漂流傭兵小噺~なんで右も左もケモ耳ばっかなんだ、いやそんなことよりまずはカネだ龍門幣だ!~   作:ラジオ・K

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書いてみました。
UA数2万突破記念です。
全世界待望のスペクターが甘えてくる回。

R18までの道、そこをギリギリを責めてみました(つもりです)。
また、本編より時系列はやや先の話となります。



デリヴァの日常 with スペクター

 漂う2人分の潮風の匂い。

 何処か甘い香りのセット付だ。

 上を見上げると、禍々しく光る月。

 

 ここは水面の上。

 俺は立つ。

 

 包み込む水はゆっくりと、引いていき、やがて海底が見え始める。

 さて、起床の時間だ。

 

 

 

 8:56A.M 天気/晴

 ロドス特別医療室 収容患者名:スペクター

 

「ぬ……うん? またあの夢か」

 

 (デリヴァ)()()()()()による疲れが完全に取れない中、ゆっくりと瞼を開ける。映るは無機質な天井。香るは消毒液と――甘い潮の匂い。

 

 ――すぅ――す――す――

 

 寝間着に身を包み、穏やかな顔で隣で眠るスペクター。俺の片腕に抱きついた状態で、リラックスしているように思える。

 

 と、微かに身じろぐ。覚醒が近いか。さて、今日の調子はどうなる? 

 

「う、うう……ぐ、あ……」

 

 クソ、ダメか。慌ててカレンダーを見ると、今日は満月。……なるほど。やはりこの日はよろしくないらしい。前回もそうだったからな。

 

「失礼するぜ、お嬢さん――」

 

 俺は口内の液体を充満させた状態で、彼女の端正な顎を持ち上げ、そっとキスをする。

 相手の口をゆっくりとこじ開け、舌を絡ませ、己をゆっくりと流し込み始める。

 少しばかり入れてやると、スペクターの両目がパチッと開かれる。

 至近距離で見つめ合う双眸の赤、その奥は――海の狂気、その残滓が。

 

 それを確認した瞬間、スペクターの舌の動きが一気に激しく、貪るように変化する! 

 そこに言葉など必要ない。伝えたいことはもはや明白。

 俺の頭をアビサルハンター特有の怪力でがっつりと固定し激しく俺の舌を吸う。

 

 ……ちゅ(もっと)ちゅっ(もっと)あむ(はやく)はぁむ(ちょうだい)れろ(たくさん)れろ(ちょうだい)んれぇ(わたしを)あむ(海から)じゅる(解放して)……

 

 ――仰せのままに、お嬢様。

 

 

 俺の朝って毎日こんな風にして始まる。


 

 

 ああクソ、やっぱり片手っていうのは慣れないな。あのタルラっていう龍女め、容赦なく右腕を消し炭にしやがって。覚えていろよ……! 心の中でそう毒づきつつ着替えに奮闘していると。

 

「はぁ、全くもう。見てられない! ほら手伝ってあげるわよ、さっきのお礼にね!」

「……どうも」

 

 この年齢で誰かに着替えを手伝ってもらうのも……と思いつつ、素直にスペクターの手助けを借りてロドスの一般オペレーター制服に着替える。

 ご覧の通り、朝の熱烈な行為の結果、一時的ではあるがスペクターの狂気は薄まった。

 いや、元々の性格が「いい」だけにどう変わったか、そう聞かれると若干わかりにくいところはあるが。

 

 今は昼過ぎ。

 2人共所定の検査を終え、精神・体調面共に良好なことから外出許可が下りたのだ。精神面とは勿論スペクターのことである。狂気のまま外に出て、「うっかり」すると壁に大穴が開いたりするらしいからな……恐ろしや。

 

「で、今日はどこ行くんだ?」

「そうねぇ、とりあえず静かな場所がいいわぁ。根も葉もない噂話で周りが盛り上がるの、懲り懲りだもの」

「根も葉もない……? えっどの辺が

何か?

「アッハイなんでもありませんさぁいきましょうお嬢様」

 

 ちなみに今の彼女の服は「カンブリアン1096ウィンターモデル/暗流」というもので現在純正源石×15コでロドス購買部にて販売中だ!

 ……俺は何を言っているんだ……?

 まあいいや。

 ともかく、俺の残っている左腕に絡みつくスペクターを先導しながら目的地に向かう。

 その先は……

 

 

「ちょっと聞いてよドクター!! デリヴァが酷いのよ!?」

「ノックしてくださいよスペクターさん!? というか直したばかりのドアがっ」

 

 哀れ、ドクター執務室のドアよ。

 スペクターの怪力によって無理やりこじ開けられ、見事に変形したドアがそこにあった。

 

 それを見たドクター、悲しきことに理性が完全に飛んだようで「あびゃー」とか「くぁwせdrftgyふじこlp」とか虚ろな目で力なく叫んでいる。

 それを見たスペクター、つかつかと執務室に近づき机の上にあった初級理性回復剤をドクターの口へ放り込む! 

