漂流傭兵小噺~なんで右も左もケモ耳ばっかなんだ、いやそんなことよりまずはカネだ龍門幣だ!~   作:ラジオ・K

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えっと、そのぉ…………
――クッソ遅くなりました。ごめんね。


中ボス、マンティコア戦

「わたし、マンティコア。能力は、こっそり殺す……。怖がらないで、あなたは、殺しの対象じゃない……」

 

「わたし、言われてる……よそから来た珍しい者を……捕まえて、って」

 

「そしたら、とっても近くに、たまたま……あなたが……いた」

 

 マンティコアのほっそりとした手が、(デリヴァ)に伸びる。神経毒によって不自然に痙攣(けいれん)する喉に絡みつく。きゅ、と絞り上げる。指はすぐに喉肉に食い込み、女の子特有の(なめ)らかな感触を打ち消した。

 

「――っ、か、あッ……がァ……」

 

 息が、できな――詰まる! 死ぬ、このままじゃ!!

 

 ピンク色の瞳が近づき、すぐに下に向かって、いく。違う。俺が、持ち上げられて、いく。なんつー力だ。

 毒だけでなく酸欠が身体を容赦なく蝕み、四肢が脱落。筋肉のみが未だ自己主張をするけれど、本体の意思を無視してバラバラに震える。だらだらとやけに粘つく汗が垂れ始めた。

 そんな様子をマンティコアはじーっと観察していた。冷酷さの奥に好奇心の色を滲ませて。一方でデリヴァの後頭部に己の尻尾――毒針をそっと押し当て、油断を見せない。

 そんな時間が続いたのは精々5秒といったところか。

 何故なら――

 

「――えっと…………わたしね、初めてな」

 

 

 ずるり。

 

 目を見開くマンティコア。首を掴んでいた手は――粘つく汗、ではなく粘液にまみれていて。決して大きくない手で人の首を無理やり掴む、という行為はこうして中断されたのだ。

 

「フッ――!」

「――!!」

 

 神経毒と酸欠で蝕まれているはずの目標(デリヴァ)が機敏に動くことに動揺しつつ非常に長い尻尾を振るい――金属音。弾かれる。毒針に接触したのは、ロケットランチャーの側面部。

 

(何もないところから突然――どうして――これが彼のアーツ???)

 

 もちろんこの現象はデリヴァの「力」――アーツ、のルビは振らない――のことをこの時のマンティコアは知らなかったし、目の前の物体がとある世界では「M202型ロケットランチャー」ち呼ばれていることはもっと知らないこと。

 デリヴァは召喚した武器(ロケラン)をマンティコアに向ける。その右手、人差し指がトリガーに――向かわない。思いっきりぶん投げる。約12キロの長方形がマンティコアの胸部に衝突するその寸前。信じがたい程の速度で地面に這いつくばり、少女は駆ける。武器(ロケラン)は虚しく空中を走り抜け、地面に突き刺さった。一方少女は上空から見ると「8」の字を描くように機敏に動く。1秒も満たない時間のうちにデリヴァの正面に出現する。両手を伸ばす。右手は広げ、左手は拳を固めて。左手が先行しデリヴァの顎に。命中する――

 

「!!」

 

 

 デリヴァは少し体をずらしつつ横を向く。顔面を掠るのは毒針。想定していないその動きーー読まれていた。わざわざ真っ正面に現れて繰り出した攻撃は、ブラフ。本命は長いリーチを持つ尻尾、そこから繰り出される毒の一撃。その計略は失敗に終わった。

 デリヴァの左手が毒針のすぐ後ろを下から掴む。ぐい、と前に突き出す。同時に右手は尻尾の中央部やや後ろを掴み取る。その姿は暴れる大蛇を押さえつけるよう。

 

「きゃっ」

「おらよっと、お!」

 

 尻尾の先端を地面に突き刺す。右手を大きく上に伸ばし、それにより少女の体は一気に宙に昇る。火事場の馬鹿力か、と驚く間もなくマンティコアは背中側から大地に叩きつけられた。首にかけていた無数のドックタグが擦れてちゃらり、と鳴る。

 

「カハッーーァァ……!」

 

 背骨が弓なりに。衝撃が臓器に染み渡り、目は限界まで見開かれ、舌が開いた口から突き出される。飛び出した唾液が水玉となって顔を濡らした。息継ぎをする間もなく、ほっそりとした少女の首元に無骨な指が添えられた。

 

 

 VICTORY!

 

 

 

 

 ーーふーっ。ようやく一息つけるぜ。久しぶりの空気はやっぱ旨い。

 

「どうして……」

「何が」

「……息を……したの?」

「さぁな」

 

 とっさの判断だった。ーー知ってるか? カエルの皮膚はクソ薄いがその代わり皮膚呼吸できるんだぜ。常に濡れている、という条件付きだが。だったらアヌーラも同じかもって思ってな、試しに粘液で体を覆ってみたんだ。そしたら、いけた。その代わり全身びちょびちょだがな。

 ま、教える必要はないだろ。

 

「んなことはどうでもいい。質問に答えろ。--誰の差し金だ?」

「…………しら、ない」

「そうかい。じゃーこれ、なんだ?」

 

 俺はマンティコアの前にカプセルを突き出す。それは+と-、そして(無限)のマークがついているもの。

 

「…………知らない」

「ああ?」

「でも、大切な、ものって、言ってた」

「誰が」

「白衣の、フェリーンの、水玉模様のネクタイかけた……男の人」

「名前は?」

「知ら、ない…………クルビアの人、普段こっち(サルゴン)に来ないから……名前、聞き取りづらい、の……」

 

