大忙しだ!」

軽口叩く癖によく言う!

 

 次々と()()()()()()()()()()に翻弄されるアイリーニ。

 

 

 

 マルヴィエントに来るまでの日々、先日の蛸魚(タコたま)討伐戦などを通して、ようやく俺は自身に宿る謎の力を把握することができた。

 

 それはいうならば「アイテムボックス」だ。もっとわかりやすく? そうだな……某国民的アニメに登場するネコ型ロボット、それが持ってるなんちゃらポケットってやつ。それが実体としてどこにあるかはわからんが、その中に格納されているものを俺は何時でも召喚できるというわけ。

 召喚範囲は自身より半径2メートル程度というところか。

 

 この力、生活面で大変役に立つのは言うまでもないだろうが、戦闘面においても大変役に立つ。例えば。

 

「くっ!」

 

 剣同士の鍔迫り合いは分が悪いとみたアイリーニは後ろへとバックステップ。距離を取ろうとするが──そうはいかない。俺は剣を前方へと突き出す。その行動(モーション)中に、一瞬にして剣は消え失せ、()()()()()

 剣の刺突だと思っていたアイリーニは想定外の強力な槍の刺突を、予想より()()()()で受け、思いっ切り吹き飛ぶ。

 

「ちょっと、もう少し手加減しなさい!」

「うっ、すまんすまん」

 

 彼女に手を貸し、起き上がらせる。いくら双方が刃を落とした訓練用の武器とはいえ、当たりどころが悪ければ怪我をする。相手を怪我させるところだったということは、俺もまだまだってことだな。

 

 こういった訓練を更に1時間程続けた。

 そして一休み。

 

 

 虚空より青い電気ケトルを召喚。あ、別にカップ麵を作るわけではないぞ。不健康だしな。夜中に食べるのはやめよう! おっと、話がズレちまったぜ。

 更にコップを2つ召喚。ケトル内の紅茶を入れ、アイリーニに振舞う。

 

「ほれ、お疲れ様」

「……ありがとうございます。そのアーツ、ホント便利ですよね。羨ましいです」

「あーこれ? 確かアーツというのはアーツ学とかいうものを勉強して、更に道具を使って扱うものなんだろう? でも俺はアーツ学なんて知らんし」

「確か記憶喪失と言っていましたよね。昔その分野の天才であったという説は」

「多分ないなぁ。そのアーツロッド? とかユニット? というのも持ってないし」

 

 その答えに少し考え込むアイリーニ。

 

「聞いたことがあります。この大地にはアーツに頼らずとも、未解明(謎の)原理で似たような術を使う者がいると。俗に異能と呼ばれているものです」

「何という中二病的単語よ」

「その中二病とかいうの、何なんです? 初めてあった時もそうでしたが」

 

 ジト目でこちらを見る。アイリーニ。この無駄に「そそられる」単語がわからぬとは……これより、哀しみが、あるぞ。

 

「まあそれよりも。その理屈だと俺は『異能力者』ということになるのか?」

「多分ですけど」

 

 2人揃って首を傾げる。どこかで鳥が鳴いた。

 

「ところで、私の剣術はどうでした?」

「そうだな、何のかんのいってパターンがかなり単調だな。あれだと動きの速さに慣れれば避けやすい」

「そうですか……至高の術(デストレッツァ)の道はまだまだですね」

 

 そういって悲しげに目を伏せる。うーん、何かアドバイスをしてやりたいが……俺の戦闘技術は殆ど記憶を失う前、体が覚えているという感じだ。なんでそのまま教えようとすると出来の悪い根性論か何かになってしまう気がする。

「どうしてそこで諦めるんだ! もっとおれの動きを見ろ!」みたいな。……みたいな? 何このイメージ。

 

 ん、そうだ!

 

「その至高の術(デストレッツァ)というのが何なのかわからないが、修めた者は強いんだろう?」

「もちろんです! イベリア人剣士の多くは様々な流派を取得しますが、最終目標はその至高の術(デストレッツァ)なのですから」

「ふーむ、多分だが。アイリーニの技がスピードと突きに特化しているのは、至高=1つを極めると考えているからじゃないか?」

「!! ……そうですね、確かにそう考えています」

「だが余程なレベルでない限り、俺のように見切られるのがオチだ。ならば……様々なやり方で相手を翻弄して打ち勝つというのも1つの方法だと思うんだが」

 

 その言葉に暫く考え込むアイリーニ。その顔が上がった時、目は輝いていた。

 

「その言葉、一理ありますね。そして……」

「そして?」

「目の前に様々な武器を扱う、よい練習相手がいます! さぁもう休憩は終わりです私の至高の術(デストレッツァ)の為に踏み台となってもらいましょう!」

 

 何ということでしょう! 俺の負担が増えてしまうではありませんか!

