漂流傭兵小噺~なんで右も左もケモ耳ばっかなんだ、いやそんなことよりまずはカネだ龍門幣だ!~ 作:ラジオ・K
カタカタ、カタカタ、カタカタ……。
部屋が、建物が、世界が音を立てる。
あらゆるものを利用した
音はどんどん大きくなり──
ついに破局した。
ゴォッ!
強力な、懐かしいとさえ感じる横揺れ。
意識が遠のいていく。
くそ、なんちゅう二度寝の、はいりかただ、よ。あんま りだ……ぜ……
10分後。「海」と隣接するマルヴィエント外縁部、海岸沿いにて。
「おーい、無事か?」
「ああ、少し擦り傷があるだけさ。おたくは?」
「こっちも大丈夫だ。なぁ、ところで今のって」
「どう見ても
「やっぱり!? まずいな、すぐに避難しないと!」
「ああ!」
住民たちが一斉に、荷造りさえせずに、着の身着のままで避難を開始する。目指すは街の中心部、教会だ。住民は皆、信じている。この事態に、司教様が救いの手を差し伸べてくれると。
そう祈りながら避難しているとある住民が不吉な予感と共に、ふと背後を振り向く。
背後には、海。
海は恐ろしい。海は怖い。海にはバケモノが住み着いている──そう教えられてきた海が。
ざざぁ、ざざぁ、と音を立て、盛り上がりはどんどん成長し、10メートルを超え始めた。
まだ、成長していく。まるで壁のように。
今や、壁は街へと迫っていた。
「に、に、にげぇろおぉぉぉみんな! 海がおそってくるぞぉ!!!」
住民が叫ぶ。走ろうとする。足がもつれ、派手に転ぶ。顔は恐怖の色が塗りたくられていた。その目が迫る壁を捉える。
壁には、無数の赤い光が揺らめいていた。
「く、クイントゥス様……! どうかお助け──」
頬に感じる、水。冷たさ。そして誰かの、
「う、うう……。クソ、俺は一体……?」
デリヴァは起き上がろうとして、失敗する。というより殆ど身動きが取れない。
「な、何で……俺は、埋まっている、のか?」
片目で周囲を観察する。視界は全て瓦礫で覆われていた。試しに叫んでみるが、誰も答えない。
また、断末魔が、聞えた。
「とにかく、脱出しないと……だが、どうやって?」
考えた末、体と瓦礫の隙間。そこになんでもいいから物を召喚し、隙間を大きくしていくことで──
「……しゃぁ! 脱出成功! 何時ぞやの追い剝ぎ共のガラクタ、役に立ってよかったぜ。今は……夜か」
空を仰ぐと、雲で覆われていた。お陰で見通しが悪い。
とりあえず四肢を動かし、体に異常がないか確かめてみる。うん、特に骨が折れているとかはなさそうだ。これ、つまり泊まっていたホテルが倒壊したという事か? まー耐震工事とかしてなさそうだしな。
そう思いながら辺りを見渡し──周囲の尋常でない様子を目の当たりにする。
「何だ、こりゃぁ……本当に地震後か?」
周囲の建物はことごとく倒壊し、あちこちで火災が起きている。有毒ガスを含む煙が辺りを覆い、怨念のように空に昇っていく。
そこまではまだ、見覚えがある。
問題は──地面に転がる、大量の肉片。そのほとんどは服を着ている。それは、
近づいて見ると、その異常さが露わになる。
「これ、は……この抉られた跡。何かに喰い殺されたみてぇじゃねぇか……!」
辺り一体に、人の気配はなかった。
とにかく、誰かを探さないと。というか、アイリーニやアズリウス、ウィスパーレイン達は無事なのか!? そう考え一歩を踏み出すと。
ぱちゃん
その音は、あまりに違和感があった。下を見る。地面は、水で満ちていた。
「何だ? 地震と水……この都市は海沿いだし、津波でもあったか?」
それにしては強烈な違和感が。片手で
顔を近づけ、匂いを嗅いでみる。……濃厚な、潮の臭いだ。本当に海水か、これ?
そう思っていると。瓦礫から脱出する際にできたのだろう傷から、一滴の血が垂れる。それは、まるで吸い寄せられるように手のひらの水に、落ちた。
すると、
ぼちゃん
という音と共に、水が手から零れ落ち、地面を覆う水に吸い込まれた。まるで俺から逃げるかのように。
「……?」
目の前で起きた光景に首を傾げていると、「うわぁぁぁ──!!」誰かの、叫び声!
方向は──そっちか!
俺は声の元へ急いで向かう!
だが。だが、遅かった。遅かったのだ。
住民の足が、生えている。魚の口から。
足はやがてボリボリという耳障りな音と共に、ゆっくりと
魚共が一斉にこっちを見る。いや、多分、魚だ。
犬と
そういった、魚だ。
魚の目は全て、赤。
「ンだよ……何こっちを見ているんだよテメェら……!」
気の利いたセリフなど、出なかった。
俺は体の底から湧き上がる怒りと共に、魚共に襲い掛かる!
「……!」
斬る。
「■!」
斬る。
「■■!!」
斬る。
「──!!」
斬る!
斬って、斬って、俺は魚共を斬り続けた────
だが、一向にその数は減る様子がない。寧ろ、どんどん集まってくる感じだ。魚共のバリエーションも増えてきた。
特に厄介なのが頭部が鉄砲みたいな形の魚で、水を噴き出してくる。その速度は相当なもので、避けた先にあった高さ1メートル程のコンクリの瓦礫が吹き飛んだほどだ。
下手すると当たった瞬間、死だ。
なのでそういった魚には、遠慮なく
今の俺は片手にハンドガンを、もう片手に剣を装備する変則的な二刀流だ。
まるで
そう一人虚しく自嘲していると、地響きと共に巨大な魚が現れる!
「くっ──!」
その魚が繰り出す
「なんだよ、
蟹の目玉は8個。顔だけじゃなく鋏や甲羅にも、生えている。
蟹の脚は、無数。まるで
ガ、キィン!!
クソ! やはり蟹だけあって甲羅が硬い! 剣もハンドガンもまるでダメだ……うぉっと! 右側の鋏から繰り出される叩きつけ攻撃を、左側に転がることで回避。お返しにハンドガンからアサルトライフルに変更し、撃ちまくる。が、なんの手ごたえも感じなかった。
目の前の蟹は大量にある脚のおかげで見かけよりも遥かに素早く、滑らかに動く。おかげで回避が難しい。のだが……コイツ、どうして右の鋏だけで攻撃してくるんだ? 左の鋏はちゃんとついているのに。
よく見ると、「何か」を握っているような……?
その時。誰の意図か、はたまた偶然か。
空を覆う雲が、晴れる。姿を現す、満月。
生理的嫌悪の塊のような蟹の、全体像が露わになる。
月は平等に、蟹の左側も照らす。
左の鋏には、
彼女の
彼女の細い首は、あらぬ方向に、曲がっていた。
彼女の目に、光は、なかった──
次回、イベリア編のラスボスが登場します。
本日は病院の為、投稿が遅れてしまいました(汗)。
書き溜めなどをしてない事の弊害ですね。
あ、ちなみに原作登場キャラクターが退場することはないのでご安心を。
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あとがきの作者と、あるいはキャラ同士の掛け合い、いります? なお、毎回書けるかは保証できませんが……。
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両方ともいる
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作者&キャラのみ
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キャラ&キャラのみ
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そんな要素いらない