 どうやら嘘は言っていなさそうだな。というかよく考えたらこの娘は所謂雇われ、というやつだろう。ならろくな情報を持っていないはずだ。ん、待てよ。試しに――

 

「最後の質問だ、依頼主の所属は?」

「…………えっ、と……うまく言えない……R,hine、La……ボ?」

 

 ふむ? だいぶたどたどしく発音したな。「知らない」のは聞き取れなかったから、なのかもしれん。これ以上聞き出せることはなさそうだ。

 

「あの……」

「なんだ?」

「どうして、わたしのこと……見えるの? ちゃんと潜伏、していたのに……」

「何言っているんだ、迷彩服もつけずに」

「…………」

 

 黙るマンティコア。その後少しブツブツと何か言っている。「用済みに」「でもひょっとしたら」「抜けるチャンス」などの言葉が微かに聞こえた。

 そしてーー

 

「あの……」

「ん?」

「その、お願いが、ある……んだけど……」

 

 

 

 

「……もし、よかったら、わたしをや◆縺励r縲√d縺ィ縺」縺ヲ縲√⊇縺励>縺ェ

 

 言葉は、耳に入らなかった。顔面を滑り、どこか遠くへと飛ばされていく。視界が急に真っ白になり、渦巻くノイズが取り囲み、即座に消える。その驚くべき現象におれはこえおだすこともできないしあくしょんをとることもできないしいきおすうこともはくこともできずにくうかんがのびてのびてのびて

 

 プツン、と切れた。 

                                        静謐

 

 

 ギャ――――ァァァァア!! 

 ――おいで。■ヲ■■■■■、■■■■■■■‐■■■■■。

 

 


 

 

 しばらくして。

 その場所に人影が現れた。少しオドオドした、真っ白な髪の毛を持ち、肉付きのよい下半身と極めて大きな太っとい尻尾を持つ少女である。顔を左右に動かし、誰かを探しているようにも見える。結局その目的は果たせなかったようであるが。ふと何かを見つけたようで少女はその物体に近づいていく。地面にめり込んでいた「それ」を少女はいともたやすく引っこ抜き、物珍しそうに眺めるのだった。

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 キーン、という物凄い耳鳴り、毒々しく生暖かい闇、そして実体を持っているんじゃないかと思ってしまうほどの濃い腐臭が俺を出迎えた。

 

「ウッ――オェッ、な、なんなんだ。一体何が」

 

 何かやたらと粘つくモノが周囲を覆っているようだ。とりあえずかき分けて進んでみる。すると何分もしないうちに灯りが見えてきた。そこを目指し、抜ける。じゅぼっ、とかぬぽっ、とかいう音とともに。

 灯りは月たちの光だった。片方は黄金色。もう片方は――赫々と。波と潮の香りが風景を包む。

 

「いつ見ても月が二つってのは慣れないな。んで、どこだよここ……漁村か? ――うおっ、何だコイツは」

 

 ふと後ろを振り返り俺は驚愕する。そこにいたのは巨大な()()()だった。鱗がなく気味が悪い程真っ白で、透明な体液がとどめなく流れ落ちている。それもそのはずで、ソイツは傷だらけで、とっくに死んでいた。どう見ても数十メートルはありそうなそのからだはズタボロ。巨大かつ鋭利な刃物で無惨に切り裂かれている。その半身は潮に浸かっており、見てみると不揃いの眼窩が大量にあった。全て虚ろ。顎から突き出る無数の刃は赤々と血塗られているが、どれもへし折られていた。ギザギザの断面は何かに衝突――もしくは殴られたのだろうか。

 

「っていうか……うわ。さっきの出口ってコイツの腹じゃん。そりゃあ臭いわな。――ん、雨?」

 

 ポタポタと水が垂れ始めて、あっという間に霧のような雨に変わった。なのに、空は蒼い。なんでだ。月たちもよく見える――色が、いつの間にか、変わっていた。黄金が、に。

 そして気づく。この空間にないものを。

 それは、音。

 雨音も、波音も、消えていた。自分の息遣いすらも、聞こえない。どうゆうことだ。何か物凄く、イヤな予感がする。離れなくては。急いで、早く!

 

 

 

「まだ生き残りがいたのね」

 

 女の声。振り向く。真っ先に飛び込んできたのは、既視感のある美しくとても長い銀髪。特徴的な帽子の下は輝く赫。冷たさと怒りがそこにあった。背にはその丈と同じほどの大剣が。

 何故かシャチを思い起こさせる、そんな美しい体は今、大量の血液に塗れていた。所々服や肌が見えている部分はひょっとしたら後ろのヤツの体液かもしれない。

 音もなく一瞬で女は抜刀。剣先をこちらに向ける。小さな口が動く。

 

「厄災は全部私が、倒すわ」

 

 大剣をまるでゴルフのフルスイングのように構える。本能が叫ぶ。アレを喰らったら、即死だ!

 

「ちょ、待って」

「ダメよ。私はスカジ、バウンティハンターよ。覚える必要はないわ」

 

 その姿が消えた。

 直後、漁村に轟音が響き渡る――

 

 

 

 




数年後。
「ケルシーに殺される!」
と、いう叫び声が上空で響いたそうな。

次回、大ボス戦です。お楽しみに。最近戦闘してばっかだなというかあの娘に勝てるわけないやろ

そうそう、これでも一応Twitterをやっています。(今更?)それなりの頻度で活動していますので、もし生存を確認したいという稀有な方がいれば覗いてみてね。
https://twitter.com/reoparutK

グロ描写の塩梅、どうでしょう?

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