漂流傭兵小噺~なんで右も左もケモ耳ばっかなんだ、いやそんなことよりまずはカネだ龍門幣だ!~ 作:ラジオ・K
全ては読んで下さる皆様がいてからこそ。
感謝!
あの戦いからだいたい半月程経過していた。
言っとくが、俺は途中から何も覚えていない。あの時、確かに俺の心臓は喰われたはずだ。そんなダメージ、普通は死ぬはずだが……何故だか、こうして生きている。
俺はあの広場でぶっ倒れていたらしい。周囲は何があったのか原型をとどめないほど融解していて、回収するだけで一苦労だったとか。
あの魚共も、いつの間にか引き上げていった。まるで潮が引くみたいに、自然と。
だが、マルヴィエントはほぼ崩壊。住民もその半数が帰らぬ人となった。
で、俺は3日間、眠り続けていたらしい。
普通に目を覚ましたつもりだったんだが……ずっと看病してくれたアイリーニはそう思わなかったようで。曰く、ずっと起きないものだと考えていたとか。
結果、起きてから3秒後にはアイリーニの感極まった抱きつき攻撃を食らって、あまりの強さに俺は耐えられず、即座に再び気絶という醜態をさらしたのであった。
そして──旅立ちの日が、来た。
崩壊し、もう町として機能しないマルヴィエント。イベリア本国はマルヴィエントの全面放棄と、ここからもっと近い町であるサルヴィエントの再稼働を決定したらしい。
多くの難民は、イベリア教会の者達によって先導され、離れていく。
俺はと言うと。彼らと反対側を向いていた。
「その……このような恩知らずな処分、本当にごめんなさい!!」
少し後ろに立っていたアイリーニが頭を下げる。
「……別にお前のせいじゃ、ないだろ?」
「でも……」
実のところ、イベリアから見ると俺は不法移民という扱いらしい。そして事実上の鎖国状態にあるこの国では、俺は公式としては犯罪者となるらしい。だが、そうなっては俺の目的が、グレイディーアと合流することが出来なくなってしまうだろう。
今まで俺が自由に過ごせていたのは、アイリーニが色々と誤魔化していてくれたから。だが、本国の役人が来ている以上バレるのは時間の問題。
故に俺は今日、脱出する。
「でも、こんなの、
「うーん、そういわれてもな、俺はよく覚えていないんだよ。本当にあのバケモノを倒したのか、どうか」
「そんなの、状況から考えてあなたしかいないじゃないですか!」
「
「アズリウス! それにウィスパーレインも、来てくれたのか!」
「ほんの一時とはいえ一緒に過ごした仲ですもの。当然ですわ。……その点、
少し寂しさが混じる、悲しげな表情をするアズリウス。俺は少し屈んでその子と目線を合わせて挨拶しようとし……
「……っ!」
逃げられた。少し怯えの表情を見せながら、アズリウスの背中側に隠れる、ウィスパーレイン。
その姿は、戦いの以前とは大きく違っていた。
「やっぱり、ダメか。
「元々ウィスパーレインは人見知りな方でしたし、記憶がなくなってしまったので、気に病む必要は……ないかと思いますわ」
かなり無理をしながら慰めてくれるアズリウスと、何とも言えない表情で話を聞くアイリーニ。
って顔の件はノーコメントかよ。
先の戦いで死亡したかと思われたウィスパーレインは、確かに蘇った。俺が考察した通り、
それは別に問題ではない。問題なのは。
記憶を無くしていたという点だ。
幸いにも全ての記憶を無くしたというわけではないが、俺についてはきれいさっぱり忘れてしまったらしい。
ウィスパーレインから見て今の俺はちっと
「そういえばアイリーニもアズリウスも、ケガの方は大丈夫なのか?」
「私はこの、傷が残るぐらいですね」
「
アイリーニは左目の辺りに1本の鋭い傷跡が残っている。
アズリウスの方は潰れていた両手は無事回復。問題なく日常生活を送れそうだ。
こうして見ると、医療アーツというのは凄まじいな。
アイリーニに用意してもらった車に近づき、中の時計を見る。
予定していた時間だ。もう行かないと。
「もう時間ですの?」
「ああ。今までお世話になったな」
「これからどうするの? 何か行くアテとかあったり?」
「とりあえず、このサルゴン? とかういう国の……一番近いのはアカフラ地区というところか。そこに行こうと思う」
「どれどれ……うーん、そこよりもサルゴンとミノスの国境地帯にあるこの村、アクロティというのが最も行きやすいと思いますが」