 こうして特訓は日が沈むまで続くのだった。

 

 

 ちなみに。至高の術(デストレッツァ)を修めた人に師事するのは? という俺の疑問についてアイリーニ曰く、かつてイベリアに住むとあるエーギル人の男性がいたというが、少し前に出国してしまったのだそう。物事、中々タイミングよくいかないものだな。

 

 

 

 

 

 こうしてマルヴィエントでの日々は続く。

 一週間が経過する頃には、俺の行動パターンも決まってきた。とはいっても大したことじゃない。アズリウスとひと狩り行くか、アイリーニと剣術の特訓……もとい(まと)となるか。あとは偶にウィスパーレインの診療所のお手伝いをするとか。会計とかだな。

 残りの時間は情報収集のお時間だ。

 

 そして太陽がお隠れになった時刻となり。

 粗末なテーブルの上にペンとメモ帳。たまにブツリと消えるランプに悪戦苦闘しながら、今日わかった事を纏める。

 

 

 

 マルヴィエントに来てから10日目。

 今日はトランスポーター達が集まるという建物に行ってみた。1人もいなかったのだがな! 付近の住民によると、数か月前に大規模な隊商が出発して以来、この都市と外国とのつながりはないそう。多分例外が俺なのだろうか?

 鎖国状態のイベリアから外に出るには方法が2つ。隊商の護衛として雇われくっついていくか(運賃を払って「荷物」としてもらう方法もアリか)、自力で突破するか。

 この世界の知識がまだまだ不足する俺に、後者は論外だろう。有効な「足」もないことだし。

 だが、聞くところによると次の隊商が来るのは未定なのだとか。

 困ったな。このままだと永遠に釘付けだ。グレイディーアがいるロドス・アイランドという組織にたどり着けない……。なお、この組織について知っている人はいなかった。アズリウスやウィスパーレインも含めて。有名ではないのか?

 

 

 よし、こんなものだろう。住民によると数か月前にここを離れた隊商の中に巨大なドローンガン(電波銃)を抱えた、下半身が不自由なエーギル人の女性がいたのだとか。どうも機械いじりが得意そうだと言っていたから、技術者だろうか。

 

 その人がもしまだ居れば、このバイクとか修理してもらえると思ったのに。まぁガソリンとかの問題があるからそう上手くいかないかもしれないが。そう思いながら虚空よりバイクの先っぽを召喚。眺める。

 

 これは数日前だったかな。アイリーニとの特訓中に斧と間違えて出したものだ。「殺す気ですか!?」とめっちゃ怒られた。危うくバイクでもって押しつぶすところだったし……気をつけないと。

 俺のアイテムボックスにはこんな感じに使えないものも多数あるようだ。例えばタライとか。なんでやねん。

 

 

 さて、そろそろ寝るとしますか。疲れた体をベッドに投げ出す。ギシリ、と軋んだ。

 そういえば、例の()()()()()()()()のこと、またも聞きそびれていた……ま、いいっか。また明日で……ZZZzzz……。

 

 


 

深■の底

 

 「彼」は困っていた。どうしてもを感じることが出来ないので囚われている■■■を感知できないのだ。そして数日悩んだ末、決めた。

 あの付近を掃除すればいい。■■■はその程度で、死ぬわけないから、探すのも簡単だ。

 赤目を出し入れしながら彼は早速行動に移した。

 

 「彼」は口もないのに吠えた。言葉はない。だが、配下の魚たちは、何をすべきか即座に理解した。次々と()へ、泳いでいく。

 「彼」は吠える。

 征け、恐魚どもよ、純粋な、世代交代の進化どもよ、■■■を見つけるのだ!

 

 その時に発生した振動は、うねりとなり、圧力の(おり)に波紋を刻む。

 そして、恐るべき速さで恐魚を押し出しながら()へと飛び出す!

 そして、災厄が解放された。

 


 

 

 俺は突然、跳ね起きた。何かとても悪い夢を見ていた気がする。肌寒いと思って体を見下ろすと寝汗でびっしょりと濡れていた。

 まるで海から陸に上がってきたみたいに。

 更に首の後ろに違和感を感じ、触るとアヌーラの特徴たる鱗がざわめくように熱を帯びていた。

 何かを警告するように。

 

「何だ、何かイヤな予感が……なんだ、これは」

 

 俺は気づく。揺れているのだ。カタカタと。

 ランプが、ベッドが、窓枠が、この部屋が、建物が、大地が。

 

 どんどん、どんどん、どんどん強く強く強く──

 

 この現象、まさか。

 

 俺はこの世界で、初めて「それ」の洗礼を受けることになる。

 

 




アークナイツWikiや考察記事を片っ端から眺める筆者を見て
 ソーンズ
 「ああ……この資料、確かに役に立つところもある」
 グラウコス
 「うーん?あ、なるほど、そういうことですか。わかりました」
 筆者
 「どっから湧いてきた君たち!? まだ出番は先だぞ!」

 というわけで、記念すべき第11話でした。読者の数が昨日辺りからどんどん増えてきて嬉しい限りです。
 ところで上記の2人は、本文中に登場を示唆する文言を入れましたが、皆様お気づきでしょうか? よかったら探してみてくださいね。

 新しいアンケートを用意しました(8話から)。よろしければご回答ください。

 もし「漂流傭兵小噺」が面白いと感じてくれたら、☆評価や感想を是非、よろしくお願いします!

あとがきの作者と、あるいはキャラ同士の掛け合い、いります? なお、毎回書けるかは保証できませんが……。

  • 両方ともいる
  • 作者&キャラのみ
  • キャラ&キャラのみ
  • そんな要素いらない

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