 

「ちょっと聞いてよドクター!! デリヴァが私達についての噂を否定してくれないの!」

「えっえっちょ、なななんて噂なんですかぁというかバイザー掴んでブンブンするのやめてぇ!」

 

 その言葉に従い、ピタッと体の動きを停止、厳かに噂の中身を話す。

 

「簡単に言うと……『アビサルハンター達って色々とヤバイ』って感じなの」

「えっそれ割と事実なんじゃ?」

「…………ふーん。へぇー。ド・ク・タ―も、そう思うんだぁ?」

「はっ、いやですね今のは単に心の声、じゃなくて素直な気持ち、ああいやこれでもなく――なっなんでそんないい笑顔してるんですかスペクターさん!?」

「デリヴァ! 今すぐ私の武器を召喚しなさい、このドクターにわからせてやるわ!」

「ダメに決まってんだろ。てかそうゆうとこやぞ」

 

 他人と話せることがなんやかんやいって楽しいのか、暴走するサメの頭を思いっきりひっぱたく。

 

「きゃっ! 痛いじゃない何するのよ」

「お前らみたいなじゃれ合い方は皆に誤解を与えるんだよ全く。ほれみろあそこ」

「あら」

 

 執務室の天井裏、そこに通じる穴から漏れ出る殺気。これは――同僚のレッドだな。

 その殺気は俺がスペクターを宥めすかすと音もなく消えた。いやーよかった、危うく乱入バトルが始まるところだったよ。

 一件落着である。

 

 

 

「時にドクター?」

「何かなデリヴァくん?」

「書類の量が……異様に少ないんだが。今日の秘書は?」

「ふっふっふー、誰だと思う?」

「ふむ。まだおやつの時間帯なのにも関わらず、この書類の少なさ……この処理能力の高さ……今ここにいないという事は独自の案件があり恐らくロドスにはもういない。つまり余程の大物か。という事は、つまりか!」

「そう、その名は!」

「「真銀斬!!(シルバーアッシュ)」」

「デリヴァくん、大正解! 景品にこの飴ちゃんをあげちゃう!」

「はは~ぁっ! 勿体なき褒美、我、有難く頂戴いたしまする」

 

 この茶番をソファーから眺めていたスペクター、飽きれたように一言。

 

「あなた達、いつの間にこんなに仲良くなったのよ?」

 

 そう、何故か彼女(ドクター)とは仲がいいんだよね。ウマが合うというか何というか。

 

 

 

 幸いにもドクターの仕事はそこまで忙しくないとのことなので。俺達2人は執務室で暇を潰すことにした。

 暫くして。

 ワルファリン謹製の亜鉛入りサプリをポリポリとかじりながらテラの雑誌を眺める俺に声がかかる。

 

「デリヴァ、デリヴァ」

「はいはいデリヴァですよ?」

「ちょっと、こっちきて?」

 

 見るとスペクターが自身の膝をポンポンと叩いている。これは……膝枕ってやつ?

 もう片方の手にはドクター愛用の耳かき棒が。これは……えっまて何されるんだ俺。

 

「お嬢様、どうして突然そのような事を?」

「ほら、この前自室でASMRというやつを聞いてみたじゃない。あれ、やってみたくなったのよ」

「あー。そうゆうことなら……ほい」

 

 俺はスペクターの膝上に頭を預ける。この一か月間でスペクターを始めとするアビサルハンター達とは毎日一緒に寝ているので、あったはずの抵抗(羞恥心)は何処かへと吹き飛んでしまった。慣れとは恐るべきものである。

 深淵の狂気に苛まれるスペクターは、時として強烈な不眠に襲われる。なので試しにArk Tubeの「カシャチャンネル」の『ASMRやってみました!』だったかな、そんな感じの奴を視聴してみたら、仲良く2人揃って夢の世界へ旅立ったのだ。ハハッ!

 その時の素材が耳かき音声だったというわけ。

 

「では、行きますね……」

 

 細い指が耳たぶに触れる。

 ゆっくりと侵入する「何か」

 かりかり……

 外側をゆっくりとなぞり、徐々に奥へ。

 かり、かり、かり、すーっ……

 かり、かり、かり、すーっ……

 かなり至近距離まで顔を寄せているのであろう。スペクターの吐く息が耳元へとかかり、妙な感覚を覚える。

 異物は更に奥へと進み、絶妙な位置で止まる。

 ぐいぐい、かり、かり、かーりかり。

 とんとん、かり、かり、かーりかり。

 ……何というか、あれだな。とても穏やかな気持ちになっていく。

 ざり、ざり、ざりっ……

 かり、ざり、かりかり……

 ふぅーっ。

 

「うお」

「ふふ、ビックリした?」

「あ、ああ。まさか息、とはな」

「私の腕、どうでしょう?」

「とても気持ちいいよ。何つーか、子供の時を思い出す感じな」

 

