漂流傭兵小噺~なんで右も左もケモ耳ばっかなんだ、いやそんなことよりまずはカネだ龍門幣だ!~ 作:ラジオ・K
また、アークナイツ本編のとある章より事実上の引用をした箇所があります。ここはなるべく手を入れない方が良いと思いまして。
これは、マルヴィエントの戦いが終結した頃の、おはなし。
音もなく雪が積もる中。
ポタポタと滴る。
それは、命の雫。
彼女はそれを見て足を止め、急いで駆け寄る。
ポタポタと滴る。
それは、心の雫。
「あ……あ……■■ー■……!!」
友の名を呼ぶ。声は擦れ、ほとんど聞こえない。
はやく、はやく止血を! 治療を!
だれか、だれでもいいから──
友を抱え、彼女は道を引き返す。息を荒らしながら。
「もうすぐだ、ア■■■……もうすぐだからね! だから目を閉じるな……目を閉じないでくれ!」
そして──
友の雫は、もう、枯れた。
彼女の雫も、もう、出ない。
そのあとに起こったことは憶えていたくなかった。
彼女は何も憶えていなかった。
彼女が憶えているべきものは、すべて雪と共に溶けていった。
ある者は疑問の声を上げ、ある者は訝しみ、ある者は一定の理解を示す中。
ドラコはエラフィアを背負い駐屯地を通り過ぎていった、彼女たちの姿はゆっくりとぼやけていき、徐々に森の輪郭へと溶け込んでいった。
そのあとに起こったことは誰一人知らなかった。
彼らはただ見ていた、タルラが黒夜に歩み入っていくところを。
ここはウルサス辺境の、とある村。
ここで、目覚めたのだ。
公には真の
だが、この時。
一匹の
移動都市による履帯、その文明の極致を語る駆動音が静かに響く中。会議は続いていた。
「──それで、彼女の救出作戦、いつ決行する?」
「様々なタイミングを見て、半年以内になると思います、ケルシー先生」
「ねぇアーミヤちゃん、私も救出任務のメンバーに選ばれてるよね?」
「えっと、ブレイズさん、その……」
「お前は目立ちすぎるから
「
「そんなこと言わないでよ、AceにScout! 何か
「まぁまぁ、まだ今すぐというわけではありませんから……」
「ケルシー殿、貴方の配下であるS.W.E.E.Pからの情報は、どうなんだ?」
「潜入中からのスカベンジャーからは……気になる情報が1つ。最近活動中のとある組織が、急に
「その組織というのは?」
「レユニオン・ムーブメント、という組織で『感染者は自らの立場に誇りを持ち、積極的に力をつけ、そしてそれを行使すべきだ』と主張しているらしい」
数時間後、会議が終わりケルシーは自身の執務室に戻る。そこには微かに潮の香り漂わせる先客の姿が。その手には小さなメモ用紙があり、何かを熱心に書いているようだ。
「いたのか、グレイディーア」
「ええ。会議お疲れ様ですわケルシーさん。それで、
「
ケルシーは執務室内に保管されている透明なケースに目を向ける。それはグレイディーアとローレンティーナがロドスに緊急
「今、これらの切れ端をバイビークに鑑定させているが、まだ開始して日も経たないのに既に奇妙な点が報告されている」
「というと?」
「簡潔に言うとこれらの衣類、素材やデザインの点ではある程度共通している割には、制作した企業の名前が見覚えないという点があるが、これは目を
「……それは、興味深いですわ」
「だが、今我々ロドスとしては──」
ケルシーは端末にある映像を映し出す。ウルサス、チェルノボーグの極秘施設にある石棺が。その中に眠るはロドスで最も重要な、かつ最も大切な人物だ。
「彼女を、ドクターを救出するのが、最優先となる。だからこの件について直ちに支援はできない」
「……わかりましたわ。では、わたし独自で
そう言い残し、出ていこうとするグレイディーア。その背中にケルシーはふと、疑問を投げかける。
「そういえば、何をメモ帳に書いていたんだ?」
「彼の名前を考えていただけです。記憶を、名を、失っていたようでしたから」
「随分とご執心だな?」
「ええ。彼は──」
何処か、私達と「似て」おりますもの。そう言い残しグレイディーアは執務室より去った。
光ある所、影あり。
企業ある所、暗部あり。
その企業が善だろうと、悪だろうと。
その企業は、計10のセクションがあることが一般には知られている。
即ち、
・コンポーネント統括課
・構造課
・エネルギー課
・オリジニウムアーツ課
・生態課
・科学調査課
・ビジネス課
・警備課
・エンジニア課
・人的資源課
である。
ところで、実はもう1つだけ、隠されたセクションがあることを知るのは、ほんの一握り。
その名とは──
「さて、今日は何か素晴らしい知らせがあるとか?」
「はい。それでは皆様、こちらの資料をご覧ください」
会議室の中央に示されるは、如何にして手に入れたのか、マルヴィエントでの戦いの映像。それが一気に早送りにされ──ある男が倒れる、その瞬間を捉え映像は一時停止される。
「この男──その瞳の色。まさか……」
「次いでこちらをご覧ください」
次に映るは病室の写真。先の男は眠っている様子だ。左下の日付から、マルヴィエントでの戦いより2日ほど経過していることがわかる。
「驚いたな。瞳の色と髪色、そして肌色の変化。これが意味するのは──」
「ええ。まさかの、
「なるほど、なるほど。しかも、変異過程がわかった4人目のアビサルハンターか! しかも男! なんと素晴らしい!」
「女のみ
「これは大発見ですな!」
「これでアビサルハンターの力の秘密がわかり、更には
「そのためには、他の組織に所属する前にとりあえず捕獲したいですな」
「うむ。ここは……
1つの影が後ろを振り向く。そこには壁にもたれかける、ヴイーヴルの女性がいた。
「一応、説明しておこうか。潜在意識にしっかりと刻み付けておいた方が何かと便利だろうからな」
「君、よろしく頼む」
「はい。では……現在我らが『イデアの目』が観察、捕獲対象としている検体は以下の通りでございます」
会議室の中央に、一枚のスライドが表示される。そこには目標の顔写真、コードナンバー、所属等の情報が示されている。
所属:なし。フリーの賞金稼ぎとして活動中。なお、現在我らと業務提携中のロドス・アイランドと接近中。後述の
所属:なし。現在、ロドス・アイランドにて治療中と推測される。
所属:ロドス・アイランド。正式契約ではない模様。ロドスの医療部門トップであるケルシー医師と協力関係にある。
「そしてここに……くだんの男が加わります。コードナンバーはいかがしましょう?」
「そうだな、
「では……元ライン生命警備課主任に命ずる。
ヴイーヴルの女性は、
生命の
彼らの目的は1つ。世界を、生命の
それを成し遂げた
ま さ か の
10,000UA突破(ちと遅い)!
皆様、今までのご愛読ありがとうございます!
この回でようやく時系列がはっきりし始めたかと思います。
次回、イベリア編最終話(の予定)となります。
また、UAが10,000を突破したので、記念としてデリヴァ君とアビサルハンターメンバーとのイチャイチャを番外編として書いています。
なにぶん初の試みですので質は保証できかねますが、お待ちいただければ幸いです。
これからも「漂流傭兵小噺」をよろしくお願いします!
もしこの話を面白いと感じてくれたら、☆評価や感想を是非、よろしくお願いします!
あとがきの作者と、あるいはキャラ同士の掛け合い、いります? なお、毎回書けるかは保証できませんが……。
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両方ともいる
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作者&キャラのみ
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キャラ&キャラのみ
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そんな要素いらない