漂流傭兵小噺~なんで右も左もケモ耳ばっかなんだ、いやそんなことよりまずはカネだ龍門幣だ!~   作:ラジオ・K

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幸いにも筆が進みました。


カジキとの出会い

「海の眷族をこうもあっさりと仕留め、(わたし)の攻撃を容易(たやす)くいなすとは、あなた、何者ですの?」

「男……ということは間違っても()()ではないようね。()()()()()も……全く、見られない。なのにあの眷族を倒した」

 

 少し高い場所、大岩の上より見下ろす彼女は、どこか気品を漂わせる、黒と白の絶妙なコントラストに身を包んでいた。

 真っ白な美しい髪を、特徴的な尖りを持つ帽子で半分ほど隠し、細い赤目で俺を見下ろす。

 その瞳は、猜疑心(さいぎしん)と困惑で半々といったところか。

 何分彼女は身長が高いこともあり、妙な威圧感があった。

 

「何者かって、そりゃぁ俺は──」

 

 そこまで言いかけ、はたと気づく。

 あれ、()()()()

 おかしい。地球の事は色々と思い出せるのに、肝心の自分の事はサッパリだ。

 一体どうなっていやがる。

 

「──? ちょっとあなた、早く、質問に答えて下さる?」

 

 急に沈黙した俺のことを訝しんだのか、はたまた時間が惜しいのか、その両方か。

 女はややイラつきながら詰問する。

 だが、今答えられるとするなら、これしかないだろう。

 

「すまんが忘れた」

「……はい?」

もっかい言うぞ、忘れた。どうも記憶喪失というものらしい」

「本当ですの?」

「もちろんだとも。どう証明すればいいかは、知らんが」

 

 女は顎に手を当て、少し考える。

 

「とすると、先程あなたが使用していたアーツ、その詳細もわからないと?」

「何の詳細だって?」

「アーツ。もう一度言いますわよ、アーツ

 

 こ、こいつさっきの俺のマネしやがって……! ひょっとして根に持つタイプなのか?

 いや、それよりも。

 

()()()? なんだそりゃ。新しいスイーツの名前か何かか?」

 

 その答えに、呆れたような息を吐かれる。どうも余程的外れの回答だったようだ。

 瞳に呆れの表情(かお)、トッピングが追加された。

 

「あんなにも銃を使っていたのですから、てっきりサンクタかと思いましたが。頭に輪っかもないようですし、その線もあり得ませんわね」

「そしてアーツの存在も全く知らない。そのことは思いっきりイントネーションがおかしい事から明白」

「どうやら記憶喪失ということは本当の様ですわね。自分の種族すらわからないのはあり得ないと思いますけど」

 

 猜疑心(さいぎしん)表情(かお)、トッピングが取り除かれた。いいことだ。その味はよろしくないからな。

 

「俺の事はもう話したぞ。次はそっちの番だろ」

「部外者に話すことなどありませんわ」

「なっ……!」

 

 こ、この野郎。何て冷たいやつなんだ。

 変なアダ名で呼んでやろうか……そうだ! 脳裏にある魚の姿が思い起こされる。

 

「これからは()()()とでも呼んでやろうか」

「なっ……!」

 

 大きな声を出し、赤目を大きく見開く。

 よし。やったぜ。

 

「どうしてあなたがそのネームを知っているのかしら?」

 

 大岩より飛び降り、女は一気に俺との距離を詰め、目と鼻の先まで近づく。

 うぉ、なんだ急に。ひょっとしなくても、地雷踏んだか?

 だが改めて見ても、デカいな。身長、180ぐらいはあるんじゃないか?

 その勢いに少しばかりのけぞりながら、答える。

 

「どうしてって、そりゃあ……なんとなーくそのイメージが湧いたからだよ。本当だって。だが……なんでだろな? ()()()()()()()とか、まるでクトゥルフ神話みたいだ」

 

 その答えを俺の瞳をジッと覗きながら吟味する。

 何秒が時が流れ──

 納得したように距離を取る女。

 

「それも本当のことのようですわね。失礼しましたわ」

「そりゃぁ、どうも」

「さて、遅くなりましたが、お礼を言わせてくださいませ」

「? 何のことだ」

「先にあなたが倒した海の眷族──蛸魚(タコたま)は、私が追っていた獲物でしたの。陸人の血を吸いつくし、その豊富な栄養を基に多量の卵を産み、増殖する厄介な奴でしてよ」

「なんちゅうか、害悪すぎる蚊みてぇだな」

「何よりもし吸われた陸人が感染者であれば、自らの体に源石(オリジニウム)を生やし、その死後に()()()()()()()()()()()()()()()。全くもって厄介な生態ですこと。悪趣味ですわ」

 

 なんかまたわからん用語が出たな。

 その源石(オリジニウム)を生やしたりするのことの、()()()()()()()()

 

 女の瞳には、もう負の表情(かお)、トッピングはなかった。

 とりあえず和解したの、か?

 

 

 そして何より。

 喋るタコのバケモノがいるとか、ワケわからん用語が沢山出てくるわ、なんか。

 ここ、地球じゃねーわ。

 俺、どーなるんだろ。

 

 




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