 反対側、つまりスペクターのお腹側を向きながら、そう答える。

 

「ふふふ、デリヴァもママに耳かきされた経験、あるってことかしら? 意外ね」

「意外って何だよコラ。俺を何だと思って……でも、正直わからんな」

 

 記憶がないから、とそう付け加える。

 すると……

 

「へぇ~じゃ、今は私がお母さん代わりってわけね!」

「ちょ、おま、何言って……」

 

 思わず振り返ると。普段の狂気的、或いは衝撃の塊のような性格の顔ではなく。

 穏やかな母性を感じさせる微笑みを浮かべるスペクターがいた。

 

「~っ!」

 

 どう答えていいか分からずに、衝動的に下を向いてしまう。そんな俺に何か言うこともなく。耳かきが再開される。

 かりかり……

 お腹側を向いているからか、体温だとか、甘い潮の匂いがダイレクトに伝わる。

 ざりざり……かり、かり……

 ぐり、かり、ぐり、かーり……

 どんどん眠く、なってきた、ような。

 かりかりかり……

 ざりっ、ざりっ……

 ドントン、かりかりかり……

 あっ、とても、気持ちいい――――

 

 

 

 

 

 

 

「ふー、今日のお仕事終わり! まさか定時前に終わるなんてね! どう? デリヴァくんにスぺ――あれ? こ、これは中々……」

 

 わたしは彼らを起こさないようにそっと近づく。

 目の前には眠りこけるデリヴァくんと彼の頭を抱えるように、守るようにして眠るスペクターさんの姿。

 

 わたしは全てではないけど、知っている。アビサルハンター達の苦悩を。

 突然この世界に現れ、その苦悩に巻き込まれたデリヴァくんの辛さを。

 わたしは知っている。

 だから――

 

「なんて尊いの……! こっこのままだとわたし、わたし……!」

 

 心臓を抑え、そのまま仰向けにひっくり返るドクター。

 彼女の理性は、0であった。

 

 

 

 

 

 

 

 そして夜が来る。

 ある意味、俺にとっては戦場だ。

 

 俺とスペクターは真正面から向き合う。

 ゆっくりと近づき、お互いの手を、腕を、体を。

 片手は2つの双丘へと、もう片方は顎、頬、耳へと。

 

 そして口を近づけ、触れ合い始める。

 何回か繰り返すと、その証拠として透明な粘性の橋が架かり始める。

 

 お互い、体温が上がり始めたことがよくわかる。

 彼女は体を全体を。

 俺は下半身を中心と。

 

「では……今日もよろしくお願い、ね?」

 

 赤い双眸を輝かせるスペクター。

 その瞳は上気する頬と同じくらい、輝いていた。

 俺はそんな彼女を、ゆっくりと抱き寄せた。

 

 

 特別医療室に、賛美歌が響き渡る。

 神をたたえるその歌は、人数が変わることもあるが、この一か月間に渡り同じ旋律であった。

 その歌は、ちょっと艶やかで、湿っぽい。

 

 

 

 

 

 

 ところでさ、いつもやられっぱなしというのは、何か違う気がするんだ。ワンパターンというのは良くないだろ?

 というわけで攻勢に回ってみたわけだ。

 突撃、突撃、突撃あるのみである!

 その結果、スコアは「6」となった。

 

 

 そして次の日の、朝。

 

 中々起きない2人を起こしにスカジがドアを蹴破ると。

 肌の艶に磨きがかかったスペクターと、萎びたデリヴァの折り重なった姿が、そこにはあった。

 残留する匂いから何があったか悟るスカジ。

 しかし、彼女は賞金稼ぎ(バウンティハンター)。慈悲はない。

 

 デリヴァの頬をぺちぺちと、()()()()()()()叩き、彼を起こす。

 疲労の色が今だ濃いデリヴァに対し、致命の一撃を放つ!

 

次は、私の番よ?

「……ひぃ!」

 

 

 

 がんばれデリヴァ!、まけるなデリヴァ!

 全世界(テラ)が、応援しているぞ!

 

 

 

続く……?

 

 

 




 弊ロドスのスペクターはこんな感じの日常を送っています。
 1日で書きあげてみましたが、いかがだったでしょうか。
 R18版で誰を登場させたいか、についてのアンケートは次話、掲載する予定です。
 ……直ぐに書けるかは、わかりませんが。
 経験が、ないのです(悲しみ)。

 なお、この回を書くために某耳かき専門店へ行ってきました。

 これからも「漂流傭兵小噺」をよろしくお願いします!
 もしこの話を面白いと感じてくれたら、☆評価や感想を是非、よろしくお願いします!

 追記
 こんな話を書いたので、タグに「スペクター」を追加しました。

いかがでした? 

  • えっちだった。
  • 尊かった。
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  • 続き スカジを希望
  • 続き ドクターとの絡みを希望
  • 続き アイリーニを希望

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