「そうなのか? えーとこのシエスタ? というのじゃダメなのか?」
「確か地形的な問題で行きにくい気がしますわ」
なるほど。今見ている地図は地形的な特徴が描かれていないからな。とても助かる情報だ。
「探している
「そうだな。なぁに、案外すぐ見つけられるかもだぜ?」
「そうなることをお祈りしてますわ」
「ありがとう、アズリウス」
俺は車に乗り込み、エンジンをかける。心地良い振動が伝達され始め、エンジン音が鳴り響く。
そんな中、アイリーニがぽつりと呟く。
「また……会えるよね?」
俺は彼女の方に顔を向け、力強く頷いた。
遠く、遠くなっていく。
マルヴィエントが。
見知らぬ世界で、世話になった3人が。
アイリーニは激しく、アズリウスは淑やかに、ウィスパーレインは控えめに、それぞれの方法で手を振る。
サイドミラーでそれを眺めつつ、俺は前を向く。
目指すはサルゴンとミノスの国境地帯の村、アクロティ。
果てして次は、どんな出会いがあるだろうか。
そう考えながらアクセルをぐっと踏み込む。
響くはエンジンの音、タイヤが地面とタイヤ自身を削る音。
うーん、なんか物足りねぇな。片手で隣の席に置かれている物品をまさぐると。
……これは、音楽CDか? ちょうどいい。いいBGMを頼むぜ?
プレイヤーにセットし、再生ボタンを押す。流れてきたのは……
────♪ ────♪ ──♪ ──♪ ──♪
ロックか? いいね。
ふと、車内にある鏡を見る。そこには、いつのまにやら変異した俺の顔が。姿が。
肌は日焼けた肌色から白へ。
髪は根元が白。先端が黒へと。
目は右目が黒から赤へ。
そして、深い場所からの、潮の匂い!
曲は続く。
俺はこれからどうなるか、わからない。誰にも。
でも俺は進むさ。
俺の漂流は始まったばかり。
これは、そんな俺の──
ほんの
一方その頃。
廃棄都市、サルヴィエント中心部の教会、その最奥にて。
この地に
──今回の出来事は誠に、誠に予想外の事でした。
全く、司教 も人が悪い。「使者」にも間違えることがあるのは、わかっていたことなのですから、きちんと導いて差し上げないといけないというのに。
全く、あの放任主義者ときたら!
──まぁ、それでも結果的に生贄が増えたのですから、よしとしましょう。
司教は薄く笑う。
その声は名状し難い響きを伴いながら、教会全体を震わせた。
パラス
「歓呼せよ! 震え上がれ、真の勇敢さを前に。偉大なる戦士たちよ、私が──」
作者
「ちょ!? まだ出番じゃないよ、まだ君が登場するの先だってば!」
というわけで、無事にイベリア編が終わりました!
で、次の舞台は……これ、何て言えばいいんですかね? サルゴン編? それともミノス編? ともかく、そのあたりが舞台となります。
多分明るい話になるんじゃないでしょうか。
なお、作中の妙な空白部分はわざとですので、タイプミスではないです。
そして現在、「漂流傭兵小噺」がUA1万を突破した記念に、現在主人公君とアビサルハンター達とのロドスでの日常(?)を記念として書いています。
何故か「アレ」な方向になっていますが……。
進捗率は50%ほど。
これからも「漂流傭兵小噺」をよろしくお願いします!
もしこの話を面白いと感じてくれたら、☆評価や感想を是非、よろしくお願いします!
追記
最後に登場する楽曲は危機契約#1のPVソングです(の予定でした)。良かったら同曲を聴きながら読むと、没入感が出るかもしれません。
該当部分がガイドラインに違反していたとのことなので、削除しました。
お騒がせしました。
あとがきの作者と、あるいはキャラ同士の掛け合い、いります? なお、毎回書けるかは保証できませんが……。
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両方ともいる
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作者&キャラのみ
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キャラ&キャラのみ
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そんな要素いらない